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あやかしと神様の夏休み(番外編)

12☆いつまでも年中行事

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「ねーちゃん、良い体してるなぁ、はぁはぁ…」
 後ろから抱きしめられて胸を掴むように触られる。
 耳元で気持ち悪い、息を吐かれて鳥肌が立つ。
「おしりは、なんか、変なさわりごこちだな…」
 胸から手を離し、おしりを撫でられる。けれど尻尾が盛り上がって触り心地に疑問を思われても、尻尾も敏感なところだ。

「ぎゃぁ!変態がっ!さわるな!」
 触られて、怖くて、震える。
 瑠香以外の、男にこんなことされて、怒りより恐怖だった。

「脱がせて確かめてみようぜ!」
「いや!やめて!」
「お、おかぁさん!」
 青ざめた桂は何を間違えたか、葛葉子をお母さんと呼んだみたいだと、葛葉子は思ったが、それどころじゃない!
 結った髪が解ける。
 帯が解かれそうになる。
 葛葉子は必死に抵抗する。

「やめて!瑠香っ!たすけて!」
「うるさいだまっつ!ぐつっ!」

 煙が男の喉に絡みつき絞めて言葉を紡がせない。

「マジで、霊的に生まれ変わらせてやろうか?」
 真っ黒な荒御魂を背後に揺らめかせて瑠香は低い声で言い放つと、手をかざして、キラキラ光る香の煙を更に出して男たちにまとわせつかせる。

「うわっ!なんだ!この煙は!」
「うごけない!っ!服が溶けてる!?」
 神の力をまとった光りの煙は、人攫い共の服をみるみる溶かした。

「皮膚まで溶かしてやろう…」
 さらに、そう想像しながら力を使おうとしたら、

『皇室のため以外にはそこまではしてはいけないよ…穢れてしまえば私はもう、力を貸せない…
 命を奪う以外の方法ならいくらでもよいよ』
「ちっ!」
 瑠香は、神に忠告されて、舌打ちをした。
 本気で殺してやろうと思ったのを神に止められ瑠香は、仕方なく腕を上げると、操る煙は悪人を持ち上げ空に上がる。
 素っ裸な人攫いは宙に浮き上がり、花火が打ち上がるのを待つ人々の目を疑わせた。

 警察が来てわいせつ行為と最近騒がせている人攫いの容疑で逮捕された。

 浴衣が着崩されて怯えていた。
 瑠香が近づくと、涙を流しながら抱きつく。
 瑠香は葛葉子を胸に抱きしめる。

「怖かった!瑠香以外に胸触られるのやだ!耳元に息を吐かれるのやだ!気持ち悪い!触り直して!」
 あまりのことに錯乱してる。

「葛葉子、おちついて…」
 さらに、ぎゅーーっと、泣きながら瑠香に抱きつく。
 ほんとに怖い思いをしたんだと思うと可哀想で胸が痛い。
 あの男どもをやっぱり抹殺したい気持ちになる。
 抱きしめながら葛葉子の首筋にキスをする。
 葛葉子の望みどおり胸にふれる。
 着崩されてるから手が入りやすい。
 自分以外の男が触ったと思うと自分自身に怒りが湧く。
 もっと早く助けに来れればよかったと…
 
 瑠香は葛葉子の豊かな膨らみの直接生肌を触れる。
 ビクリと肩を振るわせる、顔が赤くなる。
「んっ…瑠香っ…」
 自分で「触って」と言ったので、やめてとは言えなかった。
 まさか、直接肌を触るとは…調子に乗りすぎだと思うけど…
 瑠香以外の男に触られた感触をもっと消してほしい…
 瑠香はその心を聞いて
 胸の谷間に顔を下ろし唇を寄せキスをする…
 さらに、浴衣を脱がす勢いだ。
 瑠香は理性をなくしてると思うと、パシン!と手を叩いてやめさせる。

「さ、更に、脱がしてどうする!ひと目もあるのに!」
 いや、明かりはあまり届かない場所で、人気もない所だけど…
 瑠香はムッとして、

「彼氏に脱がされるのは彼女の義務だぞ。」
「恐れ多くも東殿下の真似するな…!」
 いつもの売り言葉に買い言葉で、
 ふふっと、お互い笑って見つめ合ってキスをする。
 瑠香は葛葉子の浴衣を直すのを手早く手伝った。

「彼氏も彼女に脱がされるの義務?」
 帯を締めてもらっている最中そんなことを葛葉子は言う。
「ん?」
 瑠香の浴衣襟元を葛葉子に開けられ胸の真ん中にキスをされる。
「…つっ!」
「…はしたない?」
 上目遣いで聞いてきた。
「もっとして」
「ばか!しないよっ!」
 又、微笑み合ってもう二人だけの世界になっているが。

