婚約者に忘れられていた私

「やっぱり帰ってきてた」 
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」

 私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
 エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。


 ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。

 私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。

 あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?

 
 まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?

 誰?

 あれ?


 せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?

 もうあなたなんてポイよポイッ。



 ※ゆる~い設定です。
 ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
 ※視点が一話一話変わる場面もあります。

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