107 / 172
遠征軍と未踏の特殊区画と人の悪意
105 宝箱は勇者の処分を決める
しおりを挟む
迷宮は力が支配する、法律の及ばない世界だ。
迷宮の中で起こった真実など、当事者が死ねば闇の中である。
「あなたたちのやったことは全部私たちの手柄になるのよ。他種族の無能に力を借りた無能の領主は、迷宮15層にたどり着くこともなく全滅しちゃいましたぁー。って報告しておくわね。ごしゅうしょうさまぁー」
勇者パーティで唯一の女性が毒を吐く。
熟女も相当に性格が歪んでいるらしい。全員不快だ。
コレットが怒りに肩を震わせている。
勇者の非道な行いは、コレットにとってとても許容できるものではないのだろう。
勇者パーティの様子を見るに、今回が初めてではないことは明らかだ。
どれほどの数の冒険者、誠実な者が奴らの毒牙にかかったのか。もったいない。
コレットはレインベル領を守るために、数々の嫌がらせや妨害に耐えてきた。
力を振りかざされ苦しめられることの悔しさを人一倍わかっている。
その理不尽を想像し、コレットは怒りと悲しみで我を忘れそうになっている。
そんなコレットを見てどう思ったのか、ホスローはコレットに細い目を嫌らしく走らせる。
「震えてしまって、最初の強気はどこにいったんだい?そういえば、君はなかなか可愛いね。美しい金髪と青い瞳。スタイルも良い。殺すのは少しもったいないな。なんなら飼ってあげても良いよ」
「…飼う?私をですか?」
「ああ、死ぬよりは良いだろう?籠の小鳥さ。僕の機嫌を損ねて殺されないかビクビクしながら、僕たちに奉仕する人生だ。なに、レインベル領なら僕たちが上手く扱ってあげるよ。水浸しのしけた領地でも、ないよりはマシだからね」
「…ホスロー、あなたに勇者を名乗る資格はありませんわ。勇者とは人族の力と希望の象徴、最高の冒険者のことです。くだらない策略に手を貸し、懸命に生きる者たちを侮辱し、あまつさえ自分の欲望のために人を殺そうとするなど。恥を知りなさい」
「ふぅん、まだそんな口がきけるんだ。なに、きちんと仕事はしているさ。君も今日まで、勇者は立派な人物だと思っていたのだろう?印象の操作など造作もないことさ。それに君も僕たちにしばらく可愛がられれば、きっとわかってくれるよ」
みんなそうだったからね、といやらしい笑みを浮かべる細目。
追従するように他の者たちが嗤う。
「勇者パーティは何をしても良いんだよ。欲しいものは何でも手に入る。見てくれの良い奴はすべて手籠めにできる。気に入らない奴は俺たちの経験値になるのさ。人間を殺すと効率よくレベルが上がるからな。魔物を狩るよりよっぽど楽だぜ」
「コレットさん、ホスロー様の前に這いつくばって慈悲を乞うたほうが良いですよ。死なずに済むし、分不相応な領主をやることもありません。そこの魔物に媚を売ったように、我々に跪き、許しを乞えば良いのです。我々に奉仕するのが、あなたの幸せなのですよ」
「逃げようとしても無駄だぜ。帰還の結晶石を含め、全ての物資は俺たちが回収済みだ。もっとも、持っていたとしてももう使う時間は与えない。お前らは詰んでるんだよ」
「あの虎のケモノ、なかなか逞しくて好みだわ。長持ちしそう。生かしておきましょう」
「お前は相変わらず物好きだな。そう言っていつもすぐに壊しちまうだろう。安心しな領主様よ、俺は優しいからすぐには殺さねぇ。あぁ、この後が楽しみだぜ。強気な女が泣いて許しを乞うのは痛快だからなぁ」
「いえいえ、力のない獣人のメスをどうしようもないほど痛みつけるほうが満足できるものですよ。あの白髪のメスも殺さないようにしてくださいね」
