上 下
37 / 152
あやかしと神様と吸血鬼

8☆処女じゃないのにっ!

しおりを挟む
「なんで、学園祭に忍び込むんだっ!」
「二十代以下の若くて美味しい乙女の血が飲めるからに決まってるだろ?」

 葛葉子は吸血鬼に両手首を後ろ手に掴まれて右肩に遠慮なく首を乗っけられて耳元に息はかかるし気持ち悪い最悪だ。
「特にお前は特殊な乙女なようだな…」
 首筋をぺろりとなめられてゾゾゾと鳥肌か走る。

「わ、わたしは処女じゃないぞっ!だからだよ…!だから離せ!」
 恥ずかしいけど、ホントのことだし諦めてくれればいいと思ったけれど、吸血鬼は確認するように外国人特有の大きな鼻でクンカクンカと首筋を嗅がれた。

「…いや、君はマリアンヌと同じ神に愛された神々しい乙女な匂いがする…」

 たしかに毎晩、神の化身に愛されてるけど…処女じゃない。
 なのに、穢れ無き乙女と同じ匂いということは自分も神に近い天狐の化身のあやかしだからか。

「若くて発情期の処女の血は濃厚で旨い…それに日和国の乙女はとても美味だ…」
「だからっ!処女じゃないって!……処女じゃない者の血を飲んだらどうなるんだ?」
 葛葉子はふと、疑問に思ったことを口にする。
「…吸血鬼を騙した罰として私とおなじ吸血鬼になるのだよ…まぁ処女しか血を飲んだ事がないから確定ではないけれどそう言われているよ…」
 そうやって吸血鬼は仲間をふやしていくらしい。
 けれどそんな法則冗談じゃない‼
「狐のあやかしで吸血鬼なんてそんなの絶対イヤだっ‼神の化身妻失格じゃないかっ!」
 と叫び力の限り暴れる。

「君はマリアンヌと同じシスターか、何かか…日和国にはミコという、シスターに準じるものが、いるとは聞いたことはあるけれどそれで処女ではないという逃げる言い訳にはならないよ?」
 確かに葛葉子は元巫女だけどもう巫女じゃない…

「いい加減!離してっ!」
 白狐の清めの炎を身に纏い放ち吸血鬼を祓う。

「うわっ!」

 吸血鬼は咄嗟に葛葉子を離し小さな無数のコウモリになって、異界の空間に消えた。

「やったのかな…」
 早く炎を放てば、良かったと思う。
 この間のインキュバスのときのように着物は燃えなくてホッとする。
 一緒に燃えてしまったらと思って炎を出せなかった。
 菊と魂を同じくする身になったために衣服も燃えないと理解した。

「特殊な乙女のようだな…いや、私とおなじモンスターか…」

 小さなコウモリがパタパタと、葛葉子の周りを、飛び回り身体にくっつくとさっきの状態に戻された。
「またあやかしの炎でっ!…っ!」
 だけど、吸血鬼の顔だけが分離され浮いて葛葉子と瞳を合わせ銀に瞳を閃かせると、葛葉子は気を失う。いや、夢を見せられる。

「…はぅ。る、瑠香…」
 気を失って夢を見る間、恋する女の発情状態になる。
「夢で愛おしい男の夢を見させてあげるよ…」
 にやりと笑うと襟元をぐいっと引っ張られてうなじを顕にさせられる。
 頭を無理やり左に押して押さえつけて動脈走る首と肩の空いたの曲線に牙を出し噛み付いた瞬間、上から落ちてきた三人の人間に踏みつけにされた。


グシャリ!
 と言う音がするが、小さなコウモリが霧散する。
 吸血鬼はそんなことで死なない。
 瑠香は急いで葛葉子を抱き抱えると、気を失いながらも息も荒く喘ぎ、頬を高調させて、自らの柔らかな胸を掴んでいる。
 吸血鬼の妖術のせいで発情してる…と瑠香は察して、きつけになるキツイ香を嗅がせる。
「あんっ…瑠香…っ!る、瑠香?」
 術が解けて、つい色っぽい吐息混じりの声が出ていた事に、はっと顔を赤らめて口を抑える。
 正直そのいやらしいく自分を呼んだ言霊に瑠香は萌える。
 こっちが発情したくなる…
 その心を落ち着かせるために大きくため息を吐いて、
「葛葉子っ!攫われるなっていっただろ!」
 つい心配のあまりの声を大きくして怒鳴ってしまった。
「今回言ってないじゃないか…!
 ……夏休みの花火大会での注意したときと勘違いしてる?」
 耳をひしゃげてむーっと睨む。
「文化祭でも同じだよ!」
 ぎゅっと抱きしめ心配していたことを伝える。

「瑠香…ごめんなさい…」
「いや、オレの不注意…ゴメン。今度は連れて行かれないようにするし、離さないし!」
 そういうと、愛おしい気持ちを我慢していた二人は熱烈なキスをくり返す。
 もう二人だけの世界になって周りが見えていない。
 少しでも離れたくなかった。
 攫われるなと今回注意しなかったのはまさか攫われるとは思わなかった…
 でもこんなに可愛い葛葉子を攫う男がいないわけではない…
 自分がもっと注意しなくてはと決意する。
 熱烈なキスは口だけではなく体中に刻みつけたくなって首筋を見ると牙に刺された跡を見つけた……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アウローラの望まれた婚姻

桃井すもも
恋愛
アウローラはスタンリー伯爵家の嫡女である。二人姉妹の姉であり、将来の伯爵家当主として後継教育を受けていた。 学園から戻ったその日、アウローラは当主である母に呼ばれる。 急ぎ向かった母の執務室で聞かされたのは、アウローラの婚姻についてであった。 後継である筈のアウローラが嫁ぐ事となった。そうして家は妹のミネットが継ぎ、その伴侶にはアウローラの婚約者であったトーマスが定められた。 ミネットとトーマスは、予てより相愛の関係にある。 一方、「望まれた婚姻」として新たに婚約を結んだのは、アウローラも噂で知る人物であった。 ❇R15短編→R18&長編になりました。 ❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく公開後にこっそりしれっと激しい微修正が入ります。 「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。 ❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りしておりますが、皆様別人でございます。 ❇相変わらずの100%妄想の産物です。妄想なので史実とは異なっております。 ❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。 疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。 ❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

「お前が死ねばよかった」と言われた夜

白滝春菊
恋愛
最愛の姉を事故で失ったユミルリアは姉の代わりに公爵家に嫁ぐことを余儀なくされる。 期待と不安が入り混じる初夜、夫であるヴィクトルから投げつけられた言葉は「お前が死ねばよかった」と冷酷そのものであった。 その言葉に深く傷つき、絶望の淵に立たされる中、夫は冷徹な軍人として妻に対しても容赦なく世継ぎを産ませようと無理やり体を重ねる続ける。 愛されることなく、身代わりの花嫁として冷徹な夫に迫られる中で二人の関係は次第に悪化していく物語。 【ネタバレにつながる可能性があるため返信は控えさせていただきますが、読者さまからのさまざまな感想を楽しみにお待ちしております】 ムーンライトノベルズでも掲載します。

婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

恐怖体験や殺人事件都市伝説ほかの駄文

高見 梁川
エッセイ・ノンフィクション
管理人自身の恐怖体験や、ネット上や読書で知った大量殺人犯、謎の未解決事件や歴史ミステリーなどをまとめた忘備録。 個人的な記録用のブログが削除されてしまったので、データを転載します。

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

処理中です...