祈り姫☆恋日和

花咲蝶ちょ

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陰陽寮のひと時

李流と瑠香の夢繋

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 陰陽寮に勤めていた李流は晴房の隣の部屋と言っても几帳で仕切られただけの部屋をもらっていて、今夜は晴房は桜庭家に泊まりに行っている。
 なので、晴房の部屋は開いていたのだが、その隣に瑠香は愛用の枕を持って李流を待っていた。
 少しソワソワしてる雰囲気があった。

「李流君、今日は一緒に寝ないかい?」
 少し照れたような表情で瑠香に言われて

「はっ?」
 李流は思わず青ざめて軽蔑して肩を抱いしまった。

「親父はスケベだからな。
襲われたりすんなよ。」
 と瑠香の息子薫に脅されたばかりだった。
 その怯えた李流の頭を覗いて息子を恨む。

 幼い薫はきつね耳がでるとキスされた。
 昔はそれが当たり前だったけれど、一七歳になった息子にそんなことをする気はさらさらない。

「親父はオレにもうやらないといってるけど、キス魔は家系だからな。気をつけろよ。」
 とも言われたらしい…

「いや…李流君のそばに寝ると妻の夢を見るんだ…」
 晴房を連れ戻すときも力がリンクして神の世に繋ぐことが出来たし、晴房と雪の結婚の時、夢を繋げて葛葉子に逢えた…
 夢なので詳しくは思い出せないけれど幸せで久々に満たされた…

「そして、今日は結婚記念日だから…
夢の中でもいいから逢いたくてしょうが無いんだ…」

 いままでは死んだものだと思っても、葛葉子を思えば苦しくて悲しくて辛くて胸を締め付けている事が多かった…
 いっそ記憶をなくそうかと思ったほど辛かった…
 けれど、この辛さはまだ想いつつけられる愛の証だと思うから甘美なものだと思うようになったけれど、

「夢でもあえるなら逢いたいんだ…」
 薫から親父は母を狂うほど愛していたと聞いたことがあって

「そうですね。わかりました!一緒に寝ましょう!」

 瑠香が辛そうな雰囲気が伝わってきて李流は快く承諾してしまった。
 晴房の布団を横に二つ並べ、眠りに落ちた。


 チュンチュンと雀の鳴き声が朝を知らせて李流は目を覚ます。

「ん…重い…」

 胸のあたりに腕が置かれてる?
横を見ると瑠香様の美しい寝顔が目の前にある。
 瑠香に抱きつかれてた。
 なんか、少し唾液の匂いするし、布団乱れてるし。
 寝間着もはたけてるし。
 朝日が照らす瑠香の顔は満足気な美しい寝顔をしている。
 李流は頭の中が真っ白になる。

……オレ、な、何かされたぁあぁぁぁ!?

 そっと、その場から逃げ出すように学校に行ってしまった。

 青ざめた顔した李流の考えてることの頭を覗いた薫が父親に絶望したことは言うまでもない。


 伝統衛士の仕事と陰陽寮の手伝いがあるので薫と共に宮中の自分の部屋に帰宅すると晴房と瑠香がいた。
 瑠香は済まなそうにキリリとした眉が下がってる。
 晴房は腕を組み、神妙な顔して

「私は帰ってから一部始終みてたが、抱きつかれて、寝ぼけてキスされてただけだから安心しろ。一線は超えてないぞ」
「見てたら止めてください!」
 李流は思わず怒鳴る。

 瑠香は額を抑えて李流に顔向けできずに罪悪感が胸を占めている。けれど、李流の顔を見れば堰を切ったように、

「ごめんっ!ごめん!李流くん!」
 叫ぶように畳に手をついて謝る。反省している雰囲気が痛いほど李流に伝わる。

「る、ルカ様顔をおあげください!謝られることされてないですし!」
 李流は理由が分かればホッとしてた。
 正直キスされただけでもドンびきだが、それだけで何もなかったのだから…
 尊敬する瑠香のやった事なので目を瞑る事にした。

「オヤジィ親友に手を出すなんて最低だな。」
 にやりと笑って業という。

 (葛葉子ではなく、私に似てきたな…)

