このやってられない世界で

みなせ

文字の大きさ
上 下
90 / 336

90

しおりを挟む
 呆れて言葉も出ないまま、朝の散歩は終わった。
 私が歩きながら寝ると言う、考えられない状態になったせいだ。
 目を覚ましたらソファーの上で、当然だけどケビンの姿は無かった。

 自分の鞄から鏡を出して、ピアスを見ると綺麗な青色をしていた。
 目を覚ました直後だから、これが体力全開の状態なのだろう。
 確かに今は眠くない。
 眠くなった時、どんな色になっているのか分からないけど、いちいち誰かにチェックしてもらうより、自分で見たほうがいい。よし、これからは鏡を持ち歩こう。
 それにしても、ちょっと歩いただけで寝ちゃうなんて、体力がないとかじゃなくもう病気なんじゃないだろうか?

 ため息をついて、時計を見るとお昼よりちょっと前だった。
 アリーダさんを呼ぶのも気がひけるので、外の様子をうかがおうと扉を開けると、デリックが立っていた。

「あ、目が覚めましたか?」

 デリックはいつも笑顔だな、なんて思いながら、頷く。

「たった今目が覚めました。ところで、ケビンはどこへ行ったか分かる?」
「キーラ嬢のことを相談しに自宅へ向かいました。ピーちゃんも連れてくるからとの伝言です」
「そう……ありがとう」
「午後、動けそうですか?」

 心配そうに、デリックが言った。

「大丈夫。眠くなる以外はどこもなんともない、と思うんだけど」
「急に眠くなるのですか?」
「そうみたい、変だよね」

 そう肩をすくめると、アリーダさんが通路の向こうから現れた。

「あらあら、お嬢様、お目覚めでしたか?」

 扉の前でデリックと同じような会話をして、お昼ごはんの話になった。
 今度はデリックと一緒に食べることになり、ケビンよりも多い皿数が運ばれてきたのを見て三度見くらいした。

「アリーダさん、カークからお茶会があるって聞いたんですけど」

 アリーダさんがお茶を準備してくれているのを見て、カークの言葉を思い出した。
 お茶会の作法とか聞いておかないと。

「はい、伺っていますよ。準備はお任せください」

 それは心配していないけど。

「ありがとうございます。でも作法、とか?」
「ご心配ですか?」
「お茶会なんて一度も出たことが無いので、どんな感じなのか分からないのは心配です」
「では後で誰か分かるものをよこしますね」
「お願いします」
「キーラ嬢、お茶会に行くのですか?」

 不思議そうにデリックが聞いてきた。

「そうみたい。王妃様からのご招待で……」
「あぁ、王妃様、お茶会大好きですからね」
「そうなの?」
「そうです。家の母も良く招待されています」
「へぇ、そうなんだ」

 思ったより気楽にしていてもいいのかな?

「流行りのお菓子が出るから楽しいって言っていました」
「流行りのお菓子かぁ、それを聞いたら少し楽しみになってきた」
「殿下も一緒なら、大丈夫ですよ」
「え?」

 それ、どう言う意味?――――とは聞けなかった。

























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

明日の更新はお休みします。
次回更新は7月24日になります。

次回もよろしくお願いします。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました

土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。 神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。 追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。 居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。 小説家になろうでも公開しています。 2025年1月18日、内容を一部修正しました。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜

トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦 ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが 突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして 子供の身代わりに車にはねられてしまう

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています

真理亜
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら...モブですらないちみっこでした。 なのに何故か攻略対象者達や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています。 更に更に変態銀髪美女メイドや変態数学女教師まで現れてもう大変!  変態が大変だ! いや大変な変態だ! お前ら全員ロ○か!? ロ○なんか!? ロ○やろぉ~! しかも精霊の愛し子なんて言われちゃって精霊が沢山飛んでる~! 身長130cmにも満たないちみっこヒロイン? が巻き込まれる騒動をお楽しみ下さい。 操作ミスで間違って消してしまった為、再掲しております。ブックマークをして下さっていた方々、大変申し訳ございません。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

処理中です...