主婦と神様の恋愛事情

花咲蝶ちょ

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スケバンの恋の行方

5☆特別は一人

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「あんた、誠さんのなんなのさ、あぁん?」
 緒丹子は長身で雪を睨め付けるように金棒を背負いながら凄む。
 雪は眉根に皺を寄せて
「ああ?初対面で凄むとは、いい度胸だなぁ……」
 と言って怯まない。
 しかも、いつもの雪の女の子らしい喋り方の真逆のドスの効いた口悪さだ。
 叔母の咲羅子曰く、刀に選ばれるとケンカ早くなるのよねー…とため息を吐いたが、刀曰く、感情を隠さなくなるだけだと言っていた。
 雪と緒丹子は睨み合ったまま無言の牽制をする。

「こ、こらだめだよ、緒丹子ちゃん初対面にはちゃんと挨拶しないとね、雪ちゃんもっ!」
 榊誠は慌てて二人の間に入って仲裁する。
「あたいは持國緒丹子じごくおにこ、レディースの番長やってるんで、世露死苦!」
 緒丹子は鬼金棒を担ぎしゃがんで凄み挨拶をする姿はいかにもレディース番長だった。
「……私は桜庭雪、榊さんと同じ《太刀の者》の役目を持つ者よ。」
 雪はにっこり花が綻ぶような笑みをして手を差し出す。
「太刀の者…だと……どうりでやな感じがした……」
 そう言ってあからさまに嫌な顔をする。
 太刀の者は人ならざる者に容赦ない。
 古くは鬼退治の源頼光の時代まで遡る。
「僕も太刀の者だけどね…緒丹子ちゃん僕のこともやな感じだったのか…ごめんね」
 榊誠はしゅんとして謝る。
「誠さんはいいんですよ!特別なんですから!」
 緒丹子は慌てて訂正する。
「なら、雪ちゃんの事も特別だと認めてほしいなぁ」
「なんで!特別なんて一人だけだ!認めらんねぇ!」
 緒丹子はカッとなって怒鳴る。
「確かに特別は一人だけですよ。特別は二人もいらないんですよ、誠さん」
 雪は緒丹子の意見に賛同する。
 けれど緒丹子は良からぬ感が働く。
(それは私が特別じゃないと言いたいのか⁉︎)
 宣戦布告された気分で頭にツノが生えてきた。
 榊誠はそのことに気づいて、慌てる。
「ねえ!そろそろ仕事しようか?僕はあんまり霊とか見えないんだよね。だから二人に今日の浄化を頼んだんだ」
「そうですね、さっさと仕事をしちゃいましょう。そして早く帰りたいです」
 雪は正直に思っていることを言う。
「そうだね。桜庭の家の人たち心配で眠れなくなってるかもだしね」
 榊誠はのほほんした顔を引き締めて緒丹子を見つめ、手を握る。
「緒丹子ちゃんも頼むよ…ね?」
 艶のある榊誠の真面目の声に緒丹子はドキッとする。
「しゃ、しゃーないな…話は仕事をし終わったあとだ」
 緒丹子は顔を真っ赤にさせて承諾した。
 挑むトンネルの悪霊は複数でこちらを見つめて、手招きするように瘴気を放っていた。
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