婚約者に忘れられていた私

稲垣桜

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18 復縁要請?

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「アシュリー、もう全部片付いたようだね」

「ロドニー様。あの時はありがとうございました。書類に関しては全て受理されまして、晴れて独り身になりました」


 あのをした日から一ヶ月が過ぎ、当主の記入済みの婚約解消届をその日の内に提出し、一応は、精査されたらしいけど、殿下方の言葉ですぐに受理されました。

 通常なら双方に確認が入るはずが、さすがに殿下方のお口添えがあったからか、それもなく。
 こういう時は、王宮で働いていたことに感謝ですわ。


「ただ、書類に関しては終わったのですが…」

「ああ、あれね」


 窓の外に見える騎士団の兵舎を見て、私は思わずため息をついてしまいました。
 あれから、エドウィン様から何度も手紙を頂き、私の顔を見ては「もう一度、やり直したい」と復縁要請がしつこい!


 もう!いい加減にしてほしい!
 何が「俺が悪かった」「結婚前の遊びだった」「愛しているのはアシュリーだけなんだ」「許してくれないか」

 ……何なんでしょうか?

 
 そんなに簡単な女に見えるのかしらね?

 相手の…えっと、ミランダ様はどうされるおつもりなのかしら。
 あちらも妙齢でしょうに。


「それで、断ったんだろう?」

「ええ、それは何度も。正直、仕事の邪魔なんですよねぇ」


 エドウィン様は私の予定をどうやって把握しているのか、町へ行ったときにも偶然を装って声をかけてきたりして、好感度を上げようと必死になっていらっしゃって、それでも無理だと思ったのか、最近では寮への行き帰りに待ち伏せをすることも。

 まあ、確かに婚約自体が白紙になったのですから、アプローチは自由です。

 が、

 が、ですよ。

 婚約が白紙になった相手にそれはないのでは?理由があるから白紙になったと理解していないのかしら?

 ああ、していないではなく、できないのかしらね。

 だから、恋人など連れて夜会に参加されるのですわね。


「その……俺から…言おうか?」

「ロドニー様から…ですか?」

「ああ、俺から」

「いえ、結構ですわ。私事ですから無関係のロドニー様に頼むわけにはいきませんわ」


 ん――無関係でもなかったかしら?でも、これ以上ご迷惑をかけるわけにはいかないですし、ねぇ。 
 でも、ロドニー様。なんだか青い顔をしていらっしゃるわ。体調でも悪いのかしら?

 働きすぎかしらね。




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