このやってられない世界で

みなせ

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 話し合いが終わった部屋は静かだ。
 窓辺に膝を抱えて座って、森を眺める。

 分かったとは言ったものの、納得はしていない。
 それでも、アーサーはともかく、フェリさんたちはお父さんが目を覚ますことを本当に望んでいるだろう。
 きっと一生懸命フォルナトルと連絡を取る方法を調べてくれるはずだ。
 なんとかして一日も早くピーちゃんをここに連れてこなければ、いつまでもここから帰れない。

「帰れない」

 簡単に終わりそうと思ったのに、変に大変になっていく。
 フォルナトルと連絡がついたとして、王都は遠い。一体何日かかるんだろう。
 何であの時ピーちゃんのこと忘れてたんだ。
 ケビンよりピーちゃん……ケビン……?

「そう言えばケビン、ルテルで待ってるって言ってたような。ケビンがルテルに居るなら、ピーちゃんもルテルにいる?」

 フェリオーノさんはなんて言っていた? 人と物は通れないだったっけ。
 なら動物は通れるのだろうか?
 王都は遠いけど、ルテルなら……呼んだら来ないかな?

「やってみよう」


―――――ピーちゃん! ピーちゃん!


 祈るように手を組んで、ひたすら呼びかける。


――――ピーちゃん! ピーちゃん! 聞こえたら返事して!


 どのくらいそうしていたか分からないけど、当然何も聞こえない。
 そう言えば前も失敗したんだよね。

「ピーちゃんはフェイみたいにはいかないのか……」
『呼んだ?』

 小さなつぶやきに、答えが帰ってきた。この声は……

『キーラ、呼んだでしょ?』
「フェ、フェイ?」
『うん、フェイだよ! 今近くにいるんだ! 行ってもいい?』
「いいけど、近くって……」
『窓の外だよ!』

 辺りを見回すと、目の前に犬姿のフェイがいた。
 いつの間に……。

『入るね!』

 って、窓を勝手に開けて入ってきて、床に降りると同時に子供の姿になった。
 私と同じように座り込んで、見上げるようにして覗きまれる。

「キーラ! 元気だった?」
「うん、元気だけど……どうして」
「キーラ、誰か呼んでたでしょ。森じゅうに響いてたよ? 僕はまだ呼ばれてないから悔しくて来ちゃった」
「悔しいって……」
「キーラ! ピーちゃんって誰?」

 ヒュッて大人の姿になって今度は私を見下ろす。
 うーん、何したいんだろ、フェイは。

「ピーちゃんは私の魔鳥のペットなんだけど、お父さんでもあるの」
「あー、そう言うこと」

 何も言っていないのに、フェイはそういて頷いた。

「まだ何も言ってないけど……」
「大丈夫。分かったから。それで、そのピーちゃんがどうしたの?」
「ルテルに居ると思うんだけど、ルテルに入れなくなったから……呼んでみたの」
「入れない? あぁ、そうか、人に関係あるものは駄目みたいだもんね」

 僕には関係ないけど、と二コリと笑う。

「関係ない?」
「うん、僕は行けるよ?」
「え、フェイ、ルテルに行けるの?」
「そう言ってるじゃない」

 って、意味ありげに私を見つめる。

「それって、行ってくれるって事?」
「ピーちゃんを連れてくればいいんでしょ? 動物なら大丈夫。どこにいるのか教えてくれれば行くよ」
「ケビンって人が多分ピーちゃんを連れていると思うから、その人からもらってきてほしい」
「いいよ。でも、僕は見えない人には見えないと思うから、勝手に連れてくることになるけど」

 あぁ、そうか。

「それだとケビンが心配するよね……手紙は持って行ける?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、とりあえず手紙を書くとして、確実に私だって分かるものも必要だよね」

 でも、こっちに持ってきたものって着ていた服くらいだけど、そんなもの証拠に置かれたらなんか事件っぽくて嫌だ……。
 他に、私だと分かるもの……

「そのピアスは?」
「あ」

 フェイに言われて右耳に触れる。

「それなら間違いなくキーラの物だって分かるよ?」
「……そう、だね。これ作ったのがケビンだから……」
「そうなんだ。じゃあその魔力を探せばいいんだね」

 明るくフェイが言ったので、嫌だと言えなかった。
 そう考えて、ピアスを手放す気がなかった自分に複雑な気分になる。
 自分をごまかすように、私はエマさんを呼んで、適当な紙とお菓子をお願いした。





























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

明日の更新はお休みします。
次回更新は11月18日になります。

次回もよろしくお願いします。
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