上 下
38 / 63

37

しおりを挟む
 それから二人プラス三人の不思議な共同生活が始まった。

 とはいっても、いつもはリサとアレックスの二人だけの生活だが「俺たちも親になる」と言った言葉通り、三人が入れ替わり立ち代わり訪ねて来て、その度にアレックスにプレゼントを持って来る。

 アレックスからすると三人はみんな父親のような存在なのかもしれない。




 そんな毎日を過ごしながら、また三年の月日が過ぎた。

 アレックスもすくすくと大きくなり、会話も成り立つようになってきた。
 彼の愛くるしい笑顔はリサのみならず、ランドルフたちも魅了されていた。それが来る度のプレゼントに拍車がかかるのだろうとリサは思うのだが、いらないと言っても持ってくるのだからもう諦めているところもあった。

 そんな時、ランドルフ達が何やらこそこそと話しているのがリサの耳に入った。なんだか気になってしまい、つい口をはさんでしまう。


「ねえ、ランディ。どうしたの?」

「リサ……」


 ランドルフは数秒考えたが、リサの目をしっかりと見て口を開く。黙っているよりもいいだろうと判断したのだが、もし何かあってもみんながいるし大丈夫だろうと思ったのだ。


「町で耳に挟んだだけだが…王弟殿下が行方不明らしい」

「行方不明…?」

「ハーピーの群れが目撃されたザザ地区で、討伐部隊を率いていた王弟殿下が渓谷の崖の上に大量の血痕を残して行方不明になっているという話だ」

「……それ…嘘よね…。だって、彼は…強いわ……ハーピーなんかに……」

「リサ……俺は、この話には裏があると思っている」

「裏?裏ってなに?そんなことする必要があるの?私がザザに行って確かめてくるわ」


 ランドルフは転移陣を展開しようとしたリサの手を掴んでその発動を停止させた。そして彼女をじっと見て冷静になるように声をかけた。


「待つんだリサ。俺たちが行く。お前はここでアルと待っていろ」

「ランディ……」

「大丈夫。お前の心配するようなことはない」


 そう言って、ランドルフとセオドアは彼の家へ続く扉をくぐった。




 ランドルフとセオドアは、危険はないだろうと思いながらも一応準備をしてザザへと向かった。
 彼らも王弟殿下の実力はかなりのものだと知っている。だからこそ、ハーピーの群れに後れを取るなどありえないと考えていた。

 何か裏があるのだろうと思っていたが、そのに何があるのかは全く思いつかなかった。


 セオドアが転移陣を発動し一瞬でザザの町へ到着し、それとなく聞き込みをしてみたが、ハーピーの群れ目撃情報が事実にもかかわらず、討伐隊が編成されたという事実は確認できなかった。

 場所は間違いがないはずだが、彼らが聞いた話しと違うということはやはり何かがあるということなのだと思い至り、話しの中に出てくる崖と思われる有力な場所へと向かった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

私だけが赤の他人

有沢真尋
恋愛
 私は母の不倫により、愛人との間に生まれた不義の子だ。  この家で、私だけが赤の他人。そんな私に、家族は優しくしてくれるけれど……。 (他サイトにも公開しています)

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

処理中です...