112 / 117
番外編2
それを何と呼ぶべきか②
しおりを挟む
(カイ視点)
それから少し経って、生徒会室でルークベルト殿下、ルカルド殿下と共に書類作業をしていた時、生徒に配る分の書類に不足があることが分かったので先生のところに行く必要ができた。ルークベルト殿下が取りに行くとおっしゃるので俺もついて行くことにし、ルカルド殿下には作業を続けてもらうことになった。そして帰ってきてみればフィリア嬢がルカルド殿下と話していた。この前相談されたことを考えれば、フィリア嬢がここにいる理由はおそらくルークベルト殿下に伝える言葉が決まったということなのだろう。そう思って微笑ましい気持ちでいると今度はルカルド殿下に部屋から引っ張り出された。俺はまたされるがままになりながら、数日のうちに2回も引きずられるという経験をしていることに不思議な気持ちを抱いていた。するとだいぶ離れたところでルカルド殿下が口を開いた。
「いや、悪かったね。二人きりにしてあげようと思ってさ」
「俺もそのつもりでしたので問題ありません」
「そっか。君は人が良いからね」
「いえ、そういうわけではなくて……」
そこまで言って、何となく興味が湧いた。今の俺が抱えているこの感情は、他の人から見たらどんなものに見えるのか。頭の良いこの方ならなおさらに、聞いてみたいと思った。
「カイ、どうかした?」
「一つ、お聞きしたいことがあるのですが……」
「?……どうぞ」
ルカルド殿下は不思議そうに目を丸くしたが、それには触れないことにして俺は本題に入った。
「レオン様は、俺がフィリア嬢に恋情を抱いているのだと言っていました。でも俺にはそうは思えなくて。ルークベルト殿下のような、あのように大きな思慕を、愛情を、自分が持っているとは思えないのです」
「なるほど」
「俺は、お二人をお守りすると誓って生きてきました。情けないことにそれすらも全うできていませんが、それでも誓った気持ちに偽りはないです。だから、お二人が気持ちを通じ合わせるのなら、俺はそれを嬉しいと思います。このような感情は何と呼ぶものなのでしょうか?」
「何だか難しく考えすぎている気もするけど、それが君の美点なのは間違いないからね」
全てを静かに聞き終わった殿下はそう言って苦笑した。これでも俺の方が2歳年上なのだから情けない。
「そうだな……それに名前をつける必要性があるならば、僕はそれを——って呼ぶかもしれない。でも、これが正解とは言えないということだけは忘れないでね。僕は感情なんて分野は大の苦手なんだから」
「……なるほど、勉強になりました」
「はぁ、君は本当に真面目だね」
俺はそうため息をつく殿下に礼をして、そろそろいいだろうと思い生徒会室に帰ることにした。そしてその帰る道で、自分のことばかりにかまけてはいられないと今後の予定を考える。当面はまだ仕事があるだろうし気を引き締めないといけない。実家に帰れる日はないと思った方がいいかもしれない。
「まだ先、か」
俺は暗くなった空を眺めながらしばらく会えていない歳の離れた妹のことを思い浮かべた。学院に通い始めてからあまり実家に帰れていないが、見るたびに背も高くなるし抱き上げた時の重みも変わっている。後半の方は本人に言ったら怒られるかもしれないが。それにフィリア嬢に聞いた話だと今回の調査にも大きな貢献をしてくれたらしい。あの子の明るい声でも聞けたら少しは靄がかかったような思考も晴れるのだろうか。
「明日は休みにしよう」
「休み、ですか……?」
生徒会室に帰るとルークベルト殿下はあまり間をおかずにそうおっしゃった。そして言われてすぐに考えた。この方が休みを切り出す理由といえば……フィリア嬢しかないか。
「都合が悪いか?」
「いえ、かしこまりました」
「俺のせいでカイには自分の時間をとることすらも十分にさせてやれなかったからな。久々に実家に帰ってみるのもいいんじゃないか?」
「はい、ちょうどそう考えていました。ありがとうございます」
予想外だった。まさか考えていた時にちょうど実家に帰れる機会が与えられるとは。俺はすぐに連絡を入れて準備を始めた。
******************
「おにいさま!おかえりなさい!」
玄関に入った瞬間にレイチェルは笑顔で俺の方に駆けてきた。思わず顔が緩む。
「ただいま、レイチェル」
俺はまた背の伸びた妹を高く抱き上げた。するとレイチェルはさらに笑みを深めた。
