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 王太子殿下がアンスリーから王都へと帰ってもう二週間ほど過ぎた。
 一緒に来た騎士達も一緒に戻ったのだろう。ということはカイもその中に含まれているはずだ。

 姿を見られただけでも良かったなと思い、レイモンドがもう少し成長していたら遠目にでも会わせてやりたかったと少し寂しい思いにもなった。

 レイモンドが騎士を目指すならばいつの日か出会うことがあるかもしれないとも考えたが、正直言って騎士になって欲しいようで欲しくなかったりもする。
 やはり親としては怪我をしたり命の危険があるような職業は嫌なのだ。だが子供の人生を親が縛ることは間違っていると思っているので最後は好きに生きて欲しいと考えていた。


 いつも週末はマルグリットさんの所へレイモンドを連れて行って、お客様から頂いたお菓子を食べながら話をするのだが、今回はアニバーサリーカードの評判が良かったらしくその話に花が咲いた。

 どうやらあのカードを受け取った人からの問い合わせも何件もあったらしく、その対応に忙しいらしい。その内のいくつかは私に仕事が回ってきそうだと思ったが口に出さないでおこう。


 家からマルグリットさんの店までは歩いても15分ほどしかかからないので、レイモンドと手を繋いで話をしながらゆっくりと向かった。
 季節は秋も終りを迎えるころで、街路樹の葉が赤や黄色に色付いてきている。



 マルグリットさんの店に着いて見ると表通りの扉には休業の札がかけられており、ショーウインドウにはカーテンが引かれている。
 今日は臨時休業にしたのかな?と思いながらも中へ入るとマルグリットさんが待っていて「待っていたわ」と椅子を進めてきた。その前のテーブルにはお菓子が置かれお茶も準備されていた。


 その時に部屋の奥からガタンと音が聞こえてきた。視線を向けると、マルグリットさんが「今、業者さんが来てるの。気にしないで」と言って椅子を進めてきた。


「エレミア、この間はありがとうね。これ、お礼よ。レイモンドも沢山食べていいわ。今日くらいはいいわよね?」

 マルグリットさんがエレミアに納得しなさいと言った視線を向けているのもわかったので、あまり言わないでおこうとレイモンドには「今日だけよ。明日はきちんとお野菜を食べる事」と約束をさせた。


「大丈夫だよお母さん。僕、お母さんの作ったご飯、どんなのでも大好きだからお野菜いっぱいでもいいよ」


 そう言ってお菓子を口に入れていた。その幸せそうな笑顔を見てかマルグリットさんは更にお菓子を勧めてきた。この調子では私も今日はご飯を食べられそうもない。

 レイモンドは少し飽きてきたのか、マルグリットさんから貰った紙に絵や字を書いたり置いてあった絵本を読んだりしてまだお菓子を口に運んでいる。
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