このやってられない世界で

みなせ

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 ブレスレットの話の後、話し合いは、オンリンナ家の周囲や使用人たちの話になった。
 私がアーサーたちと話している間に、オンリンナ家の使用人たちの方から接触があったらしい。
 まぁ、立派な馬車がやってきたんだから気になるのは分かるけど、どの人も聞きもしないのにあることないこと、ぺらぺらと喋りまくったと言うから驚きだ。
 それも入れ替わり立ち替わり。
 でも、そのおかげでリーナが帰ってくることが分かったし、その人たちの話からアーサーが夜と言った時間をある程度割り出すことができた。
 で、その時間まで解散と言うことになったんだけど。
 話し合いが終わって、もうどのくらいたったのか。

 とりあえず、カークが離してくれません。

「カーク、そろそろ離してくれませんか?」

 ため息まじりに、何度目かになるセリフを言ってみる。
 ぼんやりと宙を見ているカークは、あぁ、と返事はするものの、結局またぼんやりしてしまい、私の声がちゃんと届いているかどうかすら疑問だ。
 何か考えているのか、見たままの状態なのか……話しかけても上の空で、判断がつかない。
 逃げ出そうにも腰に回った手がかなり強固で、頑張ってはがそうとしたけど無理だった。

 私も一度部屋に戻りたいんだけどなぁ。

「カーク、本当にそろそろ離してほしいんだけど」

 もう一回言って、カークを見上げる。
 その顔を見ていたら、なんだかムカついてきたので、そのほっぺたをつねって引っ張ってみた。

「痛い」

 ムッとした顔で、ようやくこっちを見たので、もう一度要求を言う。

「正気に戻ったなら、手を放しください。殿下」

 カークがため息をついた! おいっ!

「キーラ、前にも聞いたけど、これからどうしたい?」

 突っ込みを入れるタイミングで、カークが問う。

「……これから?」

 私は、もう、普通に生活が出来ればいいんですが。

「何もないなら、家を取り戻して学園に通う、だろ?」
「うん」

 その通りです。

「でも、それだけで終わらないよね。きっと。リーナ達を追い出すのだって大変そうだし……」
「あぁ、それで、どちらがいいのかと思って」
「どっちがいいって?」
「リーナ達を追い出してから学園へ行くか、リーナ達との問題を片付けてから学園へ行くか……」
「それは……」

 確かに、どっちがいいんだろう?

「……学園って、今どうなってるのかな?」
「特に問題はないようだ。キーラのことは、オンリンナ家から体調不良で休むと言う連絡が行っていたみたいだ。さっきの話だと、きっと家令が連絡していたのだろう」

 流石、アーサー。

「じゃあ、通うのは問題ないんだ」
「大丈夫だ。ただ、キーラは一般クラスだ。担任はジョシュア。クラス替えの申請を出しても一月はかかる」
「クラス替えって、誰の?」
「当然キーラだ。私のいるクラスへ移動させたい」
「今更?」
「一般クラスは遠すぎる。何かあってもすぐに駆けつけられない」

 別棟だから、それはそうだけど。

「流石に学園内なら……」
「キーラ、君はデリックに殴られ、フランクに死にそうな目にあわせられたこともう忘れてるのか?」

 そうでした……そう言えば、それって学園で起こったことでした。
 忘れていたわけじゃ……ナイヨ……それより衝撃的なことがありすぎるのが悪い!
 カークが、残念なものを見る目になった。
 そして、さっきよりさらに大きなため息をついた。

「……少し、簡単に考え過ぎていたみたいだ。キーラのことも、予言のことも」
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