4 / 63
04.お茶会に来ましたわよ!
しおりを挟むお城まではお兄様が付き添ってくれたわ。
正直言って、無駄に目立つからいらないんだけど、これも罪滅ぼしみたいね。
私のことを思い出したついでに、私が一週間寝込んだことも思い出したみたいなの。
あれって、お兄様が私をほおっておいたせいだものね。
今、自分が五歳の妹にしているネコかわいがりと、三歳の私にした扱い。その上今の今まですっかり忘れていたんだから。
思い出しましたって……それを全身で表して……優しいんだけど、すごくよそよそしいの。
妹が生まれる前も仲良くなかったから全然気にしなくていいのに。変に緊張しているから、こっちのほうが気を使っちゃう。
それに、お兄様と一緒にいると、もれなく攻略対象者たちが来るでしょ?
本当に迷惑なのよ。
でもお父様たちが決めたことだし、変に目立つのも良くないから、黙ってエスコートを受けることにしたわ。
馬車を降りて、お茶会会場までスススっと案内された。
お兄様はすでに王子様たちのお側にいることが多いらしいから、王宮の中も自由自在。
私をサクサク王家の方たちの前に連れて行ってくれた。
マナー? 適当よ。前の人のを見て、やった風にすればいいわ。
にっこり笑って、前の人と同じ動きをして、はい終わり。
王家の人に会うちょっと前に、軽く認識疎外をかけておいたから、会ったけど覚えてないって感じにできる……筈。
王宮で魔法を使えるのかって?
私も心配だったから、ちょっと前に魔法で水を出してみたの。
誰も何も言わなかったし、ちゃんと水も出たから、攻撃魔法じゃなければ大丈夫なんだと思うわ……多分。
ご挨拶を終えると、お兄様の友達が遠くに見えた。
お兄様がそれに手を振ってる間に、私はお菓子を食べに行くと側を離れたの。
だって嫌だもの。あの人たちに会うの。
兄たちは王子様たちがまだご挨拶中だからか、椅子の並んだ方へ行って何か話し始めた。
こっちには少しも注意を払わないから、消えても大丈夫ね。
とりあえずお菓子を物色して、おいしいって表示がでるのを何個か包んでもらって。
池を挟んで庭が良く見える迷路があるって教えてもらったから、さっさとそっちに行く事にしたわ。
なんでもこの迷路、まだ幼い王子様たちのために中庭の半分を壊して作ったんですってよ。
他国に誇れる庭園だったらしいのに……愛されるって、素敵ねぇ。
迷路は……私にかかれば簡単なものよ。 魔法って便利よね!
それにしても、八歳くらいでもカップルっているのね。
私と同じくらいの年の男女を、迷路のあちこちでみかけちゃった。
認識疎外してるから相手は気がつかないけど、一人でその横を通るのはちょっと気が引けちゃう。
だって、結構ないちゃいちゃなのよ。この世界の結婚年齢が記憶より低いとはいえ、その密着具合と言ったら……
――――――― 怖いわー。
…………そうそう、精霊やら妖精やらもたくさんいたわ。
家の子たちと違って、フワフワしてるだけで近付いても来ないし、当然意地悪もしてこない。
ただただ、にこにこしてこっちを見てる。
誰もいないのは分かってるけど、何度か後ろに誰かいるのかもってこっそり振り返ってしまったわ。
あ、私が見えてるってばれないわよね。気をつけないと。
そんなこんなで、迷路の途中にお茶会会場が良く見える休憩スペースを見つけたわ。
せっかく余興があるんだからゆっくりしないとね!
休憩スペースの入り口を魔法を使って、ツタでふさいで誰も入れないようにして。
地面の芝を少しのばして、表面を乾燥させて、ふかふかの絨毯の完成よ。
靴をぬいで座ったら、空間収納から家で入れておいたお茶をカップごと出して、一口。
「あぁ、美味しい」
トイレが心配で、朝からずっと水も飲まなかったから、この一口が本当に美味しいわ。
包んでもらったお菓子も出して、後はお茶会観察。
フフフ、こういうのやってみたかったのよ。
これが出来るなんて本当にラッキーよね。
まずはお兄様たち。
うんうん、さっきと同じ場所にいるわ。
もう私のことなんてすっかり忘れているわね。帰りも忘れられたら大変だから、気をつけないと。
王家の方たちはまだしばらくご挨拶ね。まだまだ長い列が出来ているわ。
後は、そうね、私以外の悪役令嬢を探しましょう。
多分もう婚約者候補になっている筈だからみんないると思うわ。
「あーいたわ。すごいドリルね!!」
一人目を発見したわよ。
真っ赤なドレスに赤いリボン、両耳上に結わえられた金色の髪は見事なドリルよ。視力強化して顔をしっかり見たら、ちゃんと眦が吊りあがっていたわ。
かわいそうだけど、ザ・悪役令嬢って感じね。
「あとは、いたいた、きっとあの子ね」
二人目は黄色いドレス。背が高くて顔が長い。ポニーテールにした髪がやっぱり細かいドリルになっているわ。この子も可哀そうだけど悪役顔ね。それもナンバー2っていう感じが出ているわ。
「それから、……あの子かしら?」
三人目は青いドレス。ちょっとぷっくりした体型に、肩にかかるドリルが良く似合っているわね。この子の場合は、悪役顔だけど箸休め……ぽいわね。ちょっとドジっ子が入ってる感じよ。
「でも、ドリルが目印なんて、ひどいわね」
「なにがひどいんだい?」
「髪型よ」
「それは自分で変えられることだろう」
「それはそうだけど……どなたかしら?」
―――――誰も入れないはずだけど。
私はそう首を傾げて、隣に立つ人を見上げた。
ダークグリーンの髪と、エメラルドの瞳の大人の男の人。
あら、フラグかしら?
10
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です
sai
ファンタジー
公爵令嬢であるオレリア・アールグレーンは魔力が多く魔法が得意な者が多い公爵家に産まれたが、魔法が一切使えなかった。
そんな中婚約者である第二王子に婚約破棄をされた衝撃で、前世で公爵家を興した伝説の魔法使いだったということを思い出す。
冤罪で国外追放になったけど、もしかしてこれだけ魔法が使えれば楽勝じゃない?
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!
つなかん
ファンタジー
なんちゃってヴィクトリア王朝を舞台にした乙女ゲーム、『ネバーランドの花束』の世界に転生!? しかし、そのポジションはヒロインではなく少ししか出番のない元婚約者の妹! これはNTRどころの騒ぎではないんだが!
第一章で殺されるはずの推しを救済してしまったことで、原作の乙女ゲーム展開はまったくなくなってしまい――。
***
黒髪で、魔法を使うことができる唯一の家系、ブラッドリー家。その能力を公共事業に生かし、莫大な富と権力を持っていた。一方、遺伝によってのみ継承する魔力を独占するため、下の兄弟たちは成長速度に制限を加えられる負の側面もあった。陰謀渦巻くパラレル展開へ。
転生幼女が魔法無双で素材を集めて物作り&ほのぼの天気予報ライフ 「あたし『お天気キャスター』になるの! 願ったのは『大魔術師』じゃないの!」
なつきコイン
ファンタジー
転生者の幼女レイニィは、女神から現代知識を異世界に広めることの引き換えに、なりたかった『お天気キャスター』になるため、加護と仮職(プレジョブ)を授かった。
授かった加護は、前世の記憶(異世界)、魔力無限、自己再生
そして、仮職(プレジョブ)は『大魔術師(仮)』
仮職が『お天気キャスター』でなかったことにショックを受けるが、まだ仮職だ。『お天気キャスター』の職を得るため、努力を重ねることにした。
魔術の勉強や試練の達成、同時に気象観測もしようとしたが、この世界、肝心の観測器具が温度計すらなかった。なければどうする。作るしかないでしょう。
常識外れの魔法を駆使し、蟻の化け物やスライムを狩り、素材を集めて観測器具を作っていく。
ほのぼの家族と周りのみんなに助けられ、レイニィは『お天気キャスター』目指して、今日も頑張る。時々は頑張り過ぎちゃうけど、それはご愛敬だ。
カクヨム、小説家になろう、ノベルアップ+、Novelism、ノベルバ、アルファポリス、に公開中
タイトルを
「転生したって、あたし『お天気キャスター』になるの! そう女神様にお願いしたのに、なぜ『大魔術師(仮)』?!」
から変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる