50 / 336
50
しおりを挟む
「リーナは予言どおりに動いていた。ジョシュア、フランク、デリックはあっという間に彼女の手中に落ちた。見事な手際だった。知らなければあんなにも簡単に人は落とされるのかと感心したよ」
「カークは、落ちなかったの?」
「当たり前だろう? 何故私があんな女に落ちなければならないんだ?」
カークはそう目を見開いた。少し怒っているみたいだ。
「えーっと」
「知っていたってあんな女はごめんだ」
「どうして? リーナって普通に可愛いでしょ?」
「はぁ? キーラは目が悪いのか? キーラの方がず――――っとかわいいだろ。もし調査がなければ、あんな危うい女に近付くのさえ嫌だった」
「危うい女って」
いやいや、比較対象がおかしいから。
そりゃ、まぁ、キーラだって悪役令嬢ですから、磨けば光ると思うけど、ヒロインのかわいさは正義でしょうよ。
「大体、リーナは侯爵の子じゃない」
またまた爆弾発言来た―!
「ど、どうして」
「侯爵とリーナを同時に見たから、はっきり分かってしまった」
……デスヨネ。見えるんですもんね。
あれ、そんな話、どっかで前も聞いたような気がするけど。誰だっけ?
「じゃあ、リーナは義母の連子ってこと?」
「それは分からない。侯爵夫人に会えばすぐに分かるが。違う気がする」
「え?」
「リーナには魔力がないだろう? 両親は隠しているつもりだけど、この国は魔法を使う国だ。わざわざ魔力のない人間を連れてくるような場所ではない。だからなおさら彼らの目的が分からない。財産狙いかとも思ったが、オンリンナの財産は殆どが王家預かりになっていて動かせないし、侯爵はもうオンリンナの名を使わなくてもいいくらい商人として名をはせている。金があるならフォルナトルより他国の方が暮らしやすいだろう」
「そう、なんだ」
うーん、他国情報はキーラの記憶にも、ゲーム情報にも無いので何とも。
「予言では私がリーナと共にキーラを倒すことになっているが、それも分からない。聖女だとか、聖なる力だとか、おとぎ話みたいな言葉も、何故デリックたちが簡単にあの女に夢中になったのかも、本当に不思議だ」
カークはそう言って頭を振った。
私はその様子をぼんやり見つめていた。
頭の中はごちゃごちゃしてるし、なんか疲れたし。
もしリーナがゲームのヒロインと同じなら、転生者でもそうじゃなくても、望むものは、恋でしょ、素敵な恋。
眉目秀麗な男性陣との、ハラハラドキドキの運命の恋。
【忘却のアビリティ】は、悪役令嬢要素が少ないから、ちょっと燃え上がりにくいのかもしれないけど、恐怖の吊り橋効果は抜群だと思う。
普通に考えれば、乙女ゲームそのものを楽しみたいなんて理由で国を騒がせるなんて、考えられないことだろう。
リーナに聞いたわけじゃないから、本当のところは分からないけど。
そう言えば、なんだっけ。カークがヒロインに攻略される理由って。
「キーラ?」
「はい、ってなにしてるんですか?」
やけに声が近いと思ったら、いつの間にかカークが全身をベッドに乗り上げていた。
「いや、ちょっとキスしようかと思って」
「今日はもう治療はいいです」
「治療じゃなくて……むぐっ」
近付いてきた顔を、動くようになった両手で押しのける。
「そういうの、間にあってるんで、今日はそのままお部屋に戻って、お休みください。そんな顔色だと明日アリーダさんに怒られますよ」
睨みつけながら棒読みで告げると、カークがちょっとムッとした表情になった。
顔を押していた両腕を掴まれ、あっという間にベッドに沈められる。
あぁ、その笑顔が怖い……
ちょっとキャラ変わってませんか?
「キーラ」
名を呼ばれて、私はカークをさらに睨みつけた。
体が元に戻ったら、絶対鍛えてこいつに一発お見舞いしてやる。
ゆっくりとカークの顔が近づいてくる。
あぁ、直視できない!
