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part[4/5?]
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"Welcome, Mr. Another World!OYOYO ”
part[4/5?]
「視聴覚教室ここよね」
ほぼ何も知らないと分かると視聴覚教室で初心者用レクチャーを受けてくれと言われた。
「先輩の話で大体わかったからいいんだけど、そうもいかないか」
お役所仕事なので、講習をちゃんと受けたってハンコが無いと次の段階である検査を受けられないらしい。
伝えることは伝え、それが伝わった。後はウチ(部署)のせいじゃないって責任回避のタメにも。
了承のハンコとサインは貰ったって手順が絶対必要だと言われて送り出された。その時のやりとりが今自分を苦しめていた。
「暑い」
言わなきゃ良かったかなと思った。それが原因で夏だと言うのにこんな分厚い外套なんか着せっれる事になった。
『これ着るんですか?』
静電気が凄いと言うと、裏から防災用品のアルミ蒸着防寒コートの親分みたいな分厚い外套を渡される。
作戦中の荷物運搬用犬型ロボットのEMP攻撃用の電磁パルス障壁処理をされたコート?らしい。ここはプレハブ街から遠いし不整地だったのでボストンコンサルティング製?だったっけ運搬犬なんかも使っているなんて流石に親方日の丸だと思った。ここに来て以来そんなもん見当たらないが。
『暑いです。それに重いです』
アルミ蒸着だけじゃなく、電波遮蔽の為に金も蒸着しているのか裏地は金色に光っている。江戸時代の倹約令が出ていた時の庶民の隠れ裏地じゃないんだから。
「炎天下のお日様の下じゃサウナスーツ状態だからな。まあ、ハイテク機器の損害を請求されたくないなら我慢」
『そんな~』
夏の青春18切符シーズンは青森といえども暑かったので、視聴覚プレハブに行くまで熱射病で倒れそうであった。
「ただいま戻りました」
暑い灼熱の中を戻ったのでぐったりしていた。
「脱いでいいですか?」
「そのまま着てきたの?電気製品が周りに無くなったら脱いで良かったのに。あれま、スコールが降ったのかと思うほどグッチャリね。シャワー浴びてきたら」
裏にシャワーがあるから浴びてこいと新品のしまむらの下着にジャージを渡された。
(ガサツそうだけど気の利く先輩だな)
気の利くいい先輩だとあらためて思う。先輩モテるでしょうと聞くと、微妙な顔をしていた。気の利く女性は持てるって言うけど、全てに当てはまるわけじゃないらしい。引いてはいけない引き金みたいなので先輩との会話じゃこの話題は禁忌にした。
「ここで何やるか、ちゃんとわかった~~~?」
「大体わかりました。言われたみたく、私たちは旅行代理ロボットなんですね。先輩から聞いた時はホンマかなと思いますしたけど、レクチャーセミナーでよっくわかりました」
一緒にみた多分二十歳を超えたトランスファー候補生のお姉さん方によると、運転免許の事故の時の緊急手順マニアルに出てきた役者さんが、こんどはトランスファー業務対しての注意事項を動画の中で説明していた。公共案件で独占状態に癒着の闇を感じていると笑っていた。
あいにく自分はまだ15なんで原付きも持っていなかったのでしらなかったが同じように作られているらしい。つまりは運転免許と同じぐらいの組織がここの運営に関わっているらしい。
レクチャーが始まる前と始まった時に何枚も守秘義務に関しての書類にサインを書かされた。サインした瞬間から警官や自衛隊に適用されている業務上の守秘義務が発生するって書いてあるらしい。
守らなかったらどうなるかとの問に、守秘義務の25年間があなたがたの意志を尊重するイージーモードから、ハードモードに移行すると優しい笑みで言われた。
