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神誓いの儀式

5☆陛下の御前

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 威津那は陛下にお目見えした。
 宮中の奥に使えるものとして、昔ながらの束帯正装だ。
 威津那の後ろに晴綛も太刀の者の長までも、役職にあった装束を身につけ陛下の前に参内した。
 何かするよう者なら即命を落とされる。
『不敬な事はもうしないと決めているから信頼してほしい』とは言えないが……
 奥は日和伝統を維持し神事中心に祝皇は御公務をなさる。
 そのため、昔ながらの衣装を職員たちは身に纏い仕事をしている。
 陰陽寮や掌典寮などがそうだ。
 そして祝皇陛下も昔ながらの帝の装束を身を包みになさって神々しい。
 まるでこの空間だけ、本来日和の国そのもののような感覚だ。
 いや、そうでなくてはならないのだ……

 そして今回は儀式のようなものだ。
 神誓いは冬至に行うとして、その前に奥で働き代々宮中の奥の呪詛穢れを祓い身に闇を封じる陛下お側に使える黒御足家としての復帰報告だ。
 陛下の玉座の側に皇太子殿下が微笑まられていらっしゃる。
 こういう形になさってくださったのも殿下のご配慮のものだった。

 そして、いうべき言葉も決まっていた。
 緊張強いの威津那にとってはとてもありがたい事だが、陛下直々の御前で、緊張と感動で胸が張り裂けそうだった。
 実際張り裂けたらとても不敬なことと肝に銘じ大量の冷や汗を服の中でかきながら、恐れ多くも、霊感ある瞳で見れば、とても神々しくて、慈悲深い……
 この国を作り上げた初代の御霊が宿っていることを感じる。
 それは黒御足…ヤタガラスの血筋だから尚更懐かしく尊く感じてしまうのだ……

 陛下は、宮中に黒御足の一族の者が戻って来てくれたことをお喜びになり、穢れを時に一身に受けることになる辛さを負わせること申し訳ないとおっしゃられた。
 威津那は陛下にお声をかけられて、それだけで、なんとも言えぬこの胸にこもる熱さに嗚咽さえ出てしまう…
 それはまだ残っていた負の感情のような気がする……
 それを皆黙って見守ってくれることに感謝だった…
 落ち着きを取り戻し、
「陛下の陰である黒御足一族のお役目ゆへ……全身全霊をかけて陛下に及ぶ全ての穢れを祓いお守りすることを誓います」
 畏れ多くも、ご尊顔を拝して心から誓った。
 陛下は威津那を見て若い頃の八那果に似ていると仰られた。
 不意に陛下から優しくお声をかけられて、堪えきれずドバーと涙が溢れてしまった。
 父の八那果には辛い思いをさせたことをおっしゃられ心を我が一族のために心配りを習ってくれたことに、威津那は父そのものではないが、陛下は父に伝えたかったお言葉をお伝えになさった。
 陛下は全てをご存知なのだ。
「いつか…お伝え申し上げます…」
 陛下はゆっくりと瞬きをなさった。

 そして、お目見えの儀式はことなきを得た。


父はどうして、このお方を裏切ったのだろうか……

いや……
父もあくまで陛下のため国のためだと…その信念だけは曲げていないと信じたい……

レッドスパイの実態を知るために入り込んだ……それが最初のきっかけで色々知り得た……

 けれど、大戦中に黒御足の一族は宮中から遠のいた…
 敗戦する日和を静観するために……
 滅びるのならば……
 自らの手で滅ぼしてやろうと…
 恐れ多いことを父は考えていた…いや考えている……

 まだ、父は陛下を裏切っていないと信じている己に気づき、拭いきれない不安をかんじるのだった。
 

☆☆☆

「陛下とお目見えしたけど感無量すぎて……何をお声をかけら出たかすら忘れちゃった…」
 威津那が陛下とお目見えした感想を陰陽寮職員たちはわくわくとして感想を聞いたが答えにズッコケた。
 職員たちも威津那の感想をや陛下のご様子を聞くのを楽しみにそわそわしていたものもいるほどだった。
 威津那は照れて頭を掻く。
 それでも陛下にお会い出来たことは感無量で幸せ気分のようだ。
「これで、神誓いは失敗しないくらい敬愛、いや忠誠…永遠の愛を誓えるよ!絶対に!」
 威津那は子供みたいに力説する。
 陛下にお会いして浄化しきったように瞳もきらきら星が輝き、頬を紅潮させる。
 闇の権化とも言える威津那は生まれ変わったかのようで純粋な魂のように眩しかった。
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