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第二章

11話

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「なるほど……。それは不気味だね」

 お兄様は話を聞き終わるとそう言って眉間にしわを寄せた。

「とりあえず君達はこのことを他の生徒や先生方には言わないようにしてくれ。曖昧な分言っても信用されるかどうかは分からないけれど、混乱を招いてしまうこともあり得るだろうし。それと、事情を知っている君達だからこそ、調査に協力してほしい」

「調査?」

 レオン様が首を傾げるとお兄様はそちらを向いてまた言葉を紡ぎ始めた。

「ああ。ラズリアさんのここ最近の動向や、記憶をなくす前に誰と会っていたか、何があったか、など気になることが沢山あるからね」

「ですが……少々危険ではありませんか?」

 メルルが不安そうな表情で言う。

「そうだね。だから調べる時には絶対に単独行動はしないこと。……いっそペアでも作ってしまおうか」

 私はお兄様のこの言葉を聞いてハッとした。これはルートの分岐点でロナン先生が言う台詞だ。つまり、今からリリーちゃんの恋のお相手が決まる、ということ。いよいよやってきたこの瞬間に私が息を飲むと、お兄様が何か思い出したかのように「ああ」と言ってこちらを向いた。

「ラインホルトさんは調査に加わらないように。今回のこともあるけれど、君は少し危ういからね」

「それには俺も同意だ。フィリア嬢は極力この件には関わらない方がいい」

 お兄様とルーク様の二人にしっかりと目を見て言われた。私がまた今回のような目に遭うことを避けようとしてくださっているのだろう。さすがにそこまで危なっかしい行動はしないつもりだけれど、こうなると逆に都合が良い。これなら私も邪魔にならないはずだもの。

「それから、ラズリアさんもね」

「私も、ですか?」

「君の被害が今回だけで止まるのかまだはっきりしていないからね。君は安全な場所にいるように。そうだ、どうせならラインホルトさんと一緒に行動するといい」


 ラズリアさんと私のペア行動が決まった後、少しの話し合いが行われて調査のペアが決まった。まずレオン様とメルル、そしてルーク様とカイ様、それからリリーちゃんのペアに選ばれたのはルカルド様だった。

 なるほど、ルカルド様なのね。リリーちゃんとルーク様がペアになることは婚約者の私の存在のせいでまずあり得ないし、レオン様は即決でメルルだったし、順当といえば順当だ。ふとルカルド様とリリーちゃんの方に視線を向けるとちょうど二人が挨拶をしていたところだった。


「よろしく、オルコックさん」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします!」

 ルカルド様の爽やかな笑顔とリリーちゃんの溌剌とした笑顔で見た感じは良い雰囲気。でも正直に言うと想像できないのよね、あのルカルド様がゲームの中みたいに恋をする姿なんて。でもリリーちゃんがこんなに可愛らしいんだもの、きっと素敵な恋をするはずよね。
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