このやってられない世界で

みなせ

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 呆れて言葉も出ないまま、朝の散歩は終わった。
 私が歩きながら寝ると言う、考えられない状態になったせいだ。
 目を覚ましたらソファーの上で、当然だけどケビンの姿は無かった。

 自分の鞄から鏡を出して、ピアスを見ると綺麗な青色をしていた。
 目を覚ました直後だから、これが体力全開の状態なのだろう。
 確かに今は眠くない。
 眠くなった時、どんな色になっているのか分からないけど、いちいち誰かにチェックしてもらうより、自分で見たほうがいい。よし、これからは鏡を持ち歩こう。
 それにしても、ちょっと歩いただけで寝ちゃうなんて、体力がないとかじゃなくもう病気なんじゃないだろうか?

 ため息をついて、時計を見るとお昼よりちょっと前だった。
 アリーダさんを呼ぶのも気がひけるので、外の様子をうかがおうと扉を開けると、デリックが立っていた。

「あ、目が覚めましたか?」

 デリックはいつも笑顔だな、なんて思いながら、頷く。

「たった今目が覚めました。ところで、ケビンはどこへ行ったか分かる?」
「キーラ嬢のことを相談しに自宅へ向かいました。ピーちゃんも連れてくるからとの伝言です」
「そう……ありがとう」
「午後、動けそうですか?」

 心配そうに、デリックが言った。

「大丈夫。眠くなる以外はどこもなんともない、と思うんだけど」
「急に眠くなるのですか?」
「そうみたい、変だよね」

 そう肩をすくめると、アリーダさんが通路の向こうから現れた。

「あらあら、お嬢様、お目覚めでしたか?」

 扉の前でデリックと同じような会話をして、お昼ごはんの話になった。
 今度はデリックと一緒に食べることになり、ケビンよりも多い皿数が運ばれてきたのを見て三度見くらいした。

「アリーダさん、カークからお茶会があるって聞いたんですけど」

 アリーダさんがお茶を準備してくれているのを見て、カークの言葉を思い出した。
 お茶会の作法とか聞いておかないと。

「はい、伺っていますよ。準備はお任せください」

 それは心配していないけど。

「ありがとうございます。でも作法、とか?」
「ご心配ですか?」
「お茶会なんて一度も出たことが無いので、どんな感じなのか分からないのは心配です」
「では後で誰か分かるものをよこしますね」
「お願いします」
「キーラ嬢、お茶会に行くのですか?」

 不思議そうにデリックが聞いてきた。

「そうみたい。王妃様からのご招待で……」
「あぁ、王妃様、お茶会大好きですからね」
「そうなの?」
「そうです。家の母も良く招待されています」
「へぇ、そうなんだ」

 思ったより気楽にしていてもいいのかな?

「流行りのお菓子が出るから楽しいって言っていました」
「流行りのお菓子かぁ、それを聞いたら少し楽しみになってきた」
「殿下も一緒なら、大丈夫ですよ」
「え?」

 それ、どう言う意味?――――とは聞けなかった。

























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

明日の更新はお休みします。
次回更新は7月24日になります。

次回もよろしくお願いします。
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