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アリーダさんが食事を持ってきて、ようやく私はご飯にありつけることになった。
あの日のお昼に焼きそばパンとコーヒー以来のちゃんとした食事なのだ。
期待しない方がおかしい。
が、
「すみませんが、この体勢はどう言うことなんでしょう」
「どうもこうも、キーラは動けないだろう?」
確かに私は指一本動かせません。
だからといって、この国の王子様の膝に抱っこされてご飯を食べなければならい、と言うことはないはずです。ベッドの上で十分事足ります。
ちなみに服装はかわいい普通の前開きパジャマ(ズボン付き)です。
「はい、あーん」
あーん、って。
自分の体を支えられないので、カークの肩に半身を預け左腕に腰をがっつり支えられた状態で、目の前に食べ物がのったスプーンが持ってこられる。
攻略対象者とか、王子様とかのイメージがどんどん壊れて行くんですが。
そしてアリーダさん、ニコニコしていないで、止めてください。
「さ、早く口を開けて」
「うー」
妙に恥ずかしいです。
「早く食べないと、ずっとこうしていることになるけど」
「分かりました。いただきます」
メニューは、ミルクパン粥に野菜のピューレ、多分オレンジっぽい味のジュースだ。
「どうだ?」
「美味しいです」
「それはようございました」
「ビッ!」
私の気持ちはともかく、雰囲気は和気あいあいな食卓だ。
ピーちゃんは、カークの前にあるサンドイッチの肉を狙っているらしく、近付いてはアリーダさんに止められている。
まあ、皆楽しそうだからいいか。
結構な時間をかけて、カークは私の食事を終わらせた。
「お茶をお持ちしますね」
アリーダさんがそう言って、食器を下げるため席を外した。
その間にカークが食事を始める。
目の前を、サンドイッチが通り過ぎて行くのを眺めながら、少しは体が動くようになったんじゃないかと思って力を込めてみた。
ダメでした。
「どうした?」
「まだ体が動かないな、と思って」
「そうか。まだか。かなり補充はしたつもりなんだが、やっぱりまだ少ないか」
カークは考え込むように俯いてしまった。
また暇になりそうなので、私は次の質問をする。
「この間、死なれたら困るって言っていたけど、まだ私死にそうなの?」
「それは、もう大丈夫だ」
馬鹿にするみたいにフッって笑って、カークが答える。
「あの時は危なかったが、一週間かけて魔力を足したから、余程のことがない限りは大丈夫だ」
「余程のことって?」
「魔力を大量に使うようなことだ。体の方は今日少し多めに補充すれば、明日には手くらいは動かせるようになるかもしれない」
「多く補充って……」
それってチューするってことですよね……って思っている間に、さっきまでサンドイッチを握っていた手が私の顎を掴んで上向かせる。
「後でとなるときっと警戒されるな。危険だから、私を拒絶するな」
言うが早いが、覆いかぶさってくるカーク。
容赦なく唇がふさがれる。
――――待て、ちょっと待て。舌入って!
顎にかかっていた手がいつの間にか頭の後ろに回っていて、動けない私が慌てたって、何が出来るわけじゃない。
目の前の綺麗な顔を眺めていると、この間はじんわりって感じで流れ込んできた魔力が、ドンッ、て感じに流れこんできた。
フランクに吸い取られた時と同じくらいの勢いだ。
「んっ」
息苦しさにうめくと、一瞬カークが離れた。
「もう少し我慢しろ」
「でも……んん」
―――我慢しろって言われても、あぁ、もうダメ……
私は結局、意識を手放した。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は6月5日になります。
次回もよろしくお願いします。
あの日のお昼に焼きそばパンとコーヒー以来のちゃんとした食事なのだ。
期待しない方がおかしい。
が、
「すみませんが、この体勢はどう言うことなんでしょう」
「どうもこうも、キーラは動けないだろう?」
確かに私は指一本動かせません。
だからといって、この国の王子様の膝に抱っこされてご飯を食べなければならい、と言うことはないはずです。ベッドの上で十分事足ります。
ちなみに服装はかわいい普通の前開きパジャマ(ズボン付き)です。
「はい、あーん」
あーん、って。
自分の体を支えられないので、カークの肩に半身を預け左腕に腰をがっつり支えられた状態で、目の前に食べ物がのったスプーンが持ってこられる。
攻略対象者とか、王子様とかのイメージがどんどん壊れて行くんですが。
そしてアリーダさん、ニコニコしていないで、止めてください。
「さ、早く口を開けて」
「うー」
妙に恥ずかしいです。
「早く食べないと、ずっとこうしていることになるけど」
「分かりました。いただきます」
メニューは、ミルクパン粥に野菜のピューレ、多分オレンジっぽい味のジュースだ。
「どうだ?」
「美味しいです」
「それはようございました」
「ビッ!」
私の気持ちはともかく、雰囲気は和気あいあいな食卓だ。
ピーちゃんは、カークの前にあるサンドイッチの肉を狙っているらしく、近付いてはアリーダさんに止められている。
まあ、皆楽しそうだからいいか。
結構な時間をかけて、カークは私の食事を終わらせた。
「お茶をお持ちしますね」
アリーダさんがそう言って、食器を下げるため席を外した。
その間にカークが食事を始める。
目の前を、サンドイッチが通り過ぎて行くのを眺めながら、少しは体が動くようになったんじゃないかと思って力を込めてみた。
ダメでした。
「どうした?」
「まだ体が動かないな、と思って」
「そうか。まだか。かなり補充はしたつもりなんだが、やっぱりまだ少ないか」
カークは考え込むように俯いてしまった。
また暇になりそうなので、私は次の質問をする。
「この間、死なれたら困るって言っていたけど、まだ私死にそうなの?」
「それは、もう大丈夫だ」
馬鹿にするみたいにフッって笑って、カークが答える。
「あの時は危なかったが、一週間かけて魔力を足したから、余程のことがない限りは大丈夫だ」
「余程のことって?」
「魔力を大量に使うようなことだ。体の方は今日少し多めに補充すれば、明日には手くらいは動かせるようになるかもしれない」
「多く補充って……」
それってチューするってことですよね……って思っている間に、さっきまでサンドイッチを握っていた手が私の顎を掴んで上向かせる。
「後でとなるときっと警戒されるな。危険だから、私を拒絶するな」
言うが早いが、覆いかぶさってくるカーク。
容赦なく唇がふさがれる。
――――待て、ちょっと待て。舌入って!
顎にかかっていた手がいつの間にか頭の後ろに回っていて、動けない私が慌てたって、何が出来るわけじゃない。
目の前の綺麗な顔を眺めていると、この間はじんわりって感じで流れ込んできた魔力が、ドンッ、て感じに流れこんできた。
フランクに吸い取られた時と同じくらいの勢いだ。
「んっ」
息苦しさにうめくと、一瞬カークが離れた。
「もう少し我慢しろ」
「でも……んん」
―――我慢しろって言われても、あぁ、もうダメ……
私は結局、意識を手放した。
――――作者より一言―――――
ここまで読んでくださりありがとうございます。
明日の更新はお休みします。
次回更新は6月5日になります。
次回もよろしくお願いします。
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