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05.精霊王? ごめんこうむりますわ!

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「認識疎外に空間収納なんて、君の年で使えるとは思えないけど?」
「あら、お分かりになりました? 私もまだまだですわね。家の者は気がつかないのに」
「君の家の中ならそうだろうね」
「あら、そうなんですの? 私ったら自信過剰でしたわね……って、私をご存じですの?」
「ふふふ、知っているとも。ずっと見ていたからね。やっと家から出てきたと思ったら、こんなところで人間観察とは」

 男はくすくすと笑ってる。嫌な感じ。それより、

「ずっと見ていた?」
「あぁ、ずっと見ていたよ」
「い、いつからですの?」

 あら、いけません、どもってしまったわ。

「木から落ちた時からだよ」

 にこにことそうおっしゃいます。

「……貴方は一体……いいえ、おっしゃらないで、嫌な予感しかいたしませんわ」

 私は、こっそりとお茶とお菓子を空間収納に戻したわ。
 嫌な予感がしたなら、さっさと御前を去るのが最良の選択よね。

「お目汚し失礼いたしましたわ。私はこれで失礼いたします。できればこのまま私のことはいつまでも見守っていただければ嬉しいですわ」

 言いながらヘコヘコと頭を下げて、ツタをのけて、そそくさと迷路へ戻ることに。

 だって、思い出したのよ。

 ダークグリーンの髪と、エメラルドの瞳って、森の精霊王!
 森の精霊王はヒロインが最初に加護を得る方よ。
 ヒロインの誕生の日、美しき命の輝きを感じて我が家を訪れ、我が家にいる精霊たちにヒロインを守るよう言いつけたと語られていた記憶があるわ。

 私などがかかわって良い方ではありません。危険、キケンですわ!

「待ちなさい」

 精霊王がそうおっしゃいました。



 言葉は呪文。



 先ほど私が寄せたツタが、私を襲ってくる。
 ひ、酷い!
 あっという間に足首、腰、そして手首が捕らえられてしまった!!

「……」

 私、今、歩き出す格好で空中に浮いているの。
 非常口の絵にでもなった気分……

 それに、困りましたわ。
 とてつもない危機に瀕して……いるのよ、ね。

「名を聞いてもいいだろうか?」

 精霊王がまた何かおっしゃいました。
 キケン度がアップした、わ。

 この言葉は泣きながらこの迷路に迷い込んだヒロインへと向けられる言葉。
 私などに使ってはいけない言葉よ。

「名乗るほどの者ではございませんわ。私のことは、このまま捨て置いてくださいませ」

 あまりに変な格好だったので、体が勝手にふるふると震えてきちゃった。
 精霊王は私の前に回り込み、私と視線をあわせて……


 そして……


「そんなに震えなくてもいいだろう。私は森の精霊王―――――」
「ああああああああ!」

 私はかぶせるように悲鳴を上げた!
 もう誰に何と言われてもかまわない!
 名前なんて聞いたら、大変だもの!
 精霊王は口も目も見開いて、私を見ていたわ。

「……」
「……」

 私は心の中で祈ったの。
 私の気持ちを分かってほしいと。
 精霊王は、暫く私を見つめ、そしてほほ笑み、そっと額にキスをしたわ!

「名は与えぬ。だが、加護は与えよう。これ以降、君が私に名を告げるまで、誰にも加護を与えぬ」

 それは駄目ですわ―――――っ!





 私の心の悲鳴は、精霊王とやらの身勝手な行動を止めることは出来ませんでした……。







 とても、とても、と―――――っても、悔しいですわ……





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