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「リーナは予言どおりに動いていた。ジョシュア、フランク、デリックはあっという間に彼女の手中に落ちた。見事な手際だった。知らなければあんなにも簡単に人は落とされるのかと感心したよ」
「カークは、落ちなかったの?」
「当たり前だろう? 何故私があんな女に落ちなければならないんだ?」
カークはそう目を見開いた。少し怒っているみたいだ。
「えーっと」
「知っていたってあんな女はごめんだ」
「どうして? リーナって普通に可愛いでしょ?」
「はぁ? キーラは目が悪いのか? キーラの方がず――――っとかわいいだろ。もし調査がなければ、あんな危うい女に近付くのさえ嫌だった」
「危うい女って」
いやいや、比較対象がおかしいから。
そりゃ、まぁ、キーラだって悪役令嬢ですから、磨けば光ると思うけど、ヒロインのかわいさは正義でしょうよ。
「大体、リーナは侯爵の子じゃない」
またまた爆弾発言来た―!
「ど、どうして」
「侯爵とリーナを同時に見たから、はっきり分かってしまった」
……デスヨネ。見えるんですもんね。
あれ、そんな話、どっかで前も聞いたような気がするけど。誰だっけ?
「じゃあ、リーナは義母の連子ってこと?」
「それは分からない。侯爵夫人に会えばすぐに分かるが。違う気がする」
「え?」
「リーナには魔力がないだろう? 両親は隠しているつもりだけど、この国は魔法を使う国だ。わざわざ魔力のない人間を連れてくるような場所ではない。だからなおさら彼らの目的が分からない。財産狙いかとも思ったが、オンリンナの財産は殆どが王家預かりになっていて動かせないし、侯爵はもうオンリンナの名を使わなくてもいいくらい商人として名をはせている。金があるならフォルナトルより他国の方が暮らしやすいだろう」
「そう、なんだ」
うーん、他国情報はキーラの記憶にも、ゲーム情報にも無いので何とも。
「予言では私がリーナと共にキーラを倒すことになっているが、それも分からない。聖女だとか、聖なる力だとか、おとぎ話みたいな言葉も、何故デリックたちが簡単にあの女に夢中になったのかも、本当に不思議だ」
カークはそう言って頭を振った。
私はその様子をぼんやり見つめていた。
頭の中はごちゃごちゃしてるし、なんか疲れたし。
もしリーナがゲームのヒロインと同じなら、転生者でもそうじゃなくても、望むものは、恋でしょ、素敵な恋。
眉目秀麗な男性陣との、ハラハラドキドキの運命の恋。
【忘却のアビリティ】は、悪役令嬢要素が少ないから、ちょっと燃え上がりにくいのかもしれないけど、恐怖の吊り橋効果は抜群だと思う。
普通に考えれば、乙女ゲームそのものを楽しみたいなんて理由で国を騒がせるなんて、考えられないことだろう。
リーナに聞いたわけじゃないから、本当のところは分からないけど。
そう言えば、なんだっけ。カークがヒロインに攻略される理由って。
「キーラ?」
「はい、ってなにしてるんですか?」
やけに声が近いと思ったら、いつの間にかカークが全身をベッドに乗り上げていた。
「いや、ちょっとキスしようかと思って」
「今日はもう治療はいいです」
「治療じゃなくて……むぐっ」
近付いてきた顔を、動くようになった両手で押しのける。
「そういうの、間にあってるんで、今日はそのままお部屋に戻って、お休みください。そんな顔色だと明日アリーダさんに怒られますよ」
睨みつけながら棒読みで告げると、カークがちょっとムッとした表情になった。
顔を押していた両腕を掴まれ、あっという間にベッドに沈められる。
あぁ、その笑顔が怖い……
ちょっとキャラ変わってませんか?
「キーラ」
名を呼ばれて、私はカークをさらに睨みつけた。
体が元に戻ったら、絶対鍛えてこいつに一発お見舞いしてやる。
ゆっくりとカークの顔が近づいてくる。
あぁ、直視できない!
思わず目を閉じると、かすめるように唇が触れた。そして、そのまま肩に、全身に重さがかかる。
次は何だと身構えたけど、カークに動く様子がない。
「カーク?」
呼びかけながら、ゆっくり目を開けると、カークは私の肩に額をくっつけてぐったりしていた。
そして聞こえてくる、健やかな寝息。
「まさかの、ね、寝落ちですか!?」
がっちり手首は掴まれたままだし、重いし。
「だから部屋に戻れって言ったのに!」
私の叫びが、静かな部屋にコダマした。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
記念すべき(?)50話に!なってしまいました。
おかしい、もっと短い予定だったのに。
設定が微妙な上、
まだまだ続きますが、
ラストまで書けるよう頑張りますので、
お付き合い頂けると幸いです。
次回もよろしくお願いします。
「カークは、落ちなかったの?」
「当たり前だろう? 何故私があんな女に落ちなければならないんだ?」
カークはそう目を見開いた。少し怒っているみたいだ。
「えーっと」
「知っていたってあんな女はごめんだ」
「どうして? リーナって普通に可愛いでしょ?」
「はぁ? キーラは目が悪いのか? キーラの方がず――――っとかわいいだろ。もし調査がなければ、あんな危うい女に近付くのさえ嫌だった」
「危うい女って」
いやいや、比較対象がおかしいから。
そりゃ、まぁ、キーラだって悪役令嬢ですから、磨けば光ると思うけど、ヒロインのかわいさは正義でしょうよ。
「大体、リーナは侯爵の子じゃない」
またまた爆弾発言来た―!
「ど、どうして」
「侯爵とリーナを同時に見たから、はっきり分かってしまった」
……デスヨネ。見えるんですもんね。
あれ、そんな話、どっかで前も聞いたような気がするけど。誰だっけ?
「じゃあ、リーナは義母の連子ってこと?」
「それは分からない。侯爵夫人に会えばすぐに分かるが。違う気がする」
「え?」
「リーナには魔力がないだろう? 両親は隠しているつもりだけど、この国は魔法を使う国だ。わざわざ魔力のない人間を連れてくるような場所ではない。だからなおさら彼らの目的が分からない。財産狙いかとも思ったが、オンリンナの財産は殆どが王家預かりになっていて動かせないし、侯爵はもうオンリンナの名を使わなくてもいいくらい商人として名をはせている。金があるならフォルナトルより他国の方が暮らしやすいだろう」
「そう、なんだ」
うーん、他国情報はキーラの記憶にも、ゲーム情報にも無いので何とも。
「予言では私がリーナと共にキーラを倒すことになっているが、それも分からない。聖女だとか、聖なる力だとか、おとぎ話みたいな言葉も、何故デリックたちが簡単にあの女に夢中になったのかも、本当に不思議だ」
カークはそう言って頭を振った。
私はその様子をぼんやり見つめていた。
頭の中はごちゃごちゃしてるし、なんか疲れたし。
もしリーナがゲームのヒロインと同じなら、転生者でもそうじゃなくても、望むものは、恋でしょ、素敵な恋。
眉目秀麗な男性陣との、ハラハラドキドキの運命の恋。
【忘却のアビリティ】は、悪役令嬢要素が少ないから、ちょっと燃え上がりにくいのかもしれないけど、恐怖の吊り橋効果は抜群だと思う。
普通に考えれば、乙女ゲームそのものを楽しみたいなんて理由で国を騒がせるなんて、考えられないことだろう。
リーナに聞いたわけじゃないから、本当のところは分からないけど。
そう言えば、なんだっけ。カークがヒロインに攻略される理由って。
「キーラ?」
「はい、ってなにしてるんですか?」
やけに声が近いと思ったら、いつの間にかカークが全身をベッドに乗り上げていた。
「いや、ちょっとキスしようかと思って」
「今日はもう治療はいいです」
「治療じゃなくて……むぐっ」
近付いてきた顔を、動くようになった両手で押しのける。
「そういうの、間にあってるんで、今日はそのままお部屋に戻って、お休みください。そんな顔色だと明日アリーダさんに怒られますよ」
睨みつけながら棒読みで告げると、カークがちょっとムッとした表情になった。
顔を押していた両腕を掴まれ、あっという間にベッドに沈められる。
あぁ、その笑顔が怖い……
ちょっとキャラ変わってませんか?
「キーラ」
名を呼ばれて、私はカークをさらに睨みつけた。
体が元に戻ったら、絶対鍛えてこいつに一発お見舞いしてやる。
ゆっくりとカークの顔が近づいてくる。
あぁ、直視できない!
思わず目を閉じると、かすめるように唇が触れた。そして、そのまま肩に、全身に重さがかかる。
次は何だと身構えたけど、カークに動く様子がない。
「カーク?」
呼びかけながら、ゆっくり目を開けると、カークは私の肩に額をくっつけてぐったりしていた。
そして聞こえてくる、健やかな寝息。
「まさかの、ね、寝落ちですか!?」
がっちり手首は掴まれたままだし、重いし。
「だから部屋に戻れって言ったのに!」
私の叫びが、静かな部屋にコダマした。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
記念すべき(?)50話に!なってしまいました。
おかしい、もっと短い予定だったのに。
設定が微妙な上、
まだまだ続きますが、
ラストまで書けるよう頑張りますので、
お付き合い頂けると幸いです。
次回もよろしくお願いします。
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