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熟考して、動くなとは言われたけれど、部屋から出てみることにした。
扉は何のためにそんな風なのか分からないが、壁紙にまぎれて発見しにくくなっている。だが、位置はこの間、アリーダさんが出て行く所をみているので、大体分かる。
―――よし、いざ出陣!
ベッドから降りてまっすぐ扉がある辺りを目指す。
全く継ぎ目の見えない壁紙を良く見ると、壁紙の模様に隠されるように黒い珠がついていた。自室のランプと同じような感じだ。
「これがカギ、かな?」
そっと人差し指で触れると、体のどこかから魔力が抜けて行き、スッと目の前の壁が消えた。
「おお、開いた!」
四角く切り取られた壁の向こうには、同じような絨毯が敷かれた廊下が続いている。
「キーラ様、どうかなさいましたか?」
ゆっくり一歩を踏み出すと同時に、そう声をかけられた。
あぁ、なんか聞いた声だとそちらを見ると、やっぱりデリックが立っていた。
学園の制服じゃなく、ダリルが着ていたのと同じアディソン家の騎士服だ。
赤い髪に白い服が妙な感じ。まぁ、顔はいいから似合ってはいるけど……。
「アディソン様……どうしてここに?」
「私は見習いですが殿下の護衛ですから。それにキーラ様が倒れた時お側にいましたので、そのままこちらで警護にあたっています」
カークの学友兼護衛だから、それはそうなんだろうけど、ここにカークはいないよ。警護ならカークについて歩かなくていいの? なんで人の部屋の前に立ってるんだ、という素朴な疑問が頭に浮かぶ。
「アディソン様、あの」
「キーラ様、これから先アディソン家は貴方の警護に当たることになります。その時は父と兄も共に動くと思いますので、次から私のことはデリックとお呼びください」
言いながら、すいっと何気なく私の進路をふさいでくる。
おい、それは、ここから出るなってことか?
「何で私の警護?」
「キーラ様は殿下のご婚約者ですから」
あー確かにカークがそんなこと言ってたな。でもあれは。
「それより、何か御用ですか?」
仮ですからと言いたくて口を開いた途端、にっこりと笑顔になったデリックに遮られた。
もうその話をする気はないらしい。
「えーっと、カークかアリーダさんに会いたいんだけど」
「殿下ですね。部屋に戻ってお待ちください。すぐいらっしゃると思いますので」
仕方なく要件を言うと、デリックは手で部屋の中を指し示し、私に戻るよう促す。
「キーラ!」
せっかく部屋から出られたのにと思っていたら、カークの声がどこかから聞こえた。
デリックがまたすっと私の前から体を寄せると、そこに走りこんでくるカークの姿。
ホントに来たよ。
「動くなと言ったろう? 君は何をしているんだ!」
怒鳴られながら、あっさり捕獲される。
あばれようかとも思ったけど、カークの真剣な顔が怖いので、おとなしく要望を言うことにする。
「勝手に動いたのは悪いと思うけど、お腹もすいたし、聞きたいこともあったし、でもどうやって人を呼んだらいいかも分からなかったから……」
「あぁ、それは悪かった。すぐ用意させる。他には?」
「私の鞄ってどうなったか知りたいのと、ピーちゃんはどこ?」
「鞄はこちらで保管してある。後で持ってこよう。ピーちゃんは……」
「厨房にいましたよ」
カークの代わりにデリックが答えた。
え、厨房って、普通生き物立ち入り禁止でしょう?
「呼べばいいのか?」
「できれば、お願いします」
「デリック、ピーちゃんを呼んで来い。ここは私が付いている」
カークが言うと、デリックは背を向けて行ってしまった。
小脇に抱えられてベッドに戻される。
「放置して悪かった。アリーダとも話し合ったんだが元気になってきたようだし、二・三日中に次の段階に進めようと思っている」
「次の段階?」
「今キーラを動かしているのは私の魔力だ。一週間以上たっているから多少キーラ自身の魔力も戻ってきているとは思うが多分すぐまた足りなくなると思う」
「はぁ」
さっぱり言っていることが分からないが、相槌を打つ。
「今、キーラの魔力のほとんどはフランクが持っている。フランクはジャニアス家の地下牢でケビンが見張っている」
「フランク……ケビン……」
「知らないか。フランクは図書館でキーラを襲った奴で、ケビンは魔法馬鹿だ」
どちらも攻略対象者だよね。宰相と魔法師団長の子供。
「それ、全然説明になっていないと思う」
「……会った時ちゃんと紹介する。とにかく次の段階は、フランクからキーラの魔力を切り離しキーラに戻し、私の魔力は私に戻るようにするんだ」
「戻すことって簡単にできるの?」
「まぁ、なんとかなるだろう」
「え」
何その適当な感じ……。
「前例がないから、分からないが、多分大丈夫だろう」
「多分」
「心配するな。もし戻らなかったら私が責任をもって一生キーラに魔力を捧げ続けるから」
カークがいいことを思いついたと言うように言ったけど、
……マジ、いらないから。
扉は何のためにそんな風なのか分からないが、壁紙にまぎれて発見しにくくなっている。だが、位置はこの間、アリーダさんが出て行く所をみているので、大体分かる。
―――よし、いざ出陣!
