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Final episode[3/3]
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言われたとおりに手荷物を置いて先輩とおソロの白衣・
緋袴に着揃える。
「警告なしで撃たれたら痛そうな銃だったもんな」
使用弾頭が貫通して土地が銅や鉛で汚染されると不味いので体内で止まるダムダム弾とか。
あれ対人で使って良かったのかと思ったが、サンフランシスコの不良警官も44magで使ってるからいいんだろうと思った。
「あれっ?」
なんであたしがそんな事を知ってるかな。
まああたしの体質らしい、インストール能力ってヤツだろうと思うことにした。
シャッシャ
着替えなくても良いと言われたがここでの制服兼身分証なので、身にまとっておけば第三国の間諜や工作員と間違えられなくて撃たれずに済む・・・・・らしいので着替える。
「モノホンだ」
今まで故郷の島ではポリエステルとか?であったが、これは麻と綿と絹で練り上げられている。
着心地はいいが高いぞコレ。
洗濯コストも。
「流石親方日の丸」
普段着ていたのの十倍ぐらいするだろう。
素材の美しさと高いものを身につける優越にニンマリするが、デメリットたる汚れやシワを心配したが、多分ここにいる間はナントカスイーパーのオキヌちゃん状態で着たきり雀であるようなので洗濯とアイロンを増やすことにして普段着扱いにした。
「辞める時に記念って持っていったら怒られるかな」
知らんが相当時代がかった素材と作りだ。
それらしい言葉を並べて年代物の由緒正しいって事に誤魔化せば巫女マニアが高値を付けてくれそうだと画策する。でも直ぐに足がつくからと諦める。
「しかしせこいようで、その実偉いお金かけてるな。この家も・・・・・アンだったっっけ?」
玄関先の最新暴力装備に大枚払うのは安全買うんだから当然として、金かけなくてもいいところに金をかけている。
ここは基本地元民しか訪れないとか聞いた。都庁とか世論に対して見栄張る必要もない場所にこれだけ手厚いのはここが国にとってよほどの施設なんだろうと金銭的に今更ながらわかる。
「そんな場所に単なる憑かれやすいだけの田舎娘を呼ぶかな?」
自分が呼ばれた理由を今一度探す。神様は純朴な巫女を好むって某アニメみたいな展開も考えたが、自分はそういい子じゃないので他の理由があると思う。
「やっぱり柱捧(生贄)かな」
諸々から考えたらは大方そうだ。
「自慢じゃないが外見も中身も誇れるモノは無いので、あるのは産女うぶめぐらいかな」
この場合はいわゆる処女だってことぐらいだ。
「神様ってそんな初物好きなのかな」
まあ男なんて初鰹ってだけで嫁さんを質に入れるロクデナシだから仕方ないか。
「神様って男だっけ??」
お手つきを出すのは、人の食った御膳を出すようなもので?それは神様に対してあまりに不敬だって昔から初物かららしい。
どっかの隣国の食い物屋や囁き女将の料亭じゃないんだから人間にだって不味いだろう。他の客に出したけどマイクロ波で殺菌したから良いですよね、なんて構わずレストランに行くやつはいないだろう。
御祭神?はデカい巨石だっていっていたが、埋まってるのが仮に大魔神像だとするとやっぱり悪代官と越後屋を成敗するために死なないと駄目かな。
「死ぬにしてもフワニータさんみたいな忙殺は嫌だな」
生贄の先輩だろう?彼女は逃走を試みたんだかなんだかの経緯はしらんが死因は撲殺だったらしい。
「銃床で殴られると石のハンマーで殴られるのと同じだっていうもんな。64式は重そうで痛そう」
あの隊員から逃げれるとは思えないのでせめて安息の白粉(遅効性毒薬)くれと希望した。
それとも適当な相手とヤレば任は解かれるだろうから、考えるが・・・。
「だからここ女性ばっかりなのかな?」
ここにカンヅメの間に経験してお役目をうっちゃる事は駄目そう。
「まああの人の言を信じれば、辞めるのは自由らしいから、瀬戸際を見極めることだけは気をつけようっと」
ここがそんな一端を担っているかもしれないが、全員がそれを担うとは限らない。平日午前八時頃身だしなみを整えて忙しく警察署に入っていくのが警官とは限らないようにだ。
本職相手にどこまで通用するかは分からないが、島じゃ小野田少尉って言われるほど山に逃げられれば山狩り不可能って言うほどのステルスだから、まあナントカなるだろう。
着替え終わってミツ豆の残りを飲みながら添えられた一文を見ると、額は上げないで良いと添えられていた。普通の巫女は額を上げてお天道様に晒すのが礼儀らしいがここでは特に規定は無いので自由らしい。普通は口酸っぱくものと思っていたが、いきなりのフランクにやっぱり普通の神社じゃないとわかる。そう言えば巫女職に付いている物は生贄にはならんって話もあるから、服はそうだけど職務は違って生贄かなと思った。
(まあいいや助かった。額上げると寒いんだもん)
島でも特にやんや言われなかったので助かった。
でも次に添えられた一文には首を捻った。
『巫女装束の時は手袋の着用禁止』
「???」
先程みた女性自衛官は職業柄?全員手袋をしていたなとぼんやり思い返す。
(なんかあるのかな?)
まあいいか。なんかあるんだろうとキモに命じて理由を探すのは当面忘れる事にした。
(気のきく先輩のことだからなんかあるんだろう。意外とあの人当たりかな)
口頭じゃなく、ワズワザこんなメモにしてくれたいのは、自分を考えてくれていてくれていたのだろう。例のチート騒ぎ?で大袈裟だと呆れたのを少し訂正することにした。あれは鉄は熱いウチの方がいいとの気配りなのだと。
シャアって衣擦れ音で安彦立ちして、エリを正して古い三面鏡に己を写す。
ステロタイプな物語にあるような美醜の紹介から始めるような展開は野暮で言うまいが、着付けの佇まいは上々だ。
「なんでも経験ね。一日の長で、長ければそれなりに様にはなる」
ニンマリ。
神社の雇われバイトもしてるし(一人しかいないが)、馴染みの婆ちゃんのいる美容院では着付け担当であった婆ちゃんが腰やったので全部任せられて一通り着付け担当もできる。着付け教室では自分で自分の着付けを一人でやるので場数は踏んでいた。
もしここを追い出されても髪結いの免許もとれば食いっぱぐれは・・・・・・あるだろうけど、そうはないだろう。
どうやって取るのか知らんが、多分高卒ぐらいはいるからここで学費ロハで取らねば。
「やっぱ手に職よね。ここで何か資格取れるのかな?」
自衛隊は資格取得を目指すなら天国とか聞いたことがある。
大型2種と危険物乙が取りづらいが、取れたら副収入ぐらいになるとか聞いたので取り敢えず何歳からどうすれば取れるか今度庁舎でパソコン借りて調べよう。
駐屯地で大型四輪まで取れるとか言っていたので、ヲタ霊の本体を運悪く偶然に轢き殺すって仕事があるかもしれんから大型は欲しい。崖とかから不慮の事故で一緒に沢山処理する事も考えてけんびきも二種も欲しい物だ。
後何かを埋める為にユンボにボーリングに焼却処分の為に危険物処理。そんだけ持ってれば高速事故車両を埋めるってあの国で求職も可能かもしれない。
でも理由が無くても言いがかりで拉致監禁拷問も何が悪いんだって白色テロ国家で渡航はおっかないから止めた。
殺人発生件数世界一のナントカジャスの方が、白色テロ国家のあそこに比べれてマシだと思う。
(あれっ。なんでかあたしあの特ア国にえらく手厳しくなってるわね)
政治的にノンポリだと思っていたが何故かと思えば、戦いの最前線に立たされる連中がここにはいるんだから、特殊能力もあって当たられても仕方ないと思った。しかし嫌悪感で、香港で北京ダックは一生無理だと思った。まあ台北なら嫌悪感無いようなので行く先の変更をすることにした。
「んぁま~い」
お言葉に甘えて甘味を三つ豆まで飲み干して、腹が膨れた事で掘りごたつのせいもありコックリコックリと船を漕いでいる時に表から ドカッ っと何かが落下音がして縁側を見ると先輩が帰ってきていた。
あわわわわわ
「!?」
何故か自分は酷く慌てていて、愁嘆な姿を見られては恥ずかしいと思ったがその心配はいらんかった。
相手の方が余程だったからな。
「大丈夫ですか」
縁側にどっかり座って、背負ったでかい深緑の行軍ザック?で腰から上は全く見えないが、外の田畑を向いたままだがしょぼくれているのは落ちた肩と吐息でわかる。
(ご苦労さまです)
何故かそう頭を下げた。
なぜだかその時は分からなかったが。
静かだが元気な佇まいだったのに、今のこの人疲れてる。ここから庁舎まで往復が散歩には長いにしてもだ。
「ん~」
ロボトミーをしてくれるのは嫌だが、医者でも呼ぶかとと聞きそうになったがそれより先に中身パンパンの行軍ザック?を廊下で押し渡された。
「あたし今から夜逃げですか?まあ面倒事背負い込むよりはずっとマシですからいいですけど、バスもうないだろうな。なんだ、あの印刷忘れたような時刻表。ウチの島だって午前と午後に一本は書いてあったぞ」
口がしめきれなかった雑嚢から山に逃げるサバイバル関連じゃなくて、娯楽本やら書類やらDVDやらが顔をのぞかせていた。
「?」
何かと聞くと、あたしがここに来る前に読む必要 見る必要があるモノらであった。
裸の大将だってもう少し旅慣れてると思うほどてんこ盛りのこれ全部?。
「こんなに読むんですか。あたし炎竜に追われて師匠と夜逃げする天然ボケの魔法少女ですか」
「心配しないで。伝えることは伝えたって国のアリバイ作りだから、見たって事だけで十分」
何かあったとき関係機関から査問の模範解答な口上を述べる。まあ実際保険の約款みたいにご丁寧に全部読むやつはいないので読む必要は無いと言われた。
「読みたくは無いわよね」
「はい」
「で、いいわ」
行軍ザックを押し付け、そう言って目を瞑ったまま縁側の廊下に背中からバンザイして不貞寝の様相だ。出っ張りがほとんど無い程体の細い先輩なのだが、怒りの質量か?家が揺れる。
「鉄山靠ですか?」
なんか辛いことでもと言おうと思ったが、それはわざとらしいので口には出さなかった。ただ疲れたとボヤく原因はあたしにあるとわかったのでお骨折りに心の中でありがとうございますと頭を下げる。
「この量と、こんだけの種類とこの暗い部屋じゃごめん被りたいです」
心根を察さぬように明るく振る舞う。
「でしょうね。じゃあここ数日の当面必要な事だけ口頭で伝えて、週明けに庁舎に担当が出張から帰ってくるから話を聞いて、一応島でのあなたのサインを誰が偽造したかは島の職員が調べることにして、あなたがここでのお仕事と待遇その他に納得したらサインして頂戴」
「・・・・・」
「ん?」
快活な子が返答なしなので心配して頭上を見上げる仕草で伺う。
「だいじょぶっ?」
頭上を後輩に向けたままのバンザイ状態だったので目を向けても様子が分からずに起き上がろうとしようとしたときに返事があった。
「だいじょう・・・・・はい、だいじょぶっです」
「?・・・・もうホームシック?」
「違います」
「・・・・・・じゃあいいや。花粉症なら早めに言ってね」
「島に杉もヒノキも無かったので多分大丈夫です」
じゃあ良いやと再び寝たまま目を瞑る。
ワケワカラン事態に15歳が戸惑ってないかと心配したが当人元気な声で安心し、目を閉じたぬき寝入りのまま寝言だと断って話を続ける。
「寝言だからあなたに応える義理は無いけど、課長から伝言なんだけど、児相とか労基に駆け込まないでくれって頼まれた」
「児童相談所にですか?なんで。私奴隷労働か、今流行りの若年女児性搾取でもされるんですか?」
「外郭団体の不祥事ならまだしも、あなたは間接的だけど国預かりなんだからそんなコトしたら関係各省の上が吹っ飛ぶでしょうね。落とし前は他で付けたげるから、お代官様申し上げます女は止めたげてね。課長さんの所の三十路のお嬢さんやっと嫁に行けるって、歳もお尻も重たい娘さんを降ろせ、好々爺になると夢語ってるんだから」
孫を笑って抱きたい。だから上手いこと取り直す任を色々与えられてしまったので精神的に疲れているいるとゲロる。
「だからお疲れで」
「わたしは神様の相手だけしとけばいいんだってこの仕事についたのに、なんでここの雑事はあたしに回ってくるんだ。あたしより適材適所な年長様いくらでもいるでしょうに」
「あたし他の方(巫女)知りませんけど、なんとなくわかります。先輩面倒見良さそうですもん」
「うう。寅の巫女なんてなるもんじゃなかった。可愛い卯の巫女になりたかったのに」
「どゆことです」
聞くと12の割当られた干支に相対した生まれの性質が、居住スペースの庵と加味して割り当てられるらしい。
そして彼女は寅・・・・・似てるかどうかはしらんが、ちょうど他に空いてなかったのかしらんが、にべもなく寅の巫女になったらしい。
「ラムちゃんですか?」
と言おうとして止めた。ちょっとボリューム的になんなんで、嫌味かと取られたらまずい。
「まあ先輩細身で背が高いから大型肉食猫科って感じするから似合ってるような」
「あたしだって好きでこんなにデカく育ったワケじゃないんだけど」
「失礼ですが、何センチですか」
「ななじゅう ・・・・ さん 」
73センチって幼稚園児ですかって突っ込みたいが、意地でも百の位を付けたくないのは同じ女だけに分かるような気がする。
でもそんだけ高いのに今まで分からなかった。自分の注意力の散漫かと思ったら、この人猫背なのだ。どっかの隊長さんみたいに。
それは本人の勝手だが、あの隊長みたく同じく水虫なら師事する相手は選べるらしいからチェンジを頼もうと決定。
「ん?」
板の間に寝っ転がったまま天井を見ると軒下の洗濯物の懸架に、物干し竿だとは思えない棒が吊り下げられている事に気がつく。
「なん?ありゃ」
懸架穴の最上段にあるので今まで見のがしていたらしい。ホコリも被っているので軒下の天井と同化した光学迷彩になっていたらしい。
「なんですか?」
視線に気が付き後を追うと気がついたようだ。
「島にいた刀剣オヤジの家にあったような・・・」
島で知り合いであった刀剣好きなオヤジの床の間にはあったような気が棒で気になる。
「見ていいですか」
「いいわよ~・・・・・わたしのじゃないけど」
もう興味がないと目を瞑ってしまったが、痩せたいなら庭先で振ってねと言われる。
「ボディブレードなんですか?揺れそうに無いですよ。まあ長さは丁度ですけど」
長さはともかく、手に取った長い棒はボディブレード?にはどう見ても見えない。
見えないよねと見ると先のえくすかりばぁにならい白のマーカーで平仮名で名前が書いてある。
「げいほるぐぅ・・・・ゲイ 掘る ・・・・グゥ かな」
握るともどりが持ち手順繰りに掘ってある。
凄く太くて大きいです。
「アラゾンの隠れ裏筋・・・・・・じゃない18禁売れ筋マストアイテムの一種?かな」
慌てて先端から手を離す。
「ゲイにもどりに掘るって・・・オカマのリンチかな」
触ってしまったので、逆製石鹸で手を洗わねば。
「多分そっち持ち手。穂先だと脱肛の施術にもカマの私刑リンチにもならない」
「ああ、逆でした」
どうやら柄部分を見ていたようだ。逆を視ると刀袋が突いていたので外すと両刃の刃先がついていた。刃こぼれが酷くいつ研いだんだと刀鍛冶やってる知り合い所に持っていったほうがいい。
「相当痛そうですね」
痛いで済むかとツッコミが入った。金塊とか麻薬の密輸用に拡張手術でもするのかとケラケラ笑う。
「これでナニをするんです?」
オカマのリンチ用ではないようだが、刀身は真っ赤なナマクラだった。
刀マニアの刀鍛冶なら失敗だと釘にでも打ち直ししそうな程のナマクラなので殺傷力のないコスプレ用かと聞く。
「この先に川があるんで、陽気がよくて時間あったら魚突いてきて」
投げれば不思議と当たるので季節魚の繁忙期は庁舎の食材担当が河川で付きまくって食堂に塩焼きが並ぶらしい。川底までも貫くので、投網 鵜いらずって言われているとか。お陰で底の石にガンガン当てって刃こぼれしたのだろう。
「どっかの魚屋のアンちゃんが探してるような気がするけど、まあいいか」
えくすかりばぁもどっかの男装麗人が探しているような気がしたが気の所為だろう。
「ここ、なんでもあるんですね」
「そうね、槍っていえばロン・・・・・・ナントカって電氣槍があったらしいが、どっかの機関が借りパクして戻って来ないらしいけど、まあ電極プラグがついていないような欠陥品だったからどうでもって事になってる」
「電氣槍ですか?捕獲した獲物にトドメとか、川に突っ込んで魚を痺れさせて浮かんだのをさらうって」
あれ禁止じゃ無かったかと思ったが、ここじゃなんでもありは狩猟法でもあるだろうと言わなかった。
長い棒を持ったら子供のように振り回したいのか、手に持ったゲイ掘るグーで竜巻旋風剣をしていたら行軍ザックを引っ掛けてひっくり返ったパンドラ箱みたいにごく僅かな中身以外をぶちまけた。
「気が付かなかったですけど、高校の教科書と参考書の下の方になんか漫画とか小説本も入ってますね」
行軍ザックをひっくり返すと底から ドサドサと重たい音を立てて本やらが飛び出てきた。
「これは青い狸型ロボット特製ザックだったのかな?」
そういうほど庵の畳座にこんもりとした山が出来た。なんてベタな漫画的大荷物だって表現だとメタな事をボヤく。
「だから重たい筈だ。王家の仮面とかクレヨンじいちゃん HENTAI×HENTAIみたく終わらない漫画全巻じゃないでしょうね」
終戦直ぐでの農村へヤミ米仕入れ状態で重かったのはそれのせいだと、起きる気は無いと寝ていたまま文句を言っていた。
「いえ。ここの女子が多分嫌いなダイム小説。まあいわゆる“駄漏”系が中心ですね」
「ああ。タイトルは長いんで読まなくても何が書いてあるかわかるんでネタバレサイトでもあらすじ読むのすっ飛ばされるようなヤツね」
ISBNナンバーの付いたヤツもあれば、ついてない薄い本もあった。
「あらら、これはクラスター並みに凶悪だな」
表紙でわかるが、一般人には地雷な本だ。
「隊員のコレクションかもしれん」
「これ個人の所有物ですか・・・・・・まあ税金で買った図書館の蔵書でも問題あるような気もしますけど」
本当に自衛隊ってオタクの巣窟って正鵠を射てる。
「でもここの女性がアッチ関係に良い感情を持ってないって知ってる筈ですよね。もしかしてこんなモノ読ませるって嫌がらせですかね」
この手の愛読者にここにいる女子は迷惑をかけられているのだから憮然として反応なお互いわかる。
「これ本来あなたが受け取るのは事情を知らない時だから、覚悟のススメとして、予備知識として読んどいてでしょう。そこまで悪趣味じゃないと思うけど」
「女子団体特有のいじめじゃなくて良かったです」
「故郷じゃいじめられた事あるの」
いじめと言うとジメっとしがちだが、何故かカラッと元気一杯なので構わず聞いてみた。
「学校に入った頃はありましたけど、ソイツらしばらく学校から行方不明で山の墓所で見つかった後の退院後はすご~く仲良く出来て、それは学校のみんなも村のみんなも知ってるから、ここ数年は無いですよ」
ちなみに島の駐在さんから事情を聞かれたけど、話を聞いてるうちに熱が出てしばらく寝込んでたんで、多分神隠しだったって事になって迷宮入りになったらしい。
「・・・・・また、庁舎の内調(情報部)もとんでもないのをスカウトしてきたわね」
蝶ネクタイ小学生みたいに、犯人はお前だ!って言ってもやぶ蛇なので黙っておいた。黒の全身タイツなら庁舎の特戦群詰め所にいけば有るだろうけど貸してはくれないだろうからな。
パラパラパラ
読まなくてもいいと言ったが、若い娘らしく興味を引かれたらしく斜め読みをしている。
「読みたくなるような、本ある?」
「えっとですね 魔王のグルメ 勇者はつらいよ 魔王城前派出所 トラック勇者~望郷一番槍~ 江戸前魔王 魔王君と七人の魔女 ゆる△まおう ぼっち・ざ・まおう! もののけ勇者 異世界の谷の魔王 勇者、英雄やめるって 無職魔王~ハロマ[魔界職業安定所]に行ったら本気だす~ リトル魔王メイド チキチキ魔王猛レース スカイツリーブラック魔王 魔族の星 魔術狂のうた 大魔王シャズーナ 勇者一代男 アパッチ魔球軍 大魔王ちゃんはおしまい 突然メラのごとく 宮崎地鶏の、黄身はどう分ける 魔国は燃えているか 珍説魔界史パート1 魔王と勇者大作戦~ぶっ壊した国97~ 踊るマオウジャ 損害が絶えない勇者 魔族会議は踊る~されど進まず~ 進撃の魔族軍 魔族の仮面 魔族の花嫁 魔族たちに労災は無い」
「・・・・・・・」
これはひゃっとしてギャグでやってるの?(出版社の)と思ってしまう。
「これはどこで笑えばいいのかor突っ込めばいいのかわからない」
「荷電粒子砲?の直撃でも受けて生き残れたら笑って良いんじゃないんですか」
「眼前の大気中で2億ジゴワットの陽電子砲ぶっ放して死なないんだから、遠距離からの荷電粒子砲ぐらいじゃ死なないと思うけど」
どう違うのかしらんけど、ギガトン水爆が目の前で爆発したようなものなのに平気なんだから、今更死ぬわけが無い。と、あの連中が生きてる時に突っ込んだ、この記憶は理系学生かな?
「まだありますよ 坂の上の魔王城 勇者浪士 魔族太平記 魔王の碁 機動魔族ガンダン 異世界太閤記 勇者が道をやってくる 竜魔王のおしごと 新魔国気候 証言魔族史 イワン・マオウソヴィチの一日 独眼竜魔王 ノートルダムの魔族男 ああ、魔王さま 異世界いちの勇者男 世界樹の木は残った 魔王は語らず プロジェクトM~破戒者たち~ 勇者がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ! マジカル勇者ツアー 魔王城でO MO TE NA SHI 異世界だよ、魔族集合 どてらい魔王 細腕魔族繁盛期 大魔王小魔王カムイ編 岸辺の魔王 俺たち魔神族 遠すぎた魔王城 戦場のマオウ・クリスマス 一本聖剣土建入り 赫灼たる異世界 わたしを異世界につれてって 異世界をかける少女 勇者対メカ勇者、魔界の大決闘 心を繋ぐ6ゴールド 略奪された7人の魔女 魔王の異常な愛情~または私は如何にして心配するのをやめて勇者を愛するようになったのか~ 」
「・・・・・遠くで鳴いてるのはキリギリスかな、それともウシガエルかな」
えらく遠いのに静かなセイで虫の音が聞こえた。
「まだ残ってましたね。最後のタイトルは
『おばちゃ~ん おばちゃんの所の
寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る処に住む処 藪ら柑子のぶらコージ パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の勇者 君が僕の頭を殴ったんだよ 』
『なんだって ウチの
寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る処に住む処 藪ら柑子のぶらコージ パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の勇者 が魔王君を殴っただって』
『どうした、どうした』
『あんた聞いてよウチの
寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る処に住む処 藪ら柑子のぶらコージ パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の勇者 がお隣の魔王君を殴ったんだって』
『そりゃすまなかった。じゃあ、オジさんがウチの
寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る処に住む処 藪ら柑子のぶらコージ パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の勇者 が戻ってきたら叱っとくから勘弁しとくれ。
で、魔王くんはウチの
寿限無寿限無 五劫の擦り切れ 海砂利水魚の水行末雲来末風来末喰う寝る処に住む処 藪ら柑子のぶらコージ パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン シューリンガンのグーリンダイ グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の勇者 にどこを殴られたんだい。見せてみな』
『あんまり長いから、もう治っちゃったよ』 」
「・・・・・」
「・・・・・」
「いくら駄漏系でも少しだけ長いタイトルですね」
ヴィクトル・ユーゴーやアーネスト・ヘミングウェイが冗長だって助走付けて殴ってくるレベルだ。それにしてはその二人の名前が長い。
「その長さは幾らアッチ系小説にしても少し長いわね。テレビのブックランキング読んでるアナウンサーから、もう勘弁してくれってクレーム言われるわね」
「それは良いんですけど先輩、座布団と、手拭い 扇子もって何を始めようとしてるんです?」
不貞寝?していたのにいつのまにかそれらを持って縁側に立っていた。
「時そばですか」
「後輩が一席やったんんだから、ここは逃げちゃ駄目だから、タンポンみたいなモノには入るのは嫌だけど、ここは先輩としてトリを一席」
「おあとはいいんです」
「えっ~~~」
一席やってません。駄漏のタイトル口述しただけです。一席ぐらいの長さはあったけど。
折角持ってきたのにと、手拭いと扇子でそばをすするような仕草をやっていた。
「今何時だい?って聞いたほうがいいですか」
「時そばよね。後輩ちゃん落語好きは回りにいた?」
「あっ!?・・・・・いませんし、趣味でもありません」
「ここがATフィールド(引きこもり)希薄って言ったの覚えてる?」
「ここは異界。この世とあの世。自分と他人の境界が希薄な場所ですね」
そんな場所に引きこもりが本分なオタがくる不条理。
「異界の性質らしいけど、わたしたちの場合はそれと神との境界も希薄だから、まあドアを締めて鍵をかけるどころか引きこもる塀も家も部屋も無い」
「夢邪鬼に抗う術なんか無いんですね」
「脳髄レイプって言うのもいるわね」
「先輩、じゃあやっぱあたしが不案内な落語に見識あるのは隊員の中に、その落語の・・・」
「元オチケンの落語オタがいる。どうやらあなたもここに来てからソイツの落語データがインストール(憑かれた)みたいね。多分今までは近場で面突き合わせるぐらい・・・・まあ赤外線通信ぐらいだったけど、ここに来てから感度三千倍でミリ波通信みたく減衰無しになったかな?」
憑かれ体質にこの場と成長期?のせいで相当バフがかかっているのだろう。遠く離れた面識ないオタの知識にまで憑かれたらしい。
「先輩もですか」
「まあね。お陰で圓生師匠が憧れの人になっちゃったわ」
緋袴をめくって柔肌をあらわで、十八番の蛙茶番を演ろうと思っていたらしい。
「蛙茶番に出てくる伊勢屋の若旦那ですか。それに先輩女性が落語でやる演目じゃないですよ」
昔風俗が乱れるってお上のお達しで弁士中止になったやつだ。
「そうかな?オチが好きなんだけど」
「いいから、ちゃんと緋袴整えてください」
整えてって言っても、整えましたってネタ披露は禁止って釘をさされて残念がる。
「しかし、ひどいタイトルね。これで興味を引くことを画策したのかな」
これで笑ってるやつは箸が転げたら腹の筋肉が断裂壊死して生きてはいけない。
「こんなタイトルの本、本当に書店に並んでるんですか?」
島のなんでも屋の書棚では見たこと無いラインナップ。
「流石にこれは無いと思うけど、まあこれに似たようなタイトル並んでるんじゃない?駄漏系は、人目を引いて目立てば勝ちって作戦らしいから」
出オチ クスグリ 哀れみ、なんなんだろうが、手に取らせれば勝ち。あとは表紙の美少女かイケメンイラストが『連れてって 連れてって 夜のおかずにつれてって』と誘って、レジに誘う。そんな商戦ドクトリンらしい。
しらんけど。
中身などあまり関係ない。人は見た目が9割なのだ。出版社が表紙が見られる平積みにこだわるのはそんな事情らしい。
「でも変ですよね」
本をかたしながらも何かを探す。
「何が?」
「読んだのの傾向なんですけど、殆ど以下続刊みたいな終わり方ですけど、続きが無いな~」
最新巻の発行日から大分年月経っているのに、本の山から続刊を探すが無いらしい。なんとはなしに、このコレクションを個人がやってるなら途中で切るって事は無いと思えたので、多分続編が無いんだろう。
「なんかB級映画で作ってる途中からコレが当たったら続編作るぞって伏線はっておいたけど、結局人気出ないでポシャった臭がしますね」
「ジョンプ等で言えば、第一部 完 ね」
二部が始まったなんて話は聞かないが。
「書いてる人間が終わる見立てが出来ないのに勢いで書き始めたんで、広げた風呂敷畳めずバックれで、作者死亡じゃなくても絶筆パターンじゃない?」
または、執筆に飽きたか、あったか疑問だが才能の限界かなとせせらう。
「見通しが立たないのに始めて逃走って、まあ素人ならギリ許されるってパターンですね」
「終わる見込みのないのは、素人小説でも発表しちゃ駄目なのよ。遅漏のセンズリじゃないんだから、終わってくれないと切り上げるタイミングをコッチが失う」
「落語なら演者が下がれば一緒に帰れるけど、いつまでも座に座ってると切り上げる事が出来ないみたいなものね」
「志ん生さんが高座で寝たら、誰も帰れず仕方なく寝てる志ん生さんずっと見ていたってアレですか」
元データ持ちが相当だと感心する。
「話の面白くない人間が見た整合性の無い夢の話をいつまでも聞かされる気分よ。見せられるコッチの身も考えろって・・・・・・」
ピキーン!
「ん?」
「あっ・・・・・・先輩、今どこかから耳が痛いから辞めろって思念が飛んできましたけど」
「あなたも感じた?そうね。止めましょう、このネタ」
「庁舎あたりで下手なマスカキ小説書いてるのがいるんでしょうか?」
「小人閑居して不善をなすっていうから秘密にしていたいこともあるでしょうから、このメタは深追いしないでおきましょう」
「それがいいです って思います」
「と、とにかく、なら家で隠れてシコシコやってろ。公場に出ていいことじゃないでしょうに」
哀れなマスカキ自称小説家をせせら笑う。
「先輩。先輩。あたしたち神に遣える純なる乙女 乙女 乙女なんですから乙女の遵守を守って下さい」
「そうね、いけない、いけない。わたし“たち”は清浄なる巫女なんだから」
「あたしは関係ないですよ」
そんな場末の下ネタ話に自分の沽券を道連れにしないでと釘を刺す。
「真面目な話素人に質まで問わないから、死なない限り終われっての。それが最低の礼儀ってもんじゃない?」
「それは小説だけじゃないみたいですね」
島の風俗のお姉さんが、時間イッパイ粘らないでとっとと出すもん出さないと次の客が取れないから、早いのは大歓迎だとか言っていたのを思い出した。
「とにかく終わるって事は大事なんですね」
「そうそう。風俗も小説も漫画も映画もね。辛い人生だって終わりがあるから耐えられるって・・・・・・・・誰の言葉だろう?」
知りませんとキッパリ。
「で、どうします、これ」
あのヲタ霊どもの愛読書かもしれないなら近場に置きたくないので、汚いものをエンガチョと触るような手付きでヒラヒラする。
「ここまで付き合ってくれた誰かさんらには悪いけど、全部無かったって事で」
お互い見なかったことにしましょうと目で合図。こんなモノに関わるとキ印の天才技師が作ったフルダイブバーチャルナントカってゲームみたく脳が悪い方に焼かれる。
こちらは特集能力で脳改造しなくても他人の夢につきあわされる体質なんだから、人工的オプションなど一昨日来やがれ状態なのだ。
ここいらは除草の為にヤギを放牧してるので裏の野菜くず入れに一緒に出しとけば食ってくれるとした。今の本は植物繊維だけじゃない。生分解性のインクはいいとして、pH調整剤とか漂白剤などてんこ盛りなんで食わせるとだめなのだが・・・ここの獣は神様のご加護があると思う事にした。
「でも誰かの持ち物だとか。返せばいいんじゃないですか」
「こんだけあって数日で返したら読んでないって言ってるみたいなもんでしょう。一応国家公務員ばかりの庁舎だから妙に律儀な人もいるからちゃんと読めってことになるかもよ」
「読みたくないです」
「だからと言ってこんなの家に置いときたくないでしょう?だからほとぼり覚めた頃知らない間にヤギがって事にしたら時間的にわややになって、一々問いただすのも面倒で、読んだよねって事になる」
「それで納得してくれるんですかね」
「ヤギがやったことだもん。そのヤギだってここにいるのは場所がら神様の采配でしょう。つまり神様のご意思。神様に遣える巫女が神様のご意思に具申など滅相もございませんから、あたしたちに責任は無い」
「ヤギならまだしも神様まで出しますか?都合の悪いことは全部神様に丸投げでいいんですか?」
蓄財した金銀財宝を奪うために神の御威光を乱造した、どこの十字軍や異端審問官ですかと突っ込む。
「いいんじゃない?わたしは会ったこと無いし、世話にもなってないし、盆暮れのお心付けも貰ったことないし、どうせ人格神なんていないし。ああ、あなたがいると思ってるならこんな与太は止めようか」
別段いるとかいないなんて白黒つけるつもりはない。ネットミーム的なら、いるって言うならいるんだろう あなたの中では で終わりな話だ。
「わたしも会ったこと無いから、どうでもいいですけど」
「そりゃ助かるわ。会ったって人がたまにいるから巫女って職業柄返答に困るのよね」
ドッチの答えだって面倒臭い事になる。
「えっ、じゃあ会った事ある人いるんですか?」
たまにいるらしいが、深追しないのでようは知らないと言う。
「・・・・・・でも神様ですよね。ことの真意を聞いてみたりしないんですか」
遠い西洋の異国の聖職者とかで会ったって奴はいるが幸せな勘違いか、悪辣な嘘だと思ってる。
「本当だとしても、そうねえ・・・・現実に即すと、自分が興味無いアイドルのファンの友達が町であったと騒いでも、そのアイドル今更に興味わく?」
「いえ。付き合いで驚くぐらいですね」
女は自慢したくて仕方ないので驚いてあげるぐらいはサービスしないとハブられる元だからリアクションはするが、それだけだ。
どうやら二人にとって神様はそれぐらいのモノらしい。
「給料の出処だって日々の朝から夕方までの労働の対価として税金からだから食い扶持の世話にも成ってないし」
巫女職は意外とガテン系。神のご加護がなんちゃらかんちゃらって覚えも無いからと微笑む。
「一応神様への奉職者が身も蓋も鍋も無いことを」
「それに遠き未来にここでこんなもんが発掘されたら未来の早稲田大学吉町教授みたいな研究者が探求のし甲斐が無いって世を儚むかもしれないから親切心で・・・・出来損ないは銀河地平へ四散させましょう」
「人類の黒歴史だったんですか?、コレ」
「みんな星になってしまって ください」
「先輩。あの、わたしここの庵担当はチェンジで」
「他満員。他で欠員出たらね」
当分は無理だから帰島して待機するか、離職するかと聞く。それか特殊能力持ちは人間の思念探査出来るので人間レーダー・ソナーと呼ばれて特に潜水艦に載せとくと音波探針なくして敵潜水艦の方位と距離を推し量れるので優遇してくれるらしい。
「そっちのほうがいいかな」
給料も少しいいけど、回りはほぼ男で重油臭いので若い女子が耐えれるかと言うと厳しいらしい。
「重油は直ぐに酔うんでダメです」
「じゃあケロシンならダイジョブ?。ケロシンなら早期警戒機とか対潜哨戒機もあるけど」
「あんな鉄の塊が空を飛ぶわけありません」
「あなたいくの生まれ?まああの島じゃ生きるか死ぬかの時ぐらいしか乗る機会はそうな無いでしょうから、仕方がないか」
日本の潜水艦と対潜哨戒機から敵国軍が逃げることが出来ない理由がわかった。
「あらららら、知っちゃったわね国防機密」
国家防衛に秘密を知ってしまったわねと意味深に笑う。図ったなシャアって文句を言おうとしたが止めた。
「・・じゃあここでもう少しお世話になります」
まあ初めから あご・あし・まくら全部ロハで福利厚生も揃ってるこの職を一時の感情で手放すほど馬鹿じゃない。
カラカラ
次にDVDケースを手に取り降ると音がする。
「これは食べないですよね」
中身も入ったDVDは無理だろう。空飛んでクピって言う幼児なら食べそうだがヤギじゃ無理だ。
「何の円盤ですか?なんか極秘な・・・クリプトスでも暗号化で入ってるんですか?」
普通はジャケット写真がついているのに、単なるSHIROBAKOだけに中身がわからん。
「いや、中身は確かアカゾンでもうってる市販品」
単に図書館の蔵書扱いなので白箱なだけだ。
「これもヤギのエサと同じくここでのレクチャープログラムかなんか知らんけど、ここに来るに心構えで見たほうが良いってオタ向け映画・・・・多分」
もう現地の実践で粗方片付いたので視る必要性は特に無いが、お役所仕事で見たってハンコを付きに来て欲しいらしい。なら時給に入るから視ると言ってくれた。
見るなら庁舎の図書試聴室にいけば見れるとここで使う用ハンコを渡される。今どきハンコかと呆れた。
サインなら偽造で跡がつくがハンコなら誰かがやったと裁判諸々で言い逃れが出来ると、第三セクターの破綻の責任所在並みに無責任上等だと呆れた。
「心構えで見せる映画って・・・・・・アクションかホラーですか?出来れば推理物が好きなんですけど」
「まあアクションホラーかな。推理も入ってるかも」
「欲張りですね。コロイチの全部乗せですか」
島にカレー屋は無いし、お大尽様で無いので食堂で二個目のトッピングすらやったことないが、社会に出たらやってみたかった。よく考えれば今はもう社会人なので外出許可が出たらやってみたいものだ。出るのかな?一生ここで虜って可能性も無きにしもあらずだ。まあオスプレイが来る時はユーザーイーツをやってくれるらしいので生物と温かいもの冷たいものを諦めればなんとかなりそうだ。
「これが上映リストですか」
視聴リストがでてきた。
「禁断の惑星 パプリカ インセプション 紅い眼鏡 エルム街の悪夢 ビューティフル・ドリーマー イレイザーヘッド 胡蝶の夢 迷宮物件 エトセトラ エトセトラ ですか。なんですかこの傾向と対策・・・・」
タイトルを見ると殆ど見たことも聞いた事もなかった。もしかして情報インストールされているかも知れない。
あらまし概要を聞くと昔のハリウッドSF映画やらで、名作揃いだが今のJKが最後までアクビなしに見ることは無理だからよかったやもしれんと笑う。
「ここは基本案ずるより産むが易しだからね。プログラム選んだ人間も自分の趣味の布教を入れたがるのよね。それであたしたち結構苦労するし、シメシメで洗脳されるのもいるしね」
「どんな趣味の人達なんですか?」
「全員オタク」
「オタクは趣味じゃないですよ。生態で・・・・
いや、この頃はそうともいえないのかも」
オタクって自覚してる自分の生態を好み・趣味にしてる、セルフメタファー好き そんな自分が好きなナルシー君もいるような。
「何その、恋に恋する乙女みたいなパラドックスか錯乱は。今どきのナルシストって事かな」
アニメが好きな自分が好きって事かな?是非湖面を覗き込んで自分を抱いて溺死してくれ。言われなくても自分で沼に沈んでいるか。
「そうかもね。言い直す、基本は全員アニオタ それから細分化して枝葉末節だけど、根幹はそう」
「まあそうでしょうね」
それは個人的に忌諱したい生態種だと追伸しておく。
「なんでそんな人間が揃ってチューナー(標人)に選ばれてるんですか?」
「ここそんな場所でしょう」
「ですね」
庁舎に行けばDVD再生機はあるから見に行くかと聞くが、今からじゃ逆効果だろうと乗り気では無いようだ。
「何が逆効果かはわかりませんがそれで、どんな映画なんですか」
「そうね・・・・・・ヒトの心の闇は怖いって話・・・・でいいんだったっけ?確かあらかたそんな話だったような気がする」
「曖昧ですね。見たことあるんですか?」
「う~ん・・見たことあるような、無いような」
「?ドッチなんですか。あたしたち特有のスキ ・・・・じゃない、インストールですか」
ネタバレサイトですかと聞くが、ミステリー小説を後ろから読むアホじゃないとニヤる。
「まあひとくさりあって落ち着けて興味があったら見てみたら。まああんまりJKが見て萌える話じゃないのは間違いないと思うけど、まあここで働くにあたり覚悟のススメ的に見たほうが良いとは誰が決めたか知らないけどなったらしいけど、あなたもうここにいるんだから手遅れだしね」
「しっかし、神様っていい人ばかりなんですね」
「あ?ああ。そんな本読んだのね」
どうやら黄色いTシャツ着てタクシーで24時間マラソンをする神様の出てくるのが物語のとっかかり本が印象に残ったようだ。
「正直村の村長さんより良い人?。その手の話に出て神様・・・・・・は、暇?なんですかね」
「暇でしょうね。本来は多分認識出来ないほど軽き存在の人間の福利厚生にまで心砕いてるなんて、暇でしょうがないからやるんでしょう。それも自分のしくじりならまだしも部下の手違いで死んだぐらいで、普通なら菓子折り持たせて記者会見で遺憾に絶えなって広報に読ませて終わるってのに、ワザワザ遠方からお邪魔してゾフィーのように命をくれるわ あなたは選ばれましたってジャンボ宝くじの一等前後賞にリゾートホテルの招待券にホテトル嬢までつけてくれるって、どんな地上の楽園よ」
遅刻しそうだって急いで登校して、トースト咥えて曲がり角でぶつかった美少女が転校生で実は親がキメた許嫁で、実は記憶喪失で忘れていた幼馴染目みたいな至れり尽くせりのてんこ盛り。
某テーマパークで入場者何万人記念に当たってもこんだけ特典はいただけないだろう。
「まあ、物語じゃ・・・・・現実でも、神様がやりましたって言えば誰も文句言えないから創作側にとって体の良いように使われてるみたいね。哀れな神様」
「神様を憐れむって、先輩どのポジションなんですか」
「単なるボトムな肉体労働者。現場でホコリにむせる村娘。だから言いたい放題が許される」
無能故に無責任が許されるのよと笑う。確かにナントカ四国・・・・・なんか違うような気がするが、そこのおエライサンが言ったら吊し上げか、火刑だろう。
「でも色々やられても下々は多分困るのよね。神様の仕事は何もしないのが仕事だっていうのに」
「どこぞの江戸前の御祭神が喜びそうな職務ですね」
「昔からそうよ。神様、頼むからいらんことするなってのが、神様が人間に関わった災難で得られた哲学 詠み人知らずな人間庶民サイド」
異教徒と蛮族は 犯せ 奪え 殺せ 神の信仰を広めろって、ろくでもない結果しか生まなかったので、何もするな め~わくだってのが歴史を学ぶ者の不幸だと嘆いていた歴史学者もいるらしい。
どうせやったことない人助けなんぞ不得手な筈なんだから、料理下手に限ってレシピに一手間いらんことをして台無しにしてしまうような事はしないで。
「確かに駄漏小説とかじゃ、うっかり殺した人間にいらん手助けして恩恵かお節介で駄目人間にしてますね。あれは普通に死なせたほうがいい」
「死人は死んだほうが幸せって言いますしね。死んで帰って来られても、叩き続けたドアが腐臭臭くなりそうだから嫌ですよね」
「それ3つの願いの猿の手バージョンじゃない。いくら可愛い我が子の帰宅を願っても、腐ったゾンビで帰ってこられると困るわね」
今の時代でも死亡証明の取り消しなんて相当難しいだろうし、昔は一度死亡認定されたら取り消すことが出来なかったので戸籍謄本の作り直しなんて前例無いだろうから役所でたらい回しにされたらしい。
やっぱり死人は死なせとけって、やっぱり神様はいらんことしいだと結論つける。
巫女だけど。
「まあ本人はアッパラパーだから認識不足で『俺なんか・・』状態だから幸せだろうけど、普通に生きて真面目に努力をしてきた凡人が、天才を相手にしたときにみたく、こんな人生やっとれるかってやさぐれる事もあるやもしれん。
神様のお仕事には世の太平の揺りかごを揺らすって事もあるらしいけど、先天だろうが後天だろうが、実力と言われればそらそうだけど、それで納得できるほど人間はご立派じゃない」
努力が尊いから報われるべきだ、なんて言う気は無いが回りに気は使おう。
必死になった期末テストに落ちて落ち込む人間の前でテス勉したこと無いって言われた方の気持ちも考えよう。インチキかズルかイカサマか知らんが、嘘でも、実は密かにやっていたって欺瞞情報を流しておけば敗者も負けた溜飲は下がるし恨みも積もらないんだから自己の保身のためにもしたほうが良い。
「それで不公平感のまん延で社会が乱れた時の責任は取りそうにないですしね」
「事情知らない部外者の大きなお世話ほど厄介だしね」
もっとも与太小説ならともかく、現実で神様が本当に何かをしたって事ではなく、神様って概念を引っ張り出すと人間界にろくなことが起きないから、傍観者が神様を引っ張り出す為政者を戒めたらしい。まあ為政者にとってこんな便利な魔法の杖を手放した事は数えるほども無かったらしいが。
後輩にならって本の序盤をパラパラとめくる。
「導入部は神様ばっかりね。神に助けを請わねば作れぬ与太話などしないことだ って漫画の神様言ってなかった?史上一度でもちゃんと出てきた事なんかないらしいのに、物語じゃホイホイでてくるのね。揚げ物ばっかりの熱のこもった夏場の調理場のゴキブリみたい」
「先輩の職業はなんでしたっっけ?」
「巫女よ」
「巫女って何するひとでしたっけ」
あまりにも神様を蔑ろにするので段々心配になってきたので諫める事にした。
「御札と破魔矢作って売って、たまにツテで頼まれた御記帳も書く」
といいつつ本当はガテン系で、神事の裏方で重たいものも出して並べて、境内からトイレの掃除もすれば、お供物の鯛を咥えた野良猫を追いかけて、屋根の軒下の煤払いに鳥の糞害清掃に、床下で死んで腐った動物の死骸の処理も雨漏りの大工仕事もやる。
いつでも特殊清掃員のバイトが出来ると自信を持っている。
「神様に遣えるってのは」
「他で忙しいからそれは神様にお任せってって事で」
社務所での仕事は大方座っての作業が日がな一日続くので、もしやなんぞの用でやってくるなら立ってる筈だから、立ってるものは親でも使えって事を実践して欲しい。
*********
Something This Way Comes
*************
「あ~言ってたら腹が立つ。わたしが労基に駆け込みたい」
今更ながらあの給料でこの仕事の量は多すぎると文句を言い始めたので止める。
「先輩」
「何」
「何かあたしに言いたいことあるんじゃないですか?」
「・・・・・・なんでそう思うの」
「先輩がなんか困ってるように思います」
駄漏系小説のグダグダとした文句をツラツラとのべてるが、本当はどうでも良いと思ってると分かっていて、話を無為に引っ張ってると指摘する。
「そうかな」
短い付き合いである、この先輩が性格的に率直かつ簡明な事はわかったが、その流儀からは明らかに外れていた。
「そう言えば庁舎のポンコツ自販機・・」
「ん」
「いよいよ、完全に壊れちゃったんですね」
「ん・・・・・・なんで・・・・・・・」
顔を見返す。
「分解してました」
「誰か・・・・・・」
先程庁舎で雑嚢を担いで帰宅しようと通路を通った時にメーカーの修理担当が自販機をバラしていた。
誰かがそれを後輩に告げたかと思ったが、その可能性はほぼ無かった。
ここではスマホどころか黒電話、回覧板すら回ってこないし、誰かがそれを彼女に伝える暇もなかったはずだ。修理も自分が戻る時に始まった所であるので、リアルタイムであの場所で見ておかないと今のこの場所でのくだりは出来ない。
「冷えないって聞いてましたけど、あの銀色の大きな炊飯器みたいなモノがだめになったんですね。なんか新品に交換していたけど」
どうやら冷えないのはそれがイカれたからだと交換していた。それはメーカーの修理員にわたしが聞いたことで彼女は“あの場所”にはいなかった。
「コンプレッサーがだめになっていたんだって」
交換ではなく、エネルギー満タンの新品が良かったとボヤく。
「合同庁舎って治安警察ビルだったんですか?」
「まあ階級があって武器持ってるから、状況から組織特定されたら容疑者の一人ね」
「先輩」
「ん?」
「先輩もずっと先輩じゃなかったんですね」
当たり前ですねとセルフツッコミをする。
「まあ木の股から生まれた訳じゃないからね。ヨチヨチの赤ん坊時代だってあったんじゃない。わたしが子供だったって事を知ってる人はどこにもいないでしょうけど」
ここに来た時はあなたと同じようで、ヨチヨチの後輩であったと懐かしむ。
「先輩もあたしと同じ様に、先輩の先輩を先輩って呼んでいたんですね」
「・・・・・・・・良く知ってるわね」
・・・・・・・
「わたしそんな込み入った話をあなたにもうした?」
身の上話をするほど親しくも無ければ、その時間も無かった筈だ。
「いいえ、聞いてません・・・・・先輩からは」
でも見てましたと意味深にコロコロ笑い、先輩もこの場所に初めて来た時はセーラー服だったんですね、とっても可愛かったですよとからかう。
「!・・・・・そうよね。可愛かったって、今も可愛いでしょう」
「今は知りません」
「酷い後輩ね」
「先輩も大概だったと思いますよ」
「そうね。あたしの先輩もそれで苦労させたかもね」
ズイッと上半身だけを後輩に近づける。
「わたしがいなかった時に何があったのか・・・・・・聞いて上げたほうがあなたも気が楽でしょうから・・・・・・キリキリとゲロってもらいましょうか 」
白熱電球のスタンドライトは無いので、手近にあった携帯ランタンを後輩の顔に近づける。昭和時代の取り調べ室ですかとケラケラと笑う。
「頂いた甘味だらけになったら眠くなりました」
「牛になりそうね・・・・・」
「掘りごたつって気持ちいいんですね」
「牛じゃなくてコタツ猫になったのね」
「いつのまにか白河夜船で ・・・・・・って白河夜船って何ですか?」
「ああ・・・・・・・・・・落語よ」
自分が口走った意味が分からぬらしい。庁舎の人間に落語好きがいたんで、その記憶を引っ張ってきたのだろうか。
「興味持ったら隊員に好きなのがいるからね。あなたの言ってるのは多分居眠りの事ね」
「ああ、そんな意味だったんですね。まあいいや。そして名前を呼ばれたようなんで目を覚ますと」
白河夜船に船を漕ぐ自分がいる部屋を天井から見下ろすように見ていたらしい。
「またベタな幽体離脱ね」
「雲の上の四畳半 “で”神様とお茶を飲むなんて展開は無かったですね。神様はいなくても構わないから、ウクレレ持ったトラのパンツの雷様探は探したんですけど」
「あなた何かボケようとしたんじゃないの?」
「あなたは神様ですか?と聞いて、とんでもねえ、あたしゃ雷様だよって見てみたかったんですけど」
駄漏系の流行りがそうらしいが、現実とは乖離があるようだ。まあ、また古いネタと先輩が呆れていた。
「四畳半 “で”って事は・・・・・・場所はともかく、あなたは会ったのね?どんな・・・・・どんな・・・・ヒトかな?」
「ヒト・・・あのヒトじゃなく・・・・・・神様でも、雷様じゃなくて」
言葉に詰まる。あの人をどう表現したらいいのか困った。
「変な人だったでしょう?(クス)」
言い淀みは予想通りだったので、少し笑って助け舟を出す。
「はい。相当変な人でした」
先輩に輪をかけてとは声を小さくした。ちゃんと聞こえたらしく、わたしは普通の可愛い巫女さんよと、ツッコミ待ちのボケをしたので、これで乗ってしめしめと思われるのは癪なので冷たい三白眼だけで突っ込んであげた。
突っ込んでよとおねだりを・・・・・・自分で補完した脳内先輩なのに、なんか淫猥に見えた。
「何か言っていた」
「先輩の先輩は唖オシじゃないですよね」
「推し?」
「じゃなくて、寡黙の上位互換」
それは互換じゃないと呆れた目をする。
「まあ静かな人だったわよ」
お陰でわたしが必要以上に饒舌になったと恨み言を言う。
「ここで同房だったのですね」
「同房ね。ここムショじゃないんだから、あの人しかそんな表現使ってなかったけどね」
「あと迷い家とも」
「どうやら本当に会ったのね」
この世とあの世が同居するこの場を、同房(監獄の一種)や迷い家の2つの言葉で挿し示すあの人ぐらいだと力なく笑う。
「同房の使い方は間違ってると何回も言ったのに最後まで直さななかったのよね、あの人・・・に会ったみたいね」
「多分」
「でしょうね」
少し残っていた疑問はもう霧散して、その言葉は疑っていなかった。
どう検証してみても、幽体離脱しなければ知り得ない情報を知り、そして自分の先輩に出会わなければ知り得ない事も教わり、時を遡行しないと知らない自分がここを初めて訪れた事まで“まるで”見たようだ。
「先輩の先輩は今・・・・・・か 神様なんですか?」
神様っていうより、近所のちょっと精神的に距離を取りたい不思議お姉さんって感じの人だったので聞いてみた。
「知らな~い」
もうここにいないことは間違いないが、笑点・・・・・いや、昇天でも失踪でも蒸発でも家出でも嫁入りでも駆け落ちでも可能性はよりどりもどりだ。
神様になったのもその中の一つに過ぎないが、そうであるかどうかは正直わからん。興味も・・・・。
まあ元気そう?なのでそれ以上はいいや。
「でもなんで先輩はあなたの前に現れたのかな?なんか聞いてる!」
コッチの来いって不満顔で、そこはかと語尾の圧が強い。
「先輩言葉の端々にけんがないですか」
「そう?」
なんか語尾と視線が痛い。
これは嫉妬だとわかる。
古い付き合いの馴染みがポッと出の他人、この場合あたしと親しくしてるとジェラシーであたりがきつくなるみたいなもんだ。
きっとこの先輩は先輩が大好きだったんだろう。それは今もかな。例えそれが人で無くとも。
「何も言ってくれませんでしたけど」
「や~ぱ!でしょうね」
他は大丈夫なんだけど、気持ちを言葉にする能力に欠けてると悪口を言う。
「多分先輩が困っていたからじゃないんですか」
「・・」
「当たってません?」
「・・・・まあ・・・・・・・ブーに近いピンポン」
「ドッチなんですか」
「ピンポン・・・・・ブーの部分は」
「高木」
「違う・・・・・古い・・・・・いえ、別にブーさんが古いって意味じゃなくて」
「困っていたんじゃない。ただどうやってあなたにここの事と、これから行く先をどう伝えれば良いのか迷っていただけ。取捨選択の天秤を揺らす選ばれし恍惚と不安共に我にあっただけ」
「それを困っていたって言うような」
「そうとも言う」
「先輩・・・・・」
明らかにいらん意地っぱりだ。どうでもいいことで事態を拡げる悪手。
多分自閉症気味で巨大ロボットに乗ったメカヲタと同じ、15歳にすべて心中言い当てられては癪だと下手な嘘を付いたのだろう。
バレバレだっていうの。
頭良さそうなんだけど、この人は嘘が下手すぎる。
いや、そう思わせているとさえていたら後藤隊長すぎる。
