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「お話し中でしたか?すみません」

「これはエリザベス殿、お久しぶりですな」

「宰相様、お久しぶりです。以前にお会いしてから随分立ちますね」

「ええ、黎明の羅針盤アウローラコンパスとして勲章を受け取られた時ですから八年程前ですか?しかし、まさかあなたが殿下の奥様になられるとは、あの頃には思いもしませんでしたよ。そちらはお子様ですか?」

「ええ、あなたたち、ご挨拶を」

「アレックス・ブレイクです」

「レリアナ・ブレイクです」

「賢そうなお子さんですね。殿下によく似ていらっしゃる」

「そうだろう?家族で一緒に過ごせる時間が本当にうれしくてな」


 宰相は黒髪に赤い目を持つ二人の子を見て、王室の特徴を色濃く継いでいることを憂慮した。そんな彼らを市井に野放しにしている様な今の状況をどうにかしなければと色々と策を講じなければと頭の隅で考えていた。


「では夜に、迎えに上がります」


 そう言い残して、宰相は屋敷を後にした。これからの予定も話し合っておいたので、不都合なことはないだろうとは思ったが、若干心配は残る。その姿を見たアレックスがローレンスに声をかけた。


「お父さん。どこか行くの?」

「ああ、お父さんのお兄さんが怪我をしてね、お見舞いに行くんだ」

「お見舞い?僕も行く。お父さんのお兄さんに早く良くなってほしいもん。セオが僕の回復魔法は上手だって褒めてくれたから大丈夫だよ」

「アル、お前は優しいな」

「お兄ちゃんが行くならアナも行くぅ~」

「わかった、わかった。一緒に行こうか」

「ラリー、いいの?」

「残していくと、また誰か来ても困るからな」


 暗に王太子のことを言っているのだろうと気が付いたが、あえて何も言わずに笑みを浮かべた。




 そして翌日の夜も更けた頃、宰相の家の馬車が屋敷に着き、それに乗って王宮にくるようにと伝言があった。
 そしてその馬車に乗り込み、王宮の正門ではなく役人や使用人が出入りする裏に通用口へと向かった。
 
 王宮の城を見上げていたアレックスは、ふとした疑問を口にした。


「このお家、お父さんのお家より大きいね。お父さんのお兄さんって偉いの?」

「そうだな。偉い人だな」

「じゃあ、お父さんも偉いの?」

「お父さんは偉くはないぞ。お母さんと一緒にいたくてここを出たからな」

「へぇ~、お父さん、お母さんの事大好きだもんね。そういえばレイがいっつも言ってるよ」

「レイが何を言ってるって?」

「『ラリーはリサがいないと腑抜けになる』って。腑抜けってなに?」

「レイがそんなこと言ってたの?ラリー、あなた何したのよ」

「いや…何もしてないはず…だぞ。まあ、リサがいないと心配にはなるが…」


 ローレンスはレイモンドからそんなことを言われているとは思っていなかったが、確かにリサがいなくなると何もできないという事は自覚していたので、あまり大きな声で反論はできなかった。



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