「では知恵ある魔物は殺して、あとは生け捕りで良いかい?報告では獣人と人族に化けた魔物が強い力を持つということだったけれど。この程度の特殊区画に苦戦するなんて、どうやら誤報告のようだしね。さっさと済ませるとしよう」
勇者パーティがまるで戦利品の分配でもするように、好き勝手なことを言っている。
通路を封鎖している者たちもニヤニヤと様子を見ている。不快極まる。
「…コレット、もう良いか」
「はいトシゾウ様。…貴族だけでなく、勇者まで腐敗しているとは。人族の一員として、情けない限りですわ」
「ご主人様とコレットに対する侮辱の数々、許せません」
「人族の悪意には慣れているつもりでしたが、これには開いた口が塞がらないですな」
シオンとコウエンも、勇者パーティに腹を立てているようだ。
奴らは俺の目的の邪魔になる。
自らの欲を満たすための行動は大いにけっこうだが、それが俺の目的に反するのなら、排除する必要がある。
腐っても勇者は優秀な冒険者。
通常なら殺すのは損失だが、こいつらは他の人間を平然と殺す。人族の癌だ。
放置すると冒険者の質が下がる原因となる。
さらに俺の所有物を奪おうとする発言、もう容赦する必要はないだろう。
迷宮の中で起こった真実など、当事者が死ねば闇の中である。
「あなたたちのやったことは全部私たちの手柄になるのよ。他種族の無能に力を借りた無能の領主は、迷宮15層にたどり着くこともなく全滅しちゃいましたぁー。って報告しておくわね。ごしゅうしょうさまぁー」
勇者パーティで唯一の女性が毒を吐く。
熟女も相当に性格が歪んでいるらしい。全員不快だ。
コレットが怒りに肩を震わせている。
勇者の非道な行いは、コレットにとってとても許容できるものではないのだろう。
勇者パーティの様子を見るに、今回が初めてではないことは明らかだ。
どれほどの数の冒険者、誠実な者が奴らの毒牙にかかったのか。もったいない。
コレットはレインベル領を守るために、数々の嫌がらせや妨害に耐えてきた。
力を振りかざされ苦しめられることの悔しさを人一倍わかっている。
その理不尽を想像し、コレットは怒りと悲しみで我を忘れそうになっている。
そんなコレットを見てどう思ったのか、ホスローはコレットに細い目を嫌らしく走らせる。
「震えてしまって、最初の強気はどこにいったんだい?そういえば、君はなかなか可愛いね。美しい金髪と青い瞳。スタイルも良い。殺すのは少しもったいないな。なんなら飼ってあげても良いよ」
「…飼う?私をですか?」
「ああ、死ぬよりは良いだろう?籠の小鳥さ。僕の機嫌を損ねて殺されないかビクビクしながら、僕たちに奉仕する人生だ。なに、レインベル領なら僕たちが上手く扱ってあげるよ。水浸しのしけた領地でも、ないよりはマシだからね」
「…ホスロー、あなたに勇者を名乗る資格はありませんわ。勇者とは人族の力と希望の象徴、最高の冒険者のことです。くだらない策略に手を貸し、懸命に生きる者たちを侮辱し、あまつさえ自分の欲望のために人を殺そうとするなど。恥を知りなさい」
「ふぅん、まだそんな口がきけるんだ。なに、きちんと仕事はしているさ。君も今日まで、勇者は立派な人物だと思っていたのだろう?印象の操作など造作もないことさ。それに君も僕たちにしばらく可愛がられれば、きっとわかってくれるよ」
みんなそうだったからね、といやらしい笑みを浮かべる細目。
追従するように他の者たちが嗤う。
「勇者パーティは何をしても良いんだよ。欲しいものは何でも手に入る。見てくれの良い奴はすべて手籠めにできる。気に入らない奴は俺たちの経験値になるのさ。人間を殺すと効率よくレベルが上がるからな。魔物を狩るよりよっぽど楽だぜ」
「コレットさん、ホスロー様の前に這いつくばって慈悲を乞うたほうが良いですよ。死なずに済むし、分不相応な領主をやることもありません。そこの魔物に媚を売ったように、我々に跪き、許しを乞えば良いのです。我々に奉仕するのが、あなたの幸せなのですよ」
「逃げようとしても無駄だぜ。帰還の結晶石を含め、全ての物資は俺たちが回収済みだ。もっとも、持っていたとしてももう使う時間は与えない。お前らは詰んでるんだよ」
「あの虎のケモノ、なかなか逞しくて好みだわ。長持ちしそう。生かしておきましょう」
「お前は相変わらず物好きだな。そう言っていつもすぐに壊しちまうだろう。安心しな領主様よ、俺は優しいからすぐには殺さねぇ。あぁ、この後が楽しみだぜ。強気な女が泣いて許しを乞うのは痛快だからなぁ」
「いえいえ、力のない獣人のメスをどうしようもないほど痛みつけるほうが満足できるものですよ。あの白髪のメスも殺さないようにしてくださいね」
「では知恵ある魔物は殺して、あとは生け捕りで良いかい?報告では獣人と人族に化けた魔物が強い力を持つということだったけれど。この程度の特殊区画に苦戦するなんて、どうやら誤報告のようだしね。さっさと済ませるとしよう」
勇者パーティがまるで戦利品の分配でもするように、好き勝手なことを言っている。
通路を封鎖している者たちもニヤニヤと様子を見ている。不快極まる。
「…コレット、もう良いか」
「はいトシゾウ様。…貴族だけでなく、勇者まで腐敗しているとは。人族の一員として、情けない限りですわ」
「ご主人様とコレットに対する侮辱の数々、許せません」
「人族の悪意には慣れているつもりでしたが、これには開いた口が塞がらないですな」
シオンとコウエンも、勇者パーティに腹を立てているようだ。
奴らは俺の目的の邪魔になる。
自らの欲を満たすための行動は大いにけっこうだが、それが俺の目的に反するのなら、排除する必要がある。
腐っても勇者は優秀な冒険者。
通常なら殺すのは損失だが、こいつらは他の人間を平然と殺す。人族の癌だ。
放置すると冒険者の質が下がる原因となる。
さらに俺の所有物を奪おうとする発言、もう容赦する必要はないだろう。
0
お気に入りに追加
508
あなたにおすすめの小説
この遺跡ダンジョンはミミックで溢れている 〜Sランク斥候はミミックの真の価値を知っている〜
夢幻の翼
ファンタジー
【ダンジョンの宝箱には夢がある。だが現実はミミックばかりだ】
これはナンイード国にある遺跡ダンジョンのうちのひとつ、ワナガー遺跡でのお話。
この遺跡は他の遺跡ダンジョンに比べて宝箱が発見される率が格段に多い特徴を持つ特別なダンジョンだった。
いつもと変わらぬギルドの風景と思われたその日、ある冒険者が傷だらけで飛び込んで来た事から事態は急変する。
ダンジョンによる遭難者の救助という高難度の依頼に主人公は応えられるのか?
ボッチな俺は自宅に出来たダンジョン攻略に励む
佐原
ファンタジー
ボッチの高校生佐藤颯太は庭の草刈りをしようと思い、倉庫に鎌を取りに行くと倉庫は洞窟みたいなっていた。
その洞窟にはファンタジーのようなゴブリンやスライムが居て主人公は自身が強くなって行くことでボッチを卒業する日が来る?
それから世界中でダンジョンが出現し主人公を取り巻く環境も変わっていく。
最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?
ノデミチ
ファンタジー
ゲームをしていたと思われる者達が数十名変死を遂げ、そのゲームは運営諸共消滅する。
彼等は、そのゲーム世界に召喚或いは転生していた。
ゲームの中でもトップ級の実力を持つ騎団『地上の星』。
勇者マーズ。
盾騎士プルート。
魔法戦士ジュピター。
義賊マーキュリー。
大賢者サターン。
精霊使いガイア。
聖女ビーナス。
何者かに勇者召喚の形で、パーティ毎ベルン王国に転送される筈だった。
だが、何か違和感を感じたジュピターは召喚を拒み転生を選択する。
ゲーム内で最弱となっていたテイマー。
魔物が戦う事もあって自身のステータスは転職後軒並みダウンする不遇の存在。
ジュピターはロディと名乗り敢えてテイマーに転職して転生する。最弱職となったロディが連れていたのは、愛玩用と言っても良い魔物=ピクシー。
冒険者ギルドでも嘲笑され、パーティも組めないロディ。その彼がクエストをこなしていく事をギルドは訝しむ。
ロディには秘密がある。
転生者というだけでは無く…。
テイマー物第2弾。
ファンタジーカップ参加の為の新作。
応募に間に合いませんでしたが…。
今迄の作品と似た様な名前や同じ名前がありますが、根本的に違う世界の物語です。
カクヨムでも公開しました。
虹の向こうへ
もりえつりんご
ファンタジー
空の神が創り守る、三種の人間が住まう世界にて。
智慧の種族と呼ばれる心魔の少年・透火(トウカ)は、幼い頃に第一王子・芝蘭(シラン)に助けられ、その恩返しをするべく、従者として働く日々を送っていた。
しかしそれも、透火が種族を代表するヒト「基音」となり、世界と種族の繁栄を維持する「空の神」候補であると判明するまでのこと。
かつて、種族戦争に敗れ、衰退を辿る珠魔の代表・占音(センネ)と、第四の種族「銀の守護者」のハーク。
二人は、穢れていくこの世界を救うべく、相反する目的の元、透火と芝蘭に接触する。
芝蘭のために「基音」の立場すら利用する透火と、透火との時間を守るために「基音」や「空の神」誕生に消極的な芝蘭は、王位継承や種族関係の変化と共に、すれ違っていく。
それぞれの願いと思いを抱えて、透火、芝蘭、占音、ハークの四人は、衝突し、理解し、共有し、拒絶を繰り返して、一つの世界を紡いでいく。
そう、これは、誰かと生きる意味を考えるハイファンタジー。
ーーーーーーーーー
これは、絶望と希望に翻弄されながらも、「自分」とは何かを知っていく少年と、少年の周囲にいる思慮深い人々との関係の変化、そして、世界と個人との結びつきを描いたメリーバッドエンドな物語です。
※文体は硬派、修飾が多いです。
物語自体はRPGのような世界観・設定で作られています。
※第1部全3章までを順次公開しています。
※第2部は2019年5月現在、第1章第4話以降を執筆中です。
Fragment-memory of future-Ⅱ
黒乃
ファンタジー
小説内容の無断転載・無断使用・自作発言厳禁
Repost is prohibited.
무단 전하 금지
禁止擅自转载
W主人公で繰り広げられる冒険譚のような、一昔前のRPGを彷彿させるようなストーリーになります。
バトル要素あり。BL要素あります。苦手な方はご注意を。
今作は前作『Fragment-memory of future-』の二部作目になります。
カクヨム・ノベルアップ+でも投稿しています
Copyright 2019 黒乃
******
主人公のレイが女神の巫女として覚醒してから2年の月日が経った。
主人公のエイリークが仲間を取り戻してから2年の月日が経った。
平和かと思われていた世界。
しかし裏では確実に不穏な影が蠢いていた。
彼らに訪れる新たな脅威とは──?
──それは過去から未来へ紡ぐ物語
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
祖母の家の倉庫が異世界に通じているので異世界間貿易を行うことにしました。
rijisei
ファンタジー
偶然祖母の倉庫の奥に異世界へと通じるドアを見つけてしまった、祖母は他界しており、詳しい事情を教えてくれる人は居ない、自分の目と足で調べていくしかない、中々信じられない機会を無駄にしない為に異世界と現代を行き来奔走しながら、お互いの世界で必要なものを融通し合い、貿易生活をしていく、ご都合主義は当たり前、後付け設定も当たり前、よくある設定ではありますが、軽いです、更新はなるべく頑張ります。1話短めです、2000文字程度にしております、誤字は多めで初投稿で読みにくい部分も多々あるかと思いますがご容赦ください、更新は1日1話はします、多ければ5話ぐらいさくさくとしていきます、そんな興味をそそるようなタイトルを付けてはいないので期待せずに読んでいただけたらと思います、暗い話はないです、時間の無駄になってしまったらご勘弁を
僕の兄上マジチート ~いや、お前のが凄いよ~
SHIN
ファンタジー
それは、ある少年の物語。
ある日、前世の記憶を取り戻した少年が大切な人と再会したり周りのチートぷりに感嘆したりするけど、実は少年の方が凄かった話し。
『僕の兄上はチート過ぎて人なのに魔王です。』
『そういうお前は、愛され過ぎてチートだよな。』
そんな感じ。
『悪役令嬢はもらい受けます』の彼らが織り成すファンタジー作品です。良かったら見ていってね。
隔週日曜日に更新予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる