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「まずは王都でも行って、観光だよね」


 田舎の子爵家だったから、王都など滅多に行けるわけもなかった私は、王都のきらびやかな世界に憧れがあった。

 王宮の舞踏会とかは本で読んだりはしたけれど、そんなことは叶うはずないとわかりきっているから無駄な夢は見ない。
 どこか定住先を選びながら少し羽根を伸ばさなきゃと宿屋を探し、一週間の支払いをすませた。


 それから一応は王宮を見に行って、その豪華さと巨大さに圧倒された。こんなところに住んでいる人は迷子にならないのかしらと他人事ながら心配してしまう。

 次におしゃれなカフェに行って、今人気だというトライフルを頼んだ。
 子爵家の領地では、こんなおしゃれな店もなければこんなに美味しいお菓子もない。口いっぱいに頬張りながらその味を噛み締めた。

 時には美術館や博物館に行き、今まで見たことの無い素敵な絵や歴史のある宝飾品をじっくりと見たり、王都内の憩いの場と言われる公園で散歩したりとゆっくりとすごした。


 子爵家に嫁ぐ勉強もしなくてもいいし、マナーをとやかく言われる心配のないこの数日は私にとっても天国。やっぱり家を出て良かったわ。
 お父様たちにはちゃんと手紙を置いてきたから大丈夫よね。まあ、いまさら帰る気もないので気にしないけど。


 そして図書館に行き、国内の地図と各都市の様々な情報が書かれた本を手に取り、この先の移住先候補選びもした。
 ヘドレス子爵家の商売を習う時に、様々な都市のことを学んではいたが、こうして改めて勉強すると自分の知識が思うよりも少なかったことを思い知らされた。

 慰謝料という思いがけない収入があったことでしばらくは働かなくても生活はできるが、無駄遣いをする訳にはいかない。
 私が言うのも何だが、人生、何があるかわからないのだ。

 本当にそうだ。


 そして私は最終候補地を3箇所ほどに絞った。
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