部屋を緊張の糸が張り詰めた。
監視または投獄または軟禁をハッキリと暗に言ってるらしい。
「サインした?」
「しないと追い出されるんでしょう」
おまけにMIBみたく記憶をいじられてと笑うが、スルーされる。冗談でもなんでも無く、当然でしょうってスルーだった。
「ほい。アイスティー」
一緒に飴ちゃんを出す。
「ケーキがいいです。疲れたんで上質な糖分が欲しいです」
「保育園終わったガキどもが来て全部持っていかれた」
何一つ残さず喰らい尽くす、上から見てるとまるで黒い絨毯だったと、ゾゾゾってサブイボが立ったと笑う。
「そう言えばここ保育所もやっていたんですね」
「やってない。そんな資格持ってない」
そんなモン取ったら無資格をタテに子守を断っているのに断れなくなるので、お母さん連中から取れと言われているが頑なに無資格を貫いて、国家組織が無資格者に子守をやらされたら大変でしょうって事を理由に就労的子守から逃げている。
「う~ん。ケーキ欲しいです」
「あんたケーキに何か恨みがあって臥薪嘗胆でもしてるの?虐められたかどうかは知らないけど、忘れなさい」
アタック・オブ・ザ・ジャイアントケーキやアタック・オブ・ザ・キラー・トマトやアタック・オブ・ザ・キラードーナツとかみたい友人知人が殺されたのかと、平民の分際でとか、役に立たないスキルだとか、妾腹の子とかで追放でもされたのかと。ケーキに。
「そんな“ざまぁ”展開はありません」
「あっ ああ。そりゃ無い方がいいよ。そんな言葉を洒落以外で使うようになったら碌なことないからね」
「?どういう事ですか。“ざまあ”ですか」
そうねとつれない口調でそうだと言う。
「人なんだから嫌いな人間も、去ねってほど恨みすら抱くのはまあ仕方ないけど、その“ざまあ”って言葉にすると呪いなのは分かるよね。相手が不幸なればいいって思う呪い」
「確かにそうですね」
そう言えばそうですと納得する。
「でも多くは自分でやってないんじゃないですか。不幸になったらと思っていたのでたまたまそうなった時使うような気がします」
結果を知っただけで呪いに干渉はしてないからセーフだと言う。
「でも願っていたんじゃない」
そうで無ければその言葉は出なかったはずだ。
「悪口は呪いって聞いたことある?」
「わざと聞かれるようにするってヤツですね。他人が自分を恨んでるって事を知らしめる事で相手に心傷を与えるって事でしたっけ?」
藁人形に写真や名前を書いた札をわかりやすいように張るのはそれを知らせる為だ。釘を打つこと自体に意味はない。あなたを恨んでますって知らせることが大事。
「それは他者に対してだけど、悪口って呪いで一番傷つくのは自分なのよね」
「それも聞いた事あります。どっかのお偉いお坊さんの教えでしたっけ?」
人を呪わば穴二つみたいに、禄な死に方が出来ないって戒めだったような。
「それ以上に厄介なのよね、知らせなくても本人だけはその呪いを全部知ってるってことね」
聞かれないと元も子もない他者に対して、本人だから百%伝わって効果は抜群だ!状態。
「加害者にして一番効果がある被害者って事ですか。自爆だから被害者っていうか、酷い目にあった自傷者って言うのかな?」
「悪口陰口はまだ自分が泥をかぶるってリスクがあるけど、何か結果だけを見てせせら笑うって、表に出ずに面従腹背で他者の不幸を願うって陰湿な行動は相当自分の心を乾かせてて傷つけるらしいのよ。それ自体は勝手にどうぞなんだけど、それになれると自分でも他人の感情にも鈍感になる」
「鈍感にですか」
何しろ悪口ってのは手軽でありながら強烈な快楽だけに、まるで暗黒面みたくに落ちやすい。
「確か暗黒面は落ちやすいって誰か言ってましたね。それですか?」
強い刺激になれると、弱い刺激じゃ満足できなくなり喜怒哀楽全てに愚鈍になっていく。
