このやってられない世界で

みなせ

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 車窓は延々と草原が続いていた。
 民家もなければ、当たり前だけど人の姿もない。当然、見るほどの景色もない。
 はっきり言って、すぐに飽きた。
 それでも暫くはピーちゃんと遊んでいたけど、そのピーちゃんが眠ってしまったので、仕方なくフリースペースにいたケビンに声をかけた。

「ここって地図で言うとどのあたりなの?」
「そうだな、四分の一くらい進んだあたりか」
「それって……どこよ」
「どこって言われてもなぁ。今回、町は通らないから」
「通らない? 止まらないじゃなく?」
「あぁ、草原を突っ切る進路にしてると思う」
「普通は通るの?」
「そりゃあ通るだろ。今回は急に決まったのもあるけど、急ぐことと警備のこともあるから人がいない場所を通ることにしたんだ」

 通ることにした?

「ケビン、この列車ってどうやって走ってるの?」
「魔法だよ」
「魔法?」
「そう、大地から力を吸い上げる魔法で進む」

 当たり前のことを、とケビンが不思議そうな顔をする。
 力って何だ。電気じゃないのは分かるけど。

「レールの上を走るんだよね?」
「あぁ、そうだよ」
「そんな簡単に進路を変えられるの?」
「変えようと思えば変えられるだろ。一応先に決めていると思うけど、場所によって進路を変えなければならない場合もあるし」
「だってレールは……」
「進む方向にレールを作ればいいだろ? 何のために魔法使いが乗ってると思うんだ?」

 そうですか。そうですよね。魔法で動いてるんですもんね。
 道理で、振動も音もないはずですよ。そう言えば車窓にありがちな電柱もない。
 常識では考えていけないことを思い出させられて、がっくりする。

「キーラ?」
「何でもない……せっかくだから町と駅が見たかった」
「そうだよな。草原ばっかり見てるのも飽きるよな」

 ケビンがそう言って笑った。
 窓の外は相変わらず草原だ。
 視界を妨げる物が何もないから、遠くまでよく見える。
 私とケビンはお昼までよく分からない会話をしながら時間をつぶした。

「明日以降についての説明に上がりました」

 お昼ごはんを食べた後、そう言って現れたのは最初にあいさつしたおじさんだった。
 確かファーナー・バルトルさん。
 ケビンと一緒に立ち上がって挨拶を交わす。

「では早速ですが、明日の昼前にルキッシュとの国境駅に到着します。午後一番で顔合わせ、第一段階の話し合いを行う予定です。そこで上手くまとまれば、翌日に文書の作成と内容の確認、本国の承認が得られれば翌々日調印と人質解放となります」

 おじさんは簡単にそんな説明をした。内容なんて分からないので、それで十分だ。
 問題は。

「私は何をすればいいんですか?」
「……」

 私の問いかけにおじさんが眉を寄せた。

「……交渉の場に一緒に居ていただければ」

 少しの沈黙の後、困ったようにそう告げる。

「分かりました」

 まぁ、これしか言いようがないよね。
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