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70 -夢-
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※※事故および死の記載があります。※※
※※※苦手な方はご注意ください。※※※
お母さん側のおばあちゃんのところに行くと、いつも聞かせられる話がある。
一つは、お父さんとお母さんの話。
お父さんとお母さんは会社の同僚だった。
同じ年の入社で、同じ部署になって、初めての忘年会の幹事を一緒にして、いつの間にか恋人同士になった。
三年くらい付き合って、お父さんは、お母さんの誕生日に初めて一緒に幹事をした時のお店でプロポーズした。
お互いの両親も、ちょうどいい歳だって、すごく祝福してくれて、その半年後に結婚式をして、二人ともそれまで一度も海外に行ったことが無かったから、新婚旅行はハワイに行った。
結婚と同時に、お母さんは会社を辞めて、会社に近い場所にアパートを借りて、二人で暮らしを始めて、それから一年後、私が生まれた。
こんな話を、私は寝物語にされていた。
これはいいんだ。
話の合間に、私の知らないお母さんの話が聞けるから。
それに、その話をお父さんに話すと凄く照れて、怒ったり無言になったり泣きだしたり、いつもすごく面白かった。
でもその後に、続く話は嫌だった。
おばあちゃんは、いつも、こう始める。
それは春だったんだよ――――って。
長い長いおばあちゃんの一人語りを要約すると、
それは、私が生まれて初めての春だった。
お母さんは、私をベビーカーに乗せて近くの公園に連れて行った。
いつも使っている道だったけど、公園までのその道は少し狭くて、大通りと大通りとの抜け道にもなっていて、一方通行だからとスピードを落とさないまま突っ切る車も多く、危険だと町内会でも問題になっていたらしい。
その日は少し温かくて、大通りがいつもより混んでいた。
当然その道を通る車も多くて、その道に面しているお家の人はみんな今日は危ないなって思っていた。
何年かに一回あるそう言う日は、事故が多い――――町内あるあるだよね。
いつものようにベビーカーを押して、その道を進んでいたお母さんは、後ろから来た暴走車に気がつかなかった。いつものことだったから、気にしなかったのかもしれない。
そして運悪く、その日は春の強い風が吹いていて、自動車の音が聞こえなかったって、近くのお家の人が言っていた。
そして、その暴走車は、何故かお母さん以外誰も歩いていないその道で、お母さんにまっすぐ突っ込んだ。
私は、ベビーカーに乗っていたおかげで運よく前に押し出されて、車の直撃から逃れられたらしい。
運転していた人は、アクセルとブレーキを間違えたって、言っていたんだって。
誰も責めていないその話をすることで、おばあちゃんはとても満足そうだった。
でも、なんとなくもやもやする。
きっとどっかに、何かが隠れていたんだと思う。
おばあちゃんたちは、私のことを凄く心配してくれた。
お母さんは一人っ子だったから、たった一人の孫の私が大事だったんだと思う。
だから絶対事故あわないようにって、気をつけるようにって言いながら、何度も何度もその話を私にした。
お父さんはその話を私にする、おばあちゃんたちが嫌いだった。
私に会いたくなければ会わなくていいんだよって、何度も言ってくれた。
自分を心配してくれるからと思っていたけど、ある日、お父さんにひどいことを言っているのを聞いて、もう会わない、と決めたんだ。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
もう一話、前世のお話です。
お付き合いお願いします。
次回もよろしくお願いします。
※※※苦手な方はご注意ください。※※※
お母さん側のおばあちゃんのところに行くと、いつも聞かせられる話がある。
一つは、お父さんとお母さんの話。
お父さんとお母さんは会社の同僚だった。
同じ年の入社で、同じ部署になって、初めての忘年会の幹事を一緒にして、いつの間にか恋人同士になった。
三年くらい付き合って、お父さんは、お母さんの誕生日に初めて一緒に幹事をした時のお店でプロポーズした。
お互いの両親も、ちょうどいい歳だって、すごく祝福してくれて、その半年後に結婚式をして、二人ともそれまで一度も海外に行ったことが無かったから、新婚旅行はハワイに行った。
結婚と同時に、お母さんは会社を辞めて、会社に近い場所にアパートを借りて、二人で暮らしを始めて、それから一年後、私が生まれた。
こんな話を、私は寝物語にされていた。
これはいいんだ。
話の合間に、私の知らないお母さんの話が聞けるから。
それに、その話をお父さんに話すと凄く照れて、怒ったり無言になったり泣きだしたり、いつもすごく面白かった。
でもその後に、続く話は嫌だった。
おばあちゃんは、いつも、こう始める。
それは春だったんだよ――――って。
長い長いおばあちゃんの一人語りを要約すると、
それは、私が生まれて初めての春だった。
お母さんは、私をベビーカーに乗せて近くの公園に連れて行った。
いつも使っている道だったけど、公園までのその道は少し狭くて、大通りと大通りとの抜け道にもなっていて、一方通行だからとスピードを落とさないまま突っ切る車も多く、危険だと町内会でも問題になっていたらしい。
その日は少し温かくて、大通りがいつもより混んでいた。
当然その道を通る車も多くて、その道に面しているお家の人はみんな今日は危ないなって思っていた。
何年かに一回あるそう言う日は、事故が多い――――町内あるあるだよね。
いつものようにベビーカーを押して、その道を進んでいたお母さんは、後ろから来た暴走車に気がつかなかった。いつものことだったから、気にしなかったのかもしれない。
そして運悪く、その日は春の強い風が吹いていて、自動車の音が聞こえなかったって、近くのお家の人が言っていた。
そして、その暴走車は、何故かお母さん以外誰も歩いていないその道で、お母さんにまっすぐ突っ込んだ。
私は、ベビーカーに乗っていたおかげで運よく前に押し出されて、車の直撃から逃れられたらしい。
運転していた人は、アクセルとブレーキを間違えたって、言っていたんだって。
誰も責めていないその話をすることで、おばあちゃんはとても満足そうだった。
でも、なんとなくもやもやする。
きっとどっかに、何かが隠れていたんだと思う。
おばあちゃんたちは、私のことを凄く心配してくれた。
お母さんは一人っ子だったから、たった一人の孫の私が大事だったんだと思う。
だから絶対事故あわないようにって、気をつけるようにって言いながら、何度も何度もその話を私にした。
お父さんはその話を私にする、おばあちゃんたちが嫌いだった。
私に会いたくなければ会わなくていいんだよって、何度も言ってくれた。
自分を心配してくれるからと思っていたけど、ある日、お父さんにひどいことを言っているのを聞いて、もう会わない、と決めたんだ。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
もう一話、前世のお話です。
お付き合いお願いします。
次回もよろしくお願いします。
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