46 / 109
第三章
母と子 其の四
しおりを挟む
「間柴さんっ!」
声のした方に振り向くと、カメラマンの間柴さんが腰に手を当て立っていた。
彼は身体を前に傾け、編集長に荒い言葉を投げつける。
「わい、去年編集長と二人で行ったんやけど、浜辺でずぅ~~~~~~~~~~~~~っと編集長の身体ばっか撮らされたんやで?」
「お陰でぎょうさん居たカワイ子ちゃん達、ドン引きしてもて近づいても来てくれやんかったわ!!」
(編集長……)
海辺で様々なポーズをきめる編集長と、ひたすら写真を撮らされる間柴さんの姿が脳裏に浮かぶ。
外でもそんな感じなんですね……と、ついでに私も引いていると
「僕の身体、他の女性たちよりも魅力あったでしょ?」
と、編集長は間柴さんにウインクを寄越す。
「そっ、そんな魅力いらんわっ!! わいは女の子だけ撮りたいんやっ」
間柴さんは一瞬たじろいだかと思うと、首にぶら下げていた一眼レフを手に取り、私の方へ向けた。
「ちょ、ちょっと! 撮らないで下さいよっっ!!」
慌てて顔を隠す。
「ええやん、減るもんやなし」
「減ります、ってか変なもの写るじゃないですか!!」
彼が撮る写真には、なぜか〝変なモノ〟が写り込む。
毎号、ガイストに載せている写真の一部は、間柴さんが撮ってきたものだ。
「ほんま……変なもん写るせいで、海に行ってもカワイ子ちゃん撮られへんっ」
「盗撮は駄目ですよ」
「ちゃんと声かけてから撮っとるわ!」
「でも画像見せると逃げられてまうねん!!」
まぁ……写した人の顔半分に重なるようにして別の顔が写ってたり、黒い影が背後に写ってたり、手や足が生えてたりする写真なんて見たくないわよね。
気にしないのは編集長ぐらいだわ。
間柴さんはガクリと肩を落とした。
……かと思うと、手のひらに拳を落とし、満面の笑みを浮かべた。
「せや! 思いついたわっ、これをネタに御祓いしたるさかいってナンパする事できるんちゃう!?」
「……間柴さんが祓うんですか?」
「わいが出来るわけないやん」
(嫌な予感……)
「斎堂寺の坊さんに祓てもろて、感謝するカワイ子ちゃん達から連絡先ゲットするんやっ! ええ方法やと思わん!?」
「思いませんよ!!」
「ええやん、連れてってや。編集長も行きたいわな~?」
「そうだね。いっその事、皆で休み取って行く?」
「あ、それええ考えや!」
二人は楽しそうに予定を組み始める。
「だっ、駄目ですって!!」
慌てて止めに入るが、二人の会話は弾み、声は届いていないようだった。
「行くなら新しい水着買わなきゃね~」
(ちょっとっ!)
「わいも来週までにカメラの手入れしとかなあかんな~」
(ちょっと――――っ!!)
私は口をパクパクさせながら呆然と立ちすくむ。
栄慶さんと二人で海に行くのにっ
栄慶さんと二人でお泊りなのにっ
「――~~~っっ!!」
「栄慶さんとお泊りデートなんですから絶対に駄目です――――っ!!!」
(あ……)
ハッと口を押さえるが、時すでに遅く……。
「やっぱりデート、なんだね~」
「しかも泊りなんか~」
二人はチラリと互いの顔を見合わせてから私を凝視する。
その時になって、自分はからかわれていたのだと気が付いた。
(このっ、オヤジどもが――っ)
声のした方に振り向くと、カメラマンの間柴さんが腰に手を当て立っていた。
彼は身体を前に傾け、編集長に荒い言葉を投げつける。
「わい、去年編集長と二人で行ったんやけど、浜辺でずぅ~~~~~~~~~~~~~っと編集長の身体ばっか撮らされたんやで?」
「お陰でぎょうさん居たカワイ子ちゃん達、ドン引きしてもて近づいても来てくれやんかったわ!!」
(編集長……)
海辺で様々なポーズをきめる編集長と、ひたすら写真を撮らされる間柴さんの姿が脳裏に浮かぶ。
外でもそんな感じなんですね……と、ついでに私も引いていると
「僕の身体、他の女性たちよりも魅力あったでしょ?」
と、編集長は間柴さんにウインクを寄越す。
「そっ、そんな魅力いらんわっ!! わいは女の子だけ撮りたいんやっ」
間柴さんは一瞬たじろいだかと思うと、首にぶら下げていた一眼レフを手に取り、私の方へ向けた。
「ちょ、ちょっと! 撮らないで下さいよっっ!!」
慌てて顔を隠す。
「ええやん、減るもんやなし」
「減ります、ってか変なもの写るじゃないですか!!」
彼が撮る写真には、なぜか〝変なモノ〟が写り込む。
毎号、ガイストに載せている写真の一部は、間柴さんが撮ってきたものだ。
「ほんま……変なもん写るせいで、海に行ってもカワイ子ちゃん撮られへんっ」
「盗撮は駄目ですよ」
「ちゃんと声かけてから撮っとるわ!」
「でも画像見せると逃げられてまうねん!!」
まぁ……写した人の顔半分に重なるようにして別の顔が写ってたり、黒い影が背後に写ってたり、手や足が生えてたりする写真なんて見たくないわよね。
気にしないのは編集長ぐらいだわ。
間柴さんはガクリと肩を落とした。
……かと思うと、手のひらに拳を落とし、満面の笑みを浮かべた。
「せや! 思いついたわっ、これをネタに御祓いしたるさかいってナンパする事できるんちゃう!?」
「……間柴さんが祓うんですか?」
「わいが出来るわけないやん」
(嫌な予感……)
「斎堂寺の坊さんに祓てもろて、感謝するカワイ子ちゃん達から連絡先ゲットするんやっ! ええ方法やと思わん!?」
「思いませんよ!!」
「ええやん、連れてってや。編集長も行きたいわな~?」
「そうだね。いっその事、皆で休み取って行く?」
「あ、それええ考えや!」
二人は楽しそうに予定を組み始める。
「だっ、駄目ですって!!」
慌てて止めに入るが、二人の会話は弾み、声は届いていないようだった。
「行くなら新しい水着買わなきゃね~」
(ちょっとっ!)
「わいも来週までにカメラの手入れしとかなあかんな~」
(ちょっと――――っ!!)
私は口をパクパクさせながら呆然と立ちすくむ。
栄慶さんと二人で海に行くのにっ
栄慶さんと二人でお泊りなのにっ
「――~~~っっ!!」
「栄慶さんとお泊りデートなんですから絶対に駄目です――――っ!!!」
(あ……)
ハッと口を押さえるが、時すでに遅く……。
「やっぱりデート、なんだね~」
「しかも泊りなんか~」
二人はチラリと互いの顔を見合わせてから私を凝視する。
その時になって、自分はからかわれていたのだと気が付いた。
(このっ、オヤジどもが――っ)
0
お気に入りに追加
109
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる