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「リサ、アルは何処に行った?」

「アルならアナ一緒にセオの家に行ってるんじゃない?」

「また行ってるのか?迷惑かけてないだろうな」

「セオって意外と子供好きみたいなのよ。アルもアナも懐いてるし」


 あの後、ローレンスは国の中枢との関りを断ち、ここホルトンに生活拠点を定めた。もちろん、リサとアレックスと一緒に過ごす為だ。 
 もともとリサを本格的に探すために地位と名誉を捨てる覚悟で仕事を片付けていたのだから、連絡を絶ったところで国が回らないことはないのだ。


 そんな生活が続き、リサとローレンスとの間に第二子となるレリアナが産まれ、家族四人でのんびりとした生活をしていた。

 リサの家のセオドアの屋敷につながる扉は残したままだが、プライバシー重視だということで呼び鈴を鳴らすようにと約束させ、ランドルフやレイモンドもセオドアの屋敷から度々リサたちの家に訪れるようになった。


 セオドアの魔力の訓練もあり、アレックスは年齢の割に上手に魔法を使いこなせるようになった。
 しかもアレックスはエリザベスとローレンスの気質をしっかりと継いで、防御魔法、回復魔法、攻撃魔法のそれぞれを使いこなせるようになっているのだから血は争えない。

 魔力量は生まれた時から高かったのを魔道具で押さえてあるので、追々慣らしながら制御できるようにしていけば両親を上回る実力者になるだろうとみんな考えていた。

 レリアナもまだ三歳だが、補助魔法や自然に影響を受ける水や風といった系統に特に親和性があるらしい。
 この二人の魔力を伸ばすことがどうやらセオドアの今の楽しみのようだ。


 ローレンスはリサが子供の世話をするために抜けた黎明の羅針盤アウローラコンパスに参加し、三人から鍛えられている。
 そのおかげで彼の実力はかなり上がり、もともとB級冒険者に近い実力はあったが、今ではS級目前だと言われている。どれだけしごかれているのだろう。

 ローレンスもしばらくはレイモンドからの冷たい視線を気にしていたが、年月がたつごとにその視線も柔らかいものになってきたのか「もう諦めたか…」とポロっと洩らし、レイモンドから殴られていたのをみんなが見ていた。



 そんな生活が続き、アレックスが7歳、レリアナが3歳になった頃、ローレンスの兄でもある国王の暗殺事件が起こったと宰相からローレンス宛てに手紙が秘密裏に届けられた。

 幸いにも一命はとりとめたものの、依然危険な状態が続いている為、亡くなる前に一度顔を出してほしいとその手紙には書かれていた。


「ラリー……行くわよ」

「どこへ?リサ、何処へ行くんだ」

「そんなの決まってるでしょ。あなたのお兄さん、このままでいいの?もうずっと会ってないんでしょ」

「ラリー、その件は俺たちが裏を突き止めておいてやる。安心して行ってこい」


 暗殺事件の裏はまだ明かされていない。事件自体公表されていないのだから、表立って行動することは憚られるのも確かだが、このまま知らないふりもできるわけがなかった。


「…みんなに頼んでもいいのか?」

「当たり前だろう。俺たちは仲間だろう?黎明の羅針盤アウローラコンパスはどんなことがあっても固い絆で結ばれてるんだからな」



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