まあ癪には触らない。
上司が人間的な温かみを持っていて、ついで有能足りえたらな、人生頼れる人におんぶにだったこが信条なんでそれはそれでありがたい。
「ほんとだよ」
拗ねたように言われても・・・。
「はい。そうですね」
まあ、それでもやっぱりこの先輩は可愛い。
「どうだった?多分初めてのヲタ霊徘徊体験は」
徘徊するヲタ霊成った気分はと聞く。
「ヲタ霊じゃありません。単なる生霊体験です」
「双子のデブ芸人みたく、幽体離脱ゴッコした?」
「そこまで余裕無かったです」
「でしょうね」
「本当ここはこの世とあの世の混じり合う場所だったんです・・・・かね」
「今更だけど夢だったかもね」
「そうですね。単なる夢の可能性のほうが高いですね」
先程の先輩がこの地を訪れた話だって、先輩の記憶をインストールしただけかもしれないし、今日ここに来たのだって全て誰かの記憶だったと言われても否定にしようがない。あたしたちはそんな体質らしいし、ここでは特にそうなんだろう。自分と他人の境界はあまりにあやふやで、持っている自我やら記憶までもだ。
「考えてみれば、あなた今夢を見ていたと過去形だったけど、今がまだ夢の途中だって可能性もあるのよね」
自分も夢の出演者で。あなたが主演だと思ってるつもりでも実は単なる端役かたんなるモブかも。
「夢から覚めた夢を見て、そしてまだ夢の途中だって事もありますね」
堂々巡りは学園祭の前日で無くても、夏休み最後の日で無くても疲れるのでご遠慮したいものだ。数え切れないほどなら当然で8回ぐらいでも評判も悪そうだし。
「こんだけリアルなら、この頃流行り?のフルダイブVRネタ小説なんかいらなくなりますね」
この頃漫画すら面倒だって読まれていないので、ワザワザそんな本を買って読まないだろう。出版不況が困りそう。やっとアッチ系で赤字補てんが出来ると安堵していたとかだったのに。
「夢ってのは見てる間は妙に現実味を帯びてるものよ。多分VRとかよりね」
脳みそ自己完結システムで外部機器から来る欠損や転送減衰無しだ。所詮不出来な人間が作った機械でフィルターだらけだろう機械に、40億年かけて洗練された脳システムが叶う訳はない。
「何が現実で虚実なのかはあまり重要でないかもしれない。とどのつまり、より自分が納得しやすい方を正しいと思うしか無いのかもね」
「所詮この世はゆめまぼろし ですか」
確かなのはこうして考えていると考えてる事だけかも。次の刻に何か残ってるかなんかわからない。
現実なんて意味のある事でもないなんて、少し虚しい。
「我々の儚き夢は眠りと共に終わる っとも言うし」
ならせめて幸せな夢の中で、いらんことは忘れて眠りにつきたいって思う凡人よねと笑う。
「じゃあ夢でも幻でもいいとして、今やれる、やることはやれるうちにやっておきましょう」
「チャートリアルですね」
「チュートリアルじゃなったっけ」
どっかの芸人みたいで嫌だから、チャートリアルでという事になった。ドッチが合ってる違ってるって言うより自分たちの場合は用法そのものが間違っているかもしれんと、まあなんとはなしに今は報連相って意味だとした。
「先輩があなたの伝えた事を状況開始の打ち合わせの時計合わせみたく、順序立ててみましょうか。で、あなたがここに呼ばれたのは」
「生贄・・・・・で、あってます?」
「ん!」
合ってるの ん!だ。
まあ当然だが、愉快な言葉で無いので顔が渋い。
「問題あります?」
生贄はただ殺されれば良いってわけじゃないので、その有資格者かどうか聞く。
「なるのもムヅカシイって事?。生贄って普通贅沢できて、その日に祭壇で殺されればいいんだけど、一応考えてる団体なら神様のお側にお使えるするのがアホだと申しわけ無いってんで教養も美貌も、アッチもお手つきは知らんにしてもそれなりに知っておかないと駄目だから日々の生活は結構スパルタ教育らしいけど」
「ここはどうなんですか?」
南米インカのフワニータさんみたいに石斧か鈍器での撲殺は嫌だと舌を出す。
「普通に生きてればいいし、なろうがなるまいが本人の勝手だから、そのうち決めればいいから今は当面気にしなくていいわよ」
死ぬ事が決まってるわけでも無いし、どこまで意味があるのか知らんが一応自由意志尊重だ。
「別に義務じゃないんですか。じゃあ回りの同調圧力とかは」
「厭味ったらしく、食堂とかで、『お勤めを果たさないのに食う飯は美味いか』って小言は無いと思うよ。少なくともそんな前例は聞いたこと無い。大体わたしたちの仕事量は普通の神社の巫女ぐらいはあるし、屯田兵みたいに開梱は無いけど畑と水田の仕事もさせられるけど、お給金だってそれぐらいしか出ない。それで生贄までやれって言うほど貰ってない」
しっかりやりましょう、時間まで。給料分まで。
ブラック企業じゃないんだから、残業代払わないけどサビ残で命を捧げろってことはないらしい。
「じゃあ本当に任官期間?終わったらバイバイしていいんですか」
「まあ所在は知らせないと探されるし、再就職先の吟味はされるだろうけど基本自由だよ。流石に風呂屋とかホテル回りのサービス業になられると体裁が悪いって飼い殺し閑職かもしれないけど」
人の心象を察せる能力者なんておいしれと野には放てないからな。特に特亜第Ⅲ国にでもいかれると空母打撃群の情報収集艦沈没並みの損失だろう。
「だから担任にロミオ要員が近寄ったんですか?」
ロミオとジュリエットからか、仮想敵国の放つ女性のタラシ要員はそう呼ぶらしい。
「知らんうちに回りが動いているんですね」
「平和ボケって言われてもそれなりにはね」
それに能力者は能力者を感応するので死んでない限り追うのは可能らしいので逃げる甲斐はない。
「まあここまでは普通かどうかはおいといて、まずここまでの問題は・・・・・・・・おっけいね」
「はい。再雇用の為の、汚濁の無い清浄な履歴書の為に頑張ります」
「清浄と汚濁って、あんたどっかの姫様か?」
「で、まあここから本題の試練パートなんだけど」
「ヤですね」
「見たんでしょう?試練に抗えなかった者たちの事を」
「はい。ここの女性があのヲタ霊連中を殺したいって気持ちが今じゃ、よっく理解出来ます」
「そこまで先輩見せたんだ・・・・・」
当人地獄 見せられる方も、特に女性にも地獄の光景だろう。特に異性と付き合ったことが“なさそう”な
女性にとっては。
「女性ってあんな事を・・・・・例え夢でも経験するとああなるんですか」
「ん。全員とは言わないけど、昔から女性最大の悲劇ってもいわれてるし、心が耐えられない女性だっている」
砕かれた鏡が何をどうしても、割れなかった事にはならない。
「あなたが昼間会ったのがいるでしょう。人であって人ざるモノ」
「アレですね」
姿形は夏と冬の長期休暇期間中に湾岸巨大建築物に人工雲を発生させてる連中みたいだ。
「あの連中はなんでここに来てるとはもう知ってるわよね」
「ここが異せ・・・・・・アッチに繋がっているから・・・・まあ、いわゆるゲートがあると信じてるから、ここに来ればいけると思うんでしょうかね」
切符もパスポートも金もツテも無いのにいけばなんとかなるとコンサート会場や野外フェスにくるチケットゾンビ。
「行けないのにね。まあチケット無いのにコンサート会場に行くのは入れないのが分かってるけど、当日券があるんだか無いんだかしらないが情報が無いとき人は恒常性バイアスかなんか知らんけど都合の良いように考えるらしいから希望を持ってやってきてる。それが生身なままなら自衛隊さんがナントカしてくれるでしょうけど、妄想の、夢の中での出来事であなたみたいに知らぬ内に幽体離脱して・・・・・あなたも経験したみたいだから、まあ覚えがあるでしょう」
「まあ、ですね。なんか夢を見ているような間に自分の居眠り姿も、庁舎に壊れてバラされている自販機を覗き込む先輩の姿も、先輩の先輩の意志みたいなモノに触れまして、先輩の先輩が見てきたのか知りませんが過去のそんな光景まで見ました」
「そう。夢を見ている連中にとって本当のアッチか、まぼろしのアッチの区別はついているかどうかはこの際どうでもいいんだけど、そうおもってるなら連中は次に何をやりたいと思う?」
「そりゃ野郎[男]ならアッチに行ってドッタンバッタン大騒ぎの末に、やんやの喝采の後ハーレムじゃないんですか」
「まあコーマン三昧も遠く間違っていないでしょうけど、その為にはまず 俺TUEEE 俺SUGEEEをやって、英雄になりたいと思うんじゃないかな?」
「家で死ぬまで寝ててくれればいいのに」
「高カロリー高脂肪食をどか食いで食って、それで運動しないんだからとっとと逝けばいいのに、無理しないから死なないわね」
「まあ連中が憧れる?英雄か勇者かは知らんけど、この職業には欠くべからず才能がいる。それはレベル9999の剣技でも、古代にロストした禁忌魔法カンストでも、先史テクノロジー習熟でも、頼れる仲間を集める能力でもない」
「それは被害者を見つける能力」
「そう」
「魔王がいなくても、まあ近頃は倒してしまってニートで存在意義をなくした勇者なんてネタもあるから、魔王がいなくても勇者はできなくなっても、被害者がいれば英雄にはなれる」
「消防士が英雄になるには火事で逃げ遅れた被災者が、警官なら凶悪事件に巻き込まれ哀れな被害者が、兵隊なら侵略敵国から虐殺・拷問・戦争拉致をされ日々収奪されり戦争難民が必要」
「マッチポンプですね」
マッチで誰かが火をつけて、放水ポンプで誰かが消す。普通の作業だが問題はドッチも同一人物ってことだ。
疑似英雄を作り出す魔法の偶然。それをマッチポンプと言うらしい。
「英雄創造過程はアッチ世界でも同じね。男は殺せ 女は犯せ。その被害者を見返りを求めぬ善意で助ける。そこは世界共通じゃなくてもいいのにね」
「呆れますね」
「不幸は若い女性・・・・・って決まってるのが釈然としないけど、ここは不幸にして女子だらけ」
「そうですね」
「その手の与太話の被害者には事欠かない」
生霊なんてダークフォースの塊で、古の昔からなんでか知らんが負のエネルギーの方が力が強く夢につきあわされるらしい。だからか手前勝手な夢の世界に拉致誘拐されやすい。
「馬車に乗っていたら襲われる・・・・・みたいな展開ですかね」
「問題はここで見ている夢が自分の見ているものではなく、ソイツらの見ている夢だってことが大問題なのよね。出演を拉致強制的にキャスティングされる。役名は哀れな被害者」
「暴漢に犯され 奪われ 殺されるのが女性なんですね」
「だから本当は夢が夢である事を知覚出来る訓練をあなたにはする予定だったのよね」
夢が夢であると認識出来る能力、いわゆる夢だと現状を明晰化ができれば馬鹿な夢に付き合わずに茶番から抜け出せる。
「でもあなたはその訓練はしてない。悪夢の出演から抗うすべは今のあなたには多分ない」
「これから夢を見るのが分かっていても、無理なんですか」
「それを試した実験者はいるけど、その意志を夢の中に持っていけるって中々ムヅカシイらしいわね。まともなやり方での成功だって言えるのは・・・・・・一縷の望みがあったほうが嘘だと分かっていても気がらくになるでしょうから、まあいたってことで」
「それ殆ど生還の見込み無いけど、頑張ればナントカかるって思うだけはタダだっていうみたいな絶望の言葉遊びですよ」
桜花に乗るやつに生還の暁にはって言ってるみたいなもんだ。
「まあ、手向け つうか、出立の鼻向けは用意しておいたから」
白衣の胸元から小学生が持たされる箸入りみたいな、朱塗りの寄木細工を取り出し、蓋を開ける
「それ・・・・・簪かんざし」
「あなたが夢の世界に行ける時に持っていける唯一の武器(武姫)・・・・」
「武姫?」
「そう・・・・・・聞いない?」
「いえ。やっと意味がわかりました。姫って誰のことかと思ってました。まさか島じゃ海坊主って呼ばれたのに、えらくな出世なんで、まさかです」
「女の子はみんな姫よ」
姫は愛しき貴き娘の事。
「お城に住んでなくてもいいんですね」
特に親にとってはお城住まいのよりも尊き女の子だ。
「親が娘に幸せになれと、自分を守れと託す。それが武姫 って言われていたとか、いないとか」
「ドッチなんですか」
「誰の記憶なんだろうね。ここじゃそう語り継がれてる。あとホントかどうか知らないけど、江戸時代の町娘や花街の太夫も結構な割合で簪は肌見放さずに身にしていたらしいのは知ってる?」
「キレイですもんね」
「まあそれもあるでしょうけど、町娘がいた昔の町も花街の働く場所も今より女性にとって物騒だったのよ」
「多分そうでしょうね」
「帯刀を許され無いか弱い女性が、自分を守る最後の頼みとばかり、我が娘には親が、花街には自分以外の客や暴漢に酷いことをされないようにと上客から贈られた・・・・・護身具が簪とか」
刀身の切っ先に触れて、痛いわよと静かに笑う
「昔の女性の簪はそんな用途あったんですね」
良く見ると普通は金属の丸棒やべっ甲の箸ぐらいの長さの部位には鈍く光る真新しい刀身が光る。
「飾りは普通ですけど・・・・・軸がパーパーナイフサイズみたくな日本刀ですね。インバウンドの外人さんに受けそうですね」
「腹の部分はどっかの逆刃刀みたいに刃引きしてあるけど、切っ先のふくみは突けば矛盾の矛みたいに何でも貫ける」
「盾はどうなります」
「侍は盾持たないからいいんじゃない」
「姫は武士も兼任とは、駄漏系なら定番ですね」
「姫になったり武士になったり忙しいですね」
持ってみろと言われて刀身部分を持たせる。
「なんかサイズ以外に、この刀変じゃないですか」
上身は刃引きしてあるけれども波紋も滑らかで見事な研ぎなのに、切っ先のふくみ部分は、これで切れるのかと思うほどギザギザが目立つなまくらだ。
「これ作った刀匠が本気で削ったらミドルボブぐらいまで伸ばして貰った黒髪が、あっという間に刈上げ君な短髪になるわよ」
「ああ、なるほど」
簪の軸部位はお団子にした髪を貫く。名刀虎徹みたく触れば切れると確かにまとめた髪など無くなるだろう。
「あとそのギザにも秘密があってね」
チョントン触れてみろと言われて、先端のふくみを触ると切れていないの痛い。
「斬られたら、恐ろしく痛く作ってある」
「・・・・」
「おまけにその傷は果てしなく治りにくく、いつまでも疼く。そんな風に打って、そして砥いである・・・・・」
「先輩の先輩が・・・・・痛みだけが、夢の世界にも持っていける現実だって。今と夢をつなげる事が出来るのが痛覚。それがせめてもの手向け 先輩の先輩の言っていたのはこれですか?」
「多分、そう」
ベトナム戦争で手足を失った負傷兵が痛みで寝られないからと全ての痛覚が泣くなるモルヒネを打って眠ることが出来たが、兵士は持たぬ手足の痛みで飛び起きる事があったらしい。
膝や膝の先から先は無くなっているのに、その先にあった手や指の痛みで。実際無くても痛みの記憶は消えない。
「そんなことが」
「痛みだけがあの世界に持っていける唯一の・・・・・かもね。その刀はそれに特化した、まあドSな刀よ」
ブルッ
切るのでは無く、痛みを与える為に存在するこのペーパーナイフに体が震える。
「どっかの死神とか柱か鬼が持ってそうな変わり種かもね」
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃない」
否定の口調であった。
「え~」
「ほれっ」
そう言って先輩は右手の手の平を開いて見せる。
「!」
キレイな掌の真ん中に消えかかっているが、紛れもなくナマクラでナマスに斬られたようなギザな刀傷が残っていた。
「これって・・・・」
「あなたは気が付かなかったみたいね。まあ自衛隊は手の保護の観点から手袋をつけるんだけど、こんな意味もあるのよね」
「そう言えば」
普通両手につけるが彼女たちは大概片手であった。
「通気性あるんだけど意外と蒸れるのよね」
そういっておどけて見せるが、今度ばかりは乗れなかった。ここで働くっていうのはこの傷が必要なほどの覚悟がいるんだと。
「でも手紙にありました、手袋をつけるなって」
「彼女たちは戦士よ。欺かないと生き残れないから隠しも騙しも許される。でもわたしたちは隠し事を出来ないの。だってあたしたちの遣えるのは神様だからね。隠し事なんかとんでも八分 歩いて十分よ」
「ふっる~~」
まあつけても隠せるとは思わないけどとおどけて見せる。もしかして服も透けてみてるのかなと、少し怒っていた。
「2つ目かしら」
「ふたつめ?」
「刀で切りつけられた事ある?」
「ある理由ないでしょう。どこの松の廊下や場末の繁華街ですか」
島の花街街で不倫のカップルが痴情のモツレで刃傷沙汰になった事があった。後日通りかかると虎縞テープと血の跡が付いていたので、まだJSには衝撃で図工の時間が少し苦手になった。
「じゃあ刀傷は2つ目ね」
「ですから刃傷沙汰は・・・・・・・・・・」
先輩がニヤリと笑って♪と鼻歌を唄う。
「なんの歌ですか?」
「お~んな♪女と自慢をするな♪(男より)斬られた刀傷が1つ多いだけ♪」
「何の・・・・・・・・えっ」
「あんな場所、阿部サダじゃないんだから切った張ったじゃ切られないよね」
「せ せんぱい」
呆れてる。
「女は生まれたときから女だって言うけど、同時に生まれたときからドス持った渡世人とか言うらしいわ。刀傷を負って産まれてきてるんだから」
ニヒヒヒ
「先輩。いままで我慢してましたけど」
「何?」
「あたしこれでもJKなんですから、シモはまだ気を使って笑える程度でお願いします。先輩のシモはじっとりと下世場すぎます」
あら~とおどける。
「先輩本当の未通女ですか?」
「そう見えない」
わざとらしく襟を直し、キリッとしたたたずまいを、ほれっ どうだと言って胸を張って見せる。
張るもの無いですよと声に出すと不機嫌そうだ。
「見えますけど、思えません」
黙ってれば十分、これぞ奥ゆかしく、古式もゆかしい巫女に見えるが、どうみても強かな後藤隊長にしか見えない。
「門前の小僧ならぬ、遊郭のかむろ(禿)よね。どっちも目と耳だけは素人の一生分見てきたもんね」
女性隊員にも好き者がいて、案外そんなは話したがりなので口に出すなと圧をかけてもグイグイと脳髄インストールしてきたと深くため息をつく。
「たかだか残留シナプス信号にどんな価値があるのかさっぱりわかんないけど、記憶を吸い取ってエネルギーに変えてくれる魔法や巨大ロボどっかに転がってないかな?」
記憶なんて乾電池数個分ぐらいの電流しかないのに、それで地を揺るがす破壊魔法やロボットが動く理屈がサッパリ分からなかった。脳の記憶の残留電気ってのは反物質で出来てるのかと思うほどだ。
「これは自分でスルんですか?」
じっと手を見る・・・・・・何故か生命線が薄くなっているように感じる。
「ああ、若い娘が『自分でスル』なんて、その言葉だけでやりたい盛りの男子なら三杯いけそう・・・・・・は、どうでもいいとして」
「いいと思うなら言わないでください」
何をするんだとイヤミに聞くと、絶対ナニをするんだと返されそうなので突っ込まなかった。
大丈夫との問に、表にスタンばるロボトミー女医でも、これでも慣れてるので自分でもいいぞと言ってくれて少し安堵した。
手首カットなんぞしたことない。自傷行為には慣れてないからな。
「嫌だっていうヒト(女性)いないんですか?」
自分を守るためにとは言えども嫁入り前の娘に2つ目の刀傷は嬉しくない。
「それは勝手だけど、そんな女性隊員には多少強圧的 に、あとでパワハラだって労基に駆け込まれると百パー負けるぐらいの、はくりき(迫力)で直ぐに原隊復帰を薦めるみたいね。経験から悲劇は見たくないし、自由意志だったとは言えども見殺しにしてような負い目は誰も背負い込みたくないからね」
「そんなに」
「洒落や冗談で女の子を刺したりしないわよ。わたしも別にSじゃないし」
鈍く光る刀身は自分を傷つけ、痛みを与える為にのみ存在していると今一度震える。
「知っていればこの事態は避けられたんですか」
「ええ。ここでは感度三千倍じゃないけど、ここの来ないならその能力は乾眠状態のクマムシで死ぬまで寝たままだったけど、ここで水を与えられて目を覚まして発芽した種状態の今じゃ無理ね。もし今ここから離れたら無菌室から雑菌だらけの外界に放り出されたか弱き赤子みたいに、たちの悪い意志に憑依される。いわゆる守護霊無しが心霊スポットに行くようなモノ、憑いてください状態ね」
無数の悪霊?に輪姦されてズタボロかもねと笑顔が歪む。
「逃げたスカラーさんに会えますか?」
ソイツがサボったお陰でこの不条理に晒されていると思うと恨んでもいいですよねと聞く。
「ソイツ大の甘党でコーヒーに角砂糖十個入れるようなヤツだけど、しばらく砂糖の代わりに塩と重曹と鷹の爪をいれて飲ますようにしとくわ」
「それは地獄ですね」
一度間違って塩を入れ、胃の中の物をありったけリバースではもの足りずにヒックリ返ったままで一日棒に降った。あれに重曹と鷹の爪だと生きて来た事を後悔るるかも、可哀想、といいつつ止めようとは思わなかった。
*
その時・・・・・後輩の出立(就寝)までまだ時間があるのでだる~~とした空気が漂う。
「しかし、なんだかいきなり打ち切りが決まった漫画か、アニメみたいな展開ね」
「どんな意味ですか?」
「今まで影も形も出てこなかったラスボスキャラが出るって事。話をたたむことを編集部やスポンサーから強制されて、体面をナントカ保とうと物語を終わらすためにいきなり出てきて状況説明って、アニメかジャンプのいきなり打ち切りエンドみたい ってね」
「メタですね」
「まあハゲTの強引エンドみたく、皆殺しにならないだけ現実はいいか」
「それに先輩が、馬鹿で無知蒙昧な主人公じゃ話が進まないからって、お助け便利キャラを脇に配置して、データベース化とネットワーク化と賢者兼ナレーションポジション与えて話の進行を助ける便利キャラにされてるのも納得いかないな」
あの人寡黙なんだから多分当人困っていた筈だ。
「アッチ(異世界)系小説じゃコッチと貨幣経済から政治形態やら魔法の有無なんかの事情が違うんで、主人公を馬鹿ポジにして言い聞かせるって体だけど、本当は馬鹿な読書にこういうお約束だからって言い含めるキャラですね」
「ああいうキャラが出てきたら、編集が読者層の理解度を考慮して出せって作者に強いているって話らしいわね。つまり読んでる人間はおつむが残念前提」
子供向けには言葉が小学校準拠の言葉を、挿絵も多用するようなもんだ。挿絵が多く見れば分かるのは頭がアッパラパー向けらしい。
「ま~た敵を作りそうな言動を」
そう思ったが普通絵本を読むのはそうだからと納得した。多分違うが。
後ろに付いた両手で体を支え天井を見上げる先輩。いきなりの先輩の先輩登場をボヤく。
