169 / 336
169
しおりを挟む
おじいさんたちは『持ち帰ります』と言って帰って行った。
アーサーは思い切りため息をついて、
「あれじゃ、全然駄目ですよ。何も任せられません」
なんて、私に駄目出しをした。
そんなことは言われなくても、分かっている。
「だったらアーサーも何か言ってくれればよかったじゃない。だいたいあの人たちがああいう話をしに来るのは分かってたなら、それこそ先に教えてくれればいいのに」
「教えたら練習にならないでしょう?」
久しぶりにキーラの記憶を思い出す。そう言えばアーサーって手とり足とりは教えてくれない人だった。
「そんな急に何でも出来たら、誰も苦労しない……」
ぼそりと言って睨みつけると、アーサーはハハハと笑った。
「ところであの二人は本当に中立派なの?」
「フェリオーノ様とフェリギーノ様のことですか?」
「うん」
「彼らの家はずっと中立派です」
「家?」
「あぁ、そうですね。まだ王家について話していませんでしたね。では、ルキッシュの成り立ちからお話しましょう」
私が不思議そうな顔をしていると、アーサーが話し始めた。
ルキッシュは大地の力が強すぎて、本当なら人が住むような場所じゃなかった。
人々は、最初大地の力が薄い海に近い場所で暮らしていたけれど、少しずつ人が増えて、海の近くだけで暮らすには不都合が出てきた。
人々は話し合い、森の奥に住める場所がないかを探すことにし、大地の力にも負けない七人の戦士を森へと送った。
七人は森の中を進み、やがて守護者に出会った。
守護者は七人を気に入り、大地の力に順応できるよう契約をした。そして、七人の中から王を選び、契約を結んだ場所に王都を、そして七人それぞれ自分が選んだ場所に村を作るよう言った。契約により人々は大地の力に順応し、ルキッシュの中のどこにでも住めるようになっていた。
ルキッシュ王家は、その七人の血を引く一族で、今は七王家と呼ばれている。
アーサーの長い話をまとめるとこんな感じだ。
「まるで伝説だね」
「伝説じゃありませんよ。真実です」
「……お父さんも七王家の人なの?」
「当たり前でしょう。そうじゃないと王に選ばれません。お嬢様もですよ」
そりゃそうだよね。あれ、そしたら。
「じゃあ、もしかして私のお祖父さんとかお祖母さんとか、親戚とか、いるの?」
「いらっしゃいますが……」
アーサーの顔が曇る。
「ますが?」
「ラーシュ様とは折り合いが悪いので」
どうしてって聞いてもいいんだろうか?
「……そうなんだ、それは、ちょっと残念。でも会議には出てるんでしょ?」
「えぇ、出ています。前王派として」
敵対するくらい仲が悪いの?