「アル中とかヤク中みたいなもんですか。段々量と純度と回数が増えていく」
段々濃度と量と頻度を上げていかなれければ同じ多幸感は獲られなくなっていく。廃人ニ十八号に走れ844(ハシシ)マン。
「悪口を言う人ってなんで悪口ばかり言うのかって話があってね」
「はい」
「他の事じゃ幸福感が得られないほど鈍感になるらしいわよ」
こうなるともう手遅れで、悪口ってのは他者を排除する攻撃 言ってしまえば相手を抹殺する事で自分の生存を優位にするって、生物として本質的な生存の喜びだから最高に喜びを感じることが出来る。
「だから“ざまあ”って感情は持たないほうがいいいらしいから気を付けたほうがいいかもね。自分は何もしていないんだからって自己弁護が出来るから罪悪感無くやっちゃうからね」
自分と他人の痛みに愚鈍になりたくないなら、その言葉を使ってるやつを見て、お友達になりたいか疎遠になりたいかで確かめてみる事を勧める。
「意外と良い反面教師になるらしいから」
人の振り見て我がふり直せと笑う。
「先輩はどうしてます」
「愚鈍ってのは言い方変えると気が利かないって事でしょう。そんな連中と付き合ってイライラすると嫌だから予め逃げてる。呼吸器系疾患で血痰出してるやつより脱兎のごとくね。朱に交わればなんとやらで、色んなもんに感染して同類になって喜べない心と体になったら人生棒だもん」
「ほい。ケーキは無いけど、お詫びと、ご褒美はこれで我慢して」
そう言って壁上の神棚から落雁(お備えの定番砂糖菓子)を持ち出す。
「ありがとうございます。でもお詫びってなんですか」
「知ったかぶりで偉そうに垂れた蘊蓄を欠伸もせずに最後まで聞いてくれたお詫び。昔は子供のへのご褒美だったんだけど」
子供にとって仏壇の前に座る盆も葬式も退屈なモノだったので、昔は坊さんのお経を最後まで聞いてた良い子だと貰えたご褒美だった。だから最後まで良い子でいたからとくれたらしい。
「! (ふふっ)いえ。よく出来た嘘で楽しめました。右から左の馬耳東風でしたけど」
私は子供じゃないと訂正はした。
「コイツ (ぷっ)」
「でも返しませんよ」
落雁を一口でバクッと食うJKを初めてみたと呆れた。
「で、分かった。ここでやることは」
「よくわかりました。言われたように、わたしたちはリモートのロボットですね。叩けば痛いし夏は暑い冬は寒いって文句を言うセンサーがてんこ盛りな」
合ってるかな?と思ったが、それで大体いいらしい。
「コッチの世界じゃベッドから動く事が出来ない人間が移動用ロボットにVRセット付けて疑似トランスファー(乗り換え)して3D世界 つまり現実の街や山に買い物やアウトドアを楽しんでいるけど、それを異星 異世界 異空間 パラレル宇宙規模でやる、その生体センサーてんこ盛りロボットユニットがあたしたち」
現代のロボットでも味覚 臭覚 温覚などはインターフェース出来ないが、生身なら人間が感じれる情報なら感じれる。
「説明の女医さん?は悪魔憑き 生霊憑き 動物憑き 怨霊憑きだって言ってましたけど」
「あの馬鹿・・・・・でも、まあそれも正しい」
体を乗っ取られて好き放題使われるんだからソッチでもあってる。悪霊に取り憑けれてどっかの少女は首を180度回転させたり、背面蜘蛛走りなんて生きてりゃ後で筋肉痛で湿布だらけだろう。
「返して貰える保証は無いとか」
「アッチのほうが、あってるかしんないけど高位意識体だもんね。だからってわけじゃないけど飛行機の操縦してる機長・副機長ならアッチが機長で、アイハブコントロールはあっちが優先命令権持ってる。飽きたら返してくれる」
よくわからんが契約はあるが反故された場合もあるので、その時は飽きるまで体を明け渡すしかないって事らしい。
「体返して貰った時に暴飲暴食して太ったり成人病になっていたら困ります」
「あなた自身がコントロールしている今だってその危惧はあるから今更それはいいでしょう」
問題は未経験の事を勝手にやられて、性病とか下手すると子供でも出来たら事だと言う。
「芸者の水揚げなら手当でるらしいけど、出るのかな?いや、出たら良いってことじゃないですよ。ですよ!」
クククと、したり顔で あ~と微笑む。
「それはある程度大丈夫。ん?大丈夫かな?最適化された時に新しいボディの雛形情報は残ってるからセーブポイントまでリカバー出来るので、色んな事のキレイ?な状態に戻すことも出来るらしい。まあ心は戻せないけど」
「それは・・・・・・・いつも新品って、処女厨には受けそうですね」
「リカバー一度で億単位取られて、長期間寝たきりだけど、やる」
一応体のリカバリー分の保険は降りるが、時間だけは戻せない。
「ソッチ方面に身持ちの固いヒトであることを祈ってます」
カチャカチャカチャ
「トランスファーのために体を作り変えるってどんな理由なんでですかね?」
食器をかたし、後片付けをしながら聞いてくる。
オーバーライドしてくるヒト?とのシンクロ率を上げる為にとは分かったが、途中で旅の疲れで寝てしまってよく覚えていない。
「そりゃ一般人のひ弱な体のまま世界記録のバーベルみたいな重量物背負わされたら体持たないからそれなりに安全マージン持った体は作らないと壊れてしまう」
「でも元からそんな筋力を私達の体は持ってないから大丈夫なんじゃないんですか。借り主がいつもの体で巨石を持ち上げているから、借り物でやってもいいだろうって言っても東京オリンピックのウエイトリフティングのニヤケ選手じゃないんですから、普段から持っていないんだから上げようがない」
確かに体幹の維持が出来ないで重たいものを持ち上げれば、腰がカクってなってぎっくり腰の危惧はあるが。
「それだといいんだけどね。普段使ってないからリミッターとのがあやふやかもしれないのよ。近頃なんでか流行りのスキル、限界突破?もやっちゃうかもしれない」
車に轢かれ押しつぶされてる我が子を救おうと、火事場の馬鹿力でリミッター外れて、車を持ち上げて我が子を救えたが、体は骨も筋肉もズタボロになって一生後遺症を引きずったなんて事もあるらしい。
「生まれたときから付き合ってきたなら頭と体のインターフェースがUSBの相互情報連結みたいに上手く行ってるけど、新しい頭じゃ分からずに100ボルト機器に200ボルト突っ込んでお釈迦になるかもしれん」
ヒューズがあればいいが、前に過電流で切ったの急場しのぎでアルミ箔巻いたまま状態だったけど、そのまま忘れて次に過電流が流れたら体が死ぬ。
「新しく乗っかかったヒトがそれを分かってくれると良いんだけど」
初めて乗ったTRDチェーンの4A-GEエンジンをどれぐらい回していいか分からず1万2千まである超高回転対応タコメーターを積んで様子を見てくれる乗り手ならいいが、幾らでも回るとベタ踏みだったらバルブサージングとか起こしてバルブとピストンがぶつかりあったら吹っ飛んでエンジンつうか体はお釈迦。治そうにも運転手の過失割合が高いと判断されたら多分保険は満額おりないで、オーバーライド側に請求されるがそんな馬鹿だから責任転嫁で多分逃げる。
「そんな寝たきり生活は当然?」
「嫌です」
「それを避けるために予め特訓?で物理的強化人間になってもらう。覚醒後のアムロをベアリング支点のガンダムに乗せると動きの速度が激しすぎて変摩擦や発熱でオイル切れとか摩擦力の増大とか断裂するんで「シャアじゃない、アムロがくる。ヤツ一人の為にリック・ディアス13機が落とされたように、僕死にたくないです」って泣きが入る78君の身を案じて、予め非接触の超伝導浮遊駆動に変えたみたいなもんだ」
