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あやかしと神様と付喪神

1☆大掃除

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 十二月の乾燥した寒空の天気の良い日に瑠香と葛葉子で旧香茂の新居改築のために大掃除をしていた。

 ジジ様が譲り受けた旧香茂屋敷の夫婦の新居だけは真新しく新築になった。
 夫婦とジジ様と、子供が生まれてきた時の部屋さえあればいい。
 旧家の方は社殿のようにも使えるように改築予定だ。
 いずれは威津那を祀る社を建て風水を利用し陛下の気の安定を務める鎮護の社を作ることが決定したからだ。
 だが、公にしない。
 いずれ黄泉の国へ旅立つだろうと威津那は最後に予見したのだから完全に縛ることはしない、しなくても御霊は陛下をお守りしているのだから……

 ジジ様が預かった屋敷の中は当時、幼い瑠香や真陽が使っていたものがそのまま放置されていた。
 異界に暫くあったためにホコリはかぶってない。
 当時のまま時が止まった感じだった。
 瑠香と葛葉子は大掃除ならぬ懐かし物探しに真陽と春陽とお母さんが加わった。
 一通り大切なものは今の家にあるが大切なものや要らないものを改めて確認して処分するつもりだ。

「あら、懐かしい。」
 お母さんは紺色のワンピースを箱の中から取り出して言った。
 それはアクセントに白いレースの襟と袖付きだった。
「昔瑠香が来ていた洋服だわ。」
 瑠香は男の子だったが、女の子の格好をしていた。
 それは男の子を魔から守る儀式や伝統でもあった。
「あの頃は可愛い妹だったわよねー」
 しみじみ思って瑠香を見る。
 神秘的で美男になったとしても、あの頃の可愛さは残っていない。
「可愛くない弟で悪かったな」
 腕を組んでドヤ顔で真陽を見る。
「でも、髪が長いってことはまだそっちの毛もあるんじゃないの?」
「男のような真っ平らな胸を持った姉さんに言われたくない。」
「はぁあ?姉の胸をジロジロ見てんじゃないわよ!変態弟がっ!」
 真陽はペチャパイなのはコンプレックスらしい。
「やめなさいっ!二人とも!いい年して!葛葉子ちゃんもハルヒくんも困ってるでしょ!」
 お母さんは我が子達に怒る。
「私は瑠香が女装趣味でも構わないよ!この間の女装は素敵だったよ。まだかわいいよ!」
 とフォローしたが、
「ふふ…それフォローになってないよ…まぁ、葛葉子にいいと思ってもらえるなら嬉しいよ」
 瑠香は苦笑しながら、自分の長い髪の先をいじってみた。
 真陽に言われた事がやはり少し気になっているらしい……
 そんな弟にしてやったりの笑顔を向けたのを隠して、
「そういえば、葛葉子ちゃんは男の子のカッコばかりしてたわよね?」
 真陽は、葛葉子は可愛い男の子だとはじめは思っていた。

「うーん。そうだったかも……。
 女の子のカッコもしてたよ。」
 瑠香のワンピースのように可愛いお洋服も着ていた。
 そういえば、父様に男の子の格好をしていなさいと言われていてズボンを穿いていた。
 外で遊び回るには楽だったから気にしなかったけど……
 お母さんは思い出したように指を鳴らして、

「あれよ、葛葉子ちゃんがあまりにも可愛いから攫われないように男の子のカッコさせられてたのよ。一回誘拐されたことあったじゃない!それ以来よきっと!」
 お母さんは興奮して言った。

「そんなことあったのか?」
「えーっ!それ覚えてないです!」
 瑠香も葛葉子もそのことをすっかり忘れていて是非とも聞きたかった。
 名家の二人を誘拐して身代金を要求したが、二人の父が乗り込んで助けに行って事なきを得たと言う事だった。

「あの頃、お母さん一人慌てて青くなってたのよ。お父さんたちって仕事のせいもあるけど、子供と接しないくせにいざとなったら勇猛果敢よねぇ…そこが頼もしくて頼りになるいい男の条件なんだけどね!」
 と普段は離れて暮らす夫の陰陽寮長を思い頬を赤くする。

「瑠香もいつも助けに来てくれるよ。いつも頼りになっちゃう。今度は私の方から助けに行きたい!」
「そんなヘマしないから安心しろ」
 と、すかさず意地悪な表情で微笑んで、葛葉子にうなられる前におでこにキスをした。
 それで許してしまう葛葉子だった。
「もーっ!新婚夫婦は熱くて、やんなっちゃうわね!」
 人前でいちゃつく二人に真陽は呆れて言うが、
「僕も真陽姉がピンチのときは助けに行くからねっ!」
「うん…ありがとう」
「そういえば、これ真陽姉が書いたの?」
 春陽は、クレヨンでいろんな名前を書かれた紙を見つけて、【春陽】と書きなれない漢字を一生懸命書いたものに丸をつけてある紙を真陽に見せる。
「そうよ。春陽くんの名前一生懸命考えたのよ」
 それを叔父夫婦は採用してくれた。
「ありがとう。僕この名前気にってるよ!」
 素直な春陽についおでこにキスをしてしまった。
 さすが姉弟…と思われてしまった。
 真陽と春陽はえへへっと顔を赤くして微笑みあった。
 我が子の幸せを見てお母さんは幸せな気分と少し疎外感を覚えると夫に会いたくなってしまうのだった。
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