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雪女とナマハゲ

流花の秘め事

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(あら?少し寝てしまったみたい……って…)

 目の前に晴綛の顔が落ちそうになってる。
「くかー…くかー…」
 口を開けて俯いて眠っている。
 それでも、端正な顔…
 明綛と双子で同じ顔だけど…違う…
 明綛は黒狐として生まれ黒髪だった。
 無表情で、ふとした瞬間表情が柔らかくなる彼に一目惚れした……心奪われた。

 でも、きっと彼とはもう会えない……

 神が許さないのではなく、そういうなのだ……
 そんな彼を思うといつも切なくなる……
 忘れることなどできないし、忘れてはいけないと思う…

 それに比べて晴綛は外国人のように金髪だ。
 瞳も青いため外国人だと思われてしまうが、それは神を見る瞳だからだ。
 でも彼はいつも表情がコロコロ変わってわかりやすい……
 時たま冷酷な時もある…心を殺す…そんな感じ……

 明綛とは本当に真逆…けれど双子だから似ている。
 運命も宿命も多分似ているのだろう……

 そして彼は一人になることを覚悟している。
「わしは一人でいるべきなのだ……」
 と、言っていた。
 それはなぜだかわからないけれど……
 その代わり私や姪っ子たちをとても可愛がる。
 だけど、結婚や子供を残すことをしたくないようだった…

(寂しい晴綛に寄り添いたい…一人になろうとしないで…)
 と、切なく思う…

 そんな晴綛が何かいい夢を見ているのかヘラッとした顔をしている。
「ふふ…可愛い」
 私は思わず呟いてしまう。
 男の人に可愛いというのは失礼だけれど……

 愛おしいとは陛下以外言えないことが救いになる…

 本当は二人のことが恋しいし、愛おしい……

 でも、言えない…
 さらに、どちらかを裏切ることは胸がとても痛いから…

 陛下が一番愛おしければ…胸の痛みも薄くなる……
 だからこそ、
 二人とも平等に愛おしと思うことは許してほしい……
「ぐかー…」
 晴綛の顔がさらに近づく。
 顔ではなく胸元に…よだれが落ちた…

『ぎゃーーーー!
なまるいよだれがっ!きたない』

と、叫びそうに成ったけれど、眠っているのを起こしたくない。
 彼は寝ずに仕事をしていたのだから……ぐうたらなんて言って悪いことを言ったと後悔する。
「でも、ど、どうしましょう…」
 晴綛のよだれは汚いとおもうけど…許してしまう…
 だけど、そのよだれが普通の人より多い……むしろ水のように垂れてくる……
 よだれが左の乳房の方に落ちて、なぞるように肌を滑り敏感なところを辿る。
「っ…」
 なぜか最後に睦あった時のことを思い出してしまう……

 その時の熱まで無意味に思い出してしまうのはあまりにも自分がはしたない……

私は心も体も穢れている…


 晴綛は女に好かれるけれど誰とも結ばれていない清い体なのに……


 あなたを穢して…あなたに穢されたい……本能を解放して結ばれたい……

 そんな本心をいつかさらけ出せる日が来たのなら……
 あなたを選ぶ覚悟を決められる…きっと……

だけど…

 そんな私を隠してずっと晴綛に恋をする……
 だから他の女を見ないで….
 私と同じに恋をしていてほしい……
 互いの気持ちを感じながら…この辛くて甘い恋心の関係を続けたい……
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