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第一章
37話
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何だか……息が、苦しい?私は今、どこにいるの?
「にしても頭おかしいよなー、あのオヤジ」
「まあな」
「事後報告じゃ信用できねぇから自分の目の前で殺せ、とか。ほんとめんどくせーし気持ちわりーし」
「そうだな」
知らない男性の声がする。……「殺す」?どういうこと?まさか、私を?いや、でもゲームの展開通りなら私は病死のはずだし……。ん?
[亡くなってしまったが……]
[死んでしまった婚約者が……]
[今は亡き……]
ゲームでの死んだ婚約者に関する情報を出来る限り思い出す。……そうか。病死だなんて、一言も書かれていなかった。病弱な人だったって言われているからそう思い込んでいただけ。私は本当に今から死んでしまうかもしれないんだ。そう思うと全身に悪寒が走った。それを落ち着かせるために手を動かそうとするもうまくいかない。拘束されている。足もそうだし口元も覆われている。
落ち着いて今の状況を整理しよう。おそらく今私は荷運び用の馬車の中。手足及び口は動きを取れないようにされている。そしてこの馬車が目的地に着いたらきっと私は殺される。でもそれは一体誰に?私が死んで利益を得る人なんているかしら?私の肩書きなんてせいぜい第一王子の婚約者ってことだけで…………いや、それしかないわね。そうか、狙う人なんて第二王子派くらいだわ。こんな強引な攫い方からしてもそうね。
『兄上の婚約者にはしっかりしておいてもらわないとね、僕のためにも、貴女自身のためにも』
いつぞやのルカルド様の言葉が突き刺さる。ほんっとうにごめんなさい!もっとその言葉を真剣に考えるべきだった。いや、今ここで後悔しても仕方ない。私は今秒速で死に近づいているのだから。
例えば、いっそここから飛び降りたり?いや、足を怪我して捕まって終わりね。何とか一瞬の隙をついて……いや、そこから状況を覆すほどのことは私にはできない。なら、どうすればいいの?この体に生まれ変わって、私は私の人生をって、長生きしようって思っていたのに。ここで結局死んでしまうの?家族も友達も何もかもを残して?そんなの……絶対に嫌!
「よーし、着いたぞ」
「じゃあ運ぶか」
いけない。こっちに来る。私は反射的に目を閉じていた。気を失ったままのふり。これが正しいのかどうかもわからない。ただ、騒がしい心音を落ち着かせることだけに必死になっていた。
樽のように担ぎ上げられてどこかに連れて行かれる。まだ夏のはずなのに肌に触れる空気はどこか冷たく感じた。
「伯爵様ー。連れてきましたよー」
「あぁ、よくやった。ではこの場で殺してもらおうか」
「りょーかい」
その声と同時にひんやりとした地面に下ろされた。まずい。音でしかわからないけれどこのままでは本当に殺される。どうしよう。せめて少しでも時間を稼ぎたい。……もう一か八か掛けに出るしかないわね。
「んーーーーーーーーーーーー!」
口は塞がれているから何の言葉にもならない。ただ出せるだけの声を出して叫ぶ。寝てると思ってた人間がいきなり叫んだら一瞬くらいは止まるでしょう?お願いだからそれくらいの隙はある人でいて!
「な、何だ?!」
よし、隙はあった。でもここからどうするかは考えてなかったわね……。どうしたものか……。
「何をしている!さっさと殺せ!」
「っ!分かってますよ!」
今度こそ、と刃がこちらに振り下ろされそうになった瞬間、何か変な物音がした。そしてその直後男は握っていた剣を落としていた。
「だ、誰だ!」
「伯爵様」がそう叫ぶと扉の方から誰かがこちらに向かってくるのが分かった。
「伯爵、よくもやってくれたな」
「にしても頭おかしいよなー、あのオヤジ」
「まあな」
「事後報告じゃ信用できねぇから自分の目の前で殺せ、とか。ほんとめんどくせーし気持ちわりーし」
「そうだな」
知らない男性の声がする。……「殺す」?どういうこと?まさか、私を?いや、でもゲームの展開通りなら私は病死のはずだし……。ん?
[亡くなってしまったが……]
[死んでしまった婚約者が……]
[今は亡き……]
ゲームでの死んだ婚約者に関する情報を出来る限り思い出す。……そうか。病死だなんて、一言も書かれていなかった。病弱な人だったって言われているからそう思い込んでいただけ。私は本当に今から死んでしまうかもしれないんだ。そう思うと全身に悪寒が走った。それを落ち着かせるために手を動かそうとするもうまくいかない。拘束されている。足もそうだし口元も覆われている。
落ち着いて今の状況を整理しよう。おそらく今私は荷運び用の馬車の中。手足及び口は動きを取れないようにされている。そしてこの馬車が目的地に着いたらきっと私は殺される。でもそれは一体誰に?私が死んで利益を得る人なんているかしら?私の肩書きなんてせいぜい第一王子の婚約者ってことだけで…………いや、それしかないわね。そうか、狙う人なんて第二王子派くらいだわ。こんな強引な攫い方からしてもそうね。
『兄上の婚約者にはしっかりしておいてもらわないとね、僕のためにも、貴女自身のためにも』
いつぞやのルカルド様の言葉が突き刺さる。ほんっとうにごめんなさい!もっとその言葉を真剣に考えるべきだった。いや、今ここで後悔しても仕方ない。私は今秒速で死に近づいているのだから。
例えば、いっそここから飛び降りたり?いや、足を怪我して捕まって終わりね。何とか一瞬の隙をついて……いや、そこから状況を覆すほどのことは私にはできない。なら、どうすればいいの?この体に生まれ変わって、私は私の人生をって、長生きしようって思っていたのに。ここで結局死んでしまうの?家族も友達も何もかもを残して?そんなの……絶対に嫌!
「よーし、着いたぞ」
「じゃあ運ぶか」
いけない。こっちに来る。私は反射的に目を閉じていた。気を失ったままのふり。これが正しいのかどうかもわからない。ただ、騒がしい心音を落ち着かせることだけに必死になっていた。
樽のように担ぎ上げられてどこかに連れて行かれる。まだ夏のはずなのに肌に触れる空気はどこか冷たく感じた。
「伯爵様ー。連れてきましたよー」
「あぁ、よくやった。ではこの場で殺してもらおうか」
「りょーかい」
その声と同時にひんやりとした地面に下ろされた。まずい。音でしかわからないけれどこのままでは本当に殺される。どうしよう。せめて少しでも時間を稼ぎたい。……もう一か八か掛けに出るしかないわね。
「んーーーーーーーーーーーー!」
口は塞がれているから何の言葉にもならない。ただ出せるだけの声を出して叫ぶ。寝てると思ってた人間がいきなり叫んだら一瞬くらいは止まるでしょう?お願いだからそれくらいの隙はある人でいて!
「な、何だ?!」
よし、隙はあった。でもここからどうするかは考えてなかったわね……。どうしたものか……。
「何をしている!さっさと殺せ!」
「っ!分かってますよ!」
今度こそ、と刃がこちらに振り下ろされそうになった瞬間、何か変な物音がした。そしてその直後男は握っていた剣を落としていた。
「だ、誰だ!」
「伯爵様」がそう叫ぶと扉の方から誰かがこちらに向かってくるのが分かった。
「伯爵、よくもやってくれたな」
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