「えーっと、そのうち見ることくらいは出来る?」
「そうですね、見るだけなら……問題ないでしょう」
何その言い方。
「何があってそんなに……」
「その話も長くなるんですよ」
アーサーは物凄く嫌そうに首を振った。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は10月23日になります。
次回もよろしくお願いします。
アーサーは思い切りため息をついて、
「あれじゃ、全然駄目ですよ。何も任せられません」
なんて、私に駄目出しをした。
そんなことは言われなくても、分かっている。
「だったらアーサーも何か言ってくれればよかったじゃない。だいたいあの人たちがああいう話をしに来るのは分かってたなら、それこそ先に教えてくれればいいのに」
「教えたら練習にならないでしょう?」
久しぶりにキーラの記憶を思い出す。そう言えばアーサーって手とり足とりは教えてくれない人だった。
「そんな急に何でも出来たら、誰も苦労しない……」
ぼそりと言って睨みつけると、アーサーはハハハと笑った。
「ところであの二人は本当に中立派なの?」
「フェリオーノ様とフェリギーノ様のことですか?」
「うん」
「彼らの家はずっと中立派です」
「家?」
「あぁ、そうですね。まだ王家について話していませんでしたね。では、ルキッシュの成り立ちからお話しましょう」
私が不思議そうな顔をしていると、アーサーが話し始めた。
ルキッシュは大地の力が強すぎて、本当なら人が住むような場所じゃなかった。
人々は、最初大地の力が薄い海に近い場所で暮らしていたけれど、少しずつ人が増えて、海の近くだけで暮らすには不都合が出てきた。
人々は話し合い、森の奥に住める場所がないかを探すことにし、大地の力にも負けない七人の戦士を森へと送った。
七人は森の中を進み、やがて守護者に出会った。
守護者は七人を気に入り、大地の力に順応できるよう契約をした。そして、七人の中から王を選び、契約を結んだ場所に王都を、そして七人それぞれ自分が選んだ場所に村を作るよう言った。契約により人々は大地の力に順応し、ルキッシュの中のどこにでも住めるようになっていた。
ルキッシュ王家は、その七人の血を引く一族で、今は七王家と呼ばれている。
アーサーの長い話をまとめるとこんな感じだ。
「まるで伝説だね」
「伝説じゃありませんよ。真実です」
「……お父さんも七王家の人なの?」
「当たり前でしょう。そうじゃないと王に選ばれません。お嬢様もですよ」
そりゃそうだよね。あれ、そしたら。
「じゃあ、もしかして私のお祖父さんとかお祖母さんとか、親戚とか、いるの?」
「いらっしゃいますが……」
アーサーの顔が曇る。
「ますが?」
「ラーシュ様とは折り合いが悪いので」
どうしてって聞いてもいいんだろうか?
「……そうなんだ、それは、ちょっと残念。でも会議には出てるんでしょ?」
「えぇ、出ています。前王派として」
敵対するくらい仲が悪いの?
「えーっと、そのうち見ることくらいは出来る?」
「そうですね、見るだけなら……問題ないでしょう」
何その言い方。
「何があってそんなに……」
「その話も長くなるんですよ」
アーサーは物凄く嫌そうに首を振った。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は10月23日になります。
次回もよろしくお願いします。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?
プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。
小説家になろうでも公開している短編集です。
悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました
葉月キツネ
ファンタジー
目が覚めると昔やり込んだ乙女ゲーム「白銀の騎士物語」の悪役令嬢フランソワになっていた!
本来ならメインヒロインの引き立て役になるはずの私…だけどせっかくこんな乙女ゲームのキャラになれたのなら思うがままにしないと勿体ないわ!
推しを含めたイケメン近衛騎士で私を囲ってもらって第二の人生楽しみます
普通の勇者とハーレム勇者
リョウタ
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞】に投稿しました。
超イケメン勇者は幼馴染や妹達と一緒に異世界に召喚された、驚くべき程に頭の痛い男である。
だが、この物語の主人公は彼では無く、それに巻き込まれた普通の高校生。
国王や第一王女がイケメン勇者に期待する中、優秀である第二王女、第一王子はだんだん普通の勇者に興味を持っていく。
そんな普通の勇者の周りには、とんでもない奴らが集まって来て彼は過保護過ぎる扱いを受けてしまう…
最終的にイケメン勇者は酷い目にあいますが、基本ほのぼのした物語にしていくつもりです。
【完結】乙女ゲームに転生した転性者(♂→♀)は純潔を守るためバッドエンドを目指す
狸田 真 (たぬきだ まこと)
ファンタジー
男♂だったのに、転生したら転性して性別が女♀になってしまった! しかも、乙女ゲームのヒロインだと!? 男の記憶があるのに、男と恋愛なんて出来るか!! という事で、愛(夜の営み)のない仮面夫婦バッドエンドを目指します!
主人公じゃなくて、勘違いが成長する!? 新感覚勘違いコメディファンタジー!
※現在アルファポリス限定公開作品
※2020/9/15 完結
※シリーズ続編有り!
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる