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 リサは王都のローレンスの屋敷を出て、ガレーヌの町へと戻った。
 ギルド長のグレンに町を離れると挨拶をして、家を片付けるために一度家へと戻った。

 元々、家に荷物は多く置いていなかったこともあって、片付けはあっという間に終わった。

 そして外へ出て家の周りをぐるりと一周し、ここへ移り住んだ頃の事を思い出してお辞儀をした。


「お世話になりました」


 そしてリサは振り返らずにその家を後にして、パーティメンバーに久しぶりに会いに行った。




 最初にリーダーのランドルフ・ギャレットを訪ねた。

 リサよりも八歳年上の彼は、リサに取っては頼りがいのある兄のような存在だった。彼もまた、リサの事を妹のようにかわいがってくれていたので、他の仲間からはよく「兄妹で仲いいな」と揶揄われたものだ。
 ランドルフはパーティが休眠状態になってから、すぐに国境沿いにある移民が多く住む地域に腰を据えていた。

 彼は人情に厚い人物で、この地域に討伐に訪れ、この町に滞在した際に移民が多く生活に困窮していることを知り、心を痛めていたのだ。それで今はこの町で、彼らの生活が成り立つように生活基盤を整える手助けをしていた。

 その村に顔を出し、自分の近況を話してから次の仲間の元へと向かった。


 次に訪ねたセオドア・グラントは魔法の才に長けていて、今は各地に伝わる伝承や魔術を調べるため隣国の王立図書館に入り浸っていた。最近は国内に戻り、自身の隠れ家として購入した家で研究の毎日を送っている。
 リサは彼の作った魔道具や新しい魔法を見せてもらいながら、これからの予定を話したりして過ごした。

 最後に訪ねたレイモンドには、ローレンスの屋敷まで魔道具を届けてくれたことのお礼を言いたかったのと、パーティメンバーの中ではリサにとって一番仲が良く、ランドルフとは違う意味で気楽に接する事のできる人物だ。


「レイ、この間はありがとう」

「リサ、元気そうだな」

「うん、もう元通り。助かったわ」


 背が高く引き締まった身体を持つ美丈夫はリサに優しく微笑んだ。いつもは表情に乏しいがリサに関してはどうやら違うようで、おそらく誰が見てもそう言うだろう。


「リサはそのままあいつの所にいると思ってた」

「あいつって、ラリーのところ?」

「ああ……」

「…この先、私は彼にとって邪魔な存在になると思うから……」


 リサが目の前にあるではない『何か』を見るような遠い目をしていて、レイモンドは彼女の気持ちが自分には向いていないのだと改めて突き付けられた。
 そのことは昔から分かっていたことだが、ローレンスがリサに向ける視線を目の前で見てしまった今では、尚の事 自分に勝ち目がないことをありありと気付かされた。


「それで…これからどうするんだ?」

「ホルトンに行こうと思ってる。前に一度行った田舎町なんだけど、近くに大きな町もあって四季もあるからいいかなって思って」

「ホルトンか……あいつには言ってあるのか?」

「ラリーに?言ってないわよ。これから会うこともないと思うわ。じゃあ、また遊びに来てね、レイ」

「ああ、すぐにでも行くさ」


 リサは手を振ってそのまま転移陣でホルトンへと転移した。
 その姿をじっと見つめ、ローレンスに対しての苛立ちを隠せずに奥歯がギリッと音を立てた。



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