主婦と神様の恋愛事情

花咲蝶ちょ

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番外編2

瑠香と妻と神の誓い

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 瑠香の妻も神様だった。

『世界で誰よりも』愛してる
という言葉が命を奪う。

 それは、神との誓い違えちかいたがえ

 神の国の統治者、最高神の子孫であるおうを守るための神の化身は超人的な力を神と誓い授かる。

 それは血族から生まれることもあるが、神がかりで誓うこともある。

 国を思う気持ちが強く忠誠がなければ誓いなんて恐れ多くて命を落とす。

 それでも、皇を守り国を守ることを誓う事に瑠香も妻の葛葉子も迷いはなかった。

 それに瑠香は、神を審査する役目を持つ審神者。

 妻は白狐の獣の神と契約して皇を愛し生きながらえていた。

 長くは生きられないと分っていた。

 若い時に出会い、恋に落ちて、一般的な幸せな家庭を築けたと思う。

 少し変わっていたのは、裏側異界から皇を守る仕事を担った。
 その間、宮中離れて、妻との短い時を過ごしたかったから……


 十五年。
 共にいられた。

 けれどもう、今日で終わり……

 病で死ぬ前に愛を捧ぐ約束をしていた。


「死に際に嬉しい言霊ね」

 一番欲しかった言葉を貰えるなんて……

 呪い(ちかい)に苦しみ呪い(誓)に癒しを……

 瑠香が、妻にかけた神呪いで、その誓いの言霊を悔いる。

 だが、それが、妻、葛葉子を今日まで呪い、生きながらせたのだ。

 けれど、もう、体のほうが限界だった。


「世界で誰よりも」愛している
は禁句。

 葛葉子は少し晴房に似ている。
 内掌典の巫女だった晴房の母の妹だった。

 せっかくの良い巫女なのにハルの母と同じことになるのかと嘆かれた。
 けれど、穢はなく、ごく一般な寿退社。
 神かかりの家系で、名家の巫女は惜しいのは当たり前。
 陛下にも祝福された縁になった。

 ルカも好きになっただけで神を裏切ってない。

『世界で誰よりも』と言霊にすることは死の言霊にする契約だ。

『世界で誰よりも』と、もとより言えない。
 誰よりも愛してるのは国を背負う互いに陛下だけだから。

 陛下に祝福されたから結婚出来て、この国で平和に暮らせるのに愛せずにはいられないではないか。

 たった十五年。
 けれど、幸せな十五年…

 儚く葛葉子は愛しいの夫に微笑む。
 手を握ってもらうために枕の横に力を振り絞っておいた手をギュッと力強く、指を絡めて握られる。魂を繋ぎ止めるように。


「神は慈悲深いな。」
「どこが?君の病は神の呪いなのに……」

「ちがう、それは、これは宿命よ……」
 『瑠香に罪はない。罪と思わないで……』

 もう、口を動かす力も辛い……
 思いを読めるなら、読んで……


 こうなることはわかっていた。
 わかっていたから一度の人生人を愛したかった。
 ルカと家庭を築きたかった。

 私が苦しんだら愛のことばが私を救う。

 最後は好きなだけ私に言霊をくれ。

 神はわかっていてそれを言霊に選んだのだから。

 微笑むが弱々しい妻の唇にキスをする、最後の涙が頬を伝う。


「『世界で誰よりも』一番愛してる……」




 互いに言うと、
 妻は微笑み命尽きた。






『世界で誰よりも愛してる』
 最初で最後の禁句の代償は命を奪う力を削除された。
 皇を守る特別な神力『霊的に人を生まれ変わらせる』ことが出来なくなっただけ……
 自分も共に葛葉子と逝く覚悟はしてたのにルカの神の親は自分そっくりに意地悪だ。


『これで皇を守れなかったらすべて瑠香の責任だ。』
とも神に告げられた。
 香茂の能力だけでもどうにかすることはできるけど……
 穢れがたまる一方だ。
 生まれ変わられる力が、死の穢も浄化できた……
 潔斎は必要だが自らの手を汚すわけではなく神の意思だったのだから穢はないのだ。
 

 


「私が、代わりに陛下に近づくものを消せば良いだけだろ!その代わり、ずっとお前は私のそばにいろ!
新!陰陽寮長としての命令だ。」

 瑠香の父の跡を継ぎ、阿倍野家の血筋も持って神の化身である晴房が陰陽寮長になっていた。
 いろいろ仕込まれたと聞いている。
 神事の時以外なかなか合う機会が無かったが、これからは晴房と共に宮中を守護する。

「もう、私を寂しい思いをさせるな……戻ってきて嬉しいぞ」

 二十歳すぎたの晴房は瑠香に抱きつく。
 幼子の頃のように。

「ああ。
そうしてやるさ。
お前を見守る審神者だからな。」

 神の力は無くしたが、裁く力はまだある。

 お前が神であり人として正く力を使うように監視してやる。

 晴房には私と同じ辛い別れを味あわせたくないから……


★☆
 神との契約を問われた晴房は魂が神のもとに上がってしまい、瑠香は慌てて、李流と雪を連れ病院で晴房の様子を見て三人は青ざめる。

 けれど、今日は奇跡の神の日、神との交信で、祈り姫の法子殿下と縁があるらしく、李流の魂を神のもとへ送った。

 その間、晴房の意識が戻らなくて不安になってる雪の隣に座る。
 
「晴房はあなたに失礼なプロポーズばかりをしていると思いますが、言えない言霊の裏返しなのです」

《世界で誰よりも愛してると言えないのです。我々神に近い者は……晴房は特に神に近い。今許しを貰いにいっているのです》

 テレパシーで、言われてびっくりするが怖がられることはなかった。

「あなたも、神様なんですか?」
「元ですけどね。」
「いまも神様みたいです。晴房さんとは真逆な感じしますけど、綺麗で優しい方ですね」

 不安なのに、素直に、微笑む雪のは強い女性だなと感じた。

「……晴房さんは、プロポーズ通り子供を授けてくれた。それが、愛の言葉だとおもっているから、最上級の愛の言葉はいらないの……」
 やはり、直接的なことを言ったのかと呆れたし、実行してしまった晴房に苦笑する。

 晴房も考えは無かったわけではないが、いや、愛のなせる命がけの恋をしたのだ。

 さすが、葛葉子の血縁。

 と納得いって笑ってしまった。

「?」
「いや、失礼。私は宮中に戻ります。晴房は戻ってきます。
 李流くんは晴房の尻を叩くくらい優秀な息子さんですからつれもどしてくれますよ」

 瑠香は美しく微笑んで病院をあとにした。
 

 瑠香は久々に心が晴れた気がした。
 晴房の事を心配していたが、雪の存在が晴房を変えて良き方向に導いてくれると感じたからか。

「女性は強いな……葛葉子」
 雪が降っていた。
 町は奇跡のホワイトクリスマスになることに喜ぶ。
 クリスマス家族と過ごした楽しかったことを思い出し気まぐれで、迷惑だろうが息子たちにプレゼントを置いて帰り、宮中の陰陽寮に帰った。
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