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第二章
5話
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結局私が断った生徒会にはレオン様とメルルが入った。メルルはどうかわからないけれどレオン様に関してはゲーム通りの展開だ。
「本当はお断りしたかったのです!フィリア様がいらっしゃらないと聞いていたので……なのに、レオン様が…入らなかったら……っ…」
レオン様に関してはクライン公爵家の長男なのでほぼ確定だったと思われるし、メルルはこのような感じになっていたのでおそらくレオン様に強制連行されたのだと思う。二人とも仕事はできるタイプだし問題はないと思うけれどやはり少し寂しい。二人が忙しそうな時は目立たない範囲でお手伝いができるようにしよう。
二人の他にも生徒会にはルーク様、カイ様、あと王族なのでこちらもまた強制だったルカルド様もいらっしゃる。つまり、攻略対象は全員生徒会役員でもあるのだ。やはりここに交わるのはリスクが高すぎる。
「あ、ルークベルト王子殿下よ!」
「護衛のカイ様もいらっしゃるわ!」
廊下を歩いていると令嬢たちの色めき立った声が聞こえてきた。さすが生徒会長と副会長、生徒からの人気は高いらしい。らしい、というのも、私はカイ様とは少し話したけれどルーク様に至っては入学以来全くと言って良いほどまともに会っていないのだ。お忙しいようで声をかけるのも憚られるし、わざわざお話しするようなこともないので、これと言って困ったことはないのだけれど。
5年の月日があれば流石に私とルーク様の関係も少しくらいは変化している。5年前から私が建国記念日の挨拶に毎年出るようになってしまったので顔を合わせる回数も増えたし、自然な会話も増えた。何より、冷たく凍っているようにすら見えていたルーク様の表情が読み取れるようになったのだ。どちらかといえばルーク様の方がいろんな表情を見せてくださるようになっただけかもしれないけれど。ただ私たちは婚約者らしい仲とまでは言いがたい。良く言ってお友達くらいだろう。
今も廊下をすれ違っても会釈くらいで終わってしまう。これなら、リリーちゃんがルーク様と結ばれたとしても喜んで応援ができるだろう。私としてはこのくらいの方が都合が良い。下手に好意なんかを持って物語の邪魔をしたくはないもの。
もうすぐ物語でいう第一の事件が起きるはずだ。これが攻略対象たちとリリーちゃんの正式な出会いになる。そもそも私が生きていることでどれくらい物語が変容しているのか分からないので、その時期がずれたり、内容が変わったりすることはあるかもしれないけれど、事件が起こらないと言うことは流石にないと思う。私は未だにゲームで知った真相の記憶は抜けたままなので確信は全くもってないけれど。
『たぶんもうだいじょうぶだよ』
いつだったかアルブラン伯爵邸に遊びに行ったときレイチェルちゃんに唐突に言われたことを思い出す。
『もうフィリアさまはだいじょうぶだとおもうよ。でも……がくいんではきをつけてね、なにがあるかわからないから』
彼女がどうしてこんなことを言ったのかはわからない。でも、なぜかまだ舌ったらずな彼女の言葉に不思議な安心と信頼を覚えてしまった。だから、とは言えないけれど、この学院で何事もないというわけにはいかないような気がするのだ。
不意に窓から外を見ると光の一つも見えない曇りだった。それに何か不吉なものを感じていると、どこからか視線を感じた気がした。
「本当はお断りしたかったのです!フィリア様がいらっしゃらないと聞いていたので……なのに、レオン様が…入らなかったら……っ…」
レオン様に関してはクライン公爵家の長男なのでほぼ確定だったと思われるし、メルルはこのような感じになっていたのでおそらくレオン様に強制連行されたのだと思う。二人とも仕事はできるタイプだし問題はないと思うけれどやはり少し寂しい。二人が忙しそうな時は目立たない範囲でお手伝いができるようにしよう。
二人の他にも生徒会にはルーク様、カイ様、あと王族なのでこちらもまた強制だったルカルド様もいらっしゃる。つまり、攻略対象は全員生徒会役員でもあるのだ。やはりここに交わるのはリスクが高すぎる。
「あ、ルークベルト王子殿下よ!」
「護衛のカイ様もいらっしゃるわ!」
廊下を歩いていると令嬢たちの色めき立った声が聞こえてきた。さすが生徒会長と副会長、生徒からの人気は高いらしい。らしい、というのも、私はカイ様とは少し話したけれどルーク様に至っては入学以来全くと言って良いほどまともに会っていないのだ。お忙しいようで声をかけるのも憚られるし、わざわざお話しするようなこともないので、これと言って困ったことはないのだけれど。
5年の月日があれば流石に私とルーク様の関係も少しくらいは変化している。5年前から私が建国記念日の挨拶に毎年出るようになってしまったので顔を合わせる回数も増えたし、自然な会話も増えた。何より、冷たく凍っているようにすら見えていたルーク様の表情が読み取れるようになったのだ。どちらかといえばルーク様の方がいろんな表情を見せてくださるようになっただけかもしれないけれど。ただ私たちは婚約者らしい仲とまでは言いがたい。良く言ってお友達くらいだろう。
今も廊下をすれ違っても会釈くらいで終わってしまう。これなら、リリーちゃんがルーク様と結ばれたとしても喜んで応援ができるだろう。私としてはこのくらいの方が都合が良い。下手に好意なんかを持って物語の邪魔をしたくはないもの。
もうすぐ物語でいう第一の事件が起きるはずだ。これが攻略対象たちとリリーちゃんの正式な出会いになる。そもそも私が生きていることでどれくらい物語が変容しているのか分からないので、その時期がずれたり、内容が変わったりすることはあるかもしれないけれど、事件が起こらないと言うことは流石にないと思う。私は未だにゲームで知った真相の記憶は抜けたままなので確信は全くもってないけれど。
『たぶんもうだいじょうぶだよ』
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『もうフィリアさまはだいじょうぶだとおもうよ。でも……がくいんではきをつけてね、なにがあるかわからないから』
彼女がどうしてこんなことを言ったのかはわからない。でも、なぜかまだ舌ったらずな彼女の言葉に不思議な安心と信頼を覚えてしまった。だから、とは言えないけれど、この学院で何事もないというわけにはいかないような気がするのだ。
不意に窓から外を見ると光の一つも見えない曇りだった。それに何か不吉なものを感じていると、どこからか視線を感じた気がした。
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