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宝箱は冒険者ギルドを立ち上げる

50 コウエン 冒険者ギルドは走り出す

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「コウエン、お前に戦闘班の班長を命じる。緊急の際は俺か、副ギルドマスターのシオンが戦闘の指揮をとるが、平時の迷宮探索やギルドメンバーの教育はお前の仕事だ」

「はっ、お任せください。必ずや閣下の期待に応えてみせます!」

「閣下…。うむ、期待している。冒険者ギルドの性質上、戦闘班の役割は重要で、多岐に渡ることになるだろう。俺は種族で差別をしないが、今回獣人であるお前を班長としたことには意味がある。お前はただ力を振るえば良いというわけではない」

「はっ、承知しております」

 冒険者ギルドの看板たる戦闘班。
 その班長であるコウエンに与える役割は多い。

 人族に他種族の存在を認めさせること。
 迷宮を駆け回り、瘴気に侵食される人族の生存領域を回復すること。
 冒険者の質向上のための先駆けとなること。非戦闘員の護衛。敵対勢力の排除などなど。

 戦闘班全てが実験部隊であり、実働部隊であり、花形部隊である。

 俺の考える冒険者ギルドの発展に伴って、常に進化し続けなければならない。

 今はひとくくりだが、各班は順を追って役割を細分化していく必要があるだろう。

 コウエンは虎種の獣人である。
 彼は迷宮で拾い屋をしていた。

 左手と左目を失い、さらに病に侵された状態で迷宮へ潜っていたという猛者だ。
 他の拾い屋からの信頼も厚い初老の男性である。

 昨日、食事の後に拾い屋へレイン・オブ・エリクシールを使用した。
 コウエンは治癒されたことを非常に感謝しているようで、俺のことを閣下と呼ぶ。
 レベルもそれなりに高く経験豊富なスキル持ち。
 その立ち振る舞いは武人と言うにふさわしい。

 最初はシオンを戦闘班の班長に据えようと思っていたが、良い人材を引き入れられたものだ。

「まずはスタンピードまでに可能な限り戦闘班を鍛えろ。アイテムを惜しむ必要はないが、堅実に事を運べ。不死鳥の尾羽があれば死んでも一度は蘇ることができるが、連続使用は不可能だ。それは万が一の保険だと思え」

「お任せください閣下。拾い屋は冒険者以上に迷宮の恐ろしさを知っております。誰一人欠けることなく、閣下の兵を鍛え上げて見せましょう」

 レベルというものは、本来すぐに上がるものではない。
 それに急にレベルを上げても、技術が付いて行かず結果として修羅場を超えることができない。

 シオンにはスキルと才能、豊富な戦闘経験があった。シオンは特別だ。

 いずれ冒険者ギルドに対する反発は大きくなると思われる。
 それまでの期間で、戦闘班をあらゆる事態に対処できるように鍛え上げる。
 正直かなり難しいだろう。

 …まぁ最悪上手くいかなければいろいろと力でゴリ押す予定なのだが、わざわざ言う必要はない。
 それに期待しているというのは本当だ。

 コウエンからは、王弟ラザロやかつての冒険者たちが纏っていたような強者の雰囲気を感じる。
 短期間で戦闘班を鍛え上げることも可能かもしれない。

 俺はコウエン率いる戦闘班を【迷宮主の紫水晶】で、迷宮へ送り届けた。

 迷宮の入り口には人族至上主義者の意を受けた兵士が控えている。
 レベル制限をされていない獣人は迷宮に入ることができない。
 だが、直接迷宮に送り込んでしまえば問題ない。

 冒険者ギルドには、俺が迷宮に戻った後も人間の力を高め先導する存在になってほしい。
 そして俺の元へ蒐集のための闘争と、価値ある宝を届け続けてほしい。

 俺の力で強引に拡大させることはできない。
 ギルドマスターとしてどこまで関与するかはさじ加減が難しいが、俺の目的のために様子を見ながら進めていこう。

 …そういえば誰も俺の事をマスターと呼ばないなとトシゾウは思った。

 ギルドマスター:トシゾウ オーバード・ボックス

 副ギルドマスター:シオン 獣人 白狼種

 料理班長:エルダ 食堂のおばちゃん 人族

 製作班長:ドワイト オヤジ ドワーフ

 商業班長:ベルベット 商人(あきんど) 人族

 戦闘班長:コウエン 壮年の武人 獣人 虎種

以上が冒険者ギルドの主要メンバーである。
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