「何故ここでガンダムさんが、マ・クベさんの電撃だっちゃ攻撃を受けたときのように喋るのかはいいとして、どんな特訓なんですか?」
日本一長い山の石段で布団を被って転げ落ちたり、足の指だけでピアノを弾いたり、地雷原の中を走りながら爆弾を投げられたり、クレーンで振り回したら鉄球を体で受けたりする、一人で常人100人分のパワーがある仲間のライダー8人から袋叩きの殴る蹴るの修行?を受ける。っていうのじゃないから安心しろって言われた。あんなに何か合った時に救急車を呼ぶような事は無く、じゃなく初めからちゃんと医者は用意するらしい。
「結局やるんじゃないですか」
「だね。まあ気軽に思ってなさい」
死ぬヤツは運がいいって言葉もあると屁の突っ張りにもならない慰めをする。
「誰の言葉ですか?」
「昔海賊やっていてこっぱ役人と戦って仲間は皆殺しであったけど、船長だけ生きて囚われてウジ虫とハエと腐臭にまみれた独房で本国送還。生き恥を晒すように国中引き回しで、くっ 殺せってって言っても女騎士みたいに生存ハッピールートは無く、夢も希望もまともに歩けないようまで体を痛めつけて後でやっと処刑になったヤツの言葉。あんとき最後まで戦って死んでりゃ良かったって悔やんでって、とっとと死ぬのも悪くないって思えるいい話でしょう」
「中身はどうでもいいですけど、死にたくないです。あと話が冗漫です。じいさんの小便じゃないんですから」
「でも それなら78君じゃなくて、アレックス君に乗り換えてもらったほうがいいような。それより乗り換えるより初めからアレックス君に任せたら良いような」
「そうも行かないのよね~」
初めから頑健な人に頼んだほうがいいと思ったが、何故か魔法使いはひ弱って不文律みたく、依り代体質の人間は図書館通いが似合いそうな体躯の人間が多いらしい。
「天は二物を与えずですか」
体が頑丈なら考えてウイークポイントを克服する必要が無いので、筋肉マンは工夫しないので脳みそは発展しないって、昔はボイン女は馬鹿って言われていたような、今なら訴えられそうな理屈がまかり通っているらしい。
「大丈夫。人間死ぬ気になれば、大概の事はなんとかなる。なんとかならなければ死ねばいいだけ」
「死ぬのが嫌だから言ってるんですけど」
「どうせ一度は経験するんだ。初叡智みたいに過ぎちゃえばなんとも思わないんじゃない」
「叡智なら後で思い返せますけど、死んだら意識はないと思いますよ」
「天国が有るって言ってる宗教にでも入信したら?天国なんか無かったってわかった時は手遅れで騙されたって悔しがれないからいいかもよ」
「お金と暇と人間の尊厳が勿体ないから神様はいいです」
「あら、まあ。あたしもそう思う。まあ取り敢えず流れに身を任せとけば。鍛えれば筋肉は裏切らないって嘘かインチキかしらんが誰か言っていた」
文才?の無い体育会系を文系?の依り代にするのは大変だが、文才はあるが体力がない人間を体育会系筋肉だるまにするのは死ぬほど鍛えればいいだけだと自衛隊あたりじゃ当たり前であるらしかった。死ぬか脱走しなければだが。
「多分二物与えられたアレックス君はFedEx(宅配便)のミスで違うコロニーに誤配送されたみたいで来ない。あなたがやるの」
「嘘だと言ってよ キキ」
「それ違う宅配業者」
確かに誤配送していたけど・・・。
「副作用はないんですか」
新型気管支系疾病のワクチンでも死人や不具者が出ていたので心配する。確率は高くは無いが、掛け金が自分の命や五体満足ならリスクには敏感になる。
「大概みんな最適化の副作用がほしいんだけど」
多少常人場馴れした外見にはなるが体は丈夫になるし、魔法を使えるようになるし、一番人気はエルフの依り代になったら元の容姿より美男美女になって長命にもなれる。それが目的の方が多いぐらいだ。上手いあんばいの変化した姿なら整形だと思われて、トランスファーを引退して表舞台でモデルなんかやってるのもいるぐらいだ。
