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命は無事だったけど、精神を削られながら、二日が過ぎた。
三日目の朝、いつものように現れたカークの隣には、紺色の髪に金色の瞳の攻略対象者、ケビン・ヒュフラーが立っていた。
ベッドの上でピーちゃんと、アリーダさんと朝食を待っていた私は、大慌てだ。
まだパジャマだったし。
「キーラ、この間言っておいたケビンだ。フランクから魔力をキーラに移す魔法を手伝ってもらう。って、まだ着替えてなかったのか?」
急に顔をしかめてるけど、私、着替えどこにあるか知らないし!
だいたい時計もないし、カーク以外の人が来るのも知らないし!
「ケビン、すまない、準備させるから下で待っててくれ」
カークがそう言って、私を隠すようにケビンの前に立つも、もうしっかり見られてるでしょ。
ケビンは無表情のまま観察するように私を見て、それから部屋の中を舐めるように見回した。
「ケビン?」
なかなか動こうとしないケビンにカークが声をかける。
「殿下、下に行くなら一緒に、少しお話が」
ケビンは、私にもわかるようにため息をついて、ようやくそう体を動かした。
「あぁ、わかった。キーラ、アリーダにすぐ来るよう言っておくから、食事と着替えをしておいてくれ」
「はい」
……なんか嫌な目だなぁ、と思いながらおとなしく返事をして、二人を見送る。
「びっくりした!」
扉が閉まるのを確認して、そうベッドに倒れこむ。
ピーちゃんが布団の下からもぞもぞと出てきて、私の顔に向かって走ってきた。
「ホント二! タベラレルカト、オモッタ!」
「そうだよね! 怖かったよね! あの人絶対私のこと嫌いだよね!」
矢継ぎ早にそう言うと、ピーちゃんは震えながらうんうんと縦に頭を振る。
「アレ、オマエ二、ゼッタイ、ナニカスル!」
「何かって、今度は何!?」
「ソレハ……………ワカラナイ…………デモ、キット、アイツ、ナニカスル……コレ、カン」
ぐりぐりと私の顎に頭をすりつけながら、ピーちゃんが言う。
「……ピーちゃんのカン、当たったことある?」
「……ナイ」
って、無いんかい!
「イママデ、カン、ツカウ、ナカッタ。デモ、オマエ、オソワレタトキ、オナジ、カンジスル」
「襲われた時って、図書館の時?」
「ソウ。フンイキ、ニテイル」
「フランクはリーナのために私を襲ったみたいだったよ。ケビンもリーナよりなのかな? カークの仲間じゃないのかな?」
カークはケビンがリーナに落ちたとは言わなかったし。
「オレ、リーナ、シラナイ、オマエ、ネラウ、ワカラナイ、アイツ、オマエ、キライ」
「嫌い、だよね。リーナ関係なく、そっちかな? カークはケビンを魔法馬鹿って言ってたけど」
「マホウバカ……」
ピーちゃんがそう繰り返し、ブルッと体を震わす。そして無理矢理私の手の中に体をねじ込みながら、親指を甘噛みした。
「……オマエ、デカケル、オレ、ワスレルナ」
「忘れるなって……そう言いながらいつも側にいないじゃない」
くりくりとそのほっぺたをなでながらそう言う。
この部屋にいる間、殆どピーちゃんを見ていない。
「コノヘヤ、カーク、マモル。オレ、チカラ、ヨワマル、ソレニ」
「?」
「バカップル、メノヤリバ、コマル」
「!? ピーちゃん、やっぱり貴方ただの鳥じゃない! それに私とカークはそんなんじゃないし!」
「ビッ!」
「―――痛ッ!」
思わずピーちゃんを握りつぶすところだった。慌てて手を緩めたけど、ピーちゃんは思い切り私を噛んだ。
「オマエ、チョロイ! オマエ、スグダマサレル! キケン!」
ビービー鳴きながら、ピーちゃんが叫ぶ。
返す言葉もないです。
「イイカ、オレ、ワスレルナ! ゼッタイ!」
「……分かった。絶対忘れない。でもピーちゃん、ピーちゃんもちゃんと側にいてよ!」
「ゼンショ、スル」
ピーちゃんがそう言ってうなだれた。
肉につられてどっかにいかないことを祈るばかりだ。
三日目の朝、いつものように現れたカークの隣には、紺色の髪に金色の瞳の攻略対象者、ケビン・ヒュフラーが立っていた。
ベッドの上でピーちゃんと、アリーダさんと朝食を待っていた私は、大慌てだ。
まだパジャマだったし。
「キーラ、この間言っておいたケビンだ。フランクから魔力をキーラに移す魔法を手伝ってもらう。って、まだ着替えてなかったのか?」
急に顔をしかめてるけど、私、着替えどこにあるか知らないし!