思わず目を閉じると、かすめるように唇が触れた。そして、そのまま肩に、全身に重さがかかる。
次は何だと身構えたけど、カークに動く様子がない。
「カーク?」
呼びかけながら、ゆっくり目を開けると、カークは私の肩に額をくっつけてぐったりしていた。
そして聞こえてくる、健やかな寝息。
「まさかの、ね、寝落ちですか!?」
がっちり手首は掴まれたままだし、重いし。
「だから部屋に戻れって言ったのに!」
私の叫びが、静かな部屋にコダマした。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
記念すべき(?)50話に!なってしまいました。
おかしい、もっと短い予定だったのに。
設定が微妙な上、
まだまだ続きますが、
ラストまで書けるよう頑張りますので、
お付き合い頂けると幸いです。
次回もよろしくお願いします。
「カークは、落ちなかったの?」
「当たり前だろう? 何故私があんな女に落ちなければならないんだ?」
カークはそう目を見開いた。少し怒っているみたいだ。
「えーっと」
「知っていたってあんな女はごめんだ」
「どうして? リーナって普通に可愛いでしょ?」
「はぁ? キーラは目が悪いのか? キーラの方がず――――っとかわいいだろ。もし調査がなければ、あんな危うい女に近付くのさえ嫌だった」
「危うい女って」
いやいや、比較対象がおかしいから。
そりゃ、まぁ、キーラだって悪役令嬢ですから、磨けば光ると思うけど、ヒロインのかわいさは正義でしょうよ。
「大体、リーナは侯爵の子じゃない」
またまた爆弾発言来た―!
「ど、どうして」
「侯爵とリーナを同時に見たから、はっきり分かってしまった」
……デスヨネ。見えるんですもんね。
あれ、そんな話、どっかで前も聞いたような気がするけど。誰だっけ?
「じゃあ、リーナは義母の連子ってこと?」
「それは分からない。侯爵夫人に会えばすぐに分かるが。違う気がする」
「え?」
「リーナには魔力がないだろう? 両親は隠しているつもりだけど、この国は魔法を使う国だ。わざわざ魔力のない人間を連れてくるような場所ではない。だからなおさら彼らの目的が分からない。財産狙いかとも思ったが、オンリンナの財産は殆どが王家預かりになっていて動かせないし、侯爵はもうオンリンナの名を使わなくてもいいくらい商人として名をはせている。金があるならフォルナトルより他国の方が暮らしやすいだろう」
「そう、なんだ」
うーん、他国情報はキーラの記憶にも、ゲーム情報にも無いので何とも。
「予言では私がリーナと共にキーラを倒すことになっているが、それも分からない。聖女だとか、聖なる力だとか、おとぎ話みたいな言葉も、何故デリックたちが簡単にあの女に夢中になったのかも、本当に不思議だ」
カークはそう言って頭を振った。
私はその様子をぼんやり見つめていた。
頭の中はごちゃごちゃしてるし、なんか疲れたし。
もしリーナがゲームのヒロインと同じなら、転生者でもそうじゃなくても、望むものは、恋でしょ、素敵な恋。
眉目秀麗な男性陣との、ハラハラドキドキの運命の恋。
【忘却のアビリティ】は、悪役令嬢要素が少ないから、ちょっと燃え上がりにくいのかもしれないけど、恐怖の吊り橋効果は抜群だと思う。
普通に考えれば、乙女ゲームそのものを楽しみたいなんて理由で国を騒がせるなんて、考えられないことだろう。
リーナに聞いたわけじゃないから、本当のところは分からないけど。
そう言えば、なんだっけ。カークがヒロインに攻略される理由って。
「キーラ?」
「はい、ってなにしてるんですか?」
やけに声が近いと思ったら、いつの間にかカークが全身をベッドに乗り上げていた。
「いや、ちょっとキスしようかと思って」
「今日はもう治療はいいです」
「治療じゃなくて……むぐっ」
近付いてきた顔を、動くようになった両手で押しのける。
「そういうの、間にあってるんで、今日はそのままお部屋に戻って、お休みください。そんな顔色だと明日アリーダさんに怒られますよ」
睨みつけながら棒読みで告げると、カークがちょっとムッとした表情になった。
顔を押していた両腕を掴まれ、あっという間にベッドに沈められる。
あぁ、その笑顔が怖い……
ちょっとキャラ変わってませんか?
