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しおりを挟む夏の休暇も終わり、また学園生活が始まります。
マテオ様はリリアンナ様と同じ公爵家という立場から、休みの間も会うことがあったようです。ローズマリーも高位貴族ですから、顔を合わせているようです。その時に、ルカ様の顔を見たとか何とか。
なんだか、そういう情報を耳にするたびに、私の中の何かが消えていくような、そんな感じがしました。
学園生活では、いつもの通り六人で行動することが多く、それはそれで楽しい時間を過ごしました。
他のクラスメイト達も良い人ばかりで、例年にないほどの団結力があるそうです。やはり、友人というものは宝物ですわね。
「ねえ今度、みんなでシルトベルク公園の芝生広場にピクニックに行かない?」
「ピクニック!いいわね。行きましょう!」
ローズマリーの提案で、今度の休みにシルトベルク公園へピクニックに行く事になった。
いつもの6人でです。お昼はそれぞれ持ち寄って、公園で食べようという事になりました。
私は食べやすいように、やっぱりサンドウィッチ一択ですが、今回はいつものパンとは違った感じにしたかったので、料理長に相談していつもの丸パンの形を少し長めに成形してもらって、それに切り込みを入れることで、薄いパンの代わりにと考えました。やっぱり、見た目も大事ですわ。
当日は心地よい風が吹く、青空が綺麗な日だった。シルトベルク公園には4人乗りの手漕ぎボートに乗れる大きな池と、中州に渡る橋があり、その池に隣接するように広い芝生広場があって、その奥には植物園と庭園がある王都民の間では家族で訪れる場所であり、デートをする場所であり、ゆっくりと過ごす憩いの場所でもあります。
当日は現地集合という事で、一番乗りした私は、大きな樹の下の適度に日陰がある池の近くに、持ってきたブランケットを敷いて、お昼用のサンドウィッチの入ったバスケットを置いてみんなを待ちました。
池にはボートに乗った家族や恋人たちと思われる姿が視界に入ったんだけど、泳げない自分としては乗ってみたいけど少し怖いのよね。
確かに、今までに事故があったとは聞いたことがないから、きっと安全なんだろうけど、やっぱり心配になっちゃう。
そんなことを思っていると、マテオ様が歩いてくるのが見えて、その後方にはジーナとルチアの姿が見えた。私は彼女達に手を振りました。
「きもちいいね」
「ホントだね。夏も終わったし、休みも終わったし、次はなに?試験かな?」
「ヒース様、嫌なことを思い出させないでよね」
「ごめん、ごめん。でも、みんな一緒に勉強すればいいだろ。それも楽しいじゃないか」
「それはそうだけどね」
みんなが集まってから、持ち寄ったお昼を広げました。
小さな入れ物に入ったサラダや、見た目の違うカップケーキもあって、さすがに全部食べるのはきついわよね~と内心思いながら、目の前のサラダのカップを手に取ったのです。
どれもこれも美味しくて、今度またどこかに行こうと話し合ったりして時間を過ごし、時々、池に浮かぶボートに視線を向けたり、散歩をする人たちに視線を向けたり。
すると、なんだか、どこかで見た二人が歩いている気がするのよね。
見なかったことにしよう。
うん、見てない見てない。
見たくない。
そして私は逆側に座っているマテオ様に声をかけて、学園での課題の事を話しかけました。
視界に見たくないものが映らないように。
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