204 / 336
204
しおりを挟む
「ワタシハ、ラーシュ。キミノチチダ」
胸を張って、くちばしを上げて、超カッコつけて青い鳥が言った。
――――こういうところは、ピーちゃんだけど。
「お父さんって呼べばいい? それとも、ピーちゃん?」
「ソウダナ、ヨビヤスイホウデイイヨ」
「じゃあ、お父さんで」
「ウン……」
青い鳥が羽を震わす。嬉しいらしい。
「お父さん……どうやったら、体に戻れるの?」
「カラダノソバニイケバモドレル」
「じゃあ、すぐに」
「ソノマエニ、キーラノハナシヲキカセテホシイ」
「私の話?」
「ソウ、ルキッシュ二キテカラノキーラノハナシ」
そう言われて、私はルキッシュに来てからのことをお父さんに順を追って話した。
お父さんは時々質問しながら、今日までの話を最後まで聞いてくれた。そして、
「ブジデヨカッタ。キーラ」
と、私の手に頭をすりつける。
なんて言ったらいいか分からず、その頭をなぜる。
「そろそろ朝だね」
そう言うフェイの声に、外を見ると空が白み始めていた。どうやらまた徹夜してしまったようだ。
「お菓子も食べたから、僕もう帰るね。これ、ちゃんとしておいた方がいいよ」
フェイは、あの黒い塊が入った瓶を私に手渡した。
「フェイ、ワタシカラモレイヲ。ワタシヲ、ムカエニキテクレテアリガトウ」
「うん。僕もまたラーシュに会えて嬉しい」
「いろいろありがとう、フェイ」
「うん。じゃあ、またお菓子食べに来るね」
にっこり笑ってフェイは窓から出て行った。
白い犬がふよふよと遠ざかっていくのを見届ける。
「キーラモソロソロネルカイ?」
青い鳥はそう首を傾げた。
「うーん、なんか眠くないから、聞いてもいい?」
「イイヨ。ナンダイ?」
「お父さんはどこまで覚えているの? 私が叩かれそうになった時、お父さんが助けてくれたんだよね?」
「ソウダヨ。キーラガアブナイッテワカッタカラ、ヒッシダッタ。ソノクロイモノガ、ナニカモワカラナカッタケド、キーラニヨクナイコトガオコルトオモッタカラネ」
と、瓶を見る。
瓶の底で黒い塊はお菓子屑にまみれている。
「ソノクロイモノヲ、ケソウトシテ、マキコマレテ、トバサレタ。キガツイタラコノトリノナカダッタ。モトニモドロウトシタケド、ソノクロイモノニハバマレタ。ナントカイシキハ、ホンタイニツナゲタケド、カラダハジユウニウゴカセナカッタンダ」
「でも、私のところにすぐ来てくれたよね?」
「ソウナンダ。トリニナッテスコシタッタラ、ワタシガイシキスルト、ソノヨウニウゴクヨウニナッタ。タブン、ワタシノイシヲ、ヨミトッテイタノダトオモウ」
私は首を傾げた。
デリックの腕にまとわりついていた黒い煙。
あの時デリックはキーラを叩こうとしていた。
本当ならキーラはその手を避けるはずだった。でもキーラにあれを避ける能力はない。
私の予想では、キーラは乗っ取られ系で……。
黒い塊は鳥の中に入れた。デリックにはまとわりついていた。
ってことは?
黒い煙はデリックにキーラを叩かせるもので、キーラにとりつくはずだったもの?
「これって、悪い物?」
「ドウダロウ……コノセカイニナイモノ、デハアル」
「この世界にないもの……」
「マダワカラナイカラ、ヤッパリモトニモドッテカラマタカンガエヨウ」
「じゃあ、すぐにもどろう? アーサーを呼ぶから」
「マッテ、キーラ」
私が立ち上がると、青い鳥が慌てたように顔の前へと飛んできた。
「セッカクダカラ、スコシカレラノ、コウドウヲミテミタイ」
「彼ら?」
「ソウ、ルキッシュノヒトタチノ。ニサンニチデイイカラ、コノママデイタイ」
ホバリングする青い鳥から真剣な空気を感じる。
「……分かった。でも、どうするの?」
「ダイジョウブ、キーラニハメイワクヲカケナイヨ」
「うん」
「ソロソロダレカキソウダカラ、ヨルニナッタラマタクル」
青い鳥はそう言って瓶をくちばしで持ちあげると、フェイと同じように窓から外へ出て行った。
部屋を振り返ると、お菓子やなんかがかなり散らかっている。
「これ、どう言い訳しよう?」
ため息をつくと同時に、ノック。そしてエマさんが入ってきた。
「あれ、姫様。また眠れなかったんですか? って、これどうしたんです?」
「うん……ちょっと」
言い訳、間に合わなかった……
胸を張って、くちばしを上げて、超カッコつけて青い鳥が言った。
――――こういうところは、ピーちゃんだけど。
「お父さんって呼べばいい? それとも、ピーちゃん?」
「ソウダナ、ヨビヤスイホウデイイヨ」
「じゃあ、お父さんで」
「ウン……」
青い鳥が羽を震わす。嬉しいらしい。
「お父さん……どうやったら、体に戻れるの?」
「カラダノソバニイケバモドレル」
「じゃあ、すぐに」
「ソノマエニ、キーラノハナシヲキカセテホシイ」
「私の話?」
「ソウ、ルキッシュ二キテカラノキーラノハナシ」
そう言われて、私はルキッシュに来てからのことをお父さんに順を追って話した。
お父さんは時々質問しながら、今日までの話を最後まで聞いてくれた。そして、
「ブジデヨカッタ。キーラ」
と、私の手に頭をすりつける。
なんて言ったらいいか分からず、その頭をなぜる。
「そろそろ朝だね」
そう言うフェイの声に、外を見ると空が白み始めていた。どうやらまた徹夜してしまったようだ。
「お菓子も食べたから、僕もう帰るね。これ、ちゃんとしておいた方がいいよ」
フェイは、あの黒い塊が入った瓶を私に手渡した。
「フェイ、ワタシカラモレイヲ。ワタシヲ、ムカエニキテクレテアリガトウ」
「うん。僕もまたラーシュに会えて嬉しい」
「いろいろありがとう、フェイ」
「うん。じゃあ、またお菓子食べに来るね」
にっこり笑ってフェイは窓から出て行った。
白い犬がふよふよと遠ざかっていくのを見届ける。
「キーラモソロソロネルカイ?」
青い鳥はそう首を傾げた。
「うーん、なんか眠くないから、聞いてもいい?」
「イイヨ。ナンダイ?」
「お父さんはどこまで覚えているの? 私が叩かれそうになった時、お父さんが助けてくれたんだよね?」
「ソウダヨ。キーラガアブナイッテワカッタカラ、ヒッシダッタ。ソノクロイモノガ、ナニカモワカラナカッタケド、キーラニヨクナイコトガオコルトオモッタカラネ」
と、瓶を見る。
瓶の底で黒い塊はお菓子屑にまみれている。
「ソノクロイモノヲ、ケソウトシテ、マキコマレテ、トバサレタ。キガツイタラコノトリノナカダッタ。モトニモドロウトシタケド、ソノクロイモノニハバマレタ。ナントカイシキハ、ホンタイニツナゲタケド、カラダハジユウニウゴカセナカッタンダ」
「でも、私のところにすぐ来てくれたよね?」
「ソウナンダ。トリニナッテスコシタッタラ、ワタシガイシキスルト、ソノヨウニウゴクヨウニナッタ。タブン、ワタシノイシヲ、ヨミトッテイタノダトオモウ」
私は首を傾げた。
デリックの腕にまとわりついていた黒い煙。
あの時デリックはキーラを叩こうとしていた。
本当ならキーラはその手を避けるはずだった。でもキーラにあれを避ける能力はない。
私の予想では、キーラは乗っ取られ系で……。
黒い塊は鳥の中に入れた。デリックにはまとわりついていた。
ってことは?
黒い煙はデリックにキーラを叩かせるもので、キーラにとりつくはずだったもの?
「これって、悪い物?」
「ドウダロウ……コノセカイニナイモノ、デハアル」
「この世界にないもの……」
「マダワカラナイカラ、ヤッパリモトニモドッテカラマタカンガエヨウ」
「じゃあ、すぐにもどろう? アーサーを呼ぶから」
「マッテ、キーラ」
私が立ち上がると、青い鳥が慌てたように顔の前へと飛んできた。
「セッカクダカラ、スコシカレラノ、コウドウヲミテミタイ」
「彼ら?」
「ソウ、ルキッシュノヒトタチノ。ニサンニチデイイカラ、コノママデイタイ」
ホバリングする青い鳥から真剣な空気を感じる。
「……分かった。でも、どうするの?」
「ダイジョウブ、キーラニハメイワクヲカケナイヨ」
「うん」
「ソロソロダレカキソウダカラ、ヨルニナッタラマタクル」
青い鳥はそう言って瓶をくちばしで持ちあげると、フェイと同じように窓から外へ出て行った。
部屋を振り返ると、お菓子やなんかがかなり散らかっている。
「これ、どう言い訳しよう?」
ため息をつくと同時に、ノック。そしてエマさんが入ってきた。
「あれ、姫様。また眠れなかったんですか? って、これどうしたんです?」
「うん……ちょっと」
言い訳、間に合わなかった……
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。
霜月零
恋愛
私は、ある日思い出した。
ヒロインに、悪役令嬢たるお姉様が言った一言で。
「どうして、このお茶会に平民がまぎれているのかしら」
その瞬間、私はこの世界が、前世やってた乙女ゲームに酷似した世界だと気が付いた。
思い出した私がとった行動は、ヒロインをこの場から逃がさない事。
だってここで走り出されたら、婚約者のいる攻略対象とヒロインのフラグが立っちゃうんだもの!!!
略奪愛ダメ絶対。
そんなことをしたら国が滅ぶのよ。
バッドエンド回避の為に、クリスティーナ=ローエンガルデ。
悪役令嬢の妹だけど、前世の知識総動員で、破滅の運命回避して見せます。
※他サイト様にも掲載中です。
悪役令嬢に転生したら溺愛された。(なぜだろうか)
どくりんご
恋愛
公爵令嬢ソフィア・スイートには前世の記憶がある。
ある日この世界が乙女ゲームの世界ということに気づく。しかも自分が悪役令嬢!?
悪役令嬢みたいな結末は嫌だ……って、え!?
王子様は何故か溺愛!?なんかのバグ!?恥ずかしい台詞をペラペラと言うのはやめてください!推しにそんなことを言われると照れちゃいます!
でも、シナリオは変えられるみたいだから王子様と幸せになります!
強い悪役令嬢がさらに強い王子様や家族に溺愛されるお話。
HOT1/10 1位ありがとうございます!(*´∇`*)
恋愛24h1/10 4位ありがとうございます!(*´∇`*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる