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第一章
30話
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「それでは今年の建国記念日の挨拶の舞台上にはフィリア様もいらっしゃるのですね!」
メルル様にルーク様がいらっしゃった時のことをお話しすると目を輝かせてそう返してくださった。
「ええ。本当にただその場にいるだけで特に何かするわけではないのですけれど」
「それでも楽しみです!私は建国記念日には毎年家族全員で挨拶を見て、屋台の料理を食べたり演劇を観に行ったりするのですが、今年はフィリア様のお姿も見られると思うと今までよりもっと楽しみになりました!」
「ありがとうございます」
メルル様の言葉が嬉しくて笑顔でお礼を言うと、メルル様は何故か納得がいかないように首を傾げた。
「……あの、フィリア様」
「はい?」
「宜しければ、敬語を使わずに話していただけませんか?名前も、メルルと呼んでいただきたいです」
「ですが……」
「元々、フィリア様の方が身分も上ですし、その方がお友達っぽいです!」
「でも……」
「ダメ、ですか……?」
うっ……これは……天使の上目遣い!しかも少し目が潤んでいるという特典付きだわ!これはいつぞやにレオン様がジェイくんに向けてやったものと同じね。あの時側から見て断れそうにないと思ったのだから、直撃している今私の中に断るという選択肢が残っているわけがない。
「……わかりま……わかったわ。これでいい?メルル」
私がダメージをくらいながらそう言うとメルルさ……メルルはパァッと輝く笑顔を見せてくれた。
「はい!とっても嬉しいです!」
「貴女は敬語なの?」
「はい!身分のこともありますし、何より私のは癖みたいなものですから!」
「そう、なのね」
それからもいろいろな話に花を咲かせて正直まだ話し足りないくらいだったけれど、時間はあっという間に過ぎてメルルは帰っていった。ラナ以外の女の子とこんなに長く話したのは初めてだったので興奮したのかその日は眠りにつくのが遅かった。
******************
「ごめん……っごめんなさい……」
まただ。また誰かが泣いている。視界がぼやけてその姿はよく見えない。体がひどく重くてその手に触れることも叶わない。どうして、どうしてあなたは泣いているの?
「泣か……ないで……?私は、大丈夫……だから……」
無理やり絞り出した声は私が思っていることとは少し違うことを言葉にしてしまう。私はただこの子を慰めたいだけなのに。「私は大丈夫」なんて言おうと思ってなかったのに。
それでも私の声は泣いているその子の耳に届いたらしく、ぼやけた視界の中でその子が目を見開いたような気がした。あなたは誰なの?どうして私には何もできないの?
「お嬢様、お目覚めですか?」
あぁ、まただ。また夢だったのね。
「ええ。おはよう、ラナ」
返事を聞いて部屋に入ってきたラナは何故か私の顔を見るとひどく驚いたような顔をした。
「お嬢様?何か悲しい夢でもみたのですか?」
「え?」
そう言われて不意に自分の顔を触ると目元が濡れていた。私は泣いていたのだ。
「悲しい夢……そうかもしれないわね」
私はそれだけ言って一度ゆっくりと瞬きをした。この夢のことはここまでにして切り替えなくては。今日は建国記念日の挨拶についての詳細を決める日なのだから。
メルル様にルーク様がいらっしゃった時のことをお話しすると目を輝かせてそう返してくださった。
「ええ。本当にただその場にいるだけで特に何かするわけではないのですけれど」
「それでも楽しみです!私は建国記念日には毎年家族全員で挨拶を見て、屋台の料理を食べたり演劇を観に行ったりするのですが、今年はフィリア様のお姿も見られると思うと今までよりもっと楽しみになりました!」
「ありがとうございます」
メルル様の言葉が嬉しくて笑顔でお礼を言うと、メルル様は何故か納得がいかないように首を傾げた。
「……あの、フィリア様」
「はい?」
「宜しければ、敬語を使わずに話していただけませんか?名前も、メルルと呼んでいただきたいです」
「ですが……」
「元々、フィリア様の方が身分も上ですし、その方がお友達っぽいです!」
「でも……」
「ダメ、ですか……?」
うっ……これは……天使の上目遣い!しかも少し目が潤んでいるという特典付きだわ!これはいつぞやにレオン様がジェイくんに向けてやったものと同じね。あの時側から見て断れそうにないと思ったのだから、直撃している今私の中に断るという選択肢が残っているわけがない。
「……わかりま……わかったわ。これでいい?メルル」
私がダメージをくらいながらそう言うとメルルさ……メルルはパァッと輝く笑顔を見せてくれた。
「はい!とっても嬉しいです!」
「貴女は敬語なの?」
「はい!身分のこともありますし、何より私のは癖みたいなものですから!」
「そう、なのね」
それからもいろいろな話に花を咲かせて正直まだ話し足りないくらいだったけれど、時間はあっという間に過ぎてメルルは帰っていった。ラナ以外の女の子とこんなに長く話したのは初めてだったので興奮したのかその日は眠りにつくのが遅かった。
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「ごめん……っごめんなさい……」
まただ。また誰かが泣いている。視界がぼやけてその姿はよく見えない。体がひどく重くてその手に触れることも叶わない。どうして、どうしてあなたは泣いているの?
「泣か……ないで……?私は、大丈夫……だから……」
無理やり絞り出した声は私が思っていることとは少し違うことを言葉にしてしまう。私はただこの子を慰めたいだけなのに。「私は大丈夫」なんて言おうと思ってなかったのに。
それでも私の声は泣いているその子の耳に届いたらしく、ぼやけた視界の中でその子が目を見開いたような気がした。あなたは誰なの?どうして私には何もできないの?
「お嬢様、お目覚めですか?」
あぁ、まただ。また夢だったのね。
「ええ。おはよう、ラナ」
返事を聞いて部屋に入ってきたラナは何故か私の顔を見るとひどく驚いたような顔をした。
「お嬢様?何か悲しい夢でもみたのですか?」
「え?」
そう言われて不意に自分の顔を触ると目元が濡れていた。私は泣いていたのだ。
「悲しい夢……そうかもしれないわね」
私はそれだけ言って一度ゆっくりと瞬きをした。この夢のことはここまでにして切り替えなくては。今日は建国記念日の挨拶についての詳細を決める日なのだから。
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