このやってられない世界で

みなせ

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 アーサーとの通信が途絶えた後、カークはデリックとケビンを部屋に呼んで、チェルノの帰国が一週間ほど伸びることを伝えた。
 何でわざわざと思ったけれど、リーナが学園にいるかいないかで二人の行動が変わるらしい。

「いてもいなくても、もうリーナと行動を共にすることはない」

 と、カークは言うけど、クラスが同じで、さらに席も近いとなればどうしようもないんじゃないだろうか。

「一つ聞いていい? カーク達って教室でリーナとどういう感じでいたの? 外で何回か見たけど、教室でもあんな感じなの?」

 カーク達の教室は別棟だ。
 キーラは学園に全く興味がなかったみたいで、自分が使う教室以外の情報があまりない。ましてやリーナが来る前は忙しくて、来た後は変な噂で他の生徒との交流もなかった。
 噂のおかげで、リーナとその取り巻きがいることは認識したけど、実際リーナ達を見たのは遠目で幾度かある、その程度だ。
 一番近くで見たのがデリックに殴られた時で、その光景は乙女ゲームで良くあるイメージそのものだった。
 もし、その何度か見た状態が教室内でも行われていたなら、急にリーナを遠ざけるのは逆効果な気がする。

「あんな感じとは、どんな感じなんだ?」
「リーナとその仲間たち、みたいな?」

 なんて言ったらいいか分からずにそう言うと、

「教室内で殿下とケビンは席を動くことはありませんでした。教室内でリーナ嬢の側にいたのは、同じクラスの数人と、私やフランクです」

 デリックが言いにくそうに答えてくれた。

「じゃあ、あの状態は外限定だったの?」
「あの状態……あれは、前も言ったように、リーナを観察するためで……一緒に行動することはあったが、そこまでじゃない」

 顔をしかめてカークが言う。

「それはまぁ、どっちでもいいけど、急に皆さんがリーナから離れるといろいろ言われるんじゃないかな、と思って……」

 前にも思ったけど、誰かがしっかりリーナを見張ってくれていた方が、リーナがこっちに来なくていい。リーナが現れるのは、いつもリーナが一人の時なんだから。

「この一ヶ月、リーナ嬢の周りにいるのは数人で、キーラ嬢の噂も今は話題になっていないそうです」

 ちょっとそれって、キーラの影が薄かったから、忘れられたってこと?
 確かにリーナが突撃してこなければ、キーラなんていないも同然だったけど。

「今はフランクの噂が多く、私たちとリーナ嬢が一緒にいる方が問題になりそうです」
「そっか。じゃあ、別々に学園に行けば問題ないか」
「何言ってるんだ? 一緒に行くぞ」

 カークこそ何言ってるんだ?

「一緒に行ったら変でしょう。私とカークと接点ないのに」
「それは……」
「何事もなかったように、前通りにすれば」
「それは無理だ」
「何で」
「キーラのクラス、担当がジョシュアだ。リーナからキーラが王家預かりになったことを聞いている筈だ。前と同じにはならないだろう」

 そうだった。私のクラス、リーナの取り巻きだった。

「なら」
「だから、学園へは一緒に行く。一緒に行って思い切り見せつける」
「何を?」

 なんとなく予想がついた。
 聞きたくないけど、聞き返す。

「私がキーラを選んだと言うことを」

 カークは少し恥ずかしそうにそう言った。
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