あやかしと神様の円満成就（R）

あやかしと神様の恋愛未満

葛葉子と久美の仲直り☆1キライ

　狭山久美は悩んでいた。
（どうやって…葛葉子に謝ったらいいの…？）
　そう思いながら、自分の席の前に座る葛葉子の背を見てため息を吐いた。
　事の原因は葛葉子がお財布を盗んだ事に腹が立って言い争いをした。

「私じゃないよ！落ちてたから拾っただけで…」
　葛葉子は戸惑いそういった。
　その様子が怪しく感じた。
「拾ったら自分のものにしていいと思ってんの？」
　と、久美は低い声で怒りを感じさせる。
　さらに、葛葉子はビクリとして青ざめる。
　葛葉子を疑うことを止められなかったというより優位に立てた気分で止めなかった。
　葛葉子は疑われて心が痛くて瞳に涙を浮かべて言葉失った。
　いい負けたといことは、私に利がある！と確信したときに、

「葛葉子は絶対に盗んでない。オレが保証するし、断言する」
　香茂瑠香は涙を落としそうになった葛葉子をかばうように久美に立ちはだかった。
　いつものポーカーフェイスなのに、雰囲気が恐ろしかった。
　瞳が冷たく黒いオーラを放っていて、怒りに触れた感覚だった。

「俺も葛葉子さんはそんな事する子じゃないって断言するよ。」
　葛葉子の隣の席の滝口臣も葛葉子をかばう。
　さらに、
「僕の学友である彼女がそんなことすると思う？」
　東親王殿下まで、ニコニコ顔でそうわざと問われて言葉に詰まったのは久美の方だった。
　優位に立っていたのに不利になった…

（とても、くやしい。それにそれに……）
　久美は唇を噛み顔を真っ赤にして、 

「ふん…もういいわ…」
　といい、自分の席に乱暴に座って、
「羨ましい子……」
　そう、わざと、口に出してしまった。

　かっこいい男子に庇われてほんっとに羨ましくてムカついた。

　どうにかして、落としてやりたかった…同じ奈落に……

　そんな、ひどい考えをしていた事が不思議なくらい強く敵視をしていて葛葉子をイジメていた。
　だけど、いつの間にか体育館で東親王殿下のありがたいお話を聞いたあと頭がぼーっとして、どうして、あんなに葛葉子を敵視していたのわからなくなった。

　わからない…でも……羨ましいと思っていたことは確かだった……
　だから、葛葉子が元気よく普通に挨拶してくれても、素直になれなくて挨拶できなかった。

　それだけでも、胸が痛い…
　苦しい…後悔する…
　昨日まではこんな態度取っていてもどうって事無かったのに……

　そんな自分が一番嫌い…。

　自分が大ッキライ……！

　久美はそう思うと心が苦しいが、自分を苦しく縛ることは葛葉子への、贖罪になっていた…

　そんな、暗い心は目に見えない『何か』に取り憑かれるきっかけになるのだった…