ベッドから降りてまっすぐ扉がある辺りを目指す。
全く継ぎ目の見えない壁紙を良く見ると、壁紙の模様に隠されるように黒い珠がついていた。自室のランプと同じような感じだ。
「これがカギ、かな?」
そっと人差し指で触れると、体のどこかから魔力が抜けて行き、スッと目の前の壁が消えた。
「おお、開いた!」
四角く切り取られた壁の向こうには、同じような絨毯が敷かれた廊下が続いている。
「キーラ様、どうかなさいましたか?」
ゆっくり一歩を踏み出すと同時に、そう声をかけられた。
あぁ、なんか聞いた声だとそちらを見ると、やっぱりデリックが立っていた。
学園の制服じゃなく、ダリルが着ていたのと同じアディソン家の騎士服だ。
赤い髪に白い服が妙な感じ。まぁ、顔はいいから似合ってはいるけど……。
「アディソン様……どうしてここに?」
「私は見習いですが殿下の護衛ですから。それにキーラ様が倒れた時お側にいましたので、そのままこちらで警護にあたっています」
カークの学友兼護衛だから、それはそうなんだろうけど、ここにカークはいないよ。警護ならカークについて歩かなくていいの? なんで人の部屋の前に立ってるんだ、という素朴な疑問が頭に浮かぶ。
「アディソン様、あの」
「キーラ様、これから先アディソン家は貴方の警護に当たることになります。その時は父と兄も共に動くと思いますので、次から私のことはデリックとお呼びください」
言いながら、すいっと何気なく私の進路をふさいでくる。
おい、それは、ここから出るなってことか?
「何で私の警護?」
「キーラ様は殿下のご婚約者ですから」
あー確かにカークがそんなこと言ってたな。でもあれは。
「それより、何か御用ですか?」
仮ですからと言いたくて口を開いた途端、にっこりと笑顔になったデリックに遮られた。
もうその話をする気はないらしい。
「えーっと、カークかアリーダさんに会いたいんだけど」
「殿下ですね。部屋に戻ってお待ちください。すぐいらっしゃると思いますので」
仕方なく要件を言うと、デリックは手で部屋の中を指し示し、私に戻るよう促す。
「キーラ!」
せっかく部屋から出られたのにと思っていたら、カークの声がどこかから聞こえた。
デリックがまたすっと私の前から体を寄せると、そこに走りこんでくるカークの姿。
ホントに来たよ。
「動くなと言ったろう? 君は何をしているんだ!」
怒鳴られながら、あっさり捕獲される。
あばれようかとも思ったけど、カークの真剣な顔が怖いので、おとなしく要望を言うことにする。
「勝手に動いたのは悪いと思うけど、お腹もすいたし、聞きたいこともあったし、でもどうやって人を呼んだらいいかも分からなかったから……」
「あぁ、それは悪かった。すぐ用意させる。他には?」
「私の鞄ってどうなったか知りたいのと、ピーちゃんはどこ?」
「鞄はこちらで保管してある。後で持ってこよう。ピーちゃんは……」
「厨房にいましたよ」
カークの代わりにデリックが答えた。
え、厨房って、普通生き物立ち入り禁止でしょう?
「呼べばいいのか?」
「できれば、お願いします」
「デリック、ピーちゃんを呼んで来い。ここは私が付いている」
カークが言うと、デリックは背を向けて行ってしまった。
小脇に抱えられてベッドに戻される。
「放置して悪かった。アリーダとも話し合ったんだが元気になってきたようだし、二・三日中に次の段階に進めようと思っている」
「次の段階?」
「今キーラを動かしているのは私の魔力だ。一週間以上たっているから多少キーラ自身の魔力も戻ってきているとは思うが多分すぐまた足りなくなると思う」
「はぁ」
さっぱり言っていることが分からないが、相槌を打つ。
「今、キーラの魔力のほとんどはフランクが持っている。フランクはジャニアス家の地下牢でケビンが見張っている」
「フランク……ケビン……」
「知らないか。フランクは図書館でキーラを襲った奴で、ケビンは魔法馬鹿だ」
どちらも攻略対象者だよね。宰相と魔法師団長の子供。
「それ、全然説明になっていないと思う」
「……会った時ちゃんと紹介する。とにかく次の段階は、フランクからキーラの魔力を切り離しキーラに戻し、私の魔力は私に戻るようにするんだ」
「戻すことって簡単にできるの?」
「まぁ、なんとかなるだろう」
「え」
何その適当な感じ……。
「前例がないから、分からないが、多分大丈夫だろう」
「多分」
「心配するな。もし戻らなかったら私が責任をもって一生キーラに魔力を捧げ続けるから」
カークがいいことを思いついたと言うように言ったけど、
……マジ、いらないから。
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