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お腹の痛みと気持ち悪い浮遊感で目が覚めた。
いや、眠りについた記憶もないけど、僕、いつの間に寝ていたんだろう?
この浮遊感は高校の卒業旅行で行った西日本地区にある大きなテーマパークのアトラクションで味わったなあ。
恐竜に掴まれて空を飛ぶ…的なアトラクション。
でもあの時はガッチリ安全ベルトで固定されていたけれど、今は、多分、普通に恐竜の足?手?の爪で掴まれているみたい。
お腹に爪がくい込んでいるんだ。
ひんやりと冷たく感じるのは流れ出る血が風に晒される事で冷えているからだ。多分。
ふわりふわりなんて生易しいもんじゃなく、あのアトラクションみたいに結構高速で僕は運ばれている。
くるりと回転しないだけましか。
えーと。
僕、何してたっけ?
大学に行こうと思っていつも通りに家を出て、駅について……
ああ。
階段登っててあと少しでホーム、というところで前を歩いていたサラリーマン風の男性が足を滑らせて、僕の前にその背中が迫ってきて…
どくんと、鼓動が高鳴りしたのを覚えている。
ひゅんと背中が凍るような浮遊感の後、頭に強い衝撃を受けた……までは思い出したけど、この状態は、何?
恐竜……多分現代日本にはいないよね……
古代にタイムスリップしちゃった?それとも夢をみているんだろうか?
パニックになっていても仕方ないと恐る恐る周りを眺めてみれば、高層ビルとか何も無いただの綺麗な青空の下を飛んでいた。
ああ。
血が抜けているのか、クラクラする。
有名な古いアニメ映画にあったよね「血が足りねえ、肉をくれ!」みたいなセリフ。
僕はきっと死んでしまったんだ。
あの時、サラリーマンの背中に押されて、そのまま階段から転がり落ちて。
頭を打って。
だからこれは夢だ。
というか死に際の走馬灯だ。……恐竜に運ばれるなんて経験はないけれど。
痛みのせいか、血が減ったせいか僕の意識はぼんやりと薄れてきて、ああ、やっぱり死ぬよね、だよね、なんて覚悟を決めたとき。
『お前、そいつのペットか餌?』
そんなセリフが頭に響いた。
くっそ面倒くさそうに訊ねる男性の声。
「な、何?」
キョロキョロ、見える範囲で視線をさ迷わせると、隣を併走している人がいた。
併走って、この恐竜、空を飛んでるけど?
でも確かにその人は僕の隣にいた。
銀髪に白い肌。
白人さんの、それ。
瞳は紫というか薄いグレー。
多分20歳の僕より年上だと思うけど、年齢不詳。
めちゃくちゃ綺麗な顔をしている。
華奢な体躯で、すごく中性的な感じだけど、男性だと思う。
……多分。
白いローブみたいな服を着ている。ゲームに出てくる僧侶や神官が着てるような感じ。
よく見ると走っている訳じゃなく、足元にフワフワの雲のようなものをまとわりつかせている。
小さい頃に読んだ絵本に出てきた、金斗雲みたいだ。
雲に乗って空を飛ぶ憧れを具現化したみたい。
『同意の上でお前がその翼竜に掴まれているならほおっておくが、違うなら助けてもいい』
また聞こえる。
この人が僕に話しかけてくれているんだと思うけど、これはSF小説に出てくる「テレパシー」というものなのかな。
耳からじゃなく直接頭に響く違和感に少し頭痛がする。
まあ、今更痛い部分が増えても変わらないけれど。
いや、眠りについた記憶もないけど、僕、いつの間に寝ていたんだろう?
この浮遊感は高校の卒業旅行で行った西日本地区にある大きなテーマパークのアトラクションで味わったなあ。
恐竜に掴まれて空を飛ぶ…的なアトラクション。
でもあの時はガッチリ安全ベルトで固定されていたけれど、今は、多分、普通に恐竜の足?手?の爪で掴まれているみたい。
お腹に爪がくい込んでいるんだ。
ひんやりと冷たく感じるのは流れ出る血が風に晒される事で冷えているからだ。多分。
ふわりふわりなんて生易しいもんじゃなく、あのアトラクションみたいに結構高速で僕は運ばれている。
くるりと回転しないだけましか。
えーと。
僕、何してたっけ?
大学に行こうと思っていつも通りに家を出て、駅について……
ああ。
階段登っててあと少しでホーム、というところで前を歩いていたサラリーマン風の男性が足を滑らせて、僕の前にその背中が迫ってきて…
どくんと、鼓動が高鳴りしたのを覚えている。
ひゅんと背中が凍るような浮遊感の後、頭に強い衝撃を受けた……までは思い出したけど、この状態は、何?
恐竜……多分現代日本にはいないよね……
古代にタイムスリップしちゃった?それとも夢をみているんだろうか?
パニックになっていても仕方ないと恐る恐る周りを眺めてみれば、高層ビルとか何も無いただの綺麗な青空の下を飛んでいた。
ああ。
血が抜けているのか、クラクラする。
有名な古いアニメ映画にあったよね「血が足りねえ、肉をくれ!」みたいなセリフ。
僕はきっと死んでしまったんだ。
あの時、サラリーマンの背中に押されて、そのまま階段から転がり落ちて。
頭を打って。
だからこれは夢だ。
というか死に際の走馬灯だ。……恐竜に運ばれるなんて経験はないけれど。
痛みのせいか、血が減ったせいか僕の意識はぼんやりと薄れてきて、ああ、やっぱり死ぬよね、だよね、なんて覚悟を決めたとき。
『お前、そいつのペットか餌?』
そんなセリフが頭に響いた。
くっそ面倒くさそうに訊ねる男性の声。
「な、何?」
キョロキョロ、見える範囲で視線をさ迷わせると、隣を併走している人がいた。
併走って、この恐竜、空を飛んでるけど?
でも確かにその人は僕の隣にいた。
銀髪に白い肌。
白人さんの、それ。
瞳は紫というか薄いグレー。
多分20歳の僕より年上だと思うけど、年齢不詳。
めちゃくちゃ綺麗な顔をしている。
華奢な体躯で、すごく中性的な感じだけど、男性だと思う。
……多分。
白いローブみたいな服を着ている。ゲームに出てくる僧侶や神官が着てるような感じ。
よく見ると走っている訳じゃなく、足元にフワフワの雲のようなものをまとわりつかせている。
小さい頃に読んだ絵本に出てきた、金斗雲みたいだ。
雲に乗って空を飛ぶ憧れを具現化したみたい。
『同意の上でお前がその翼竜に掴まれているならほおっておくが、違うなら助けてもいい』
また聞こえる。
この人が僕に話しかけてくれているんだと思うけど、これはSF小説に出てくる「テレパシー」というものなのかな。
耳からじゃなく直接頭に響く違和感に少し頭痛がする。
まあ、今更痛い部分が増えても変わらないけれど。
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