だいたい時計もないし、カーク以外の人が来るのも知らないし!
「ケビン、すまない、準備させるから下で待っててくれ」
カークがそう言って、私を隠すようにケビンの前に立つも、もうしっかり見られてるでしょ。
ケビンは無表情のまま観察するように私を見て、それから部屋の中を舐めるように見回した。
「ケビン?」
なかなか動こうとしないケビンにカークが声をかける。
「殿下、下に行くなら一緒に、少しお話が」
ケビンは、私にもわかるようにため息をついて、ようやくそう体を動かした。
「あぁ、わかった。キーラ、アリーダにすぐ来るよう言っておくから、食事と着替えをしておいてくれ」
「はい」
……なんか嫌な目だなぁ、と思いながらおとなしく返事をして、二人を見送る。
「びっくりした!」
扉が閉まるのを確認して、そうベッドに倒れこむ。
ピーちゃんが布団の下からもぞもぞと出てきて、私の顔に向かって走ってきた。
「ホント二! タベラレルカト、オモッタ!」
「そうだよね! 怖かったよね! あの人絶対私のこと嫌いだよね!」
矢継ぎ早にそう言うと、ピーちゃんは震えながらうんうんと縦に頭を振る。
「アレ、オマエ二、ゼッタイ、ナニカスル!」
「何かって、今度は何!?」
「ソレハ……………ワカラナイ…………デモ、キット、アイツ、ナニカスル……コレ、カン」
ぐりぐりと私の顎に頭をすりつけながら、ピーちゃんが言う。
「……ピーちゃんのカン、当たったことある?」
「……ナイ」
って、無いんかい!
「イママデ、カン、ツカウ、ナカッタ。デモ、オマエ、オソワレタトキ、オナジ、カンジスル」
「襲われた時って、図書館の時?」
「ソウ。フンイキ、ニテイル」
「フランクはリーナのために私を襲ったみたいだったよ。ケビンもリーナよりなのかな? カークの仲間じゃないのかな?」
カークはケビンがリーナに落ちたとは言わなかったし。
「オレ、リーナ、シラナイ、オマエ、ネラウ、ワカラナイ、アイツ、オマエ、キライ」
「嫌い、だよね。リーナ関係なく、そっちかな? カークはケビンを魔法馬鹿って言ってたけど」
「マホウバカ……」
ピーちゃんがそう繰り返し、ブルッと体を震わす。そして無理矢理私の手の中に体をねじ込みながら、親指を甘噛みした。
「……オマエ、デカケル、オレ、ワスレルナ」
「忘れるなって……そう言いながらいつも側にいないじゃない」
くりくりとそのほっぺたをなでながらそう言う。
この部屋にいる間、殆どピーちゃんを見ていない。
「コノヘヤ、カーク、マモル。オレ、チカラ、ヨワマル、ソレニ」
「?」
「バカップル、メノヤリバ、コマル」
「!? ピーちゃん、やっぱり貴方ただの鳥じゃない! それに私とカークはそんなんじゃないし!」
「ビッ!」
「―――痛ッ!」
思わずピーちゃんを握りつぶすところだった。慌てて手を緩めたけど、ピーちゃんは思い切り私を噛んだ。
「オマエ、チョロイ! オマエ、スグダマサレル! キケン!」
ビービー鳴きながら、ピーちゃんが叫ぶ。
返す言葉もないです。
「イイカ、オレ、ワスレルナ! ゼッタイ!」
「……分かった。絶対忘れない。でもピーちゃん、ピーちゃんもちゃんと側にいてよ!」
「ゼンショ、スル」
ピーちゃんがそう言ってうなだれた。
肉につられてどっかにいかないことを祈るばかりだ。
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