このやってられない世界で

みなせ

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 おじいさんたちは『持ち帰ります』と言って帰って行った。
 アーサーは思い切りため息をついて、

「あれじゃ、全然駄目ですよ。何も任せられません」

 なんて、私に駄目出しをした。
 そんなことは言われなくても、分かっている。

「だったらアーサーも何か言ってくれればよかったじゃない。だいたいあの人たちがああいう話をしに来るのは分かってたなら、それこそ先に教えてくれればいいのに」
「教えたら練習にならないでしょう?」

 久しぶりにキーラの記憶を思い出す。そう言えばアーサーって手とり足とりは教えてくれない人だった。

「そんな急に何でも出来たら、誰も苦労しない……」

 ぼそりと言って睨みつけると、アーサーはハハハと笑った。

「ところであの二人は本当に中立派なの?」
「フェリオーノ様とフェリギーノ様のことですか?」
「うん」
「彼らの家はずっと中立派です」
「家?」
「あぁ、そうですね。まだ王家について話していませんでしたね。では、ルキッシュの成り立ちからお話しましょう」

 私が不思議そうな顔をしていると、アーサーが話し始めた。




 ルキッシュは大地の力が強すぎて、本当なら人が住むような場所じゃなかった。
 人々は、最初大地の力が薄い海に近い場所で暮らしていたけれど、少しずつ人が増えて、海の近くだけで暮らすには不都合が出てきた。
 人々は話し合い、森の奥に住める場所がないかを探すことにし、大地の力にも負けない七人の戦士を森へと送った。
 七人は森の中を進み、やがて守護者に出会った。
 守護者は七人を気に入り、大地の力に順応できるよう契約をした。そして、七人の中から王を選び、契約を結んだ場所に王都を、そして七人それぞれ自分が選んだ場所に村を作るよう言った。契約により人々は大地の力に順応し、ルキッシュの中のどこにでも住めるようになっていた。
 ルキッシュ王家は、その七人の血を引く一族で、今は七王家と呼ばれている。




 アーサーの長い話をまとめるとこんな感じだ。

「まるで伝説だね」
「伝説じゃありませんよ。真実です」
「……お父さんも七王家の人なの?」
「当たり前でしょう。そうじゃないと王に選ばれません。お嬢様もですよ」

 そりゃそうだよね。あれ、そしたら。

「じゃあ、もしかして私のお祖父さんとかお祖母さんとか、親戚とか、いるの?」
「いらっしゃいますが……」

 アーサーの顔が曇る。

「ますが?」
「ラーシュ様とは折り合いが悪いので」

 どうしてって聞いてもいいんだろうか?

「……そうなんだ、それは、ちょっと残念。でも会議には出てるんでしょ?」
「えぇ、出ています。前王派として」

 敵対するくらい仲が悪いの?

「えーっと、そのうち見ることくらいは出来る?」
「そうですね、見るだけなら……問題ないでしょう」

 何その言い方。

「何があってそんなに……」
「その話も長くなるんですよ」

 アーサーは物凄く嫌そうに首を振った。



























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

明日の更新はお休みします。
次回更新は10月23日になります。

次回もよろしくお願いします。

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