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04.お茶会に来ましたわよ!

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 お城まではお兄様が付き添ってくれたわ。
 正直言って、無駄に目立つからいらないんだけど、これも罪滅ぼしみたいね。

 私のことを思い出したついでに、私が一週間寝込んだことも思い出したみたいなの。
 あれって、お兄様が私をほおっておいたせいだものね。
 今、自分が五歳の妹にしているネコかわいがりと、三歳の私にした扱い。その上今の今まですっかり忘れていたんだから。
 思い出しましたって……それを全身で表して……優しいんだけど、すごくよそよそしいの。
 妹が生まれる前も仲良くなかったから全然気にしなくていいのに。変に緊張しているから、こっちのほうが気を使っちゃう。
 それに、お兄様と一緒にいると、もれなく攻略対象者たちが来るでしょ?


 本当に迷惑なのよ。


 でもお父様たちが決めたことだし、変に目立つのも良くないから、黙ってエスコートを受けることにしたわ。
 馬車を降りて、お茶会会場までスススっと案内された。
 お兄様はすでに王子様たちのお側にいることが多いらしいから、王宮の中も自由自在。
 私をサクサク王家の方たちの前に連れて行ってくれた。

 マナー? 適当よ。前の人のを見て、やった風にすればいいわ。
 にっこり笑って、前の人と同じ動きをして、はい終わり。

 王家の人に会うちょっと前に、軽く認識疎外をかけておいたから、会ったけど覚えてないって感じにできる……筈。

 王宮で魔法を使えるのかって?
 私も心配だったから、ちょっと前に魔法で水を出してみたの。
 誰も何も言わなかったし、ちゃんと水も出たから、攻撃魔法じゃなければ大丈夫なんだと思うわ……多分。


 ご挨拶を終えると、お兄様の友達が遠くに見えた。
 お兄様がそれに手を振ってる間に、私はお菓子を食べに行くと側を離れたの。


 だって嫌だもの。あの人たちに会うの。


 兄たちは王子様たちがまだご挨拶中だからか、椅子の並んだ方へ行って何か話し始めた。
 こっちには少しも注意を払わないから、消えても大丈夫ね。

 とりあえずお菓子を物色して、おいしいって表示がでるのを何個か包んでもらって。
 池を挟んで庭が良く見える迷路があるって教えてもらったから、さっさとそっちに行く事にしたわ。


 なんでもこの迷路、まだ幼い王子様たちのために中庭の半分を壊して作ったんですってよ。
 他国に誇れる庭園だったらしいのに……愛されるって、素敵ねぇ。


 迷路は……私にかかれば簡単なものよ。 魔法って便利よね!


 それにしても、八歳くらいでもカップルっているのね。
 私と同じくらいの年の男女を、迷路のあちこちでみかけちゃった。
 認識疎外してるから相手は気がつかないけど、一人でその横を通るのはちょっと気が引けちゃう。


 だって、結構ないちゃいちゃなのよ。この世界の結婚年齢が記憶より低いとはいえ、その密着具合と言ったら……



――――――― 怖いわー。




 …………そうそう、精霊やら妖精やらもたくさんいたわ。
 家の子たちと違って、フワフワしてるだけで近付いても来ないし、当然意地悪もしてこない。
 ただただ、にこにこしてこっちを見てる。
 誰もいないのは分かってるけど、何度か後ろに誰かいるのかもってこっそり振り返ってしまったわ。
 
 あ、私が見えてるってばれないわよね。気をつけないと。


 そんなこんなで、迷路の途中にお茶会会場が良く見える休憩スペースを見つけたわ。
 せっかく余興があるんだからゆっくりしないとね!

 休憩スペースの入り口を魔法を使って、ツタでふさいで誰も入れないようにして。
 地面の芝を少しのばして、表面を乾燥させて、ふかふかの絨毯の完成よ。

 靴をぬいで座ったら、空間収納から家で入れておいたお茶をカップごと出して、一口。

「あぁ、美味しい」

 トイレが心配で、朝からずっと水も飲まなかったから、この一口が本当に美味しいわ。
 包んでもらったお菓子も出して、後はお茶会観察。
 フフフ、こういうのやってみたかったのよ。

 これが出来るなんて本当にラッキーよね。



 まずはお兄様たち。
 うんうん、さっきと同じ場所にいるわ。
 もう私のことなんてすっかり忘れているわね。帰りも忘れられたら大変だから、気をつけないと。
 王家の方たちはまだしばらくご挨拶ね。まだまだ長い列が出来ているわ。

 後は、そうね、私以外の悪役令嬢を探しましょう。
 多分もう婚約者候補になっている筈だからみんないると思うわ。

「あーいたわ。すごいドリルね!!」

 一人目を発見したわよ。
 真っ赤なドレスに赤いリボン、両耳上に結わえられた金色の髪は見事なドリルよ。視力強化して顔をしっかり見たら、ちゃんと眦が吊りあがっていたわ。
 かわいそうだけど、ザ・悪役令嬢って感じね。

「あとは、いたいた、きっとあの子ね」

 二人目は黄色いドレス。背が高くて顔が長い。ポニーテールにした髪がやっぱり細かいドリルになっているわ。この子も可哀そうだけど悪役顔ね。それもナンバー2っていう感じが出ているわ。

「それから、……あの子かしら?」

 三人目は青いドレス。ちょっとぷっくりした体型に、肩にかかるドリルが良く似合っているわね。この子の場合は、悪役顔だけど箸休め……ぽいわね。ちょっとドジっ子が入ってる感じよ。

「でも、ドリルが目印なんて、ひどいわね」
「なにがひどいんだい?」
「髪型よ」
「それは自分で変えられることだろう」
「それはそうだけど……どなたかしら?」

―――――誰も入れないはずだけど。

 私はそう首を傾げて、隣に立つ人を見上げた。
 ダークグリーンの髪と、エメラルドの瞳の大人の男の人。







 あら、フラグかしら?








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