このやってられない世界で

みなせ

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―――――急に、目が覚めた。

 パチッて目が開いて、見慣れた天井が見えた。
 天井? 違う、天蓋だ。

―――――そこは、やっぱりあの部屋だった。

 眠っている間に泣いていたんだろう。
 目の縁がねばねばしていて、瞬きしたら上瞼と下瞼はくっつくし、目じりのとこから耳のあたりが涼しくて、ごわごわしていた。

 ゆっくり体を起こすと、食事をするテーブルのところにカークとアリーダさんがいた。
 アリーダさんと目があって、思わず人差し指を唇にあてた。

――――今はカークを見たくない。

 アリーダさんが、少しだけ頷いて目を反らしたので、私は寝返りを打ってももう一度目を閉じた。
 それから、どのくらい眠っていたんだろう。









「お嬢様、お目覚めくださいませ」

 穏やかな、アリーダさんの声で目が覚めた。

「……アリーダさん」
「大丈夫ですか?」

 目を開けると、アリーダさんの心配そうな顔があった。
 まだ頭の中はぼーっとしている。

「……はい、大丈夫です……カークは?」
「お坊ちゃまはお部屋に戻られましたから、大丈夫ですよ」

 にっこりとそう言われて、少し安堵する。

「ごめんなさい、今は、なんとなく顔を合わせたくないんです」
「そうですか……とりあえず、お顔を拭きましょうか?」

 アリーダさんはそういって、体を起こした私に蒸しタオルを渡してくれた。
 いつもは魔法でチャチャッと綺麗にしてくれるんだけど、わざわざ用意してくれるのが心にくい。
 少し熱めのタオルがとても気持ちいい。

「私、どのくらい眠っていましたか?」
「二日ですよ。ちなみに、今は夕方です」
「二日……」
「お食事もお持ちしましたから、少し召し上がってください。お腹もすかれたでしょう?」

 そう言われれば、確かにお腹がすいているような気がする。
 眠る前は、ジュース一杯だったもんね。
 すでに、テーブルには具だくさんのスープとテリーヌ、くだもの、ジュースが用意されていた。
 ちまちまとスプーンを運んでいると、スープの中にチキンを見つけて思い出した。

「アリーダさん、ピーちゃんはまた厨房ですか?」
「鳥様は、最近はケビン様と行動なさっていますよ」
「ここにいないんですか?」
「今はいらっしゃいませんよ。明日、ケビン様と一緒にいらっしゃると思います」

 いつの間にか、飼い主が変わったのかな?
 なんか一抹の寂しさを感じる。

「カークは、何か言っていましたか?」
「お坊ちゃまは……お嬢様を心配なさっていらっしゃいましたよ」

 ですよね。
 カークを思い浮かべながら、スプーンでスープをかき回す。

「お嬢様。食事が終わったら、お風呂にでもはいられますか?」

 暫くそうしていたら、アリーダさんが不意にそんなことを言った。

「お風呂?」
「はい、カーラ様が言っていました。疲れた時は風呂に浸かるのが一番だって」
「そうなんですか?」
「私も、カーラ様から聞いてから、疲れた時とか一人になりたい時はお風呂に入るんです……すぐ用意しますよ」

 そう言えば、こっちの世界に来てからお風呂って入っていない。湯船らしきものは見かけたけど、いつもシャワーかアリーダさんの魔法かだった。
 あっちのことを思い出して、お風呂と聞くと入りたくなるのは何故だろう。

「じゃあ……お願いします」

 アリーダさんは笑顔で頷いてくれた。

























――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

更新遅くなりすみません。
予約投稿設定忘れていました。

次回もよろしくお願いします。
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