「………子どもたちの前でよくそんなことできるよね?」
 桂にニコニコして言われた。

「わ、忘れてた!」
 気配を消していたように大人しかったし、あまりの出来事に瑠香が助けてくれたことが嬉しすぎて二人だけの世界になってしまいすぎていた。

「ご、ごめんね、お父さんとお母さんはどこかな?今度はそっちを探そうか?」

 薫は葛葉子と瑠香を指差して、

「目の前にいるじゃん!」
 きつね耳、尻尾は阿倍野家に現れる血筋の証拠…だと瑠香は思う。

「あーあー…呪術解けちゃうよ……」
 肩をすくめて、仕方ないというように桂は微笑む。
 その手にはさっき葛葉子が襲われ落ちた簪を握ってる。

「あまりにラブラブすぎる両親を時逆の呪法を成功させたから若い頃をちょっと邪魔して引き剥がしてやろうかと思って過去に来ちゃったんだけど、やっぱり、無理みたい。今も昔もラブラブすぎるよ」
 早口でそう物騒なことを桂は言う。
「え?両親って…?」
 葛葉子は意味がうまく飲み込めないけれど…
「もしかして、お前たちはオレたちの子供か?」
 察しが良い瑠香は、信じられないというように二人を見つめる。
 確かに、ルカの神が夢でみせた子供二人だ。

「え、ほんとに!こんなカワイイ子どもたちが!?」
 葛葉子は夢をすっかり忘れてしまったらしい。
 葛葉子は二人に触ろうとしたら、スカッとカラ振った。

「あれ?どうして?」
「バレたら帰るのが掟なんだ…」
 未来のことはバレては行けない決まり事。

「にいちゃん!早く本物のとーさん。かーさんにあいたいよ!」
「わかったよ。すぐに帰れるよ。」
 ポンポンと弟の薫の頭を撫でる。
「またね、かーさん。とーさん。」
「バイバイ!」
 若い二人をじっくり観察忘れないように見つめて、

「ここで会ったことは二人は忘れちゃうけど………」

大好きだよ…いつまでも…


ボーン!

 と花火が鳴って、二人は、ハッとする。
 花火大会が始まった。
 
「なにしてたんだっけ?」
「キスの続きだよ…」
「ちがうよ!
てか、お母さんたちと合流しなきゃ!」
 暴漢に襲われたのはわかるけどなんで襲われたか原因を思い出せない。
 けれど些細なことだと思った。


 陰陽寮長は場所取りして、家族の集合を待っていて、遅れてきた二人に鋭い瞳で息子をにらみ

「ナニしてたのか?」
「し、してないよ。」

 大輪の花火が空に咲き誇る。
 瑠香の肩に頭を寄せて、肩を抱かれながら見あげる。

 家族で見る花火はいいものだと葛葉子は思った。

「来年も見られたらいいなぁ」
「再来年もずっと見られるよ。」
 さらに、ぎゅっと肩を引き寄せ耳元で…

「オレの奥さんになってるんだから…」




「何してた?」

 父が二人を必死に探して見つけてくれた。

「迷子してた。」
 薫が狐の尻尾と耳を出して言う。

「迷子?」
 そう不思議に思いつつ。
 息子の薫にキスをすると耳と尻尾が消えてもとの普通の子供に戻る。

「それにしても、人酔いするくせに迎えに来てくれるなんて嬉しいよ」
「ん?そんなの昔のことだよ。」
「ほんと?それと、これ。思い出した?」
 桂は父にかんざしを差し出した。

「………そういうことか」
 父は瞳を一瞬見開いたけれど、ふっと優しく微笑む。
 忘れた記憶はきっかけがあれば思い出す。
 それは、当時、妻が大切なかんざしを無くしたことに焦った菊の模様のかんざしで思い出した。

 父は二人の愛しい子供をぎゅっと抱きしめた。

「叔母さんも叔父さんも待ってるよ。さあ、急ぐぞ。」
 息子たちの手を引いて妻の元へ急ぐ。

「ねえ。父さん…来年も、再来年もみんなで花火見ようね。ずっと…」
「ああ…そうだな…」
 三人が無事帰ってきて、ほっとした母は、

「遅いぞ、お前たち!心配したんだから!」
「かーさん!お待たせ!」
「かーさん!大好き!」
 薫は母の胸にダイブして抱擁する。愛おしそうに薫を抱き締め、桂も抱きしめる。
 母は今も昔も変わらず子どもたちに優しいと、桂は思う。
 ボーンと大きな大輪の花火を家族全員見上げて見とれる。
 花火は毎年美しく夜空に咲き誇るのだった。
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