「あなたは違うの?って今日の今日まで知らなかったんでまだ実感ないわね」
「そうですね。遠足で見知らぬテーマパークに来たらいきなりスリル系ライドで宙返りして、何が何やらわからない状況です」
それは良いんだか悪いんだか分からんショックな事態だ。
「まあ言ったようにそれ目当ても多いよ。無論報酬もあるでしょうけどね。それが証拠にみんなその能力の喪失をひどく嫌がるんだけどね。その名残・・・・特持力、あたしは達は一般人が聞いてもいいように残り香って言ってるけど、あたしの場合は・・・・・・」
自分の光るツノを指して
「これとか」
そう言って側にあったリミット500キロの握力計を軽く握ると測定限界値に達した。
「ゴリラとか言わないように。言ったやつみたいに二度と言えないようにするから」
「は はい」
「ちなみに握力の比喩によくつかわれるダイヤモンドを砕いたってことはないわよ」
「砕くダイヤがどこにあるんですか?」
「これが原型」
メモ用のグラファイト鉛筆を拾い上げて握ると、握った部分が漆黒からクスンだ氷砂糖の塊になった」
「なんですか?」
「ダイヤモンド」
机に置くと確かに黒体だったグラファイトが美味しそうな氷砂糖みたいになっていた。
「う 売ったら高くありません」
「純度低いし、磨いてないから価値無い。色も良くないから工業用が精々なんで無理」
高密度研磨材なので爪磨きのフィニッシュ用になるらしく、たまに作ったら知り合いのお姉様方にやるらしい。アマゾンで買えば同じ機能の爪磨きで千円ぐらいだろう。
「純度上げて無色に出来ないんですか」
「やった人間いたけど、高温高圧かけて無茶苦茶手間暇かかってその間手が塞がるんで二度と作りたくないって言っていたようよ」
乾かないマニキュアを塗られて、何も触れない状態が数日続くらしい。
「気が狂いますね」
人間は同じ姿勢を続けると最後には発狂するとか?
「腰が伸ばせない拷問受けた虜囚みたく、しばらくおかしかった。あれで禁止になった」
恨みがましそうにダイヤ鉛筆を見ている後輩であった。そんなモン作らなくてもトランソファーは高給取りだから心配するなと言うと、今泣いたカラスがだった。
あとはと断って。
「ゆ~きの降る町よ~♪」
何か歌・・・・・寒そうな歌を歌い始めると、国の出先機関の関係上節電で28度と暑いプレハブ小屋が凍死出来るほどの室温に落ちた。
「魔法も使える。便利なのよ。燃費が下がってエンゲル係数で上がったぶんのエアコンの電気代ぐらい浮くのよね」
「それはありがたいですけど、なんで歌歌ってるんですか?さっきは歌なんて歌ってなかったようですけど」
「コントロールする必要がある時は呪文?があったほうが出力コントロール出来るのよね」
「どんな理屈なんだろう」
「イチジク人参山椒にしいたけ 水兵リーベー さあ一緒にいこう3.14 憎しみの女強盗 とか語呂で覚えてると間違いが少ない。本来の魔法もそうだったんじゃないかな。元の意味はわからなくなったけど語感だけ残ったとか」
呪文は覚えやすいように日本人向けには童謡に替えて覚えるらしい。
なんならさっきみたいにコントロール不可の無制限寒波をやってみようかと言われて遠慮する。
「でも凄い魔法使いなら声に出さなくても魔法が使えるとか言いません」
「無詠唱ってヤツ。やってもいいけど、あれ情緒が無いのよね。それに無音も良し悪しよ」
現象だけ起こると、たまにお化けが苦手って奴が驚くらしい。
「突然生暖かい風が拭いたら幽霊が、冷たい風が拭いて雪が降ったら雪女が出たとか、雷がなったらブーさんが出るとかなって騒ぎになった事があるのよね」
なんでブーさんで騒ぎになるんだろうと突っ込む。残りの二人が出たら確かにお化け嫌いは驚くだろうが。
「原文ままだと地球人には聞いたこと無い言語だから聞いてる方はワケわかんないよ。下手するとお巡りさんコイツですって通報されるかもしれん。その点馴染みの歌だったらカラオケの練習だといえば文句も出ない」
「童謡とかを街で練習するやついますかね?」
「日曜昼のノド自慢見たことある?あれに出るんだと言えば、頑張れって応援してくるよ」
「見たことあります。中々合格のラインまでランプが点灯しないんで萩本さんが「もっと上げてよ~ 遠くから小さい子が来たんだよ~」って無理から合格にするんですよね」
「それはちょっと似てるけど違うと思う」
「体が緑色になったりエラが出来て戻らないのは嫌ですけど、魔法が残るのはありがたいですね」
冷気の魔法ですっかり涼しくなったので出来れば自分も使えるようになりたい。
「氷なんかも出せるんですか?」
アイスティーのグラスを手にして、ナントカと雪の女王のセリフを言うとグラスが氷いっぱいになった。
「歌わないんですか?」
「大体はワンフレーズだと色んな団体からも文句はこないけど、これはどんなクレーム来るかわからんからビタ一文歌わない 歌えない」
カイジの鉄骨渡りより危ないと自重したらしい。
「ああ~~~~ 確かに」
嫌な予感がするんで、詳しくは聞かないことにした、
「さっきの話だとこの魔法もいずれ無くなるんですか」
魔法は便利過ぎるだけに失いたくないと誰でも思うだろう。
「大体直ぐには元に戻らないみたいね。でも徐々に元に戻るみたいだからあんまり増長してると、一般人に戻った時にチヤホヤしていた連中がおべっか使っても仕方ないってハシゴ外されてひどい目にあうから注意ね」
金のタマゴを産む鶏が優遇されるの産んでるだけだ。産まなくなったら多分長年の労をねぎらってくれないだろうし、年金も出してくれないで、博多水炊き一直線だろう。
稼がせてくれた人気競走馬だって引退したら、太らせて馬刺しとサクラ鍋だ。感動とか勇気とか努力とかいいつつ経済動物は用済みならポイが世の常。
競走馬を熱く、熱い桜鍋をつつきながら語るどっかの自称馬好き芸能人もいたな。誰か知らんが。
まあ自分たちも同じだから稼げる時に稼いだ分は周りに流されるずにとっておけと言う。
「先輩はどうなんですか」
「まだ残り香は抜けないけど、いつ抜けても普通になっても良いように資格取得三昧よ」
見ると机は資格関係の本で一杯であった。
「どの世界も世知辛いんですね」
年収億を超える夢有る仕事とか聞いたが、プロスポーツ選手みたいに怪我一発で翌年年収ゼロもある辛い業種でもあるらしい。
他にどんな魔法がと聞いた。
「青い稲妻が~♪」
今いるプレハブに被害が及ばないように静電気レベルの雷が出た。
ショボって言ったら、この場所をカタトゥンボ(世界一雷のメッカ)にしたら怒られるし、被害額は一生かけても払えないので断られる。
「燃えろ~よい女♪」
やはり被害がikr チャッカマンぐらいの炎がikr
「海はよ~~~海は~~~♪」
やikr 水がikr
「何故水魔法が村木賢吉さんの親父の海を・・・」
「カラオケの場じゃ盛り上がるのよ」
「この場は死んでますけど」
先輩一体幾つなんですかと聞いたら、若そうに見えてその実は・・・・と言いかけると爬虫類特有の縦長に割れた瞳孔が細まって震えた。
見たこと無いけど雷撃銀座のカタトゥンボの光景浮かぶ。
「せ せんぱいとっても肌がツヤツヤでキレイなんで、もし龍種なったらあたしも将来とっても嬉しいなと~って思って」
「むふ~ (*^^*)」
ドヤ顔又はむふ~顔のサンプル標本かと思った。
(この人案外単純だ・・・・いや馬・・・・・・・やめよう)
初見の日でなんとなく操縦の仕方がわかった後輩であった。
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