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雪の過去
雪の幼い頃の話☆3
しおりを挟む「唯一の親戚であるわしたちは、警察から事情を知り、雪を迎えに行って偽物の子を引き取ったのだ」
そこには生まれつき根性の悪そうな
女の子が待っていた。
直感的にこれは雪じゃないと思ったのは咲羅子もだったが、警察が雪だと言うのだから仕方なく連れ帰った。
季節はその時のことを思い出してため息を吐く。
もっと雪の家族に接していればあんな間違いはなかった。
親戚の音信不通というものは恐ろしいと思った。
季節自身生まれたてで命を狙われ桜庭の宮に救われなかったらこのような老人になるまでの人生は送れなかったと思う。
だからこそ雪を自分に重ねて不憫に思った。
「世間では『無事見つかって良かった、事件も解決』
ということになってたみたいだけど、私自身ショックのあまり記憶を失って一年施設にいたの……まんまと人生入れ替えられていたのよね」
頬に手を当ててふーっと息を吐いてみた。
「でも、どうして取り替えっこなんて事件になったのだ?」
晴房は腑に落ちない。
季節はそのことはあまり真実を話したくはなかったが、神である晴房に嘘をつくことはバチが当たると思い瞳を伏せて、
「犯人の家族は自分の子供を裕福にして後から引き取るつもりだったのではないか?それも本人が消えてしまったのでどうにもならないがな……」
いまだに真意はわからない。
西洋のあやかしの本で取り替えっこをする妖精がいるのを知ったが、それの類だと今は思っている。
いや、むしろそうであって欲しい。
そう思い季節はため息をまた吐く。
「消えたって……どういうこと?」
李流は首を傾げる。
元の親のところに帰れたのではないのだろうか?
取り替えた子供を元親に返さなかったということならばなぜ母は無事に桜庭家にきたのだろうか?
顎髭を撫でつつ、当時のことを
ことを思い出しながら、
「入れ替わってうちに来た子供があまりにも品が悪くて、咲羅子にも懐かないし、わしらの子供もその子を異分子扱いしていたな。桜太郎は年長だったために兄弟たちを諫めていたな……」
不倫する前までは出来の良い息子だだった事を思うと深くため息を無駄に吐いた。
「おじいさん、そんなにため息吐かなくていいよ、幸せ逃げちゃうよ」
李流は、祖父を気遣う。
「わしたちはどうしても、その子供が腑に落ちないお義母さんは桜庭家の血筋のものしか触れない刀を渡した。」
「でも、おばさんたちは抜けなかったんでしょ?意味ないじゃ…」
「抜けなくても、桜庭家の血筋の四親等までなら女子も男子も触れる事ができるのよ。李流も幼い頃触ったことあるでしょ?」
「そういえば…どんなに頑張っても鞘がぬけなかったけど……」
その様子を母と祖母はニコニコと見ていた。
祖父は触れてなかった気がする。
ただし親戚以外のものが触れれば呪いの障りが起こるとしれているの。」
そんな恐ろしい刀を触れていたのか
と思うと、李流はゾッとした。
☆
「あなたが本当に雪ちゃんならば、鞘を抜いてみて……」
そういって、咲羅子は覚悟を決めたような怒りを秘めた気迫を季節は感じた。
雪として取り替えっこされた子は空気の読めない素養がなってなかった子供だったとしても咲羅子な雰囲気に真剣…命の危機を感じながらも刀に触れた。
「真実の名前を名乗って…名乗らないと怖い事になるわ……」
咲羅子はそう言ったのに、その子は自分のことを、
『雪』と偽りの名前を名乗った。
その瞬間その子は瞬時に魂から消滅されてしまったのだ。
「え、ほんとのことなの?」
とんでもない展開に李流は驚く。
その話は初耳だった。
「神の宿った刀……晴房さんみたいなものね、人の形をしていない分容赦がないのよね…」
雪は刀の持ち主だった為に刀の気性を知っているので納得する。
「私も容赦ないぞ。刀の気持ちはとーってもよくわかる」
晴房はうんうんとうなづく。
(やはり晴房は神なのかな?)
と李流は思った。
季節はあの時のことを思いだす。
☆
「このことは、わざとやった私の罪なのよ……」
といい、咲羅子はじっと刀を見つめて肩を落とした。
「こうなることは分かっていた……」
朔羅子の不安と怒りに任せて持たせたようなものだった。
だけど、それは人の命を消滅させることにつながる。
分かっていて触れさせてしまった……
後悔は後から来るもの…分かっていたのに…
「私も罪を背負ってしまったわね…」
悲しげに夫の季節に言う。
季節は咲羅子の気持ちを痛いほど伝わる。
「そんなことはない、偽りは神にとって禁忌なだけだ…咲羅子は罪など背負っていない。あの子は自分自身の罪を精算しただけだ」
それは刀が季節に伝えた言葉でもあり季節の本心。
「ふふ、ありがとう、あなた…」
咲羅子は清廉潔白で悪事が嫌いな真っ直ぐなところがある。
それゆえに脆さもあり季節は朔羅子をとても守りたいと思い愛している。
朔羅子の傷ついた心を慰めたくて、癒したくて咲羅子を季節は強く抱きしめた。
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