あやかしと神様の円満成就（R）

あやかしと神様の睦愛（18R）

泣き虫瑠香さん

　幼い頃の瑠香は泣き虫でいつも葛葉子に慰められていた。
　よく泣くから女の子と思い込んでいた。

「瑠香は、いまも、泣き虫？」
「男らしくなっただろ？
　だから泣かないよ。」
　ふと、葛葉子が思い出してそんなことを聞いてきたので反射的にそう言った。

プっ！と
　東親王殿下と臣は吹き出す。
　瑠香はバツの悪い顔をして二人を睨む。

　東殿下を宮中まで、お守りする帰り道だった。
　親王だからって全て車で学校まで出迎えは控える東殿下に三人はきっちり護衛と称して仲良く登下校だ。

「葛葉子さんが心配で泣き出しそうだったのに…」
　臣は笑いをこらえて顔を真っ赤にしている。
「あの時も泣いてたのにね」
　東殿下がいうあの時は一つだけではない……何度もポーカーフェイスを崩すところを見た。

　瑠香は照れて、そっぽを向き、
「葛葉子関係だったら泣けるけど涙見せたくない…」

　男としてのプライドだと思うのでそれ以上は突っ込まなかった。

　けれど、泣き虫は、なかなか治らないらしく瑠香は諦めた…

　葛葉子が、妊娠したといえば嬉し泣き、葛葉子があやすほどだった。

「桂や薫を産んだ時も泣いてたな。」
　葛葉子は桂が生まれた十年前のことを、ふと思い出してそう言った。
「大切な家族のためならオレは泣けるよ。」
　苦笑して今は認めてしまう。
「おとーさん泣き虫ー！」
「なきむしとうさーん。」
　幼い子どもに馬鹿にされるように言われても、怒らずに

「泣き虫でいいんだよ…
泣き虫じゃなかったらほんとに冷徹な男になってるぞ？」

　子どもたちはそんな父を想像してゾッとする。
　綺麗な顔のキリリとしたお父さんが泣くから感情がわかる。
　無表情てニヤニヤ笑われるのもなんか嫌だ…

「僕、泣き虫父さんでいいや。」
「俺も大人になっても涙するよー」
「お前は泣き虫すぎ！」
「にーちゃんだって虫投げつけただけでないたじゃん！」
「お前がいけないんだろ！」
年の近いせいか、兄弟はよく喧嘩をする。
「こらっ！喧嘩はするなっ！」

　ゴツン！と葛葉子は二人の頭を殴る。
　葛葉子は男らしい母だとおもう。
　瑠香は二人の頭を撫でてキスをする。
　いつもこんなパターンだ。
「とーさんは子どもたちに甘い！
ちゃんと躾て！」
　プンプン葛葉子は子供たちに甘い瑠香に怒る。
「かーさんが厳しいぶん甘く育ててやるよ。」
「ずるいよ、とーさんばかり好かれちゃう…」
「とーさんより、かーさんのほうがすきだよ！」
「俺もーっ！」
　子どもたちはフォローするが、ハッとして父を見ると悲しい顔をしていた。

「とーさんも好きだから泣かないでっ！」
　子どもたちは両親に気を使った。
　そんな子供が愛おしく、親は子供を抱きしめた。

　だけど、夜になると父は子供たちを母から引き剥がすために能力を使って容赦なかった。

「オレは泣き虫だけど、なかすほうが好きだよ…」
「ん…っ、し、しってるよ…」
　今夜も瑠香に啼かされる。
　葛葉子を抱きしめて今夜も愛を伝える…
　その時が近いほど、切なく毎晩出来る限りそばにいたい…鼓動を感じたい…
　体に刻み込みたい魂から葛葉子を感じたい…
「……泣いてる？」
　瑠香は無意識に涙がこぼれている。
　最近、瑠香は涙する。
「……わるい？」
　葛葉子は涙をキスして拭う。
「悪くないよ……」
　だって、そう泣かせているのは…
「悪いのは…」
　葛葉子は自分のせいだからと言おうとしたら、葛葉子の涙を瑠香も、唇で拭い、深いキスをして
　己を責める言葉を飲み込み愛を切なく確かめ合うのだった…