 晴房は檜扇を口元にあてて、
「魂が夢の間にいるのに止められないのだよ。肉体から切れては死んでしまうからな」

 内心瑠香は、
(それはそれで良い……)
 と思ってしまった…

 そんな、瑠香の頭をポカリと晴房は叩く。
 本気で目は怒って悲しそうにも見えた。

「だから李流に代わる、なにか、依り代を作ればよいのだ!」
「依り代って?」
 薫は頭をかしげる。

「李流と瑠香の間に人形かなにかを間におけば、抱きつかれることもないし、人に憑くこともなく、その人形を媒体にできるだろ」
 びしっと口元にあった檜扇を瑠香はと李流の真ん中に指す。

「瑠香さまっ!
依り代作ってまた、一緒に寝ましょう!」
 李流は瑠香の手を握る。

「え?いいのかい?」
 瑠香は、目を見開く。

「だって、ルカ様が悲しいのはルカ様を好きな皆さん悲しいですし、オレの代わりになる依代を作れば解決するならやりましょう。」

 力づけるように戸惑う瑠香に言う。

「李流くん!ありがとう!」
 瑠香も握る手に力を込めて見つめる。

「そーゆーところ好きだぜ!」
 二人に同時に頬にキスされるが嬉しくない…青ざめる。

「キス魔親子が!さっさと作りにいけ陰陽寮長命令だ!」
 その命令は晴房の優しさでもあった。



 陰陽師は占い専門だが呪術の分野もある程度必要項目にはいっていた。

 良い方角に呪詛があった時の対処方や、身を守るための呪術は覚えておいて損はないし、更にその上の呪法を知れば悪意からの対処法も解決できるからだ。

 葛葉子が入りやすい媒体を作るには葛葉子が身につけていたものを人形に埋め込むことだった。

「これがいい…」
 小さな匂袋を葛葉子が気に入っていた宝石箱から取り出した。
「それなんだ?」
薫が聞く。

「初めてかーさんにプレゼントした匂袋だよ」
 魂を依り代にするのにピッタリだと思う。
 葛葉子の香り袋に、瑠香は手芸が趣味で得意だ。
 狐のぬいぐるみをミシンを使って既製品のようだ。

「なんで、人形にしないんだ?」

《どーせ、スケベなことするならアノ人形に埋め込めばいいのに…》
薫はテレパシーで瑠香と会話する。

《お前の言うとおり変なことしそうだし、だが所詮は人形だからな。夢の中でまぐわうからいいんだよ》
《やる気満々だな!ほんとスケベが!李流にマジでヤッたんじゃね?》
《なら、お前にキスしてやろうか……久しぶりに》
《や、やめてくれ!》
 と、息子と無毛なテレパシーでの口論しながら、口では

「せっかくの神格おとすのは勿体無いし、かわいいだろ?」
「神格って…官能小説書いてる時点でアウトだろ。」

「あれは葛葉子に会う前からの趣味だ。問題ない。」
 瑠香はドヤ顔して言った。
 趣味でネットに載せてたら人気を博して密かに小説家デビューしてしまったらしい。
 しかも男性より女性に人気らしい…

「そーゆーの書いてたんだ…」
李流はその事実に思わずドン引きする。
「ひかないでくれ…頼むから…」

 ほんっとドスケベじゃない男の子が存在するのも貴重だ。
 従兄弟の春陽は意地悪なところがあったからドスケベバラしても構わなかったけれど…

「俺の目標、李流をスケベにしてやりたい。」
 薫は真顔で宣言した。

 記念日とか瑠香が人恋しい時、晴房が部屋を貸して几帳越しに隔てて寝て呪術というか、ルカの神は、慈悲深く夢を、繋いでくれた。

 李流には法子と夢を繋いでくれたりもした。

 お互い幸せな夢心地を味わうことができた。

 けれど、孫のココが生まれたら夢を見る余裕が少なくなっていた。

(それは瑠香にとって良いことだよ。)

 と夢の中で葛葉子は微笑んだ。

 その後、その狐のぬいぐるみは、陰陽寮で暮らすことになった孫のココがお気に入りで取られてしまったことは言うまでもない。

 葛葉子も夢で孫で触れ合えて喜ぶ姿を瑠香は見て満足だった。
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