「おにいさま、わたしのおへやにきて!おはなししたいことがたくさんあるの!」
「ああ、もちろんだ。このまま行くか」
「はい!」
それから部屋でレイチェルは楽しそうに会えないでいた日々のことを教えてくれた。聞きながら頭を撫でると彼女は嬉しそうに目を閉じた。この子を見ていると心に温かいものが湧き上がる。俺の妹になってくれたことに感謝してもしきれないほどだ。
「……おにいさま?」
「ん?どうした?」
「おにいさまのおはなしもききたいです!」
「俺の話なんか聞いても面白いことなんて何もないぞ?」
「なんでもかまいません!でも……それならこのレイチェルがおにいさまのおなやみをきいてあげます!」
満面の笑みのレイチェルにどこか肩の力が抜けるのを感じた。そして少し迷ったが最近の考え事について話してみることにした。この子は聡いし、ルカルド殿下とはまた違う視点から考えてくれるかもしれない。
話し終わるとレイチェルは少し眉間に皺を寄せて考えたあと、「あ!」と声をあげた。
「こいのいっぽまえだったのではないですか?」
「恋の一歩前?どういうことだ?」
「あとほかになにかのきっかけがあればこいになったかもしれないということです。おうじさまとフィリアさまでまったくおなじきもちというわけではないのでしょう?」
「それは確かにそうだが……」
それが恋愛感情だと言われたときにはピンと来なかったが、振り返ればフィリア嬢を目で追っていた瞬間は多くあったかもしれない。ならばルークベルト殿下への気持ちと全く同じとは言えないのだろう。
「もうひとりのおうじさまはなんておっしゃっていたのですか?」
「ルカルド殿下か。殿下は……『親愛』とおっしゃっていた」
「では、おうじさまにはしんあいで、フィリアさまにはしんあいとこいのまんなかのきもちだったということにしましょう」
レイチェルが閃いたように人差し指を立ててそう言う。俺はその言葉が頭に響いていた。俺の中にそんな発想は全くなかったからだ。
「なるほど……レイチェルは本当に賢いな」
「おにいさまはしっかりしているからたくさんかんがえるけど、かんがえすぎもよくないとおもいます。そのときはレイチェルがおはなしをきいてあげるから、たよってくださいね!」
「ああ、ありがとう」
ルカルド殿下もレイチェルも考えすぎていると言うが、俺は誰かを守るためには思考を止めないことが必要なようにも思う。この愛らしい妹も、友人として俺を見てくださる高貴な方々も、他にも沢山の人々を守れる力をつけるためには、武力だけではきっと足りない。それを使うための思考が必要だ。だが、俺一人で考え続けてもきっとまた今回のように行き止まる。そんなときは彼女の言う通り、頼れる妹に相談してみるのも良いかもしれない。俺はまたレイチェルの頭を撫でた。
俺が抱く感情はきっと、俺が思う以上に複雑なのだろう。ならばそれに名前を付けるよりも、誰かを大切に思い尊ぶ気持ちだけを忘れないようにして、前に進もう。あの二人が気持ちを通じ合わせたときに、心から祝福できるように。そしてその未来を守り続けられるように。親愛なる方々に、心からの誠意と友愛を。
それから少し経って、生徒会室でルークベルト殿下、ルカルド殿下と共に書類作業をしていた時、生徒に配る分の書類に不足があることが分かったので先生のところに行く必要ができた。ルークベルト殿下が取りに行くとおっしゃるので俺もついて行くことにし、ルカルド殿下には作業を続けてもらうことになった。そして帰ってきてみればフィリア嬢がルカルド殿下と話していた。この前相談されたことを考えれば、フィリア嬢がここにいる理由はおそらくルークベルト殿下に伝える言葉が決まったということなのだろう。そう思って微笑ましい気持ちでいると今度はルカルド殿下に部屋から引っ張り出された。俺はまたされるがままになりながら、数日のうちに2回も引きずられるという経験をしていることに不思議な気持ちを抱いていた。するとだいぶ離れたところでルカルド殿下が口を開いた。
「いや、悪かったね。二人きりにしてあげようと思ってさ」
「俺もそのつもりでしたので問題ありません」
「そっか。君は人が良いからね」
「いえ、そういうわけではなくて……」
そこまで言って、何となく興味が湧いた。今の俺が抱えているこの感情は、他の人から見たらどんなものに見えるのか。頭の良いこの方ならなおさらに、聞いてみたいと思った。
「カイ、どうかした?」
「一つ、お聞きしたいことがあるのですが……」
「?……どうぞ」
ルカルド殿下は不思議そうに目を丸くしたが、それには触れないことにして俺は本題に入った。
「レオン様は、俺がフィリア嬢に恋情を抱いているのだと言っていました。でも俺にはそうは思えなくて。ルークベルト殿下のような、あのように大きな思慕を、愛情を、自分が持っているとは思えないのです」
「なるほど」
「俺は、お二人をお守りすると誓って生きてきました。情けないことにそれすらも全うできていませんが、それでも誓った気持ちに偽りはないです。だから、お二人が気持ちを通じ合わせるのなら、俺はそれを嬉しいと思います。このような感情は何と呼ぶものなのでしょうか?」
「何だか難しく考えすぎている気もするけど、それが君の美点なのは間違いないからね」
全てを静かに聞き終わった殿下はそう言って苦笑した。これでも俺の方が2歳年上なのだから情けない。
「そうだな……それに名前をつける必要性があるならば、僕はそれを——って呼ぶかもしれない。でも、これが正解とは言えないということだけは忘れないでね。僕は感情なんて分野は大の苦手なんだから」
「……なるほど、勉強になりました」
「はぁ、君は本当に真面目だね」
俺はそうため息をつく殿下に礼をして、そろそろいいだろうと思い生徒会室に帰ることにした。そしてその帰る道で、自分のことばかりにかまけてはいられないと今後の予定を考える。当面はまだ仕事があるだろうし気を引き締めないといけない。実家に帰れる日はないと思った方がいいかもしれない。
「まだ先、か」
俺は暗くなった空を眺めながらしばらく会えていない歳の離れた妹のことを思い浮かべた。学院に通い始めてからあまり実家に帰れていないが、見るたびに背も高くなるし抱き上げた時の重みも変わっている。後半の方は本人に言ったら怒られるかもしれないが。それにフィリア嬢に聞いた話だと今回の調査にも大きな貢献をしてくれたらしい。あの子の明るい声でも聞けたら少しは靄がかかったような思考も晴れるのだろうか。
「明日は休みにしよう」
「休み、ですか……?」
生徒会室に帰るとルークベルト殿下はあまり間をおかずにそうおっしゃった。そして言われてすぐに考えた。この方が休みを切り出す理由といえば……フィリア嬢しかないか。
「都合が悪いか?」
「いえ、かしこまりました」
「俺のせいでカイには自分の時間をとることすらも十分にさせてやれなかったからな。久々に実家に帰ってみるのもいいんじゃないか?」
「はい、ちょうどそう考えていました。ありがとうございます」
予想外だった。まさか考えていた時にちょうど実家に帰れる機会が与えられるとは。俺はすぐに連絡を入れて準備を始めた。
******************
「おにいさま!おかえりなさい!」
玄関に入った瞬間にレイチェルは笑顔で俺の方に駆けてきた。思わず顔が緩む。
「ただいま、レイチェル」
俺はまた背の伸びた妹を高く抱き上げた。するとレイチェルはさらに笑みを深めた。
「おにいさま、わたしのおへやにきて!おはなししたいことがたくさんあるの!」
「ああ、もちろんだ。このまま行くか」
「はい!」
それから部屋でレイチェルは楽しそうに会えないでいた日々のことを教えてくれた。聞きながら頭を撫でると彼女は嬉しそうに目を閉じた。この子を見ていると心に温かいものが湧き上がる。俺の妹になってくれたことに感謝してもしきれないほどだ。
「……おにいさま?」
「ん?どうした?」
「おにいさまのおはなしもききたいです!」
「俺の話なんか聞いても面白いことなんて何もないぞ?」
「なんでもかまいません!でも……それならこのレイチェルがおにいさまのおなやみをきいてあげます!」
満面の笑みのレイチェルにどこか肩の力が抜けるのを感じた。そして少し迷ったが最近の考え事について話してみることにした。この子は聡いし、ルカルド殿下とはまた違う視点から考えてくれるかもしれない。
話し終わるとレイチェルは少し眉間に皺を寄せて考えたあと、「あ!」と声をあげた。
「こいのいっぽまえだったのではないですか?」
「恋の一歩前?どういうことだ?」
「あとほかになにかのきっかけがあればこいになったかもしれないということです。おうじさまとフィリアさまでまったくおなじきもちというわけではないのでしょう?」
「それは確かにそうだが……」
それが恋愛感情だと言われたときにはピンと来なかったが、振り返ればフィリア嬢を目で追っていた瞬間は多くあったかもしれない。ならばルークベルト殿下への気持ちと全く同じとは言えないのだろう。
「もうひとりのおうじさまはなんておっしゃっていたのですか?」
「ルカルド殿下か。殿下は……『親愛』とおっしゃっていた」
「では、おうじさまにはしんあいで、フィリアさまにはしんあいとこいのまんなかのきもちだったということにしましょう」
レイチェルが閃いたように人差し指を立ててそう言う。俺はその言葉が頭に響いていた。俺の中にそんな発想は全くなかったからだ。
「なるほど……レイチェルは本当に賢いな」
「おにいさまはしっかりしているからたくさんかんがえるけど、かんがえすぎもよくないとおもいます。そのときはレイチェルがおはなしをきいてあげるから、たよってくださいね!」
「ああ、ありがとう」
ルカルド殿下もレイチェルも考えすぎていると言うが、俺は誰かを守るためには思考を止めないことが必要なようにも思う。この愛らしい妹も、友人として俺を見てくださる高貴な方々も、他にも沢山の人々を守れる力をつけるためには、武力だけではきっと足りない。それを使うための思考が必要だ。だが、俺一人で考え続けてもきっとまた今回のように行き止まる。そんなときは彼女の言う通り、頼れる妹に相談してみるのも良いかもしれない。俺はまたレイチェルの頭を撫でた。
俺が抱く感情はきっと、俺が思う以上に複雑なのだろう。ならばそれに名前を付けるよりも、誰かを大切に思い尊ぶ気持ちだけを忘れないようにして、前に進もう。あの二人が気持ちを通じ合わせたときに、心から祝福できるように。そしてその未来を守り続けられるように。親愛なる方々に、心からの誠意と友愛を。
16
お気に入りに追加
6,033
あなたにおすすめの小説
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】モブなのに最強?
らんか
恋愛
「ミーシャ・ラバンティ辺境伯令嬢! お前との婚約は破棄とする! お前のようなオトコ女とは結婚出来ない!」
婚約者のダラオがか弱そうな令嬢を左腕で抱き寄せ、「リセラ、怯えなくていい。私が君を守るからね」と慈しむように見つめたあと、ミーシャを睨みながら学園の大勢の生徒が休憩している広い中央テラスの中で叫んだ。
政略結婚として学園卒業と同時に結婚する予定であった婚約者の暴挙に思わず「はぁ‥」と令嬢らしからぬ返事をしてしまったが、同時に〈あ、これオープニングだ〉と頭にその言葉が浮かんだ。そして流れるように前世の自分は日本という国で、30代の会社勤め、ワーカーホリックで過労死した事を思い出した。そしてここは、私を心配した妹に気分転換に勧められて始めた唯一の乙女ゲームの世界であり、自分はオープニングにだけ登場するモブ令嬢であったとなぜか理解した。
(急に思い出したのに、こんな落ち着いてる自分にびっくりだわ。しかもこの状況でも、あんまりショックじゃない。私、この人の事をあまり好きじゃなかったのね。まぁ、いっか。前世でも結婚願望なかったし。領地に戻ったらお父様に泣きついて、領地の隅にでも住まわせてもらおう。魔物討伐に人手がいるから、手伝いながらひっそりと暮らしていけるよね)
もともと辺境伯領にて家族と共に魔物討伐に明け暮れてたミーシャ。男勝りでか弱さとは無縁だ。前世の記憶が戻った今、ダラオの宣言はありがたい。前世ではなかった魔法を使い、好きに生きてみたいミーシャに、乙女ゲームの登場人物たちがなぜかその後も絡んでくるようになり‥。
(私、オープニングで婚約破棄されるだけのモブなのに!)
初めての投稿です。
よろしくお願いします。
私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです
天宮有
恋愛
子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。
数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。
そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。
どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。
家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる