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24.そう言う事でしたの。納得ですわ。
しおりを挟むの前に、まずはラルフの話よね。
彼はあの後すぐグリフ様の邸を追いだされて、学園の寮に入ったわ。
火の精霊の加護を持つ火の魔法の申し子として、学園で一目置かれる存在になるはずだったのに一般生徒ですって……なんだか、可哀そう?
私のことなんてほっておけばよかったのにね。
――――でも、まぁ、……自業自得かしら。
触らぬなんとかになんとかよ。
そうそう、ラルフの父親も一度こちらに来たのよ。
グリフ様と一緒に火の精霊王を呼び出そうとしていたけれど、火の精霊王に完全に無視されていたわ。
神殿が許可した正式な召喚陣なのに何故だって言っていたけど、あれはお願いで命令じゃないでしょうに。
火の精霊王はまだ怒っていたみたいだから、出て行かなくても仕方ないわよ。
それでも、ラルフと契約していた精霊がそれとなくその事を伝えようと頑張っていたわ。これ以上怒りを買わないようにって。
でもね……グリフ様たちって精霊が見えないのよね。
立派な魔法使いの筈なんだけど……不思議よね、魔法って。
私にも会いたいって言っていたみたいだけど、会ってないわ。
部屋の引っ越しと、進級試験とかあって忙しかったのもあるけど、グリフ様が許さなかったみたいよ。
きっと、父親もラルフと同じようなことを言ったのね。
邸の一角が凍りついたって侍女たちが噂していたから……。
もう彼らには会うことは無いわね。
会いたくないからい良いけど。
そんなことがあって、ようやく夏休みが終わって……グリフ様が学園へ出勤するようになったわ。
また平穏な日常になったと思ったのに、学園の入学式があった日、グリフ様が言ったの。
「マチルダ、君の妹が今年学園に入学した」
妹と私は学年で二つ違い。
妹が入学するのは来年のはずなのに。
「飛び級だ」
飛び級
……そう言うことだったのね。
不思議だったのよ。
どうして攻略対象者の年齢が違うのかって。
一人くらいならいいけど三人が年上なのよ。
生徒会とか旅とか、イベントで距離を縮めるって言うけど、恋愛ならどちらかと言ったら同じ年の方がいいはずでしょ。接点が作りやすいもの。
学園内のイベントならなおさらよ。クラスが一緒なのが一番簡単。
だから、おかしい、って思っていたの。
飛び級なんて裏技があったのね。
そうよね。
討伐系のイベントなんかは一歳とも言えないものね……年上の方が体力や技術的に安心感もあるし……
「そして、入学を機に第二王子との婚約の話が持ち上がっている」
第二王子……攻略対象者で、確か名前はフィリップだったかしら。
私と同い年で、私の婚約者になる予定だった人よね。
妹が婚約するのは、妹と同い年のメインヒーロー・第三王子……だったと思うんだけど。
「本当なら第三王子と婚約するはずだったらしいが……まだ第二王子の婚約者が決まらないからと第二王子になったらしい」
何も言っていないのにグリフ様が疑問に答えてくれたわ。
本当なら私が婚約者だったのに、私が逃げ切ったから妹が婚約者になるってことね。
まぁ、確かに、順番って大事だものね。
あらそれじゃあ、あの悪役令嬢トリオは誰の婚約者になっているの?
第三王子の相手はどうなるのかしら?
ゲーム的には、第三王子も飛び級するってことよね?
主人公たちは有能であると思わせなければならないし、学園でのヒロインとの交流も重要だものね。
あら、それじゃあ、第二王子と魔法使いの立場がないわね。その上、婚約なんて……。
「それで、その第二王子がマチルダに会いたいと言っている」
「……私に、ですか?」
私には関係ない話だと思っていたから返事が遅くなってしまったわ。
何故、私に会いたいのかしら?
またお前だとか、あの女とか、悪女だとか言うため?
「……婚約するに当たり婚約者の家族を自分で見て確かめたいそうだ。もちろん、あの噂の事も知っていて、その真偽も確かめたいとは言っていた。心配しなくても王太子達とは違う意見のようだから、私も会わせようと思ったのだ」
答えが私の心配を先読みしているわ。
とうとう心まで読めるようになったのかしら……嫌だわ。
「会いたくなければ断っても構わないが……第二王子なら大丈夫だと思う」
何が大丈夫なのか分からないけれど、否とは言えないでしょう。
「会うのはかまいませんが、グリフ様も同席してくださいますよね?」
「もちろんだ。君を絶対に一人にはしないよ」
グリフ様は、にっこりと穏やかで優しい笑顔で強く頷いてくれたわ。
完全に、保護者……ですわよね。
気持ち悪いなんて言って、ごめんなさいね。
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