「キーラ」
名を呼ばれて、私はカークをさらに睨みつけた。
体が元に戻ったら、絶対鍛えてこいつに一発お見舞いしてやる。
ゆっくりとカークの顔が近づいてくる。
あぁ、直視できない!
思わず目を閉じると、かすめるように唇が触れた。そして、そのまま肩に、全身に重さがかかる。
次は何だと身構えたけど、カークに動く様子がない。
「カーク?」
呼びかけながら、ゆっくり目を開けると、カークは私の肩に額をくっつけてぐったりしていた。
そして聞こえてくる、健やかな寝息。
「まさかの、ね、寝落ちですか!?」
がっちり手首は掴まれたままだし、重いし。
「だから部屋に戻れって言ったのに!」
私の叫びが、静かな部屋にコダマした。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
記念すべき(?)50話に!なってしまいました。
おかしい、もっと短い予定だったのに。
設定が微妙な上、
まだまだ続きますが、
ラストまで書けるよう頑張りますので、
お付き合い頂けると幸いです。
次回もよろしくお願いします。
0
お気に入りに追加
290
あなたにおすすめの小説
奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
◯毎週金曜日更新予定
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
貴方様の後悔など知りません。探さないで下さいませ。
ましろ
恋愛
「致しかねます」
「な!?」
「何故強姦魔の被害者探しを?見つけて如何なさるのです」
「勿論謝罪を!」
「それは貴方様の自己満足に過ぎませんよ」
今まで順風満帆だった侯爵令息オーガストはある罪を犯した。
ある令嬢に恋をし、失恋した翌朝。目覚めるとあからさまな事後の後。あれは夢ではなかったのか?
白い体、胸元のホクロ。暗めな髪色。『違います、お許し下さい』涙ながらに抵抗する声。覚えているのはそれだけ。だが……血痕あり。
私は誰を抱いたのだ?
泥酔して罪を犯した男と、それに巻き込まれる人々と、その恋の行方。
★以前、無理矢理ネタを考えた時の別案。
幸せな始まりでは無いので苦手な方はそっ閉じでお願いします。
いつでもご都合主義。ゆるふわ設定です。箸休め程度にお楽しみ頂けると幸いです。
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ざまぁ対象の悪役令嬢は穏やかな日常を所望します
たぬきち25番
ファンタジー
*『第16回ファンタジー小説大賞【大賞】・【読者賞】W受賞』
*書籍化2024年9月下旬発売
※書籍化の関係で1章が近日中にレンタルに切り替わりますことをご報告いたします。
彼氏にフラれた直後に異世界転生。気が付くと、ラノベの中の悪役令嬢クローディアになっていた。すでに周りからの評判は最悪なのに、王太子の婚約者。しかも政略結婚なので婚約解消不可?!
王太子は主人公と熱愛中。私は結婚前からお飾りの王太子妃決定。さらに、私は王太子妃として鬼の公爵子息がお目付け役に……。
しかも、私……ざまぁ対象!!
ざまぁ回避のために、なんやかんや大忙しです!!
※【感想欄について】感想ありがとうございます。皆様にお知らせとお願いです。
感想欄は多くの方が読まれますので、過激または攻撃的な発言、乱暴な言葉遣い、ポジティブ・ネガティブに関わらず他の方のお名前を出した感想、またこの作品は成人指定ではありませんので卑猥だと思われる発言など、読んだ方がお心を痛めたり、不快だと感じるような内容は承認を控えさせて頂きたいと思います。トラブルに発展してしまうと、感想欄を閉じることも検討しなければならなくなりますので、どうかご理解いただければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる