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第一章
インテリ住職 其の十二
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「――え? それって、どういう……」
意味なのか聞き終わる前に、少年に両手で突き飛ばされる。
「きゃっ」
私はバランスを崩し、後ろにあったベッドへ倒れこんだ。
そのベッドは長年放置されていたわりには埃があまり積もっておらず、服は汚れずに済んだものの、現状が理解できない私は、呆気にとられながら少年を見上げた。
彼はニンマリと不気味な笑みを浮かべていた。
夕陽を背にしているせいか、影を落とすその表情がとても薄気味悪く、ゾッとする。
(嫌っ!!)
頭の中で逃げろと危険信号が鳴り響く。
だけど怖くて身体が動かない。
『 今までは脅かして遊ぶ事しか出来なかったけど、このカラダがあれば何でもできるよね? 』
『 このカラダで何かしても
僕 の 罪 に は な ら な い よ ね ? 』
少年はクスクス笑いながら、楽しむようにゆっくりと近づいてくる。それを見て全身からドッと汗が吹き出す。
確認するかのような言葉遣いが、さらに恐怖心を煽られる。
『 僕、一度でいいから人を殺してみたかったんだ~~ 』
少年の両手が私に向かって伸びてくる。
ベッドの向こう側へ逃げようと後ずさりするが、土台が壊れているのか身体が沈み、上手く動かせない。
「う……ぐっ!?」
そうこうしてるうちに、彼は私の首に両手を掛け、馬乗りになって押し倒してきた。
引き剥がそうと必死に抵抗するが、力が強くて振りほどけない。
「わ……たし……は……、君を……成仏させて……あげたくてっ」
声を振り絞り説得を試みるが、彼はスッと表情を消し、見下すような目を向ける。
『 偽善者。別に僕は成仏したいとか思ってないんだけど 』
「――っ」
それを聞いた瞬間、栄慶さんの言葉が脳裏をよぎった。
〝霊が皆、成仏したいと思ってるとは限らない〟
〝お前は嫌というほど経験してきたはずだ〟
(私がやろうとした事は間違いだったの?)
少年はさらに力を込めてくる。
「――うぐ……」
私……ここで死ぬのかな……。
苦しさの中、私は天井を見上げながら思う。
死んだ後……気づいてもらえるかな。
成仏できなかったら……助けてくれるかな。
彼との出会いが走馬灯のように蘇る。
私を助けてくれた彼……意地悪な彼……優しい……彼。
死んでもまた会えるだろうか……そんな事を考えながら意識を手放そうとした私に、彼の優し気な横顔が脳裏を過った。
………………嫌。
(――嫌よっ)
(そんなの嫌!)
(死んでからじゃ、嫌!!)
もう一度……生きて栄慶さんに会いたい!!
「く……ぅ……!」
涙で視界が歪みながらも最後の力を振り絞り、私は両手に力を込める。
「え……けい……さ……」
少年を睨みつけ、歯を食いしばりながら最後の抵抗を試みる。
『 ――!? 』
一瞬ビクリと彼の手が緩み、口の中に僅かな空気が送り込まれたと同時に、私は大声で叫んだ。
「栄 慶 さ ん っ っ !!」
意味なのか聞き終わる前に、少年に両手で突き飛ばされる。
「きゃっ」
私はバランスを崩し、後ろにあったベッドへ倒れこんだ。
そのベッドは長年放置されていたわりには埃があまり積もっておらず、服は汚れずに済んだものの、現状が理解できない私は、呆気にとられながら少年を見上げた。
彼はニンマリと不気味な笑みを浮かべていた。
夕陽を背にしているせいか、影を落とすその表情がとても薄気味悪く、ゾッとする。
(嫌っ!!)
頭の中で逃げろと危険信号が鳴り響く。
だけど怖くて身体が動かない。
『 今までは脅かして遊ぶ事しか出来なかったけど、このカラダがあれば何でもできるよね? 』
『 このカラダで何かしても
僕 の 罪 に は な ら な い よ ね ? 』
少年はクスクス笑いながら、楽しむようにゆっくりと近づいてくる。それを見て全身からドッと汗が吹き出す。
確認するかのような言葉遣いが、さらに恐怖心を煽られる。
『 僕、一度でいいから人を殺してみたかったんだ~~ 』
少年の両手が私に向かって伸びてくる。
ベッドの向こう側へ逃げようと後ずさりするが、土台が壊れているのか身体が沈み、上手く動かせない。
「う……ぐっ!?」
そうこうしてるうちに、彼は私の首に両手を掛け、馬乗りになって押し倒してきた。
引き剥がそうと必死に抵抗するが、力が強くて振りほどけない。
「わ……たし……は……、君を……成仏させて……あげたくてっ」
声を振り絞り説得を試みるが、彼はスッと表情を消し、見下すような目を向ける。
『 偽善者。別に僕は成仏したいとか思ってないんだけど 』
「――っ」
それを聞いた瞬間、栄慶さんの言葉が脳裏をよぎった。
〝霊が皆、成仏したいと思ってるとは限らない〟
〝お前は嫌というほど経験してきたはずだ〟
(私がやろうとした事は間違いだったの?)
少年はさらに力を込めてくる。
「――うぐ……」
私……ここで死ぬのかな……。
苦しさの中、私は天井を見上げながら思う。
死んだ後……気づいてもらえるかな。
成仏できなかったら……助けてくれるかな。
彼との出会いが走馬灯のように蘇る。
私を助けてくれた彼……意地悪な彼……優しい……彼。
死んでもまた会えるだろうか……そんな事を考えながら意識を手放そうとした私に、彼の優し気な横顔が脳裏を過った。
………………嫌。
(――嫌よっ)
(そんなの嫌!)
(死んでからじゃ、嫌!!)
もう一度……生きて栄慶さんに会いたい!!
「く……ぅ……!」
涙で視界が歪みながらも最後の力を振り絞り、私は両手に力を込める。
「え……けい……さ……」
少年を睨みつけ、歯を食いしばりながら最後の抵抗を試みる。
『 ――!? 』
一瞬ビクリと彼の手が緩み、口の中に僅かな空気が送り込まれたと同時に、私は大声で叫んだ。
「栄 慶 さ ん っ っ !!」
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