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真っ赤になったエマさんは、何度聞いても結局好きな人の名前は教えてくれなかった。
それは“姫様”と言う権力を使っても駄目だった。
そんな楽しいお茶会はお昼過ぎまで続いたけど、様子を見に来たアーサーと入れ替わりに帰って行った。
アーサーからは朝とあまり変わらない報告を受けた。
そして、またフォルナトルと連絡を取る方法がまだ分からないのかと聞いて、思いだした。
「エマさんからカークの魔力が飛んで来たって教えてもらったけど、フォルナトルを閉じているものって魔力は通すの?」
「どうでしょう……やったことがないので分かりません」
アーサーはそう首を傾げる。
「やってみたら駄目かな。連絡が取れればいいんだよね」
「お嬢様、それなら通信用の道具があります」
あ、そう言えば、いつかアーサーから貰ったブレスレット!
「ですが、あちら側にそれを受ける人がいないので使えないのです。ルテルにいたルキッシュ側の者は皆強制的に戻されてしまいましたから」
「そうなんだ」
残念。
「今、デルフィー経由を模索していますが、あちら側も混乱しているのと、距離があるので……」
「じゃあ、フォルナトルが今どうなっているかも分からないの?」
「はい、第一報からあまり変わった情報はありません」
「そうなんだ、分かった」
アーサーが困ったような顔になったので、私はそう話を止めた。
「まだ忙しいんだよね。私少し休むから、仕事に戻っていいよ?」
「一人で大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫」
笑顔でそう言うと、アーサーはしぶしぶ出て行った。
アーサーに言った通り、少し……と言うかかなり眠って、戻ってきたエマさんに夕食の時間だと起こされた。
やっぱり完徹は辛かったみたいだ。
エマさんはもう一晩泊ってくれるつもりだったみたいだけど、それは丁寧にお断りした。
だって、今日の夜で、フェイがルテルへ行ってちょうど二日がたつ。
フェイの言う通りなら、今日の夜か明日の朝くらいにきっと帰ってくる……はず。
エマさんがいると、申し訳ないけど、ちょっと面倒だ。
一応お菓子をたくさん用意してもらって、一人で部屋をウロウロした。
「ケビン……ピーちゃん、ちゃんと見つかったかな?」
もし見つからなければ、もう少し時間がかかるのか。
大体、本当にフェイがフォルナトル側へ、ルテルに入れるのかも謎なのだ。
「もし、駄目なら、他の方法を考えないと」
窓辺によって空を見あげる。
私が霞を払ってから、空はいつも雲ひとつない。
森はどこまでも暗く、空には無数の星が見える。
そして、空を横切る光も。
「流れ星、あるんだ」
流れ星を数えながら、そのままそこへ座りこむ。
今日帰ってくると言う確証もないけれど、寝るのも嫌で時間が過ぎるのを待つ。
そして、真夜中を少し過ぎたころ、空に流れ星とは違う白い何かが見えた。
フヨフヨと右に左にそれは揺れながら、ゆっくりと降りてくる。
「フェイ!」
まだまだ遠い場所にいる白い犬に、私はそう叫んだ。
それは“姫様”と言う権力を使っても駄目だった。
そんな楽しいお茶会はお昼過ぎまで続いたけど、様子を見に来たアーサーと入れ替わりに帰って行った。
アーサーからは朝とあまり変わらない報告を受けた。
そして、またフォルナトルと連絡を取る方法がまだ分からないのかと聞いて、思いだした。
「エマさんからカークの魔力が飛んで来たって教えてもらったけど、フォルナトルを閉じているものって魔力は通すの?」
「どうでしょう……やったことがないので分かりません」
アーサーはそう首を傾げる。
「やってみたら駄目かな。連絡が取れればいいんだよね」
「お嬢様、それなら通信用の道具があります」
あ、そう言えば、いつかアーサーから貰ったブレスレット!
「ですが、あちら側にそれを受ける人がいないので使えないのです。ルテルにいたルキッシュ側の者は皆強制的に戻されてしまいましたから」
「そうなんだ」
残念。
「今、デルフィー経由を模索していますが、あちら側も混乱しているのと、距離があるので……」
「じゃあ、フォルナトルが今どうなっているかも分からないの?」
「はい、第一報からあまり変わった情報はありません」
「そうなんだ、分かった」
アーサーが困ったような顔になったので、私はそう話を止めた。
「まだ忙しいんだよね。私少し休むから、仕事に戻っていいよ?」
「一人で大丈夫ですか?」
「うん。大丈夫」
笑顔でそう言うと、アーサーはしぶしぶ出て行った。
アーサーに言った通り、少し……と言うかかなり眠って、戻ってきたエマさんに夕食の時間だと起こされた。
やっぱり完徹は辛かったみたいだ。
エマさんはもう一晩泊ってくれるつもりだったみたいだけど、それは丁寧にお断りした。
だって、今日の夜で、フェイがルテルへ行ってちょうど二日がたつ。
フェイの言う通りなら、今日の夜か明日の朝くらいにきっと帰ってくる……はず。
エマさんがいると、申し訳ないけど、ちょっと面倒だ。
一応お菓子をたくさん用意してもらって、一人で部屋をウロウロした。
「ケビン……ピーちゃん、ちゃんと見つかったかな?」
もし見つからなければ、もう少し時間がかかるのか。
大体、本当にフェイがフォルナトル側へ、ルテルに入れるのかも謎なのだ。
「もし、駄目なら、他の方法を考えないと」
窓辺によって空を見あげる。
私が霞を払ってから、空はいつも雲ひとつない。
森はどこまでも暗く、空には無数の星が見える。
そして、空を横切る光も。
「流れ星、あるんだ」
流れ星を数えながら、そのままそこへ座りこむ。
今日帰ってくると言う確証もないけれど、寝るのも嫌で時間が過ぎるのを待つ。
そして、真夜中を少し過ぎたころ、空に流れ星とは違う白い何かが見えた。
フヨフヨと右に左にそれは揺れながら、ゆっくりと降りてくる。
「フェイ!」
まだまだ遠い場所にいる白い犬に、私はそう叫んだ。
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