このやってられない世界で

みなせ

文字の大きさ
上 下
116 / 336

116

しおりを挟む
 ブレスレットの話の後、話し合いは、オンリンナ家の周囲や使用人たちの話になった。
 私がアーサーたちと話している間に、オンリンナ家の使用人たちの方から接触があったらしい。
 まぁ、立派な馬車がやってきたんだから気になるのは分かるけど、どの人も聞きもしないのにあることないこと、ぺらぺらと喋りまくったと言うから驚きだ。
 それも入れ替わり立ち替わり。
 でも、そのおかげでリーナが帰ってくることが分かったし、その人たちの話からアーサーが夜と言った時間をある程度割り出すことができた。
 で、その時間まで解散と言うことになったんだけど。
 話し合いが終わって、もうどのくらいたったのか。

 とりあえず、カークが離してくれません。

「カーク、そろそろ離してくれませんか?」

 ため息まじりに、何度目かになるセリフを言ってみる。
 ぼんやりと宙を見ているカークは、あぁ、と返事はするものの、結局またぼんやりしてしまい、私の声がちゃんと届いているかどうかすら疑問だ。
 何か考えているのか、見たままの状態なのか……話しかけても上の空で、判断がつかない。
 逃げ出そうにも腰に回った手がかなり強固で、頑張ってはがそうとしたけど無理だった。

 私も一度部屋に戻りたいんだけどなぁ。

「カーク、本当にそろそろ離してほしいんだけど」

 もう一回言って、カークを見上げる。
 その顔を見ていたら、なんだかムカついてきたので、そのほっぺたをつねって引っ張ってみた。

「痛い」

 ムッとした顔で、ようやくこっちを見たので、もう一度要求を言う。

「正気に戻ったなら、手を放しください。殿下」

 カークがため息をついた! おいっ!

「キーラ、前にも聞いたけど、これからどうしたい?」

 突っ込みを入れるタイミングで、カークが問う。

「……これから?」

 私は、もう、普通に生活が出来ればいいんですが。

「何もないなら、家を取り戻して学園に通う、だろ?」
「うん」

 その通りです。

「でも、それだけで終わらないよね。きっと。リーナ達を追い出すのだって大変そうだし……」
「あぁ、それで、どちらがいいのかと思って」
「どっちがいいって?」
「リーナ達を追い出してから学園へ行くか、リーナ達との問題を片付けてから学園へ行くか……」
「それは……」

 確かに、どっちがいいんだろう?

「……学園って、今どうなってるのかな?」
「特に問題はないようだ。キーラのことは、オンリンナ家から体調不良で休むと言う連絡が行っていたみたいだ。さっきの話だと、きっと家令が連絡していたのだろう」

 流石、アーサー。

「じゃあ、通うのは問題ないんだ」
「大丈夫だ。ただ、キーラは一般クラスだ。担任はジョシュア。クラス替えの申請を出しても一月はかかる」
「クラス替えって、誰の?」
「当然キーラだ。私のいるクラスへ移動させたい」
「今更?」
「一般クラスは遠すぎる。何かあってもすぐに駆けつけられない」

 別棟だから、それはそうだけど。

「流石に学園内なら……」
「キーラ、君はデリックに殴られ、フランクに死にそうな目にあわせられたこともう忘れてるのか?」

 そうでした……そう言えば、それって学園で起こったことでした。
 忘れていたわけじゃ……ナイヨ……それより衝撃的なことがありすぎるのが悪い!
 カークが、残念なものを見る目になった。
 そして、さっきよりさらに大きなため息をついた。

「……少し、簡単に考え過ぎていたみたいだ。キーラのことも、予言のことも」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】乙女ゲームに転生した転性者(♂→♀)は純潔を守るためバッドエンドを目指す

狸田 真 (たぬきだ まこと)
ファンタジー
 男♂だったのに、転生したら転性して性別が女♀になってしまった! しかも、乙女ゲームのヒロインだと!? 男の記憶があるのに、男と恋愛なんて出来るか!! という事で、愛(夜の営み)のない仮面夫婦バッドエンドを目指します!  主人公じゃなくて、勘違いが成長する!? 新感覚勘違いコメディファンタジー! ※現在アルファポリス限定公開作品 ※2020/9/15 完結 ※シリーズ続編有り!

モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)

優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11) <内容紹介> ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。 しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。 このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう! 「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。 しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。 意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。 だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。 さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。 しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。 そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。 一年以上かかりましたがようやく完結しました。 また番外編を書きたいと思ってます。 カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

婚約破棄の現場に遭遇した悪役公爵令嬢の父親は激怒する

白バリン
ファンタジー
 田中哲朗は日本で働く一児の父であり、定年も近づいていた人間である。  ある日、部下や娘が最近ハマっている乙女ゲームの内容を教えてもらった。  理解のできないことが多かったが、悪役令嬢が9歳と17歳の時に婚約破棄されるという内容が妙に耳に残った。  「娘が婚約破棄なんてされたらたまらんよなあ」と妻と話していた。  翌日、田中はまさに悪役公爵令嬢の父親としてゲームの世界に入ってしまった。  数日後、天使のような9歳の愛娘アリーシャが一方的に断罪され婚約破棄を宣言される現場に遭遇する。  それでも気丈に振る舞う娘への酷い仕打ちに我慢ならず、娘をあざけり笑った者たちをみな許さないと強く決意した。  田中は奮闘し、ゲームのガバガバ設定を逆手にとってヒロインよりも先取りして地球の科学技術を導入し、時代を一挙に進めさせる。  やがて訪れるであろう二度目の婚約破棄にどう回避して立ち向かうか、そして娘を泣かせた者たちへの復讐はどのような形で果たされるのか。  他サイトでも公開中

みんなからバカにされたユニークスキル『宝箱作製』 ~極めたらとんでもない事になりました~

黒色の猫
ファンタジー
 両親に先立たれた、ノーリは、冒険者になった。 冒険者ギルドで、スキルの中でも特に珍しいユニークスキル持ちでがあることが判明された。 最初は、ユニークスキル『宝箱作製』に期待していた周りの人たちも、使い方のわからない、その能力をみて次第に、ノーリを空箱とバカにするようになっていた。 それでも、ノーリは諦めず冒険者を続けるのだった… そんなノーリにひょんな事から宝箱作製の真の能力が判明して、ノーリの冒険者生活が変わっていくのだった。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...