このやってられない世界で

みなせ

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「何が、でしょう?」 
「食事中に無理矢理すぎた。もし先ほどの話が本当なら、君の方が被害者なのに。騎士団に関係があると思うと、冷静でいられなかった」 
「そうですよね。私もあんなところで話すべきではありませんでした」 

 そう肩をすくめると、ダリルも肩をすくめた。 

「詳しく話してもらえないだろうか?」 
「ちょっとした行き違いです。相手の子が手を振り上げた所に私が通りかかって、運悪くその手が当たってしまったんです。で、ちょっと言い争いになってしまって……それで、昨日は悔しくて女将に愚痴を言ってしまったんです。でもその子がわざわざ家まで謝りに来てくれて仲直り出来たので、朝ごはんのついでにその報告をしに来たんです。少し女将にも誤解をさせてしまったので」 

 嘘だけど、嘘じゃない? 
 あれは多分こんな感じだろう。 

「ふーん、ちなみに……その相手は、デリックじゃないか?」 

 ダリルは瞳を細めて私の話を聞いていたが、ピンポイントで、その名を上げた。 

「ち、違います。アディソン様は関係ありません」 

 慌てて言うけど、全然間に合っていない。 
 否定しても、何故と言う表情が答えていたんだと思うし、 家名を言っちゃった。

「君に、デリックの魔力が絡んでいる」 

 魔力って絡むの?
 何それ! 気持ち悪いんだけど。 

「あれは君に何をしたのか、教えてもらえないだろうか?」 
「教えるも何も、謝ってもらっただけです」 
「謝っただけで、そんな風に魔力は残らない。あいつは君に何かを誓わなかったかい?」 
「それは……」 

 やだ、やっぱりあれって結構やばいやつだったんじゃない。  

「何を誓ったの?」 

 二コリと笑う顔が怖い。教えるまで帰れなさそう。 
 でも、まあ、別に教えても問題ない内容だよね。
 ごく普通の、社会倫理だよ。

「もう殴るまねはしない、このことで謝らない、言わない、私に近付かない、それから、義妹を守ること、です」 
「妹って誰のこと?」 
「義妹は義妹です。学園で嫌がらせを受けているようなので、側にいて上げて欲しいとお願いしました」 
「そう」 

 ダリルは信じていないようだ。 

「……本当は聞くべきじゃないのだが、出来ればデリックが何と言ったか正確に教えてくれないか?」 

 えー、言うの? 
 忘れたいほど、恥ずかしいのに。  

「言いたくなければ、読ませてもらうが」 
「読むってどう言うことですか?」 
「君に触れて記憶を読む、ということだ」 

 なんでそんないやらしい言い方するのよ。
 やっぱりこの兄弟、そろっておかしい。

「それって、許されることなんですか?」 

 それって、プライバシーの侵害でしょう。 

「学生とはいえ、騎士科の生徒はいずれ騎士になる。騎士団の名誉にかかわることなら、多少許される」 

 はぁぁぁぁぁ?
 一発殴っていいですか?

 嘘くさい。嘘くさすぎる!
 どこの馬の骨とも分からない女に、大事な弟が騙されているんじゃないか、ただただ心配って顔に書いてあるじゃない。 

「教えてくれたら、このことは私の胸に納めておこう」 




 今度は脅しですか……





















――――作者より一言―――――

ここまで読んでくださりありがとうございます。

明日の更新はお休みします。
次回更新は5月11日になります。

次回もよろしくお願いします。
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