「やっぱやだな、こんな少年ジョンプとか巨大ロボットモノみたいな展開」
「俺たちの戦いはこれだから ですか?」
「殴り殴られた修羅な主人公がいきなり平和な日本一長い階段チャレンジで駆け上がったり、パンを焼いていた登場人物が尼さんになったりインド人になったりするみたいな展開」
「まあ、超展開ってヤツですね。やっつけ人生やですね」
又の名をヤケクソ 後は野となれ山となれとも。
ホー ホー
「なんでこの辺に生息していないフクロウが鳴いているかはいいとして、そろそろ頃合いなんだけど、行く心構え出来た」
「は・・・・はい」
徐々に高まった緊張はそのはかなき体と心には薄ら寒いと震える。
「刀身は刃引きしてあるけど、切っ先は五右衛門が使う斬鉄剣ほど何でも貫くから、お団子につけて寝てるるときは長い耳のエルフみたいに寝返り禁止よ」
「あたし最後の将軍(徳川慶喜)ですか」
先輩斉昭ですかとツッコむと嫌そうな笑顔で返された。
「じゃあ・・・・・・・・だ・・・・・・覚悟」
「いざとなると怖気づきますが、大丈夫じゃないけど、多分大丈夫です」
「そう・・・・・・・・」
立ち上がって土間の水屋から薩摩焼?の壺を持ってきた。水音がするので多分中身はプレミアムな焼酎だろう。
「手を」
縁側に座ったまま、言われたように両手を精一杯伸ばすと栓を抜き両手にかける。よく消毒しろと言われて両手を揉むようにする。
ブルブル
訪れる痛みと襲ってくる恐怖で手が震える。
先輩は自分の両手も同じ用に滅菌して、和紙に添えられていたカンザシにも焼酎をかける。
スッ
先輩が手を預けるように促すので自分を手を預ける。
「腕のいい鍛冶屋なんで、痕なんか残らない刀なんて幾らでも打てるんだけど・・・・・・・・まあ本人不祥だろうけど、望む品を収めるのも仕事だからね」
カンザシの濡れた刀身に今一度酒を濡らして、あたしの左の手のひらに添えて
「いやああああああああああああ」
彼女が叫ぶ。
「いやだ いやだ いやだ」
取れるほど首を振って後ずさる。
「・・・・・・・」
「こわい こわい こわい」
「・・・・」
理屈ではわかっていたかもしれないが、自分を傷つける行為が年若い彼女がおいそれと覚悟出来るものではないだろう。
自傷行為にピアスの穴を開けるならおちゃらけた事で逃げ場も自分も意思があるが、これは彼女の意志が介在しない有無を言わさない暴力だ。
しかし他に道が無いことも先人の事例から分かっている事で彼女は追いつめられていた。
「かえる かえる かえして かえして」
幼児のように泣きじゃくる彼女に先輩がいつのまにか寄り添って抱いていた。
「これはあなたの敵じゃない。これはあなたの為に、あんたを守るためにだけに生まれたあなたの刀よ。だからあなたがどこにいても、どんな時でもあなたの味方よ」
いやいやと今は赤子のように泣きじゃくる彼女をずっとそうしていたように抱きしめて聞かせる。
ヒック ひっく ヒック
「あなたが気丈に振る舞ってくれるから、少し甘えてしまったわね」
持っていた簪を震える手に握らせ、その手を上から包むように握る。
はっ はっ はっ
その後は何も言わなかった。
ただ寄り添った。
「だ だいじょぶ です」
「・・・・そう」
どれぐらい経ったか分からないが、そう言ってくれたので簪を預けたまま彼女を離す。
「悪いんだけど、あなたはもう社会人だか自分の事は自分で決めてね」
他人の人生預かるほど立派じゃないんでと努めて冷たく言う。知っていることは全て伝えたから、あとは決めてねと縁側から星空を空につかう。
「お お願いします」
持っていた簪をおずおずと差し出す。
「ん」
もう追確認はしなかった。
ツプッ
「うぐっ」
想像より痛くて悲鳴にも似た声が漏れる。
同じく酒で濡らしていた和てぬぐいを握らせるとおろしたての白衣のようだった純白が緋袴のごとく紅く染まっていく。
「しばらく痛いし、疼くし、血は止まらない ってよくそんな名刀作れるのと感心するわ」
「痛いです。大丈夫ですか?」
白かった手拭いはもう真っ赤になっていた。低血圧なんですけどと言うのを忘れない。
「ん!」
「えっ?」
垣根の向こうを見ろとの目線に、目でつられるといるのまにか深緑の野外テントが立てられていて、見覚えのある女性隊員が白衣を着てこちらを伺っていた。
「流石にここでロボトミーは無理だけど、ベトナムの野戦病院みたく切断ぐらいまでは大丈夫よ」
モルヒネと抗生物質はたんまりある。
「それは大丈夫って言うんですか」
「ペニシリン系は何でも揃ってるわよ。何ならカロシン系だってあるわよ。まあそれはオススメ出来ないけど」
「カロシンは嫌です」
そりゃそうだと思う。ある程度のサイズの病原体・ウイルスを皆殺しにするのでウイルス性の病気の進行は完全に抑えられるが、体の免疫機能に関した機能も殺すので人類が営々とした営みで獲得した抗体すら無にする。
今まで共存していたウイルスや病原体に殺されるって、家族お隣親友知人がある日突然殺人鬼かバイオハザード状態なんて、疾病より恐ろしい薬なんか飲んでたまるか。
「ならアッチに言っても未知のウイルスに感染しても大丈夫じゃないですか」
「一生カロシン飲んで暮らすなんて嫌だ」
薬を飲むのを忘れても段々悪くなるぐらいで症状も発見出来るが、この薬は忘れるとそのまま死ぬ。即死の恐怖と二人連れの人生。一度の旅行で一生薬漬けなんて誰だってイヤだろう。
「じゃあくくっていいかな」
「はい」
血糊を拭った簪を、短いミドルボブなのでお団子作るのが相当難しいだろうが、苦労してうなじのあたりで留めてくれた。
「寝返り気をつけてね。致命傷は避けられる研ぎだけど、痛くは作ってあるから」
「分かってます」
左の手のひらが疼くので、本当に痛いほど分かっていた。
「先輩」
「ん」
「左手を・・・・ああ、右手を見せて下さい」
「!・・・・・・・・ん」
左手を預けてくれる。
キレイな手であるのに、真ん中に古い刀傷が薄っすらと見える。
「まあ、これぐらいは残るから覚悟しといてね」
「はい」
「ショックかな?まあ嫁入り前の娘を傷物にしちゃったから、まあその気は無いけど謝るわ」
「いいえ。あたし先輩のその手好きです」
「ふっ?」
『わしらの姫様は、この手を好きだと言うてくれる。働き者のきれいな手だと言うてくれましたわい』
「・・・・・・・・・ぷっ。あなた(の中の人)幾つよ」
「さあ」
「また随分老齢なアニオタに知り合いいたのね」
「ソースの人物は断定出来ませんが、年金の未払い分を裏取引で誤魔化していたって嫌疑があるんで役所から年金泥棒 早く死ねって言われてましたね」
「幾つ」
「少し前米寿の祝が少ないって怒ってました」
「お願いがあります」
敷いた敷布団に横臥になる
「何?」
「少しの間でいいですから、眠るまで、そばにいてくれませんか」
「分かった。できるだけ 可能な限りはここにいるけど、もしわたしに何かあっても・・・・まあその時は彼女たちが来てくれる」
「えっ?」
そのまま見なさいと言われた方を見ると、闇夜の向こうに沢山の 先輩みたいな巫女と自分みたいな巫女がこちらを見ていた。
「戦うのはあなただけだけど、まあ似たような奴もいたって事を覚えておいてね」
「せ せんぱい・・・」
痛みで垂れていた光るものが少し増えた。
「わたし寒い夜は意外と(厠)近いのよね。なんかあった時にいないと不味いだろうって、オムツしようかと思ったけどあたし乙女だから ねっ! で、暇な奴PXのスイーツで雇ったのよ。本当は一人でいいってのに、全員食い放題だって勝手に決めおって、とんだ散財はあなたの為なんだからあなたのお給金にツケとくから」
「か 厠に オムツにあたし持ちって、少しは感動させてください」
「社会人初日にしてはハードね。先輩が守銭奴なバンドメンバーなんて。まあガンバ」
底意地がヌルそうに「おやすみ」とニヤリと笑う、いい人なんだか悪人なんだか分からぬ笑顔であった。
****************
Something Wlks Down the Way[final chapter]
****************
グスっ
鼻を啜る。
「あらっ」
どうやら厨くりやで米を研いでいるうちに懐かしい夢を見ていたらしい。研ぎ汁が付いた指で鼻を吹いたので白いヒゲが出来たので慌てて手拭いを使う。
夢だけど 夢じゃない、昔見たような光景。
ノスタルジックビューイングで言葉はあっていたかなと首をひねる。
お腹すいた~~ 後輩ちゃ~ん ソウメンまだ~~ って声はもう聞こえないと寂しくなった。
「あ は~い」
また米を洗っていると表からおずおずとして声がした。白衣にたすき掛けのまま研ぎ汁が付いた腕を吹きながら玄関に向かう。
廊下の縁側の途中で垣根向こうの田んぼ痕を見ると松明の用意が見える。
なんでも遠い宇宙から戻ってくる二人の女性を迎える準備らしい。なんで松明かと思うが、ここは電気は使えないからな。
「光速の99%で帰還か。ヤマトかプロメテ(ダンガードエース)にでも乗って戻って来るのかな?」
二人共年若い女性だと聞いているが、戸籍上は一万超えてるらしい。たまった年金の延滞税で大変だろうな。
「返ってきたら税理士雇わないと・・・・・・・まあわたしも人のこといえないけど」
ガラッ
引き戸を明けるとあどけない幼さが残る少女が、田舎から学校にいかずに都会に家出ですかって大きな荷物を持って立っていた。なんか見たことあるような・・。
「あの、ここが寅の庵ですか」
少女は多分そういった。少なくとも自分にはそう聞こえた。
初めて聞くi-Galaxy8492[インフレーション宇宙]の言葉であるが、特殊能力のお陰でナントカわかった。
「はい。そうよ。ココが寅の庵だよ」
ケブラーのテラフォーミングも順調で、そろそろ移民団がつこうって時代にセーラー服とは、田舎者丸出しだと恥ずかしかった時分をおもいだしてた。
お盆に番茶と、黒かりんとうを二人分載せて縁側に運ぶ自分の姿が曇りガラスに影絵を映す。
「あの時は・・・・・」
緊張しながら縁側に座ってコチラを見ている少女を見て、少し微笑む。
順繰りに紡ぐ物語を自分も演じている。
「先輩。あたしはちゃんとやってますかね」
姿は見えないが、まだいつものように障子の影から出てきて、底意地のヌル~い軽口を言ってくれる、元 後輩であった。
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クルリン クルリン
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まず隗より始めよ、でも無いが先に啜り砂糖の浮いた羊羹を齧り、緊張するだけ無駄だとやる気のない人間になる。
「ようこそ、異界に」
だるそうに、ハッキリ聞こえないようにボソっと歓待した。
「っ?!」
さて、この子は自分と同じ様な勘違いをしてくれるだろうかと、曇ガラスに映る自分は人目の悪い笑顔を浮かべていた。
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ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
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